ヘヴィメタルへの道(17) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日5月10日は、2013年、DEATH MATCH TOUR五月革命@大阪BIG CATが行われ、2016年には、米・シルバースプリングス公演@ワシントンDC The Filmoreが行われ、2018年には、テキサス州オースティン公演@ACL Live at the Moody Theaterが行われ、2019年には配信シングル「Elevator Girl」がリリースされた日DEATH。

<1999年>
この年に始まったアニメ47作・特撮1作合計48番組中、真正メタルは以下のとおり。
『課長王子』
https://www.youtube.com/watch?v=uVqLmrd3Tw4


ギタリストになる夢破れたサラリーマンが、宇宙戦争の主人公になるという設定。
主題歌は、シンリジィ~ホワイトスネイクのジョン・サイクス(G)作詞作曲の「CAUTIONARY WARNING」。これが、MOA誕生直後の1999年7月8日からWOWOWのゴールデン枠で放送されていたのだ。
『デジモンアドベンチャー』
https://www.youtube.com/watch?v=1ExpzJn2D4Q
メタル・ロックンロールである。ポケモンに飽き足らず、デジモンを見ていた子どもたちは、メタルに親和性が高いのかも。
『∀ガンダム』
https://www.youtube.com/watch?v=tgG1kosg7lU
エスニックな口琴とソプラノのイントロに続く音はメタル。歌は西城秀樹。
『人形草紙あやつり左近』
https://www.youtube.com/watch?v=b82SqfgDnFs
V系バンドHUMMING BIRDによる「光なき夜を行け」。これはメタル。
『HUNTER×HUNTER』
https://www.youtube.com/watch?v=8E2pZ3ftE2I
「Departure!」。歌は小野正利。これは元気になるポジティブ・メタル。
『モンキーマジック』
https://www.youtube.com/watch?v=X0v4XBfgDNQ
これはV系バンドRaphaelのデビューアルバムに収録された「Holy Mission」。
2ビートのメロスピDEATH。ちょっと映像にはそぐわないのだが。
『Blue Gender』(深夜)
https://www.youtube.com/watch?v=OTZJWlZepPg
桑島法子の歌による正統派パワーメタル。
真正メタルは以上の7曲(14.5%)で、うち深夜は1曲。
『A.D.POLICE』(深夜)はメタルに近いが、この音像はハードコア・パンクだろう。
『地球防衛企業ダイ・ガード』もシンプルな8ビートだが、これもパンクの範疇。
『メダロット』も戦国SEからブラス付きロックンロールで、これもメタルではない。
『ゾイド-ZOIDS-』の主題歌「Wild Flowers」by Ramarは、アコースティックのストロークからロックになるが、メタルの音ではない。
『おジャ魔女どれみ』は、もはや懐かしい「偽8ビート裏拍」で、ブラス、ストリングスも入るポップな曲調。
『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』は8ビート+ディストーションギター+ストリングスのビーイングサウンド。
『D4プリンセス』のED「ドリルでルンルン クルルンルン」は、メタルギターの咆哮で始まるが、ブラスが入り、歌はアイドルソング。
特撮『救急戦隊ゴーゴー・ファイブ』は、バックの演奏はメタルだが、やはり古典的なブラス、ストリングス入り。
この年に始まり、大ヒットし誰でも知っている『ONE PIECE』の初代OP「We are!」
https://www.youtube.com/watch?v=nUyRwrFhgNg
は8ビートに間違いなく、とても明るい。だが、アレンジはブラス、ストリングス入り。やっぱりディストーションギターが咆哮しないとメタルとは思えない。
1990年代中盤から3割程度を占めていたアニメ、特撮の主題歌からメタルが減ることは、子どもたちの耳に、心に、メタルのカッコよさが伝わらなくなるということだ。
どうしてこの年、真正メタルが少なくなったのか。
テクノ/ユーロビート/トランスの影響を受けたシンセサイザー主体の小室サウンドは、ダンサブルな16ビートなのに疾走感がある。魂を揺さぶられるような激しいメタルサウンドより、都会的で洗練された感じもある。
典型的なのは、カーレースアニメ『頭文字D Second Stage』(深夜)。
https://www.youtube.com/watch?v=LxcbqKBworY


前年の第1作に引き続き、2作目はtrfかと思うほど典型的な小室サウンドになった。
『マッハGoGoGo!』以来、カーアクションのアニメ主題歌は、ロック~メタル寄りだった。1997年に始まった『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』も鋼鉄兄弟(影山ヒロノブ&遠藤正明)の歌で、メタル色が強かった。ところが主人公が高校生の『頭文字D』は、疾走感はありつつもクールな感じの小室サウンドになった。
この年、以下の主題歌が小室スタイルだった。
『神風怪盗ジャンヌ』(シティポップ→転調から小室)、『パワーストーン』(ティンパニー+ブラスのフルオケ→小室)、『カードキャプターさくら』(イントロから小室)、『星方天使エンジェルリンクス』(同)、『仙界伝 封神演義』(中華っぽいテーマなのに小室)、『無限のリヴァイアス』(R&B風女声コーラス→小室風シティポップ)、『ジバクくん』(イントロから小室)、『未来少年コナンII』(同)、『ビックリマン2000』(OP1「行こう!」は「In the Navy」ソックリの松崎しげるの歌だが、COAによるOP2「戦使達の翼」は歌部分に入ると小室or TM-Revolution)、『Di Gi Charat』(イントロから小室)、『セラフィムコール』(深夜、同)。
16ビートはもともとR&B/ディスコ/ソウルミュージックから発展したもので、シンセ主体のユーロ/トランス系の小室サウンドは、その特殊例である。したがって、16ビートのリズムは、本格的にR&Bのテイストにもなるし、フュージョン~シティポップにもなり、ポップ性を際立たせれば、合いの手付きのアイドルソングにもなる。
以下は、こうしたバラエティに富んだ16ビート主題歌。
『小さな巨人ミクロマン』(16ビートだがR&B色が強く、小室っぽくはない。歌は子役時代の三浦大知)、『魔装機神サイバスター』(フルオケの壮大なイントロからディスコ調へ)、『火魅子伝』(深夜、シティポップス+ストリングス)、『エクセル・サーガ』(深夜、打ち込み+ファンキーなカッティング+女性ラップ風)、『トラブルチョコレート』(深夜、16ビートのダンスミュージック)、『モンスターファーム〜円盤石の秘密〜』(打ち込み+フォークロックby小松未歩)、『魔法使いTai!』(シティポップby尾崎亜美)、『魔術士オーフェン Revenge』(OP1はつんく♂プロデュースの7HOUSEによるフュージョンだが、OP2は太陽とシスコムーンによる16ビート・ポップ)、『鋼鉄天使くるみ』(典型的アイドルソング。合いの手、「PPPF」付き)。
小室サウンドの主題歌と、こうした16ビート主題歌を合わせると、21曲(43.8%)に達する。
その他には、ゲーム音楽そのものの『天使になるもんっ!』や、デジタル・レゲエ『サイボーグクロちゃん』、ビートルズ「Strawberry Hills」風の『コレクター・ユイ(第1期)』、フルオケの『イルドアームズ トワイライトヴェノム』、『星界の紋章』(深夜)、沖縄民謡のメロディ+ピアノ+シンセの『ベターマン』のような、音楽的に凝った主題歌もあった。
だが、これらもまた少数派であり、ミレニアムを控えて、アニメ・特撮ドラマ主題歌の世界も小室サウンド/16ビートに「制圧」されてしまったかに見えた。
(つづく)