ご長寿バンドへの道(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日3月29日は、2015年、さくら学院2014年度卒業式が行われ、水野由結、菊地最愛が卒業した日DEATH。

バンドが長寿を全うするには、何が必要なのだろう。
第一に思いつくのは、下世話だが、音楽活動で「生活できること」だろう。
バンドが長続きするには、メンバーがそのバンドから得られる収入が、他のバンドあるいは他の職業に就くより「良い」と判断することが必須条件だ。
リリースした楽曲が「売れ」、ライブをやれば大勢の観客が押し寄せ、声援を送るという状況が続けば、ほとんどの場合、メンバーはこのバンドに在籍していることに、アイデンティティを感じる。「売れる」ことで、お金も入ってくるし、周囲のサポートも受けやすくなる。
同時に、自分たちの音楽が「世間に受け入れられた」という自信も得られる。
逆に、色んなコンセプトを詰め込んで、練習に練習を重ねてライブをやっても、一向に人気が出ず、CDも売れない、食えないという状況が続けば、成人ならばアルバイトで生計を立てるしかないし、それが何年も続けば、どうしたってメンバーは自信をなくし、脱退・解散・転身を考えるだろう。
結成後、我慢の限界が来る前に「売れる」ことは、ご長寿というより、バンド存続の第一条件なのだ。
BABYMETALの場合、中高生だった2014年に日本武道館2日間をSOLDOUTし、ビルボード200に日本人14組目としてランクインし、その2年後の2016年には日本人として53年ぶりに39位にランクインし、東京ドーム2日間をSOLDOUTした。


前回書いたように、30年~50年にわたって活躍している世界のご長寿=レジェンド級のロックバンドに好意と期待を寄せられ、オープニングアクトのオファーも受けた。
「世間に」どころか、「世界に」受け入れられたといってよい。
これは、大方のバンドが望んでも得られないような「売れ方」であり、バンド存続の第一条件は完全にクリアしているわけである。
ただし、バンドが売れれば売れるほど、「これは本当にやりたかったことなのだろうか」という疑問が湧いてきてしまう状態というのもあり得る。
「売れ」ていても、バンドのポップ化、レコード会社、プロモーション会社の商業主義を嫌って脱退し、新しいバンドを模索するというタイプのミュージシャンも、ロック史には数多い。
つまり、「売れること」はあくまでも第一条件なのであって、自分たちのやっている音楽への「満足感」や「誇り」が伴うことが、バンド存続の第二条件だと思うのだ。
BABYMETALは2つの意味で通常のバンドとは違う。
ひとつは、メンバーが自分たちで作ったオリジナル楽曲ではないため、CDが売れても、歌唱印税しか入ってこないことだ。ライブでは出演料、映像作品では肖像権料が入るのだろうが、グッズにはメンバーの写真が使われていないため、肖像権収入は入らない。カラオケではライブ映像が使われているものもあるので、その分の収入はあるのだろうが、著作権ではない。下世話な話だが、BABYMETALはあくまで、「歌手」(YUI、MOAのScreamも含めて)に過ぎないのである。
二つめは、BABYMETALは、通常のバンドのように、地元で評判をとったプレイヤーが集まり、コンセプトを練り、楽曲を作り上げ、それが「売れた」というわけではないことだ。
「アイドルとメタルの融合」というコンセプトは、アミューズのプロデューサーKOBAMETALが作ったものであり、結成当時、小中学生だったSU-、YUI、MOAは「メタル」という言葉さえ知らなかった。
その意味で、同じくアミューズ所属の「アイドルとテクノポップの融合」であるPerfumeとも少し違う。
Perfumeは、アイドルのフォーマットで、プロデューサー(中田ヤスタカ)がコンセプトを作ったグループでありながら、現在では、企画段階から楽曲やダンス、ライブツアーの構成などに、メンバーの意思が反映されているように見える。
もちろん、KOBAMETALの意図を汲み、メタルを学び、過酷なレッスンとライブツアーの日々で鍛え上げられた精神力や表現力があるからこそ、ぼくらはBABYMETALに惚れ込んでいるわけだが、問題は、「自分たちの生きざまを反映した音楽だ」という感覚が通常のバンドより薄い可能性があり、世界のメタル市場で「売れた」凄さへの自己評価や達成感、誇りのようなものがさほど強烈ではないかもしれないということだ。あくまでも可能性だが。
第一条件をクリアし、第二条件にはやや不安が残るにしても、それが第三者の評価によって、変わってくるということもある。
それが、第三の条件である数々の音楽賞の受賞ということだ。
BABYMETALは、2015年に、第4回Loudwire Music Awards(2014 New Artist of the Year)、第7回 CDショップ大賞(2015大賞)、『KERRANG!』AWARDS 2015(THE SPIRIT OF INDEPENDENCE AWARD)、『METAL HAMMER GOLDEN GODS AWARDS 2015』(BREAKTHROUGH AWARD)、MTV Video Music Awards Japan 2015(BEST METAL ARTIST)、『GQ』 Men of the Year 2015(Discovery of the Year)、『VOGUE JAPAN』(Women of the Year 2015)、第5回Loudwire Music Awards(Best Metal Song of 2015、Best Live Act of 2015、Most Devoted Fans of 2015の三冠)、『KERRANG!』AWARDS 2016 (BEST LIVE BAND)など、数多くの音楽賞を受賞してきた。


自分たちがやっていることへの若干の疑問や不安はあっても、こういう音楽賞を数々受賞することによって、「これでいいのだ!」(バカボンのパパ©赤塚不二夫)という自信や誇りを得ただろうことは推測できる。
さらには、2012年から5年連続で出演し続けてきたロックフェス、サマソニのメインステージ昇格、それも最終日の大トリ前という位置に上り詰めたことは、「アイドルとメタルの融合」「メタル音楽へのダンス導入」「Only OneのBABYMETAL道」が、間違っていなかったという確信につながったはずである。
2017年まで、BABYMETALは、バンドの存続と長寿へ向けて、順調な歩みをしてきたのである。
2018年、BABYMETALは、藤岡幹大氏の逝去、YUIMETALの長期欠場~脱退という危機に見舞われた。5曲もの新曲のドロップ、サポートダンサーと新たなサポートミュージシャンの投入、「Darkside」あるいは「Chosen Seven」というギミックの導入によって、BABYMETALは2018年を乗り切った。初のヘッドライナーフェスであるDarknight Carnivalや、海外ライブの原点でもあるシンガポールでのJUDAS PRIESTのOA、新天地オーストラリアでのフェス参加など、新たな地平も切り拓いた。
藤岡幹大氏の喪が明けた今年2019年1月は、再スタートへの大きな転機のはずだった。
にもかかわらず、BABYMETAL公式は、アパレル関連、サマソニ2019への出演、THE ONEの更新・新規登録の案内だけで、現在に至るまで、肝心のツアースケジュールを公表していない。
今年のFOXDAY(4月1日)は、午前11時に新たな元号の発表があると聞く。
それを待っているわけでもないだろうが、ここまで何の発表もないということは、今年は一学期の海外フェスの参加も、それと連動した海外での単独ライブツアーもないということだろう。
「解散」でないことだけは確かだが、サマソニ出演決定時のツイート「みなさん、夏にお会いしましょう」は、サマソニまで何もないということかもしれず、7月5日のMOAMETAL聖誕祭も怪しくなってきた。
つまり、「危機」は続いているということなのだ。
バンドにとって、こうした危機をどう乗り切るかが、ご長寿への関門である。
そこで、前回あげたご長寿バンドが危機をどう乗り越えたかを検証してみることにする。
(つづく)