ヘヴィメタルへの道(18) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日5月11日は、2016年米・デトロイト公演@The Filmoreが行われ、2018年には、テキサス州ダラス公演@House of Blues Dallasが行われた日DEATH。

<2000年>
いよいよミレニアムイヤーを迎えた。この年始まったアニメ35作、特撮3作合計38作中、メタルと思えたのは以下のとおり。
『モンスターファーム〜伝説への道〜』
https://www.youtube.com/watch?v=7E3E10OD9gI
第一作の主題歌「風のそよぐ場所」は小松未歩のフォークロック的曲調だったが、第二作は宇都宮隆によるメタル主題歌「Flush」になった。
『銀装騎攻オーディアン』
https://www.youtube.com/watch?v=aIiQ_2S_0TM
シンセサイザーのホルン音をメインメロディにしたメタル。By V系バンドOZWORLD。
『幻想魔伝 最遊記』
https://www.youtube.com/watch?v=_wa4b2I5cVU
8ビート全拍で小室臭いが、ツインギターのリフや裏拍のドラムスはメタル。
『トランスフォーマー カーロボット』
https://www.youtube.com/watch?v=ykiwE4ITbaw
シンセサイザーメインのアレンジだが、これはメロスピ。
『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』


48話まではV系バンドCLOUDの「Voice」
https://www.youtube.com/watch?v=zaIZDFE_JYk ;
48話以降は、奥井雅美の「Shuffle」。
https://www.youtube.com/watch?v=Kf-A3xLpen8
『メダロット魂』
https://www.youtube.com/watch?v=mB24kdinVPk
第一作はブラス付き偽8ビートだったが、第二作はメタル色が強い。歌は中村裕介
『闇の末裔』
https://www.youtube.com/watch?v=VU3RkCIOd_Q
主題歌の「EDEN」は、V系バンドTO DESTINATIONの演奏・歌。ラルクアンシェルに似ていることがネットで話題になっていた。
『ヴァンドレッド』
https://www.youtube.com/watch?v=SbzFK3D_QvE
打ち込み16ビート的なリズムなのだが、イントロ、ブリッジ、間奏はメタルギター。
『GEAR戦士電童』
https://www.youtube.com/watch?v=Lw11UDZbsVY
シンセストリングスが入っているが、アレンジ、リズムは紛れもなくメタルで、歌は三重野瞳 with 影山ヒロノブ。
『機巧奇傳ヒヲウ戦記』
https://www.youtube.com/watch?v=loGaq6VkDMQ
ジャズ的4ビートだが、ヘヴィなギターリフで組み立てられたミクスチャーメタル。
特撮『仮面ライダークウガ』
https://www.youtube.com/watch?v=legudKyvQOk
メタルである。歌は田中昌之。
特撮『未来戦隊タイムレンジャー』
https://www.youtube.com/watch?v=SXQfAcmlh6w
後半ブラスと女声コーラスが入ってくるが、メタルである。
特撮『鉄甲機ミカヅキ』
https://www.youtube.com/watch?v=U3Dz7nq-tiI
月1回の放送で、映画並みの10億円の制作費をかけた大作。主題歌「Crescent Moon」は作曲Hatake(シャランQ)、作詞・歌Don Dokken。あのDokkenですぜ。


『マイアミ☆ガンズ』(深夜)
https://www.youtube.com/watch?v=uLKLGVc5wdI
シティポップ風に始まるが、V系バンドLastierの演奏・歌。
『はじめの一歩』(深夜)
1話から25話の「under star」
https://www.youtube.com/watch?v=qSgPy3R_Pfs
26話~52話の「Inner Light」
https://www.youtube.com/watch?v=N0pYnfzjxCQ
とも神戸出身のメタルバンドShocking Lemonによる。
『Sci-Fi HARRY』(深夜)
https://www.youtube.com/watch?v=PDnLQjwZ1AU
V系バンドJanne Da Arc。
なんと16番組(42.1%)18曲がメタル主題歌だった。

しかもこのうち深夜枠はわずか3番組。小室サウンドの「支配」は1999年だけで、メタル主題歌が子どもたちのよく見る時間帯でも主流となった。
その他にも、『NieA_7』の主題歌SIONの「ここまでおいで」は、メタルではないがロック魂にあふれ、心に沁みる名曲だと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=B6zM_jcnkWA
また、『サクラ大戦TV』の「檄!帝国華撃団」は、ブラス+ストリングス+8ビートというかつてのヒーロー物の「定番」を踏襲し、そこに和楽器+ディストーションギターのリフを絡めている。舞台となるのは戦前の日本であり、帝国歌劇団のメンバーでありながら、帝国軍人とともに魔物と戦う少女たちというアナクロな世界観をわざと表現している。
前年あれほど隆盛を極めた小室サウンドの影響を受けていると思える主題歌は、『ゲートキーパーズ』(ディストーションギターは遠くで響くが、まぎれもなく小室サウンド)、『コレクター・ユイ(第2期)』(16ビートの小室メロディだが、よりトランス色が強い)、『真・女神転生デビチル』(モロ小室)、『無敵王トライゼノン』林原めぐみの歌で、リズムは小室よりフュージョン寄り)、『犬夜叉』「Change the World」(小室サウンド+V6)の5曲(13.2%)にとどまった。


メインストリームの音楽市場では、1998年~1999年、主要タレントの契約満了や活動休止、華原朋美との恋愛スキャンダルなどによって、小室ブームは縮退していた。
だが、8ビートのメタルが元気だったのはアニメ・特撮ドラマ主題歌の世界だけだった。
1998年ごろから、宇多田ヒカル、SPEED、DA PUMP、浜崎あゆみ、MISIA、モーニング娘。ら、非小室系の16ビート楽曲を持つアーティストが音楽市場を席巻していた。小室ブームは、16ビートの音楽が日本人の耳に定着する橋渡し的役割を果たしたのだ。
前述したように、16ビートはもともとR&B、ディスコ、ソウルミュージックにルーツがある。

安室奈美恵やSPEEDがダンススクール(沖縄アクターズスクール)出身であり、多人数・卒業ありの新ジャンル「アイドル」を生み出したモーニング娘。の「LOVE MACHINE」がディスコ調なのは、ちゃんと理由があるのだ。
モー娘。以降の「アイドル」とは16ビート音楽に乗って、集団ダンスをやるのが標準形になった。
1970年代~1980年代までのアイドルの楽曲は基本的に8ビートだった。
それがやがて偽8ビート裏拍や全拍打ちになり、モー娘。以降は16ビートが主流になった。
「♩(休)オイ!(休)オイ!」ないし、「♪(ウリャ)ホイ!(ウリャ)ホイ!」の「合いの手」もまた、全拍打ちだからできるのだ。途中「♪PPPF(パン・パパン・フー)」のところだけ8ビートに戻るのは、70-80年代アイドル文化の名残だ。
ここから「アイドル」は全盛期=戦国時代に突入していく。
ところが2010年。ダンスをする「アイドル」なのに、主に8ビートのメタルをやるBABYMETALが現れた。
これがどれほど革命的なことなのかは、本稿で考察してきたように、8ビートのロック/メタルとダンサブルな16ビートが、長年にわたってアニメ・特撮ドラマ主題歌の世界で、「カッコよさ」を巡る戦いを繰り広げてきたことからもわかるだろう。
話を2000年の主題歌に戻すと、数年前から目立っていたフルオーケストラやエスニックな楽器・コーラスを使う主題歌が増え、『女神候補生』(NHKBS2途中打ち切り)、『星界の戦旗』の2つは、大河ドラマかスターウォーズ風のフルオケだし、日本カナダ合作の『サイバーシックス』は、全編英語でフルオケ+女声ソロ、『アルジェントソーマ』(深夜)も弦楽四重奏+フォーク調+女声ソロ、『妖しのセレス』はピアノバラードだった。
かと思えば、『風まかせ月影蘭』の主題歌は三沢あけみの演歌。
不思議だったのは、『ストレンジドーン』(WOWOW/2000年7月11日~9月26日)の主題歌「空へ」(作詞松井五郎/作曲・編曲和田薫/歌河井英里)
https://www.youtube.com/watch?v=n3Dpd8X5w9s
と、『BRIGADOON まりんとメラン』(WOWOW/2000年7月21日~2001年2月9日)の主題歌「風の碧、海の翠」(作詞米たにヨシトモ/作曲吉野裕司/編曲Pralltriller/歌Ikuko)
https://www.youtube.com/watch?v=5HQsAYeSlSY
は、原作者も設定も楽曲の作者も違い、かつ同時期に同局で放映されたのに、エスニックな女声コーラスとフォルクローレの曲調が瓜二つである。なぜこんなことが起こったのか。誰か知ってる人がいたら教えてください。
『人造人間キカイダーTHE ANIMATION』のテーマ曲「Theme of Gemini」は見岳章作曲だが、フランスのニューエイジバンドArt of Noise風。ちなみに、まだ「紙芝居」がなかった2012年4月の第2回アイドル横丁祭りにBABYMETALが出演した際、オープニングに使ったのがArt of Noiseである。
『ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom』(深夜)の主題歌「夕立ち」はスガシカオによるR&B色が濃いシティポップ。
16ビートの「偽8ビート裏拍」のアイドルソング風(『HAND MAID メイ』『六門天外モンコレナイト』)とか、サンバ(『おジャ魔女どれみ♯』)とか、ゲーム音楽風(『ドキドキ♡伝説 魔法陣グルグル』)、打ち込みユーロビート(『グラビテーション』)などもあったが、総じて、メタル/V系でなければ、個性の突出した主題歌というのが、2000年の特徴だった。

(つづく)