全米1位になる日(6) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月8日は、2016年、ドイツ・シュトゥットガルト公演@Longhornが行われた日DEATH。

2018年11月10日付で、ビルボード200の日本人最高位である3位になった日本人Jojiの音楽性は、ウィキペディアにはR&Bとトリップホップの中間と書いてあるが、いまいちピンとこない。ぼくなりの理解だと、スラップスティックでシュールな松本人志的世界観を、ヒップホップ/ダブ/エレクトロニカ/エモ/プログレのミクスチャーからなる音楽で表現したものである。ヘヴィメタルの要素はほとんどない。
1992年大阪で生まれ、神戸東灘区のカナディアンスクールを卒業後、18歳で渡米。現在26歳。本名George Miller、別名Pink GuyまたはFrank Filthy。

2017年まで、彼はピンクの全身タイツを着て、アメリカ人の良識からすれば“Crazy”なコント動画をYouTubeにアップしていた。


「A WAR IS COMING...」(2016/07/21)
https://www.youtube.com/watch?v=S6bQibFNs2E&list=RD6pbKB2TL3Jk&index=7
日本人にとっては耳をふさぎたくなるコントだが、これが全世界1659万回も視聴されている。
「STFU」(2016/09/23 )
https://www.youtube.com/watch?v=OLpeX4RRo28
牧歌的なメロディなのに、卑猥語だらけのこの歌は現在なんと5112万回も再生されている。下ネタはみんな好きなのだ。
「Fried Noodles (Getter Remix)」(2017/05/24)
https://www.youtube.com/watch?v=E1iwrfgNOUU&list=RDK3Qzzggn--s&index=32
曼荼羅とラップの融合。よりシュールで松本人志的なこちらは512万回。
こういうことをやっていた男が、2018年11月にはビルボード200の全米3位になったのだ。
英語は完全にネイティヴであり、日本人らしさといえば、たむらけんじと松本人志を合わせて二で割ったような顔付きや体形くらい。角度によっては超イケメンである。

全身タイツはとんねるずの「もじもじ君」、コントの切り口や顔芸は1990年代後半『一人ごっつ』『松ごっつ』期の松本人志、体技はMr.ビーン、江頭2:50の影響を思わせるが、センシティブ(繊細)でデプレッシヴ(抑うつ的)、かつ下ネタ満載の歌詞(もちろん英語)づくりの才能、映像や音楽のディレクションに関してもセンスを感じさせる。楽器はギター、ウクレレを演奏する。多芸多才の人である。
アメリカ人にとってはマイノリティの外国人=日本人であるというハンディキャップを、YouTubeのCrazy動画で人気を集めることで影響力に変え、実はクールな音楽表現者だったというステップアップのしかたは、非常にクレバーで戦略的に見える。
『Ballads1』のリリースに至るまで、JojiのYouTubeオフィシャルMVは次のような順番でアップされている。
※印は収録曲、視聴回数は2019年6月6日時点のもの。
「i don't wanna waste my time」(2017/04/26)は1932万回。
「rain on me」(2017/07/19)は1368万回
「will he」(2017/10/18)は4229万回。仮装パーティのあと、頭に矢が刺さっている恋人を置き去りにして、Jojiは血まみれで湯舟に浸かる。
「Demons」(2017/12/06)は1910万回。
「Window」(2018/01/24)は4341万回
「WORLD$TAR MONEY」(2018/04/22)は1320万回。
※06「Yeah Right」(2018/05/08)は3888万回
「Peach Jam」(Joji & BlocBoy JB)(2018/07/17)は505万回。
「Head in the Clouds」(2018/07/25)は870万回。
※02「SLOW DANCING IN THE DARK」(2018/09/12)は、このアルバムのリードシングル曲で、6907万回再生されている。日本人とオーストラリア人の“ハーフ”であるJojiはケンタウロス(半人半馬)を演じており、白いタキシードシャツの背中には矢が刺さっている。白い床にJojiが倒れ、血が丸く広がるラストシーンは“日の丸”を思わせる。


https://www.youtube.com/watch?v=K3Qzzggn--s
※05「CAN'T GET OVER YOU ft. Clams Casino」(2018/10/02)は2484万回。
※03「Test Drive」(2018/10/16)は2154万回。
※04「Wanted U」(2018/10/29)は391万回。
ここまでがストーリー性のあるPVだが、以下はアルバムジャケット写真の静止画(正確にはJojiの目が赤く光る)のオフィシャルオーディオとして無料でアップされている。
※01「ATTENTION」(2018/10/25)452万回。
※07「WHY AM I STILL IN LA (ft. Shlohmo & D33J)」(2018/10/25)は177万回。
※08「NO FUN」(2018/10/25)は412万回。
※09「COME THRU」(2018/10/25)は350万回。
※10「R.I.P.」(2018/10/25)は272万回
※11「XNXX」(2018/10/25)は261万回。
※12「I'LL SEE YOU IN 40」(2018/10/25)は244万回。
このように、『Ballads 1』の収録曲は、12曲全部がオフィシャルMVまたはオフィシャルオーディオとしてアップされており、YouTube視聴回数の合計は現在1億7992万回に達している。
リリースからすでに半年以上経っているので、2018年11月時点でこの1/3だったとしても約6000万回。これだけで4万ユニットになる。
すべての曲が、YouTubeで無料視聴できてしまうなら、CDはおろか、ダウンロードや有料ストリーミングの売り上げも期待できないのではないか。
だが、Jojiはそれでいいと考えているのだと思う。
昨年後半、Jojiはヨーロッパツアーを行っており、今年1月には所属する88risingのZepp Tokyo公演も予定されていたが、多忙になったJojiの来日はキャンセルになった。現在は長期にわたる全米ツアーを行っており、8月にはイギリスのReadingフェスにも出演する。確実な収入が見込めるのはライブなのだ。
かといって、Jojiが意識的に「ライブに動員するビジネスモデル」としてビルボード全米3位を狙ったというのは、あまりにもうがった見方だろう。
ビルボード社が、CD売上や有料ダウンロード数だけでなく、ストリーミングやYouTube視聴回数をランキングに反映させているのは、音楽を「所有」するだけでなく、「接触」した数も入れなければ「ヒット」=人気があるという実態を表さないという考えによるものだと聞く。
Jojiは、多くのファンに自分の表現を伝えたいという熱情から、動画やオフィシャルオーディオをアップしているのだろう。それが多くのアメリカ人に受け入れられ、「接触」が増えた結果、全米3位にランキングされた。
これはBABYMETALも学ぶべきことなのではないだろうか。
(つづく)