新章へ向けて(1) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月11日は、2017年、「Live at Tokyo Dome」のワールドプレミアが全国18劇場で開催され、2019年には、3年ぶりの表紙&インタビューが掲載された『PMC Vol.13』が発売された日DEATH。

今週の終わりから来週にかけて、6月28日-29日の「THE SUN ALSO RISES」@横アリと、7月6日-7日の「BYOND OF THE MOON」@ポートメッセなごやのチケット先行受付が始まる。
そして本日発売となったぴあムック『PMC Vol.13』で、Metal Resistance第8章へ向けた決意をSU-METALとMOAMETALが語ってくれている。
いよいよ、新体制で臨む「世界征服」へ向けた再進撃がスタートする。
『PMC Vol.13』は、アマゾンの予約販売で連日ベストセールスを記録して売り切れとなり、現在は4月25日入荷待ちとなっている。
もっとも、アイドルの写真集などではこういう現象がたびたび起こるので、BABYMETALが特別というわけではない。ただ、やはりBABYMETALに寄せるファンの関心は乃木坂46の楽屋写真集くらい大きく、ベビメタ=オワコン論は大ウソだということがわかる。
これから始まる新章へ向けて、ぼくらメイトはアンチの扇動や釣りに乗じられることなく、背筋を伸ばして、正々堂々と応援していきたいものである。
いや、柄にもなく生徒会長みたいな言い方になってしまったが、というのも最近海外のサイトで、またベビメタ嫌いの音楽評論家が現れ、それに対するメイトさんたちの議論がとても冷静だったのに感動したからだ。
元ネタは「BABYMETALIZE」さん
https://babymetalize.com/archives/9495
要約してご紹介すると、こんな感じ。
エディ・トランクという音楽評論家が、アメリカで放送している衛星デジタルラジオ局のシリウスXMラジオの番組「Trunk Nation」で、アナウンサーがBABYMETALを紹介しつつ、ニューアルバムが出るとアナウンスすると、エディが「おれの好みじゃないし、理解できないけど、彼女たちがもっと成功することを祈るし、上手くやってるように思えるけどね」と言ったという。
これに対して、Redditでスレが立ち、エディの言葉をめぐって「BABYMETALが嫌いだというのは問題じゃない」「自分のよく知らないバンドを、嫌いだと決めつけているのはどうか」「藤岡の逝去を知っているのに…」「メタルはかくあるべきという持論からバンドを見るのはどうか」といった議論が展開した。
エディ・トランクは、1964年生まれで、METALLICA やAnthraxが在籍したMEGAFORCE RECORDSに入社し、1986年に副社長となり、Anthrax、Manowar、Overkill、King's X、 Prophet、Icon などをプロデュースし、KISSのエース・フレイリーのソロプロジェクトも立ち上げた。


そのキャリアから1990年代にメタル専門のラジオ、ケーブルテレビ番組を立ち上げる。
それが議論に登場するMTVやVH1(音楽専門ケーブルテレビ、MTVの姉妹局)で放送されていた『That Metal Show』である。“そこそこ有名なロック・ジャーナリスト”というより、かなりの大物といってよい。
ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズとは仲が良く、番組に「乱入」したこともあるし、ロックの殿堂「Hall of Fame」の人選に関して、「Hall of Shame」だと辛辣な意見をいうこともある。
今年になって、アンスラックスがKISSのカバー「Parasite」をレコーディングしたとき、自分がバックコーラスを担当したことを明かした。(以上、英語版Wikipediaより)
要するに、エディ・トランクは、かなり影響力のあるメタル業界人なのだ。
だから、彼の「BABYMETALは好みじゃない」という発言は、少なくともアメリカのメタルファンには大問題のはずである。だからこそ、Redditでスレが立ったわけだ。
これに対して、Redditのメイトたちは、「すわ、アンチだ!」といきり立つのではなく、「別にBABYMETALを嫌いだって問題はない」という論調から出発している。
論点は3つ。
ひとつ目は、「BABYMETALが嫌いな人がいてもいい」というもの。
これに反論する人はいず、唯一「嫌う奴らが損するだけだ。」というコメントがあっただけ。
二つ目は、「BABYMETALについてよく知らないのに、拒絶している」という見方。
実は、エディ・トランクがBABYMETALについてよく知らないということは、この議論の中で誰も証明できていない。エディはメタル業界で長い間仕事をしてきているし、親しい間柄のAnthraxのイアン・スコットは、BABYMETALが『Kerrang!』Awardを受賞したときのプレゼンターになった。あのMETALLICAがBABYMETALを気に入り、ソウルで前座を務めさせたことも知っているはずだ。関心がなければ藤岡幹大が亡くなったことを知っているはずもない。
つまり、「BABYMETALについてよく知らないのに、拒絶している」という意見は、「BABYMETALをよく知れば好きになるはずだ」という思い込みの裏返しに過ぎない。
もしかしたら、BABYMETALのたった二枚のアルバムを全部聴き、ライブに行かないまでも、DVD/BDをいくつか見たというくらいならあり得るのだ。それは、本当にBABYMETALを知らない一般人から見たら、「よく知っている」ということになる。
ぼくは時々、秋元康の悪口を書くが、そのためにAKBや乃木坂や欅坂やけやき坂のCDやDVDを購入し、冠番組もちょこちょこ見ている。エディがBABYMETALを知ったうえで、「理解できないし、好みじゃない」と言っている可能性は十分にある。
だから、この論点をアンチに対して使うことは、的外れの危険性があるのだ。
しかもエディは、「彼女たちがもっと成功することを祈るし、上手くやってるように思えるけどね」とつけ加えてもいる。BABYMETALに「世も末」「日本の恥」と罵詈雑言を浴びせてそれっきりのピーター・バラカンと比べれば雲泥の差である。
もし、エディの「好み」が間違っているといいたいなら、三つ目の論点=「メタルとはどうあるべきかという先入観的な概念に基づいて、BABYMETALを拒絶した」という点に進まざるを得ない。
「先入観的な概念に基づいて嫌うメタルエリート主義のアプローチ」「こうあるべきという狭い見解で拒絶することは問題がある」というのは、より具体的には「ライブでバッキングトラックを使ってるロックやメタルバンドに対する彼の怒り」とか、「作られたバンドはすべて、すぐに良くないものとして拒絶する」とか「彼の心の中では、BABYMETALはミリ・ヴァニリなんだ。」という意見からわかる。
ミリ・ヴァニリとは、訳注で説明してくれているが、1988年に当時の西ドイツでデビューしたロブとファブリスの2人組黒人男性ダンス・ユニットのことである。


モデルのようなルックスとラップを交えたダンサブルな曲調で、デビュー曲の「Girl You Know It's True」は全米2位、その後3枚のシングルは全米1位の大ヒットとなり、1990年には、グラミー賞の最優秀新人賞を受賞した。しかし、実はプロデューサーが「売る」ためにモデルを起用し、歌は別人に歌わせていたことが発覚し、剥奪された。
アメリカのロックファンには「作られたバンド」に対するトラウマがある。
それはビートルズに対抗して作られたモンキーズである。
ビートルズが自ら作詞作曲演奏するバンドだったのに対して、モンキーズは、NBCの『ザ・モンキーズ・ショー』のためにオーディションで集められた子役などのメンバーで、作詞作曲はプロ、演奏は1960~70年代にロサンゼルスを拠点にしたセッションミュージシャン集団、レッキング・クルーが行っていた。(映画『レッキング・クルー』より)
もっともモンキーズの楽曲提供者には、ニール・ダイヤモンドやキャロル・キングがいたりしたので、「あの時代」を今に伝える名曲もある。
とはいえ、「彼ら(モンキーズ)は楽器の弾き方さえ知らなかったのに、テレビに出て、コンサートでは演奏してる振りをしたんだ。そこには誠実さも高潔さもない。世界に、実際はそうじゃないものを信じ込ませようとしてたんだ。」という意見は根強く、同時に「BABYMETALはそうじゃないのに!!」というアメリカ人メイトさんの焦燥感のようなものも伝わってくる。
「作られたバンド」という先入観は、SU-METALの歌唱力や、YUI、MOAのダンスの練度、神バンドの演奏力を見れば、当てはまらないことがわかる。確かにソングライターは別にいるが、楽曲世界を生で表現するために、メンバー、バンド、スタッフがどれだけ注力しているかは、ライブを見れば一発でわかる。その意味で、BABYMETALはモンキーズやミリ・ヴァニリのような「作られたバンド」ではない。
だが、エディ・トランクは、単純にそんな先入観でBABYMETALを見て「好きじゃない」と言っているのか。実はこれもわからない。
もしかしたら、ライブの映像を見た上で「好みじゃない」と言っているかもしれないのだ。
そこで、議論は少し違う観点へ進む。
「彼はGhostも“理解”出来ないんだ。」
というのがそれだ。
だが、すぐに「数か月前には、自分の番組でトビアス・フォージにインタビューさえしたんだぜ。」「彼は、自分の愛する苦しんでる音楽のカテゴリーにとって良いから、Ghostをサポートしてるんだ。」という補足コメントが続いている。
結論が見えてきた。
もしかしたら、エディ・トランクはMETALLICAやAnthraxのようなストレートなメタルが好きで、怪奇趣味とか、ヘンテコな「ギミック」は「好みじゃない」のかもしれない。
メタルは、2000年代以降多様化し、一バンド一派というくらい、スラッシュメタルからデス、ブラック、ラップ、フォーク、プログレ、シンフォニックメタルまで、さまざまなジャンルがある。
「理解できない」「好みじゃない」というのは、長年メタル業界を歩んできたエディ・トランクならではの率直な感情ではないか。
日本人の女の子が日本語で歌うメタル?キツネ様? 
確かにロブ・ハルフォードは「メタルの未来」だというし、METALLICAもANTHRAXもお気に入りみたいだ。でも「おれには日本語は理解できないし、Kawaii女の子に入れ込む柄でもない。まあ、おれはいいや」
エディの発言は、そのくらいの感覚だったのではないか。
ただし、繰り返すが、エディはちゃんと「彼女たちがもっと成功することを祈る」とつけ加えている。それで十分ではないか。
だから、「OK、彼が何者かは知らないけど、意見を持つ権利があると思う。彼は敬意があったし、BABYMETALが上手くいくことを望んだと思う。彼が好きじゃないなら、好きじゃないんだ。BABYMETALは好きか嫌いかどっちかのバンドなんだぜ。後者のカテゴリに彼がなってしまったのは残念だけど、彼が敬意を持ってる限り、問題はないよ。」
というコメントが出た時点で、事実上、議論は終結したと思う。
自分が好きなものを非難されれば、誰だって腹が立つ。
その意見が間違っていると言い募り、意見を変えさせたいと思う。
だが、誤解があればちゃんと指摘すべきだが、最終的に「好み」の問題だと判断できるなら、それで議論は終わりである。議論する中で、自分で気づくこともあるだろうし、相手の意見に気づかされることもある。その成果は、各自が持ち帰ればいい。それが議論の本質である。
これから、BABYMETALが再始動する中で、またいろいろと議論が巻き起こるだろう。
その際、議論の本質を外れないように、罵詈雑言で終わらないように。
BABYMETALの新章は、メイトにとっての新章でもあるのだ。
(つづく)