新章に向けて(5) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月15日は、2017年、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、ローリー(NC)PNC Arenaに出演した日DEATH。

初のヘッドライナーフェス『Darknight Carnival』で、Galactic Empire&SABATONと共演した「META!メタ太郎」は、2018年のハイライトだったが、4月までの遅れを取り戻すかのように、12月もBABYMETALの戦いは続いた。


BABYMETALが初めての海外公演(AFA2012)と海外単独公演(2013年Live in Singapore)を行ったシンガポールでは、ご長寿バンド、メタルゴッド=ロブ・ハルフォードを擁するJudas Priestの「Fire Power Tour」のサポートを務めた。
このとき、Chosen Sevenのひとり、ダンサーのSAYAがYUIのポジションに入る「新三人体制」が現出したが、インタビューでは、このことについては触れられていない。
もっとも『PMC Vol.13』には、MIKIKO師のインタビューも載っていて、そこにはSeiho  とのコラボダンス作品『靉靆(あいたい)』にSAYAが参加していることがさらっと触れられている。
初のオーストラリア大陸での公演となったGood Things Festivalについては、直射日光と砂埃の舞う気温40度のステージへのSU-の一言、
―引用―
SU-:久しぶりに過酷でしたね。(P23一段目37行)
―引用終わり―
がすべてを物語っている。


さて、新章に向けて、このインタビューの白眉ともいうべき、SU-とMOAの絆についてまとめてみる。
初日カンザスシティ公演の際、ステージの最前にいたMOAが物を投げられたりしたら、SU-が守るつもりだったということは、前回ご紹介した。
これまでとは異なるフォーメーションの中で、アイコンタクトをするチャンスが少なくなったことも、逆にふたりの絆を強めたようだ。

●ふたりの絆
―引用―
SU-:もっとMOAMETALとのアイコンタクトを増やして、「今こういう状態だよね」ってお客さんの空気感とかをよりふたりでシェアしようとしたり、そういうことはいろいろ意識しましたね。(P21三段目7行)
MOA:(SU-がMOAに色や絵で言いたいことを伝えることについて)いつも斬新でおもしろい絵で会話したり、表現したりしてます。(P26二段目7行目)
MOA:自分でも不思議なんですよ。今までずっと一緒にいるからなのか、性格が似てるからなのかはわからないですけど、運命…っていうか、この人の言葉だから信じられるし、この人だからわかり合えるなって思える存在なので、本当にありがたいな、出会えてよかったなって日々思っています。(P26二段目13行)
MOA:SU-METALも私の体の一部なんじゃないかな(笑)。(P.32一段目4行~)
―引用終わり―

ふたりは小学校5年生と中学1年生という子どもの頃に出会い、すぐに重音部=BABYMETALとして行動してきた。
一つのチームとして客の前に立つということは、仲の良い友だちというだけではなく、客という「敵」と戦う同志であり、戦友という関係である。
目配せひとつで相手が何を考えているのかがわかるとか、性格が似ているというのは、そのような関係として育ってきたからだろう。
しかも、三人組として行動してきた一つのピースがなくなり、たったふたりだけになった。
三人組と二人組では、人間関係が全くちがう。三人組は、2:1になったり、1:2になったり、1:1:1になったり、さまざまなバリエーションがあるが、二人組では常に1:1である。BABYMETALはご長寿バンドになる前に、ご長寿コンビでなければならないのだ。
その意味で、このインタビューで吐露されているふたりの関係は、なんともほのぼのとしていて、ぼくらメイトとしては、安心材料である。「SU-METALも私の体の一部なんじゃないかな」というMOAの発言は、見事なダブルボケである。
インタビューでも阿刀大志が指摘しているが、SU-とMOAの「視点」は違う。それはステージ上のわずか数メートルの違いでも、客=「敵」と相対する場所が違うからだろう。SU-はボーカリストとして、歌や演奏に焦点を置き、MOAはエンターテイナーとして、ダンスや客席の反応に敏感になるというふうに。
「視点」が違うからこそ、文字通り複眼的にBABYMETALのパフォーマンスのクオリティが保たれる。その意味で、2018年に二人の絆がより強まったことは、BABYMETALがより大きく飛躍していくための礎になったと思う。
最後に、いよいよ間近となった2019年の新章=新体制についての発言をまとめてみる。
なお、新章が「Metal Resistance第8章」という名称になるかどうかは、実は未確定である。
お正月以降公式画像で使われている正八面体や、THE ONE 継続者特典の八角ステッカーのデザインから、今年のキーナンバーが「8」であることは確定的だが、年号が変わるのに応じて、「Metal Resistance」という名称自体が、別のものになり、「〇〇第1章」になるかもしれないからである。

●新体制について
―引用―
SU-:今までは、BABYMETALという作られた存在で、ストーリーにのっとって動いているという感覚が私の中でもちょっとあったんです。(中略)やっぱり3人で作ってきたものがBABYMETALだったし、だから新体制になるにあたって、これからはYUIMETALの意思も引き継いだうえでBABYMETALは進んでいかないといけない。(P23一段目46行~)
SU-:BABYMETALはメタルというジャンルにおいても王道じゃないというか、別の場所から来たからこそ唯一無二の存在になったと思っています。(中略)そもそも私たちはずっと挑戦者だと思っているから、新しい形だからこそ挑戦できる。これまではいろんな世界で受け入れられてきたからこそ忘れてしまっていたことがあったと気づけた今、これからはもっと、新たなBABYMETALの形を提示できると思います。(P23二段目51行~)
SU-:そういう意味でお客さんにも覚悟してもらいたいし、私たちとしても自分たちの覚悟を見せられたらって思います。(P23三段目45行)
MOA:うーん、なんだろうなあ…「突き進む」っていうことですかね。私たちはずっと後ろを振り返らずに突き進んできたグループだったけど、去年は立ち止まって振り返って、考え直すことができました。だから2019年はまた振り返らずにふたりで突き進んでいきたいなっていう気持ちが大きいです。(P32三段目8行~)

色々と示唆に富む発言のオンパレードである。
まず、SU-の「今までは、BABYMETALという作られた存在で、ストーリーにのっとって動いているという感覚」という発言。
BABYMETALは、メタルの神キツネ様に召喚された三人の少女という「設定」であり、昨年出版されたグラフィック・ノベル『APOCRYPHA-The Legend of BABYMETAL』も、三人の少女の魂が、失われた護符(AGIMAT)の欠片を求めて、時空を超えた旅をしていくという物語だった。単なるメタルバンドではなく、神話的なストーリーがBABYMETALに神秘性をもたせていた。だが、YUIMETALが脱退したことで、そのストーリーは破綻してしまった。その中でSU-は「YUIMETALの意思を引き継」ぐと言明した。
これは、ここから新たな神話を築き上げていくということ、しかも、「作られた」ものではなく、自分たちで「新たなBABYMETALの形を提示」していくという力強い宣言である。
MOAは、「去年は立ち止まって振り返って、考え直すことができました。」と言っている。
この発言も、SU-の発言とリンクしている。
確かに、2016年に現役日本人アーティストとして最高位であるビルボード200のトップ40入りを果たし、『Kerrang!』アワードのBest Live Bandにも認定された。
突っ走ってきた中で、SU-のいう「いろんな世界で受け入れられてきたからこそ忘れてしまっていたことがあった」という言葉と考え合わせると、YUIMETAL脱退という危機の中で、原点に立ち返ったということだろう。
それがSU-の「そもそも私たちはずっと挑戦者だ」という言葉の意味である。
BABYMETALは、メタルバンドらしいメタルバンドではなく、「アイドルとメタルの融合」という邪道から出てきた。そのことをSU-もよくわかっていて、「王道じゃないというか、別の場所から来たからこそ唯一無二の存在になったと思っています。」と言っている。
挑戦者なのは当たり前なのである。そこに立ち返った。
これは重要な示唆であり、このインタビューでもっとも刺激的なくだりだと思う。
「Distortion」や「Starlight」はDjentを導入し、カッコいいメタルに仕上がっているが、カッコいいだけではなく、かつて世界に「なんじゃこりゃ?」の嵐を巻き起こしたように、より面白く、衝撃的な音楽性をもった存在。それが、新体制=新章のBABYMETALが目指すものだというのだ。
だから、ぼくらメイトにも「お客さんにも覚悟してもらいたい」というご下命。
よっしゃー。どんとこい。
どんな状況になっても、BABYMETALは前へ突き進む。
どんなメタルバンドにもできない、邪道=Only OneのBABYMETAL道であり、聴く者に衝撃と解放を与える唯一無二の音楽を、大人になったSU-とMOAは自覚的に追求していく。
ぼくらも、覚悟を決めて受け入れようではないか。
苦難の2018年を経て、BABYMETALは、また強くなった。
それがはっきりしたインタビューだった。
「BABYMETAL DEATH」が聴こえる。
(この項終わり)