ダウンロードジャパン参戦記(4) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日3月25日は、2012年、さくら学院2011年度卒業式が行われ、2016年には、「FUJI ROCK FESTIVAL '16」への出演決定が報じられた日DEATH。

今年、SLAYERはツアーからの引退を表明し、「FINAL WORLD TOUR(最後のワールドツアー)」を行っている。
つまりこれが、最後の来日=サヨナラということになる。
それにふさわしく、セットリストは、1983年の『Show Noe Mercy』から、最新作の『For All Kings』まで、バンドの歴史をまんべんなく網羅したものだった。


18:20。Tearsステージ奥のSLAYERのロゴがライトアップされ、メンバーが登場してくると、いきなり1.Repentless(2015年『Repentless』)が始まる。
センターにどっしりトム・アラヤ(V、B)が仁王立ちし、上手にはかつてYUIがスキンヘッドヘドバンがカッコいいと言ったケリー・キング(G)が、髭を三つ編みにし、細かく頭を振っている。観客もそれに合わせてヘドバンしている。SLAYERらしく、一切のアウトロなしで曲が終わる。
すると立て続けに、2.Blood Red(1990年『Seasons in the Abyss』)、3.Disciple(2001年『God Hates Us All』)が演奏される。
SLAYERは速い。スラッシュメタル四天王のうち一番速い。ドラムは基本2ビートだし、曲も短い。これらの楽曲は、年代もアルバムも全く違うが、ヘドバンせずにはいられない攻撃性の塊である。それに、「Disciple」の歌詞「I never said I wanted to be God’s disciple」とあるように、神の慈愛や恩恵など一切信じず、自分の意志だけに従う孤高の生き方が貫かれている。
4.Mandatory Suicide(1988年『South of Heaven』)が演奏され、トム・アラヤがサビで「♪Suiside!」と叫ぶと、観客は「ウォー!」とウケる。
曲が終わると、トム・アラヤが、何も言わず数秒間、センターで観客席を見た。
やがて、「アリガトゴザイマス」と片言の日本語であいさつした後、「楽しんでるかい?」と聞く。客席は「Yeah!」と答えるが、アラヤは、最後のステージをかみしめているのか、寂しいのか、いろいろに受け取れる表情のまま正面を見て、もう一度「本当に楽しんでいるかい?」と聞く。客席がもう一度「Yeah!」と答えると「OK。3つ数えたら、ウォーと言ってくれ」といって、「イチ、ニ、サン」「♪ウォー!」から、5.Hate Worldwide(2009年『World Painted Blood』)、6.War Ensemble(1990年『Seasons in the Abyss』)、7.Jihad(2006年『Christ Illusion』)と激しい曲になだれ込んでいく。
ウルトラQのようなアルペジオのイントロから入る8.When the Stillness Comes(2015年『Repentless』)は、ミドルテンポだが、SLAYERには珍しく、途中でリズムが変わるドラマチックな構成を持っている。「Repent」とは自省・悔い改めという意味で、キリスト教徒にとって復活祭前の3月は、悔い改めのシーズン(Lent)なのだが、SLAYERにはそんなことは関係ない。「Repentless」とは「わが人生に一片の悔いなし」なのだから。
ここで、バックドロップが変わる。2013年に亡くなったジェフ・ハンネマンのロゴが大写しになり、始まったのは9.Postmortem(1986年『Reign in Blood』。
「♪ズズズダダダ…」という6連符のリズムが途中から2ビートに変わり、Postmortem=「死後の人生」が激しく表現される。ジェフ・ハンネマンのロゴが貼られたギターを奏でるゲイリー・ホルト(G)は、相当のテクニシャンである。この曲では、ケリー・キングとの速弾きのツインギターの妙技に引き込まれる。
続くは、ほぼデビュー曲といってよい10.Black Magic(1983年『Show no Mercy』)。1983年から、現在まで、速いリズム、かき鳴らされるケリー・キングのリフと「アウト」なソロ・フレージングの表現力、トム・アラヤの叩きつけるような歌い方は一切変わっていない。
ここで「次はビッチについての歌だ」というトム・アラヤのMC。

11.Payback(2001年『God Hates Us All』)である。ここでもゲイリー・ホルト(G)が、アーミングを交えた速弾きのソロで、「ビッチ」への呪詛を表現する。唐突に曲が終わると、半音下げのE♭mの重低音のアルペジオから始まる12.Seasons in the Abyss(1990年『Seasons in the Abyss』)となる。続いて、同じアルバムからぶっ速いリズムの13.Born of Fire、ゆっくりした不穏なリフの14.Dead Skin Maskと続く。
ケリー・キングとゲイリー・ホルトのツインギターは、SLAYERの攻撃的な世界観を観客に突き刺す。1990年の『Seasons in the Abyss』は、Billboard 200で40位に達し、初めて全米トップ50入りを果たしたアルバム。この3曲は、そのバンド史をなぞったラインナップなのだろう。


続いて、15.Hell Awaits(1985年『Hell Awaits』)、16.South of Heaven(1988年『South of Heaven』)、17.Raining Blood(1986年『Reign in Blood』と1980年代後半、もっとも悪魔的でエクストリームな時代の曲になる。『Reign in Blood』の邦題は『血の王朝』。
「Reign」は支配という意味だからそうなるのだが、「Rain」=雨ともダブルミーニングされており、「Raining Blood」の後には「血の雨の音」が収録され、かつてのライブでは、この曲が演奏される際、特殊効果として、血のりが噴霧されたこともあった。
今回も真っ赤な照明のもと、2ビートで奏でられる「Raining Blood」は、恐ろしくエクストリームな雰囲気を醸し出し、下手一般席でサークルモッシュおよびクラウドサーフが発生。
曲が終わると客席から「SLAYER!SLAYER!」の声。
そして、ライブも最終盤、18.Chemical Warfare。
いわずとしれたSLAYERの代名詞ともいうべき曲で、1983年『Show no Mercy』に収録されていた。ヘドバンし続けるケリー・キング。この曲を日本で、生で聴けるのもこれで最後である。トム・アラヤの「Fuckin’War!」の叫び声で、再度下手側一般席でサークルモッシュが発生し、クラウドサーフも多数発生していた。
いよいよフィニッシュ曲。選ばれたのは、1986年の『Reign in Blood』からの19.Angel of Death。ここで歌詞も書けないような最もエクストリームなこの曲を最後の曲にするのもSLAYERらしい。
唐突に曲が終わると、トム・アラヤからの最後の挨拶。驚くべきことにそれは日本語だった。
「ワタシノ、サイゴノTour。サヨナラ、マタイツカ」
1983年から2019年まで、36年間。SLAYERは、とにかくぶっ速いスラッシュメタルを貫き通した。殺戮者というバンド名にふさわしく、グラミー賞をとっても、TVショーに出ても、決してメインストリームにおもねることなく、死の衝動やフラストレーションを表現し続けた極北の音楽。
ひとつの時代が終わるのだ。
(つづく)