音楽の呪術性(7) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月22日は、2013年、タワレコ渋谷店で「メギツネ」リリース記念“いなりん”とヒット祈願イベントが行われ、2015年には、日テレ「Zip」でBABYMETALが報道され、2017年には、KORN USツアー@マウンテンビューShoreline Amphitheaterが行われた日DEATH。

現生人類とネアンデルタール人の身体構造には、喉仏の位置に大きな違いがあるという。
発掘されたネアンデルタール人の頭蓋骨を調べると、内部がフラットになっていた。これはチンパンジーなどの類人猿と同じで、喉仏が顎のすぐ下についていたことを示している。
だが、現生人類では頭蓋骨の内部に溝のような構造があり、喉仏は顎より10センチほど下、喉の中ほどについている。


類人猿の鳴き声は甲高く、短く断片的な単語レベルの情報しか伝達できないが、現生人類は喉仏が下についているので気道が長く、声帯の可動範囲が広い。これにより低音から高音まで発声でき、抑揚やタンギングによって、文章レベルで話すことができる。
文章レベルの情報伝達能力とは、人種・母語に関わらず、全ての現世人類が、生まれつき「入れ子」構造―「彼がそう言った」「ということを父から聞いた」「のは私である」―をもった構文を理解する能力をもっているということである。
これを言語学者ノーム・チョムスキーは「普遍文法」と名づけた。
チンパンジーは、絵や記号が表示される装置を使えば、ある程度抽象的な言語を理解できることがわかっているが、話すことはできない。
同時期に共存していたネアンデルタール人が滅び、現生人類が生き残ったのは、喉仏の位置、長い気道をもつことによって、複雑な内容を持った言葉を話せたからではないか。
言語は、狩猟採集、生産活動において強力なツールであるが、より重要なのは、個体が得た知識を子孫に伝えるという働き、すなわち教育という営みが可能になることである。
例えば、類人猿でも、子どもが親と過ごして成長する間は、親から獲物の探し方、よく実がなる木の場所、危険な動物など様々な知識を得ることができるが、親の知らないこと、見たことのないことを知ることはできない。
だが、豊かな言語があれば、親以外の個体の知見や部族の伝承などを、時間を超えて子々孫々伝えていくことができる。
狩猟採集で生存していくだけなら、親の知識を手ずから教えてもらうのと、言語によって部族の知見が伝承されるのと、当初はさほど大きな差は出なかったに違いない。
だが、なんらかの突発的な状況―例えば火山の噴火、地震、津波、旱魃といった自然災害や敵対する部族の襲撃―の際に、遠い祖先の経験が伝えられているのとそうでないのとでは、対処のしかたがまるで違ってくる。長い間の知識の蓄積があれば、それを応用して考え、生き延びるための工夫をすることができるからだ。
それが生存率の差となり、2万数千年前にネアンデルタール人は滅び、ぼくら現生人類は生き残った。ネアンデルタール人共存期間に現生人類と交雑したらしく、日本人の51%にはネアンデルタール人の遺伝子が2.3~2.4%存在するという。
それはともかく、ぼくが生業としてきた学校教育とか、塾とかいう営みも、人類が生き延びるための戦略である。今の生活と関係ない知識を覚えさせられるのは、それが長い間人類が蓄積してきた知識だからである。今は役立たなくても、何か事が起こったとき、それを使って思考するための情報なのだ。
さて、喉仏が下にあることによって、現生人類はもうひとつのコミュニケーション手段を手に入れた。それが「歌」である。
普通に話すだけでなく、喉仏の裏にある声帯を高音から低音まで動かして、メロディにする。
メロディとして歌うと、そこに歌詞がのっていなくても感情が伝わる。人類の脳には「普遍音楽文法」が内蔵されているからだ。
さらに人間ほど広い帯域を使った旋律を創れるものは自然界にはないので、「歌」は風に乗って遠くまで伝わる。
メロディは、言語中枢とは別の脳の部位に伝達されるので、記憶に残りやすい。そこに歌詞をつけると、ある程度長い文章でも容易に覚えることができる。
特に、リズムをつけて語呂合わせにしたり、サビのフレーズを繰り返したりすると、その歌は長い間忘れることがない。リズム、楽器、ハーモニーをつけるとその「音像」は、言語とは違う領域に長期記憶され、いつでも脳内再生することができる。「イントロ当てクイズ」が成立するのは、なんとも不思議な脳のこの機能による。
こうして音楽もまた、現生人類が生き残るのに重要なツールとなった。
部族の祖先の遠い昔の記憶を、人類は「歌」=音楽として伝承してきたのだ。
音楽が再生されている間、時間が止まる。その時間の中で、それを聴く人々はタイムトリップしたかのように先祖の体験を活き活きと思い浮かべることができる。
もちろん、すべての人がメロディと歌詞を記憶できるわけではないし、それを朗々と歌えるわけでもない。
そこで、各部族には専門的な記憶の伝承者兼歌い手が生まれた。
それがシャーマンと呼ばれる人々である。
シャーマンは、部族の祭儀において、リズム=太鼓をたたく者、弦楽器や管楽器を奏でる者をバックに、踊りながらトランス状態に入って、神=遠い先祖霊をわが身に降ろし、その記憶=神謡を歌い、その意思=お告げを行う。
わが国において、シャーマンというと思い浮かぶのは卑弥呼だが、これは三国時代の『魏志倭人伝』に記載されたもので、日本の歴史書にはない。


卑弥呼を「日の巫女」と解すると、日本の神話・歴史書である『古事記』『日本書紀』で、そのイメージに一番近いのは天照大神だが、彼女が岩戸隠れした時に、その前で歌い踊ったアメノウズメにも、ぼくはシャーマンの雰囲気を感じる。
そして、アメノウズメこそ、のちの神大市比売であり、素戔嗚命との間にウカノミタマ=キツネ様を生み、旅と芸能の神、猿田彦尊と再婚することになる女性である。
だから、伏見稲荷大社に祀られているのはウカノミタマ・神大市比売・猿田彦の三柱なのだ。
ウカノミタマは、御食津(みけつ)の神=食糧神という神格から、その体から五穀を生じたオオゲツヒメ=豊受大神ともされ、また豊受の名は卑弥呼のあとを継いだとされる台与(トヨ)とも符合する。
かくして、わが国のシャーマンには、
卑弥呼=天照大神→太陽神
台与=アメノウズメ=ウカノミタマ=豊受大神=オオゲツヒメ→音楽と豊饒を司る月神
という二系統があり、それは伊勢神宮の内宮・外宮に一致するし、現在のBABYMETALにも見事に一致する。
すなわち来週の「THE SUN ALSO RISES」=SU-METALと、イギリスツアーを挟んだ再来週の「BEYOND THE MOON」=MOAMETALである。


それではまとめよう。
音楽は、ホモ・サピエンスだけが持っている能力で、ぼくらは人類共通で生まれつきの「普遍音楽文法」を脳に内蔵している。
音楽は、言語中枢とは異なる脳の部位を使うので、言語=ロジックを超え、時空をも超えたコミュニケーションのツールになる。いわば日常性の解毒剤である。
BABYMETALの音楽は日本でも世界でも最も歌詞の比重が少ないので、がんじがらめに日常に縛られた人々には効果てきめんである。BABYMETALは音楽的感性の試金石でもある。
音楽のもう一つの効用として、長い歌詞でも、リズム、楽器の音やコード進行、ハーモニーによって形成される音像とともにあれば、言語記憶とは違う領域に記憶され、脳内再生できるという働きがある。いわば外部メモリである。
だから、音楽は遠い先祖の記憶を歌い踊って伝えるシャーマンや、呪術=宗教祭儀と深く結びついている。
ぼくらメイトは、ホモ・サピエンスとして、本能の赴くまま、愛すべくしてBABYMETALを愛したのだ。
SU-METALとMOAMETALは、日本のシャーマンである太陽神=天照大神と月神=豊受大神の後裔であり、なるべくして二神体制となったともいえる。
いよいよ、2019年、令和元年のBABYMETALが始動する。
その呪力をもって、闇を切り裂き、世界を照らせ、BABYMETAL!
(この項終わり)