音楽の呪術性(6) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日6月21日は、2013年、「ミュージックドラゴン」でタカ&トシと共演し、2015年には、WORLD TOUR 2015 巨大天下メタル武道会@幕張メッセが行われ、2017年には、KORN USツアー@イングルウッドThe Forumが行われた日DEATH。

 

もちろんぼくは、どちらかを選べと言われれば、独裁者に常時監視される国家は嫌だし、酒もたばこも禁止され、いい加減なカトリックなのに棄教できないから、宗教税を課せられ迫害されるであろうイスラム主義の国に暮らすのも嫌だ。

北朝鮮やイランを皮切りに核ドミノが広がり、世界が破滅する日が近づくのも嫌だし、中国が台湾に侵攻して、日本が自衛戦争に踏み切らなければならない状況に陥るのも嫌だ。

アメリカがイランと戦争するのもやっぱり嫌だな。

安倍首相がハメネイ師と会談している最中に起こったタンカー襲撃事件は、アメリカやイギリスがすぐにイラン革命防衛隊の仕業だと言ったけど、アメリカの自作自演の疑いがぬぐえないとぼくは思う。

十分な戦闘準備をしておいて挑発・誘導し、相手が先に刃を抜いたことにするのは、米墨戦争のアラモ砦、太平洋戦争の真珠湾、ベトナム戦争のトンキン湾など、アメリカの開戦前の常套手段だからだ。

イランは強い。「Global Firepower list for 2019」によれば、イランは世界14位の軍事力を持ち、イスラエルの17位より上位にランクされている。中東ではエジプトの12位に続き、25位のサウジアラビアを大きく引き離す。ちなみに1位はもちろんアメリカで、2位はロシア。中国は3位、インドが4位、日本は核兵器を持たない国で最高の6位となっている。

もちろん、ワールドカップと同じで実際の戦闘ではどうなるかはわからない。

だがここでイランが暴発してアメリカの軍事拠点を攻撃すれば、アメリカはすでに展開している空母打撃群で、一瞬にしてイランの核施設や軍事拠点、石油関連施設を叩くだろう。

アメリカは紅海側のルートを持っているから一向にかまわないから、イランが報復としてホルムズ海峡を封鎖することは考えにくいが、日本は困る。すでにそうなりつつあるが、石油価格が高騰すればイランと敵対するサウジなどの湾岸産油国は喜ぶし、イランを叩けばイランを不倶戴天の敵と考えているイスラエルも喜ぶ。

日本はホルムズ海峡が使えなければ、アメリカから石油やシェールガスを買わなければならないことになる。それで安倍首相との関係上、表立って対立できない日本の対米黒字も解消できる。

イランから石油を輸入している中国も困る。ロシア-満州のガスパイプラインはまだ完成していないので、中国は貿易戦争のみならず、少なくとも12月までアメリカにエネルギーの首根っこをつかまれる形になるし、上海機構の準加盟国であるイランが、作戦終了後、アメリカ寄りの政権になれば「一帯一路」も危うくなる。

北朝鮮がイランに核技術を売るビジネスが不可能になる代わりに、アメリカの軍事産業は潤う。

戦時大統領となれば、トランプが再選される確率が高くもなる。

ちょっと考えただけでも、今アメリカがイランと開戦すれば、一石数鳥の「メリット」がある。誰が一番得をするかと考えれば、アメリカが「自作自演」したくなる誘惑は多いのだ。

その意味で、仲介役を買って出た安倍首相が、欧米諸国のいう「イランの仕業」説をすぐに首肯せず、アメリカに証拠提示を求めているのは正しいと思う。

もし、それも茶番で、安倍首相がトランプ大統領とゴルフをしながらそこまで打ち合わせ済みだとすれば、何をかいわんやである。畢竟、アベはトランプのポチということになる。

だが、こういう陰謀めいたシナリオを思い描いてしまうのもロジックの産物に過ぎない。

頭でっかちのロジックという奴は、世の中がすべて因果関係や損得で動いていると思い込むが、それはまったく正しくない。人間の歴史はA.I.将棋ではないのだ。

香港の学生や市民が200万人も立ち上がったのは、自分や家族が習近平政権=香港市当局によってこうむるかもしれない生命の危険を顧みず、素直に「嫌だ」という感情に従ったからだと思う。

とりあえず逃亡犯条例制定の延期を勝ち取ったのは本当にすごいことだ。

月曜日の新聞で狭い街路を市民が埋め尽くす画像を見たときは鳥肌が立ったし、SU-METALのちょうど1歳上(1996年12月3日生まれ)の“女神”こと香港衆志副事務局長の周庭(Agnes Chow Ting)氏のインタビューは何度も見た。

中国本土の民衆が立ち上がれないでいるのは、世界中で流れている香港の映像さえ見せない情報統制の中で、「自分の生活が第一」(かつて存在したどっかの政党のスローガンみたいだが)というロジックが、「中国の夢」というロジックに絡めとられているからだ。

いや、「自由」というロジックよりも「生活第一」という感情の方が強いためかもしれない。であるならば、その感情のままに人生を送ればいい。ウイグル人が何十万人虐殺されていても、自分は幸福だと思える限り。

冷徹なロジックは、人生においておおむね有効である。

大きな組織の中で色んなことを我慢して生活の安定を図るとか、将来設計を綿密にやってコツコツため込んで資産ポートフォリオを形成するとか。

ぼくの人生は行き当たりばったりで、ここのところが決定的にダメだったわけだが、かといって感情をすべて捨ててクールに生きる人生の方がよかったかというと、そうは思わない。ぼくの見た景色、出会った人々、手に入れたものの恵みを考えれば、後悔しても始まらない。

人間は、ロジックと同時に、感情も大切にすべきなのだ。

だから言語中枢=ロジックで動く日常に対する解毒剤としての音楽は、人間が長い人生を歩むとき、さまざまな局面で必要なものだといえよう。

そして、BABYMETALは、現代日本に生まれ合わせたぼくらが、生で味わえる呪術、日常性を解体する音楽そのものなのだ。

そもそも日本人にとって1970年代の洋楽HR/HMは、英語の歌詞がわかって好きになるものではなかった。歌詞の意味は分からなくても、ドラムスが刻むリズムやベースのうねりやディストーションのかかったギターの咆哮に魅せられたから好きになったのだ。

イギリス人であるピーター・バラカンがヘヴィメタルをキライだというのは、高速道路での疾走だの魔女による火事だの聖なる館だのの歌詞を大音量で演奏するのが、幼稚で物騒でくだらないコケオドシだと思ったからだろう。それならわからないでもないのだ。

だが、音楽は言語中枢で「理解」するものではない。

ビートルズやデルタ・ブルースには「思想」があって、ジャニス・ジョプリンやレッド・ツェッペリンやT・レックスやNWOBHMの演奏にはないと思い込むのは、音楽を言語中枢だけで考えているからだ。

ビートルズは「歌」として優れているだけでなく、クランチ気味のエピフォン・カジノやグレッチ6128で刻まれるリフや、独特のコード進行、さらにジョンとポールの絶対に外れないピッチとシグネチャーボイスのマッチングによるハーモニーが豊かな感情を伝えてくるところが、英語圏だけでなく世界中にファンが広がり、音楽革命が起こった理由だ。もちろん日本人にもビートルズの影響を受けたミュージシャンは多い。日本人が英語の歌詞を隅々まで理解できるわけがない。そんなことにも思い至らないのか。

マディ・ウォーターズがスゴイのは、ミシシッピ・デルタ出身の泥水にまみれた貧しい黒人の「魂の叫び」なんていう抽象的なものではなく、彼がギターやハーモニカを演奏し歌うときの、いい加減とも思えるリズム感やピッチ感からくる「間」や「ノリ」、譜面では表せず、真似することもできないナチュラルブルーノートにある。そこには因果関係で説明できるロジカルな理由なんてないのだ。

バラカンはジャニス・ジョプリンの「声」が嫌いだと言っているが、同じようにかすれた声のマディ・ウォーターズ好きなのはどう説明するのか。実のところ、バラカンがジャニス嫌いなのは、彼女が白人の中産階級出身だからだ。音楽なんて関係ないのだ。

レッド・ツェッペリンやT・レックスやデヴィッド・ボウイやNWOBHMは、すべて商業主義だからダメ。ビートルズの再来といわれたデュラン・デュランもアイドルだからダメ。

要するに頭でっかちで、音楽を「虐げられた者の反体制思想の表現」としか考えていないのだ。

2016年にBABYMETALを「まがい物」「世も末」と見下したのは、バラカンが言語中枢を介さない音楽的感性に乏しいという何よりの証拠ではないか。

(つづく)