メディアリテラシー(4) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月1日は、2014年、Lady GAGA’s Art Rave@ラスベガス・MGMグランド・ガーデンが行われた日DEATH。

この間、体調が悪く、ぶつ切りになってしまって申し訳ありません。
それでは<例題2>の解答、解説。

(1)
昨日のそうじ時間中(ア)、山本君は(イ)、教室で(ウ)、ふだんから青山さんが気に食わなかったため(エ)、ほうきで(オ)彼女の背中をたたいた(カ)。
→(ア)は時間なので1.WHEN、(イ)は人物なので3.WHO、(ウ)は場所なので2.WHERE、(エ)は「~ため」とあるので5.WHY、(オ)は手段・道具なので6.HOW、(カ)は行ったことなので4.WHATとなる。

(2)
安倍首相は(ア)昨夜の(イ)記者会見で(ウ)、韓国を「信用できない」とし、安全保障に関わる民生品の輸出管理で優遇措置を受けられる「ホワイト国」から外す方針を発表した(オ)。これは、韓国大法院が、昨年、戦時徴用工の個人賠償請求権を認め、韓国国内にある日本企業の資産の差し押さえを認める決定をしたことへの報復と見られる(エ)。

→(ア)は人物なので3.WHO、(イ)は時間なので1.WHEN、(ウ)は場所なので2.WHERE、順番が逆になっているが、(オ)は「~発表した」という出来事なので4.WHAT、(エ)は「これは~見られる」という理由説明なので5.WHYである。

(3)
(1)のWHY→2. 記者の思い込みだと思う
「ふだんから青山さんが気に食わなかったため」というのは、もしかしたら、このクラスでは「有名」だったのかもしれないが、少なくともこの記事には、それを山本君や青山さんやクラスの他の子に取材したとは書いていない。
厳しく言えば、この記事を書いた「記者」は、乱暴な山本君の行為を正当化する役割を果たしているのかもしれないし、逆に山本君を「気に食わないだけで暴力をふるう悪い子」として描きたかったのかもしれない。結局この「記者」には、「報道」とは「事実」だけを伝え、読者に考える機会を与えるものであるという自覚がないのだ。
とはいえ、これは学級新聞レベルの話である。

(2)のWHY→2.記者の思い込みだと思う
これも(1)の記事と全く同じ構造である。
「これは~見られる」という構文になっているので、より記者の推定であることは明確だが、「韓国大法院」「戦時徴用工」「個人賠償請求権」「差し押さえ」といった「事実」の中に「報復」という言葉を混ぜられると、あたかも「正しい」かのように思ってしまう。
なぜこう「見られる」のか。安倍首相ないし政府、経済産業省に確認したのか。あるいは、推定するに足るほかの証拠があるのか。それが書いてない限り、これは記者の思い込みであると考えなければならない。
だが、ここからが問題だ。
このWHYが推定に過ぎないということは、記者自身わかっているはずだ。
しかし、「思い込みかもしれない」という自覚があるなら、ちゃんと「WHYの理由」を併記するのが記者としての誠実さのはずである。それをしていない。
ということは、自覚がないか、もっと悪いのは、「記事に書いたことが事実だ」と居直っているかのどちらかである。
さらに言えば、日本では、WHYの部分も含めて「新聞がウソを書くはずがない」という社会的コンセンサスがあったことがこういう記者や記事を蔓延させている土壌だったと言わざるを得ない。
WHYの部分にこそ「事実確認」が必要である。「WHYの理由」が書いていない記事は信用できない。そういうリテラシーを持つことが大事だと思う。


だが、次のようなケースもある。
-------------------------------------
<応用問題>
https://jp.reuters.com/article/southkorea-japan-usa-idJPKCN1UP2CLより
―引用―
見出し:日韓は「休止協定」締結を、対立回避へ米国が要請
執筆者:Reuters Staff
記事:
[ワシントン 30日 ロイター] 
日本政府による韓国向け半導体材料の輸出規制強化などを巡って両国の対立が深まる中、ある米政府高官は30日、日韓が話し合いの時間を確保するための「スタンドスティル(休止)協定」を締結するよう米国が求めたことを明らかにした。
この高官は、据え置き協定で二国間の問題が解消するわけではないとしながらも、あらゆる措置を一定期間未然に防ぐことはできると述べた。協定の期間については決まっていないとした。(以下略)
―引用終わり―
設問
1.この記事中で、1.WHEN  2.WHERE  3. WHO  4.WHAT  5.WHY  6. HOWに当たる部分をそれぞれ抜き出しなさい。
2.この記事が疑わしいと思われる部分は、どこですか。

解答、解説。
1.
→WHEN…30日
WHERE…書いていない
WHO…ある米政府高官
WHAT…日韓が話し合いの時間を確保するための「スタンドスティル(休止)協定」を締結するよう米国が求めたことを明らかにした。
WHY…書かれていない。
HOW…協定の期間については決まっていない?
2.
→「ある米政府高官」が誰なのか、どこで語られたことなのかが書かれておらず、いつから、どのようにするのかについても「決まっていない」としか書かれていない。
これが「正解」でよいのだが、もっと重要なのは、「日本政府による韓国向け半導体材料の輸出規制強化などを巡って両国の対立が深まる中」という状況説明や、「日韓が話し合いの時間を確保するため」「あらゆる措置を一定期間未然に防ぐことはできる」という韓国にとっての利益は書いてあるが、なぜ「米国高官」がこういう発言をしたのかという説明、肝心の米国の国益という目的・理由が書かれていない。
実は、31日午前中、日本の菅官房長官は、定例記者会見でこの報道についての記者の質問に対して、「指摘されるような事実はありません」と明言した。
つまり、このロイター記事は、事実の裏付けがきわめてあいまいな「虚報」だったのである。
では誰が、この記事を書いたのか。
執筆者は、Reuters Staffとなっているので不明である。
だが、“ファイリング”はできる。
日本政府は、韓国のホワイト国除外を、軍事転用可能な民生品の輸出管理の一環であり、管理体制がユルユル、かつ北朝鮮に傾倒する文政権の韓国から他国への密輸を防止する安全保障上の是正措置であるとしている。それは当然、同盟国アメリカや対北朝鮮制裁を続けている国連の利害とも一致する。
ところが、この記者は、現在の状況を「日本政府による韓国向け半導体材料の輸出規制強化などを巡って両国の対立が深ま」っていると考えており、米国が「スタンドスティル(休止)協定」を求めることによって、あらゆる措置=韓国のホワイト国除外を「一定期間未然に防ぐ」ことができると肯定的にとらえる記者である。
ホワイト国除外を「防ぐ」。
語るに落ちるとはこのことではないか。
(つづく)