全米1位になる日(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月3日は、2015年、スイス・チューリヒ公演@X-TRAが行われ、2016年には、ROCK IN VIENNA@オーストリア・ウイーンDonauinselに出演し、2017年には、フィルムフェスツアー札幌@ユナイテッドシネマ札幌がスタートした日DEATH。

3rdアルバムが年内にリリースされるという発表から丸2カ月が過ぎたが、その内容やリリース時期の詳細はいまだ不明である。


『Metal Resistance』の場合は、前年8月29日のReading Festivalのステージ上で、4月2日のWembley Arena公演が発表され、12月13日のFinal Chapter of Trilogy@横アリの2日目に2ndアルバムのリリース&ワールドツアー2016終了後の東京ドーム公演が発表され、場内が感動に包まれた。
ニューアルバムリリースまでの「リードタイム」は3ヶ月と2週間で、年明けの2月25日に、YouTube公式からトレイラー(告知映像)が発信された。
ニューアルバムのリリースまでには、全楽曲の収録・編集、パッケージを含めた生産、デリバリー、告知などいろいろなセクションが連動して動くので、リリース決定発表がなされたときには、オンタイムで事が進んでいるということだろう。
今回は発表が4月2日だから、「リードタイム」が同じなら、7月下旬にはリリースされる可能性がある。
ただし、今年は6月28-29日横アリ、6月30日グラストンベリー、7月2日ロンドンAcademy Brixton、7月6-7日名古屋とライブが続き、1ヶ月空いて8月4日台北超犀利趴、8月16-17日サマソニ、9月4日~10月16日はアメリカ横断ツアーとなる。
このスケジュールのどこでリリースされるのだろう。
まず、お尻だが、アメリカ横断ツアーのライブチケットには、ニューアルバムの引換券が含まれているので、早ければ9月4日のツアースタート時、遅くとも10月11日のThe Forumまでには、リリースされている可能性が高い。
7月2日のロンドンはどうか。
確かに2ndアルバムは、リリース直後の初披露公演がUK・Wembley Arenaだった。
だが「リードタイム」から考えて、7月2日はいかにも早すぎる。現在もう1か月後に迫っているから、公式トレイラーが公開されていなくてはならない。
Academy Brixtonでは2014年11月、Back to the US/UKツアーで「Road of Resistance」が初披露された。グラストンベリーになるかもしれないが、今回はニューアルバムリリース直後の公演はアメリカに譲り、UKではリードシングル曲の初披露があると考えた方がいいのではないか。
では日本人はどうなる。
今年のライブは、2016年以来の慣例を破って、日本ツアーからスタートする。
2017年のLegend-S-の場所や日付が日替わりの「謎」としてファンに示されたように、6月28日からのライブで、ニューアルバムのタイトル、リリース日、内容が小出しにされるのではないか。それが初めてわかるのが日本人の“特権”というわけだ。
日本のライブでアルバムの概要が明らかになり、イギリスでリードシングルが初披露され、8月のフェスではその曲がフィニッシュになり、アメリカツアーでいよいよニューアルバムがヴェールを脱ぐ。そういう展開ではないか。
アメリカツアーの最中は、日本不在なわけだが、その間は2ndアルバム同様、雑誌、ムック、動画などでインタビューや評論がガンガン行われるから、むしろ露出や存在感がアップする。
しかも、当然、ビルボード200初登場ランキングも発表されるわけで、これがもし坂本九の『SUKIYAKI and other Japanese Hits』の14位(1963年)を抜くようなら、大騒ぎになる。
それで、年末に現在未発表の国内凱旋ライブがあって…。
夢は膨らむばかりである。
しかし、テレビはもちろん、音楽雑誌にさえ、先月の『PMC』が2年ぶりというくらい、ほとんど出なくなってしまった2019年6月現在のBABYMETALの知名度や話題性は、2016年と比べれば、明らかに低下している。
2014年のBABYMETAL海外進出は「社会現象」的に受け取られ、その延長で2016年のビルボード200のトップ40入りが報じられ、東京ドーム2Days11万人を動員した。
しかし2017年12月のYUIMETAL欠場から上げ潮ムードは後退し、2018年は藤岡幹大神の急逝、YUIMETAL脱退と暗い話題が続いた。
普通の中高生にとっては、BABYMETALという名前は聞いたことがあるが、欅坂46や日向坂46(旧ひらがなけやき)よりも“マイナー”な存在だろう。
だが、何がメジャーで何がマイナーなのかという「線引き」は、他ならぬBABYMETAL自身が戦略的に無効化したものである。
2016年9月、BABYMETALは東京ドームに11万人を動員したが、シングル・チャートで1位になるような大ヒット曲はない。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」はオリコン初週6位だし、「メギツネ」は7位である。それ以降フィジカルのシングルCDは発売されていない。
アルバム『Metal Resistance』は初週約13万枚でオリコン、ビルボードジャパンとも2位であり、米ビルボード200で39位というのは、「坂本九以来53年ぶり」といえばなんとなくスゴそうだが、一般人にとっては正直実感できるものではなかった。
毎日テレビに出ているAKB48やももクロに比べて、「テレビにはあまり出ないけど海外で大活躍」というBABYMETALは、「メジャーではない」ことに価値があるという不思議な立ち位置だった。時代遅れの「メタル」をやる少女たちという話題性や、インターネットで海外とのボーダーをなくし、生歌・生演奏のライブで観客を沸かせるということも、テレビ=オールドメディアとタイアップした従来の「アイドル」やアーティストとは一線を画すものと受け取られた。
つまり、BABYMETALのバリューや人気は「従来のメジャーではない」ところに依拠していたのだ。
BABYMETALへのインタビューも行っている音楽ライター柴邦典は、『ヒットの崩壊』(2016年、講談社現代新書)で、1990年代のヒット曲づくりの方程式が2000年代に崩壊し、2010年代になってライブで収益を上げる構造へと転換した事情を詳しく説明している。
同書P.25~27のデータによると、
①    CDの売り上げ(日本レコード協会)は、2000年から2015年の間に半減した。
②    ライブの売上高(ぴあ総研調べ)は、2010年からの5年間で2倍以上になった。
③    CDとライブを合計した売上高(JASRAC)は、2000年から2015年まで、ほぼ横ばいないし微増している。
つまり、若年人口の減少にもかかわらず、現在の音楽市場は「斜陽産業」ではなく、構造が変わっただけで、ちゃんと収益を保っているということである。
しかも、現在活躍しているのは、テレビのドラマなどとタイアップして大ヒットを記録したあとすぐ消える「一発屋」ではなく、生演奏のライブを中心として活動し、ファンを確保している「息の長いアーティスト」である。人間椅子や怒髪天のように、若い頃はバンドを続けるためにアルバイトで生計を立てていたが、40代以降になってライブ活動でちゃんと生活できるようになってきた実力派ロックバンドも多い。これは健全なことではないか。
トレンディドラマの主題歌になって、カラオケで歌う参考にシングルCDがバカ売れするが、ライブには客が集まらないという1990年代のバブリーな「ヒットの方程式」の方が異常だったのではないか。
ぼくの読みに誤解がなければ、柴邦典はそのように現在を評価している。
同書では、BABYMETALについても言及している。(P.186~)
「BABYMETALってカレーうどんみたいな発想なんですよ。誰があれを発明したのかわかんないですけど、カレーとうどんっていう全く別のものを合わせたら意外に美味しかった。ああいう偶然の産物みたいな、いい意味での日本文化のストレンジ感があると思う」
これは『ミュージック・マガジン』2014年3月号で、KOBAMETALにインタビューしたときの引用だが、この「カレーうどん」という言葉や、「ギミチョコ!!」作曲者の上田剛士の「ブロックを組み合わせるような作業」という言葉を使って、柴邦典はBABYMETALの音楽を、メタルの枠でとらえるのではなく、世界に発信しうる日本発の「過圧縮ポップ」だと定義づけている。
それはともかく、自称BABYMETALの味方であるぼくは、今年リリースされる3rdアルバムがいっぱい売れて、これまで以上に日本中、世界中の人々に知られ、愛され、長く活動できる基盤が拡大することを希望するものである。
では、どうすればニューアルバムが「売れる」のだろうか。米ビルボード200で39位だった前作『Metal Resistance』や、『SUKIYAKI and other Japanese Hits』を上回ることは可能なのだろうか。
ぼくの考えでは、それは十分に可能であり、そのために全米ツアーが組まれたのだと思う。
今年1月、米ビルボード200で、黒人ラッパーA Boogie Wit Da Hoodieのセカンドアルバム「Hoodie SZN」がナンバーワンとなった。
しかし、衝撃的だったのは、ニールセンが発表したこのアルバムの実売部数がたったの823枚だったということだ。一方、ストリーミング再生数は発売1週間で8300万回。
ビルボードは、2014年からストリーミング再生数1500回またはアルバム収録曲のデジタル・セールス10曲をアルバム1枚のセールスと換算するようになった。
このため、ストリーミング8300万回は約5万5300枚(ユニット)とカウントされ、これにエアプレイ(ラジオのリクエスト)を加えた合算値が5万8000ユニットに達したので、1位になったわけである。ふむふむ。
いや、ちょっと待て。
アルバム換算5万8000枚売れれば、全米1位?
「ギミチョコ」が5年かけてやっと1億視聴になったのだから、1週間で8300万回のストリーミングは驚異的な数字だ。
だが現行のルールでは、ストリーミング1500回でアルバム1枚換算。
だったらフィジカルCDアルバムを5万枚買わせることの方が、簡単じゃね?
『Metal Resistance』の日本盤は初週13万枚売れたんですぜ、旦那。
ここで本稿8文目をPlay Backしてみましょう。
「アメリカ横断ツアーのライブチケットには、ニューアルバムの引換券が含まれているので、早ければ9月4日のツアースタート時、遅くとも10月11日のThe Forumまでには、リリースされている可能性が高い。」


ハイ。答えは出ているんじゃないでしょうか。
(つづく)