メディアリテラシー(6) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月3日は、2013年、『日経エンタテインメント9月号』に、夏フェス出演数アイドル1位という記事が掲載された日DEATH。
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<例題4>
次の新聞記事を読み、設問に答えなさい。

大見出し:新学部「総理の意向」
小見出し:加計学園計画 文科省に記録文書 内閣府、早期対応求める
リード文:安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、文部科学省が、特区を担当する内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などといわれたとする記録を文書にしていたことがわかった。
本文記事:(1行目~8行目まで)野党は「首相の友人が利益を受けている」などと国会で追及しているが、首相は「加計学園から私に相談があったことや圧力がはたらいたということは一切ない」などと答弁し、関与を強く否定している。

設問
1.この記事の大見出しは、新学部「総理(そうり)の意向(いこう)」となっていますが、これは次のア~エのどの意味ですか? 1つ選び記号で答えなさい。
ア.新学部の設置は総理が要望し、依頼したものだ
イ.新学部の設置に総理は関係していない
ウ.新学部の設置は文部科学省が進めたものだ
エ.新学部の設置は内閣府の戦略特区が進めたものだ

2.この記事のリード文は一文ですが、主語は次のア~エのどれですか?1つ選び記号で答えなさい。
ア.安倍晋三首相の知人が
イ.文部科学省が
ウ.安倍晋三首相が
エ.文書にしていたことが

3.安倍晋三首相は国会でどのように答弁していますか?記事本文の中から書き抜きなさい。

4.記事の左上にある「大臣ご確認(かくにん)事項(じこう)に関する内閣府(ないかくふ)の回答(かいとう)」という文書の写真に黒い影(かげ)がつけられているのはなぜだと思いますか。次のア~ウから1つ選び、記号で答えなさい。
ア.この文書が首相の悪事を表しているように印象づけるため
イ.黒い影の部分に、「総理の意向」ではないことが書いてあるのを隠すため
ウ.この文書を新聞社に提供した人の個人情報を隠すため
エ.黒い影をつけることで、文部科学省の悪事を表しているように印象づけるため
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解答
1.→ア
2.→エ
3.→加計学園から私に相談があったことや圧力がはたらいたということは一切ない
4.→アまたはイ
解説
1.は、新学部「総理の意向」という大見出しをパッと見ると、当然、加計学園の新学部設置が総理の意向で進められているという印象を受ける。しかし、リード文や記事本文を読むと、そう書かれた役人のメモが文部科学省にあったというだけの話である。要するにこの大見出しは、新学部の設置があたかも「総理の意向」であると印象づける目的でつけられているのだ。
2.は、それをはっきりさせるための設問。
「安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、」までは、話題を示す修飾節であり、主語ではない。
「文部科学省が、」は一見主語に見えるが、これは「特区を担当する内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などといわれたとする記録を文書にしていた」の部分にかかるので、文全体の主語ではない。
日本語は、述語が一文の最後にくるというシンタックスが大原則。つまり、「わかった」が文全体の述語である。述語「わかった」の主語は、「文部科学省が」ではない。
「(主語)文部科学省が~(述語)わかった」では意味をなさないからだ。
だから、主語は「文書にしていたことが」である。もちろん、「文書にしていたことが」は人物ではないから、本来的な意味では主語にはなり得ない。だが、中学文法のレベルならこれでいい。
「ゾウは鼻が長い」の述語は「長い」であり、主語は「ゾウは」ではなく「鼻が」である。
もし、主語が「ゾウは」だとすると、「(主語)ゾウは-(述語)長い」になってしまう。体が長いのはヘビであってゾウではない。この文では「ゾウは」は修飾語である。
その上で付け加えれば、「(述語)わかった」の本当の主語は、この文章では隠されている「朝日新聞社は」ではないか。
つまりこの長い一文は、「文部科学省が-文書にしていたことが」までが主語-述語の構造をもち、「(朝日新聞社は)-わかった」という本当の主語-述語の修飾節になっているのだ。このように”入れ子”構造になっている文を、文法的には複文という。
しかし、「朝日新聞社は」-「わかった」では、主語‐述語が呼応しない。
そこで、助詞や動詞を変えて、「(主語)朝日新聞社は」「(修飾節)文部科学省が-文書にしていたこと“を”」、「(述語)“つかんだ。”」とすればスッキリする。要するにこの記事は、朝日新聞社が、文部省(の役人)が作った文書を入手したというだけのニュースバリューしかないのだ。それをあたかも「総理の意向」であるかのように印象づけているに過ぎない。
主語-述語がはっきりしない日本語のあいまいさを嫌い、明快な文章を書くべきだと主張したのは、何を隠そう朝日新聞社の本多勝一記者が書いた『日本語の作文技術』である。
こういう立派な伝統を、朝日新聞社はちゃんと継承していないのだ。
3.は記事の中から書き抜けばいい。安倍晋三首相はこうした疑惑を明快に否定していることがわかる。
4.は、黒い部分が首相の悪事を印象づけているととってもいいし、「総理の意向」ではないことがバレるのをカムフラージュしたととってもいい。


実際、この記事で「文部科学省が文書にしていた」とされる「大臣ご確認事項に関する内閣府の回答」の黒い影がつけられた部分はこうだった。

―引用「大臣ご確認事項に関する内閣府の回答」―
〇 設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。
〇 規制緩和措置と大学設置審査は、独立の手続であり、内閣府は規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査は文部科学省。大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない。
〇 「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会議にかける必要あり。(以下略)
―引用終わり―
 

傍線部はぼくがつけたものだが、新聞記事では黒い影がかかっている部分で、そこには「総理からの指示に見えるのではないか」とある。「見える」ということは、本当はそうではないという事実を表しているではないか。
であれば、冒頭の「これは総理のご意向だと聞いている」も、加計学園の「設置の時期については」にかかるのではなく、規制改革が必要なすべての事案に対して、安倍政権が「最短距離で規制改革」=不合理な規制をどんどん改革していこうという方針を示したものと考えるのが当然ではないか。

ようするに朝日新聞社が入手したというこの文書自体も、加計学園の新学部設置が「総理の意向」ではないということの証拠にしかならないのだ。
本文記事冒頭で、当の安倍首相が「強く否定」しているのに、大見出しの新学部「総理の意向」、主語-述語があいまいなリード文、黒い影で総理には関係ないと読める部分を隠した写真など、この記事全体が、あたかも「安倍首相が悪事を働いている」かのような印象操作を行ったことは明白なのである。
(つづく)