ヘヴィメタルへの道(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月22日は、2017年、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、リトルロック(AR)Verizon Centerに出演した日DEATH。

●1965~1966年前半
1965年には、宇宙少年アニメが立て続けに始まった。
『宇宙少年ソラン』と『宇宙エース』は大好きだったが、主題歌的には、フルオーケストラ、長調の行進曲、少年少女合唱団という形式で、何ら目新しいものではなかった。
同じころ始まった『遊星少年パピイ』の主題歌は、あとで触れる『遊星仮面』と並んで、曲調、男声コーラス、ブラスの入り方など『鉄人28号』と酷似していたが、エレキギターのグリッサンド音を効果音としている点では、『スーパージェッター』の要素もあった。
一方、子ども向けギャグアニメの走りとなる『オバケのQ太郎』が8月から始まった。


いうまでもなく藤子不二雄アニメの第一号で、当時幼稚園生だったぼくらの世代にとって、文字通りオバケ級の大ヒットで、幼稚園の図画工作では、オバQがずらりと並んだ。
“キューピーちゃん”こと石川進のコミカルな歌唱と、ジャズのビッグバンドによる「♪ブンチャッ、ブンチャッ」という4ビートは、高度経済成長期の子どもたちの笑いの象徴だった。よく聴くと、時折エレキギターの「♪キュイーン」という音も入っており、コミックバンドの文法にのっとって演奏されていることがわかる。
それまで「テレビ紙芝居」と揶揄されることの多かったアニメが、初めて肯定的な評価を獲得したのが、1965年10月に始まったアニメ史上初のカラー作品である『ジャングル大帝』だった。


総額1億円を超える予算がつぎ込まれ、日本PTA全国協議会・教育者懇談会の推薦番組となり、1966年第4回テレビ記者会賞特別賞、1966年厚生省中央児童文化財部会年間優秀テレビ映画第1位、1966年厚生大臣児童福祉文化賞を受賞した。
主題歌は、のちにシンセサイザー作品でビルボード200の常連となる冨田勲によるもので、フルオーケストラに、アフリカを思わせるパーカッションを加え、男声バス(上条恒彦)の「♪アーアーアーアー」という「格調高い」もの。
一方、エンディングに流れた「レオの歌」は、エレキベースの進行音に、エレキギターのコード弾き、フルートのメロディが重なるというブルーコメッツ的な伴奏に、ハスキーな弘田三枝子の「♪ワーオワオワオワー」という歌が乗る。
格調高いフルオケは芸術的だが、子どもが口ずさめるものではない。
GS的な弘田三枝子の歌は、同じく気軽に歌えるものではないが、戦いに赴くレオの心情を表し、子どもとしては、やっぱりEDの方がカッコいいと思った。
ちなみに、1960年代の日本の特撮ヒーローやアニメには、中東やインドネシア/マレーシア(『アラーの使者』、『怪傑ハリマオ』)や、アフリカが舞台になっているもの(『狼少年ケン』『ジャングル大帝』『ジャングルクロベェ』)があって、とってもエスニックだった。
そういえば、映画『モスラ』のザ・ピーナッツ「モスラの歌」(「♪モスラーヤッ、モスラー、ドンガンカサクヤン、インドゥムー」)もインドネシア語だったし、デヴィ夫人は、1962年にスハルト・インドネシア大統領と結婚したんだっけな。
現在、小学生の日常生活にイスラム教圏やアフリカが描かれることはないが、当時の子どもの世界は、(たとえ偏見だらけだとしても)今より世界に開かれていた気がする。
1965年10月、丹波哲郎の出世作『スパイキャッチャーJ3』が始まる。これはのちの『キイハンター』(千葉真一主演)や『プレイガール』(野際陽子主演)につながる和製無国籍スパイものの走りだが、この主題歌の伴奏はモロ、ベンチャーズ風である。
メロディと歌詞は演歌調だが、「♪テケテケテケ…」からのアームダウン、キュンキュンといったギミック音やハモンドオルガンは、ベンチャーズを超えてサイケデリック・ロックの域に突入している感さえある。
同年11月に始まった子ども向けアニメ『ハッスルパンチ』の主題歌も、8ビートのロックンロールで、サビの「♪パンチパッチブー、パンチパッチブー…」は子どもたちに大流行した。
同じく12月から始まった超能力少年アニメ『オスパー』の主題歌も、ソロボーカリストは演歌調だが、伴奏はGSそのものだった。なぜか、GSサウンドの向こうにホルンやストリングスがかぶさるが、ようやく子ども向けアニメにも、フルオケ+合唱団じゃなくて、ロックバンド+ソロボーカルというのが定着してくる。
日本の作品ではないが、1966年4月から『怪鳥人間バットマン』が始まる。そう、あの「バットマン」のオリジナルドラマバージョンである。そのテーマはあのおなじみの「♪ダダダダダダダダダダダダダダダダ…Batman!」である。 
これはG→C→G→D→C→Gという3コード進行であり、文字通りのロックンロールである。ビックリするのは、これがBPM200近いスピードで演奏されていることである。ハリウッド映画版の「Batman」はBPM152くらいである
そしてこのR&Bな雰囲気を引き継いだのが、円谷プロ特撮シリーズ第一作『ウルトラQ
のテーマ』である。
深いトレモロをかけたエレキギターによるEm(ミソファ#ソ・ミソファ#ソ・ミソファ#ソ・ミソファ#ソ)Edim(ミラ#)B7(シレ#)というあのリフは、それまでの特撮ドラマにはなかった「不気味」な感じを表現していた。演奏そのものは、フルートやノコギリの「ビヨヨヨーン」という効果音が入るジャズのビッグバンドなのであまり感じないが、重低音ディストーションにすれば「BABYMETAL DEATH」にも通じるデスメタル進行である。
一方、ギャグアニメとしては、赤塚アニメ第一作となる『おそ松くん』が始まった。
数年前、若い女性に圧倒的な人気となった深夜アニメ『おそ松さん』はもちろん、70年代にリメイクされたアニメ『おそ松くん』のオリジナル第一作である。
この主題歌には、モロ、ザ・ベンチャーズの「♪テケテケテケテケ…」が頻繁に使われており、曲調はラテンである。
ラテンのリズムもまた、当時の流行歌に多く取り上げられていた。
西田佐知子「コーヒールンバ」(1961・69年再発)なんて、今聴いてもいいよね。歌とコール&レスポンスするナチュラルクランチ気味のギターソロは、ギブソンL5あたりの音。
ラテン、ジャズバンド+エレキギターというのが1960年代前半に流行していたサウンドで、これが大きく変わるのが、同年来日したビートルズとそれに続くGSブームで、ラテン色、ジャズ色が薄まり、より純化されたロックへと進んでいく。
1966年6月に始まった『遊星仮面』の主題歌は、前述したようにメロディラインや男声コーラス、ブラスの入り方が『鉄人28号』そっくりだが、メインとなる演奏はスプリングエコーの効いたエレキギター、ドラムス、ベースというロックバンド仕様になった。
しかし、ほぼ同時に始まった手塚治虫原作の実写版ヒーロー『マグマ大使』は、時代に逆行するようにフルオーケストラ、長調の行進曲調、男声コーラスだった。
手塚作品がなんとなく「格調高く」、「良心的」に見えたのは、本人の政治信条もさることながら、ロック色が皆無だったことによるものかもしれない。
そして、ついに、ぼくらの世代をロックへと導いた大本命が登場する。
1966年7月に始まった『ウルトラマン』である。


『ウルトラQ』の墨流しによる不気味なテーマが流れたあと、「♪ドン、トテトテー、トテトテー…」というトランペットとホルンの和音に続いて、エレキギターのリフでC(ドドソソラ#ラ#ソソ」というロックンロールのリズムが流れる。
「♪胸につけてるマークは流星」から「♪自慢のジェットで」のところで、ⅣのDにいかずに、Dm(レレララドドララ)に行くところが日本的っちゃ日本的だし、歌は少年少女合唱団だから、従来の子ども向けヒーローものを踏襲しているのだが、これまでアダルト向けにしか用いられてこなかったR&Bのビートが、堂々と子ども向け番組に使われている。
しかもですよ、1番から2番へのブリッジで、トランペットとホルンの和音に続く「♪テトトテトトテトトテトトテー」の和音は、Em7-5とD#m7-5の連続。これはなんとBABYMETALファンには「シンコペーション」の2番のブリッジに一瞬だけ入るあの「ジミヘンコード」なのであります!
同年10月にはPTA推薦の『ジャングル大帝』の続編、『新ジャングル大帝進めレオ!』が始まり、あのフルオーケストラと混声合唱団による「格調高い」テーマ曲が流れた。
だが、少なくともぼくに限って言えば、『ウルトラマン』の魅力は圧倒的だった。
それにはSF的な設定や、次から次へと登場する怪獣への興味はもちろん、主題歌のロックンロールと勇壮なホルンの和音との融合、不良っぽさの中のぶっちぎりのカッコよさがあったからだ。
「♪光の国からぼくらのために来ーたぞわれらのウルトラマン」という歌詞は、M78星雲こそロックの故郷、われらのBABYMETALが生まれ、藤岡幹大神が下界を見下ろすメタル銀河だったことを物語っているのであーる。
(つづく)