新章に向けて(4) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月14日は、2017年、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、アトランタ(GA)Philips Arenaに出演した日DEATH。

前回に続いて、『PMC Vol.13』のインタビューから、ふたりの思いを考察する。
YUIMETAL不在で、不安だったカンザスシティに始まって、アメリカツアー、ヨーロッパツアーと歩を進める中で、ふたりは徐々に自信をつけていく。
2018年のアメリカツアーは、NY、シカゴといったこれまでの大都市とは違って、南部の中規模都市が多かった。またヨーロッパではインスブルック、ユトレヒトといった未知の都市でのライブとなった。ふたりはBABYMETALをほとんど知らない観客にも出会っていく。

●アメリカ~ヨーロッパツアーについて
―引用―
SU-:(ナッシュビル公演について)縦ノリじゃなくて、横なのか斜めなのか、とにかくメタルのノリ方ではない感じがしたというか…。(P19に段目11行~)
SU-:今回回った街は、さっき言ったようにBABYMETALという名前だけを知っているようなお客さんが比較的多かったので、ツアーをしていくうちに徐々に受け入れられているっている感覚を持てたというか。3人のBABYMETALを知らないからこそ「このユニットいいじゃん」って素直に受け止めてくれているように感じられる反応がありました。(P19二段目43行~)
MOA:正直、場所のイメージがそんなになくて、ただがむしゃらにライブをやるという感じだったので、あまり覚えていないんですよ(笑)。(中略)小さい都市でも大きい都市でと変わらない気持ちでがんばらなきゃと毎公演思っていました。(P29二段目10行~)
SU-:(ダウンロードフェスについて)私たちが向かっている方向が間違っていないんだろうなっていう自信が付いてきた中でのライブでした。そういうふうに思えるようになったのは現地のお客さんの反応が大きかったですね。しかもダウンロードはツアーの集大成だったので、そのころにはかなりライブを楽しめるようになっていました。(P21一段目12行~)
MOA:「Download Festival UK」はすごく不安でしたね。ツアー中、ワンマンですらアウェイみたいだったのに、「フェスになったらどうなるんだ?」って心配してたんですけど、ステージに上がったら私たちがやってきたことを信じてくださったお客さんが集まってくださっていたので「今まで3人で走ってきたことは間違いじゃなかった」とこれまでのことを振り返ったりしてライブを楽しむことができました。(P31二段目17行~)
―引用終わり―

YUIMETAL不在の「DARK SIDE」のセトリは、ぶっつけ本番だったのだから、当然不安や「アウェイ感」を感じながらとにかく進むしかないという心理状態だったことはよくわかる。しかも、アメリカ南部はカントリーの地盤であり、客席にはテンガロンハットをかぶった観客もいたという。「ノリ」を分析するあたり、やはりSU-は冷静に見ている。
見知らぬ街で初見の観客を魅了していく。この地道な戦いこそ、「世界征服」の本道である。その当たり前のことが、2018年はつらかった。


だが、ツアーが進むにつれ、徐々に自信をつけ、アメリカツアーを乗り切る。
ヨーロッパツアーではギタリストが、より長く海外ツアーを共にしてきた大村神に代わり、ISAO神の演奏もこなれてきた。
ぼくがダウンロードで出会ったフランス人の若者たちもそうだったが、SU-がいうとおり、「3人のBABYMETAL」を知らないからこそ「このユニットいいじゃん」と思う新規ファンもついてきていたのだ。
ベテランダンサー2人とコラボしたことも、結果的にふたりにとって良いケミストリーを生んだようだ。

●新ダンサーとのコラボについて
―引用―
SU-「今までは3人を中心としてステージを作っていたのが、ダンサーの方々に入っていただくことで、「みんなでステージを作っていく」という形になって、同じダンスでも見せ方が変わりました。(P16三段目40行~)
SU-「ダンサーの方々の違う視点が入ってくることによって、「ああ、こういう見せ方ややり方があるんだなあ」って、本当に勉強になる部分がたくさんありました。(P19一段目2行~)
MOA:今回はSU-METALが後ろで歌って、私が前で踊って、ふたりでセンターを割るっていう形が多かったんですけど、それはけっこうプレッシャーでしたね。(P26三段目29行~)
MOA:表現の幅が広がったと思います。まず、ダンスを見直すことが増えました。これまで私は表現者、エンターテイナーとしての意識の方が強かったので、自分のダンスと向き合うことがあまりなかったんですね。だからアメリカツアーでひとつひとつの動きが大事なことに気付いたし、ダンサーさんを見習って必死についていかなきゃなと思いながら練習していました。(中略)BABYMETALになる前までダンスというものに触れてこなかったし、BABYMETALを通じて成長してきた部分が大きかったので、自分のダンスに自信はなかったし、ダンスのことをしっかり考えたことはなかったんです。(P29二段目31行~)
MOA:だから去年は自分がこれまで知らなかったことをたくさん知ることができたし、それまでできていなかったことにもいろいろと挑戦できたから、自分としては大きくなれた1年だったと思います。(P29三段目14行~)
―引用終わり―

これまでYUIMETALと対のポジションで踊っていたMOAMETALは、すべてのダンスを見直すことになって、一番大変だったと思う。
「BABYMETALになる前までダンスというものに触れてこなかったし」という部分は、幼少期からダンスをやってきたYUIMETAL=「ダンスの天使」に対して、「エンターテイナー」=激しい感情表現や、遠くの観客へも届くまなざしを持った「微笑みの天使」として自己形成してきたことを指すと思われる。
だがダンス経験の有無は、小学校5年生の頃の話である。BABYMETALでのMOAのダンスは、パワフルかつダイナミックで、YUIとはまた違った、彼女ならではの魅力を放つものであったことは、メイトなら誰でも知っている。
「BABYMETAL DEATH」でのトランス表現、「メギツネ」での空中ジャンプやコケティッシュな化粧ぶり、「KARATE」での迫力ある正拳突きなどなど。
YUIとの比較で、自分のダンスに自信がないと思うのは、MOAにとって、ある種の自主規制のようなものだったかもしれない。呪縛といってもいい。それが解き放たれた。
ダウンロードで観たMOAのダンスにはキレやエレガントさが加わり、キメのポージングやポジショニングも完璧で、ぼくにはフロントにいるMOAがダンサー二人を「率いている」という風に見えた。
ツアー中、「ただがむしゃらにライブをやるという感じだったので、場所をあまり覚えていない」というのは、それだけMOAがパフォーマンスに集中していたことの証左だろう。
もっとも、インタビューの最後に、MOAはケータリング(食事)で場所を覚えているということをSU-にバラされているのだが。(^^♪
さていよいよYUIMETALの脱退が発表されたジャパンツアー初日。
ふたりはどう思っていたのか。

●ジャパンツアー初日
―引用―
SU-:一番動揺していたのは日本のファンの方だったと思います。ツアーの中で「ふたりだけじゃ受け入れてもらえないんじゃないか」っていう気持ちがあったから、正直心配な気持ちはありました。ふざけながらではあったんですけど、「ライブ、誰も来ないかもしれないね」ってMOAMETALとも話してて。(P21三段目28行~)
SU-:来てくれた人に対して「ありがたいな」っていう気持ちがすごく大きかったです。だからちゃんと感謝を伝えたいという気持ちでパフォーマンスしました。あと、あのライブを経たことで、改めてふたりでちゃんとやっていこうっていう覚悟もできました。(P21三段目44行~)
MOA:それこそ本当に「お客さんが来てくれるのか」という不安がありましたね。アメリカツアーの最初のほうもそうでしたけど、「こんなのBABYMETALじゃない」っていう声を直に浴びてきたので不安は大きかったし、「チケット取ってくれた人いるかなー?どうかなー?」ってSU-METALとずっと話してたことを覚えています。(P31二段目31行~)
―引用終わり―

休養中と脱退では、全く違う。
数日前に公式から発表があり、YUIMETALに二度と会えないということがわかっていた幕張メッセ初日。
サラリーマンが「なんじゃこりゃ?」という目で通り過ぎる中、朝から待機列に並んでいた人たちの表情が浮かないものだったのは事実だ。ワールドツアーの始まる前からYUIMETALが脱退していたのではないかという憶測も乱れ飛んだ。
だが、メイトはそんなにヤワじゃない。「来る人いるのかな」どころじゃなく、幕張メッセは両日ともSOLDOUTしていた。
ワールドツアーでのSU-とMOAとダンサーたちのパフォーマンスをファンカムなどで観ていたぼくらは、YUIの脱退に肩を落としながらも、今こそ「予想を斜め上から超えてくる」BABYMETALへの信頼と愛情を試されるときだと思っていた。
そして、期待は的中した。誰も予想しなかったが、ワールドツアーからさらに進化し、サポートダンサーが新たに3人加わったChosen Sevenの体制が現出したのだ。
そして、配信シングルの新曲「Starlight」のメロディに涙した。
YUIMETALの脱退について、真実はいまだにわからない。だが、様々な状況証拠から、少なくとも2018年前半には、復帰に向けて周囲が動いていたことは明らかである。それが急転直下、脱退と決まった。だとすれば、やむを得ない事情があったのだ。
「体調がいまだに万全ではないこと」「水野由結としての夢」に向かってYUIがBABYMETALとの訣別を選んだなら、それも応援するのがファンの礼儀ではないか。
そしてもちろん、「SU-とMOAを中心とした新体制」で進むとBABYMETAL公式が言っている以上、全力で応援するのがメイトの気概というものではないか。
ここで「Starlight」をかけてくださいな。
今回のインタビューで、あのときの不安なSU-とMOAの気持ちと、ぼくらの思いが一つになったような気がした。彼女たちが前へ進むなら、ぼくらも必ずついてゆく。解散などないのだ。
(つづく)