ダウンロードジャパン参戦記(3) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日3月24日は、2016年、TSUTAYA O-EAST” でウェンブリーアリーナ公演のライブ・ビューイングが実施されると発表された日DEATH。

ANTHRAXといえば、スラッシュメタル四天王の一角であり、スコット・イアンのスキンヘッドはメタルのアイコンである。
スコット・イアンは、2015年の『Metal Hammer Golden Gods』アワードで、BABYMETALのBreak Through賞のプレゼンターを務めたし、「Road of Resitance」の「戦国紙芝居」や「戦国Tシャツ」にも登場している。
14:50という早い時間だが、SLAYER、JUDAS PRIESTと並んで、ダウンロードジャパンのヘッドライナーの一つといっていい。
SEに続いて、メンバーがステージに登場してくる。場内はもう身動きできないほどの観客で埋まっていた。
スコット・イアンがトレードマークのフライングVで、「♪ジャガジャーン!ジャガジャーン!」とコードを鳴らす。それだけでスラッシュな雰囲気になってしまう。そこから1987年の『Among the Living』に収録された「Caught in a Mosh」へとなだれ込む。掛け声の入り方など、どこか懐かしパンク風だが、この音は紛れもなくANTHRAXのライブだ。


スコット・イアンは、難しいことをやっているわけではなく、ひたすら誠実に、あの顔で、汗をかきつつ、弦をかき鳴らし、コードを弾いているだけだが、あのコードワークとリズム感がANTHRAXの肝であり、スラッシュメタルがパンク~ハードコアから来たのだということを思い知らされる。ヴォーカルのジョーイ・ベラドナは、アップになるとしわだらけ&長髪のパサつき加減で、だいぶ歳を取ったなという印象だったが、パワフルに客席を挑発しつつ、盛り上げていく。
2曲目「Got the Time」に続き、3曲目はぼくの大好きな「Madhouse」(1985年『Spreading the Disease』収録)。文句なくアホになって楽しめる曲で、「It’s a Madhouse!」というサビのフレーズを知っている人は歌うが、何分古い曲のためか、ぼくのいた下手後方ではあまり合唱は起こらなかった。
続く4曲目の「Fight 'Em 'Til You Can't」は、スコット・イアンも汗だくでスキンヘッドをふりふり、ギターをかき鳴らす。「Fight’ Em!Fight ‘Em!」の掛け声のところで、ジョーイがマイクを客席に向けるが、歌っているのは最前列あたりで、それほど大きくはならない。ジョナサン・ドネイズ(G)のソロは円熟の速弾きで、ピロピロしている。
5曲目はやはり1987年の『Among the Living』に収録された「I Am the Law」。ギターのリフに合わせてジョーイがマイクを客席に向けて「アイ!」「アム!」「ロウ!」と煽るが、あまり反応しない。だが、「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」と煽ると、客席もこぶしを突き上げる。曲は知らないが、わかりやすい煽りならノル気満々といった感じの観客。
そういえば、ダウンロードジャパンは、ベビメタのライブに比べてオーディエンスの平均年齢が4-5歳若い感じ。1987年に生まれた人は今や32歳だもんな。
いやもちろん、若い観客が多いのはいいことである。後で書くが、連れの女の子が「SLAYERは知っているけどJUDAS PRIESTって有名?」と真顔で男の子に聞いていたカップルも存在したし、サマソニのチラシに「BABYMETAL」の字を見て、「BABYMETALってまだやってたんだ」と言っていた男の子もいたのだ。
そんな子たちでも、スコット・イアンの顔を見ているだけで幸せになるANTHRAXの楽しさを知ってもらいたいと思う。
6曲目は弓弾きのイントロで始まるデス寄りの「Be All, End All」(1988年『State of Euphoria』収録)。徐々にエクストリームな雰囲気が強まる。
7曲目は、最新アルバム『For All Kings』収録の「Evil Twin」。世界の指導者を「You’re Murders」とののしる曲で、金正恩とトランプの顔が浮かぶ。
8曲目は「Antisocial」(1988年『State of Euphoria』収録)。ドンドンドンドンというドラムの入り方、シンプルなリフ。「Anti! Anti Social!」という合いの手はわかりやすく、観客も徐々に歌い始める。「How do you Feel?」というジョーイの煽りに観客が湧く。
フィニッシュは、「Indians」(1987年『Among the Living』収録)。
曲が始まると、ドラマーが途中で曲をやめてしまう。アクシデントかと思っていると、スコット・イアンが、「日本では、世界一安全で速いサークルモッシュが見られるんだよね。後方、上手、下手で、巨大サークルモッシュを見せてくれ」と客席にリクエストする。確かにダウンロードジャパン公式HPの事前インタビューでそんなことを言っていた。
これは、もしかしたらBABYMETALがもたらした「モッシュッシュ」文化ではないか。
客席はウォー!と雄たけびを上げ、三か所で巨大サークルを作り始める。下手にいたぼくも後方へ逆圧縮された。
シンバルの四つ打ちから、曲が始まる。若い観客、オジサンの観客が、ニッコニコの笑顔で高速サークルモッシュ。
フィニッシュは「Indians」。観客は「♪Cry for the Indians」と大合唱。ANTHRAX健在。楽しめたライブだった。
だが、この時点で、スコット・イアンより3歳年上のぼくの腰と足は、もうガタガタで、とにかく座りたい。そのまま、Blood ステージ前で体育座りという手もあるが、メモを携帯キーボードで書き起こしておきたいし、お腹もすいている。反対側のTearsステージのGHOST(16:00)は見ておきたいが、BloodステージのSUM41(17:10)はお休みでもいい。
いったん場内で場所を決めると、そこからの移動はままならない。
人の波にもまれつつ、とりあえず通路へ出て、喫煙所に行くが、そこもいっぱいで落ち着いていられない。
ウロウロした挙句、Tearsステージ側の階段に座る場所を見つけた。そこから、遠くBloodステージ全景が見えるが、すぐ横のTearsステージは暗幕に隠れて見えない。階段も座りたい人が多いため、いったん離れると戻れなくなる。今更ながら日頃の運動不足を悔やむ。
結局GHOSTは、登場シーンとフィニッシュだけ見て、あとは階段に座って音だけ聞いた。


GHOSTは、スウェーデン出身のコピア枢機卿(本名トビアス・フォージ、旧芸名パパ・エメリトゥス〇〇世)(V)のワンマンバンドで、メンバーは仮面をつけたネームレス・グールズと呼ばれるが、2016年にグラミー賞のベストメタルパフォーマンス賞を受賞したことから、金銭や匿名を強いられる人格的な地位をめぐって、グールズたちが訴訟を起こした。トビアスは、このバンドは彼の個人会社が運営するバンドであり、著作権、ロゴの版権などすべての権利は彼が保有していること、ネームレス・グールズは単なる雇用者であり、給与はちゃんと支払われていると主張し、2018年10月、原告グールズたちの訴えは棄却された。(現在、控訴中)
その後トビアス・フォージは白塗りをやめ、もみあげを伸ばし、コピア枢機卿と改名して現在に至っている。バンドのリーダーとメンバー間にはよくある話かもしれないが、BABYMETALにおいて、神バンドやサポートダンサーの権利関係はどうなっているのか。他人ごとではない。
パフォーマンスそのものより、貴族的な衣装を着け、髭男爵めいたキャラクターのバンド独裁者コピア枢機卿ってどんな奴なんだろうという興味があった。
細身、しわだらけの顔、パンダの隈取。そして動画で見るより甲高いケロケロ声。
楽曲は、きわめてオーソドックスで完成度の高いプログレメタルである。
階段からみると、VIP最前列が良く見えるが、スウェーデンの国旗を掲げている人もいたから、やはり熱心なファンがついているのだろう。
そしてぼくは、階段に座り、聴いているうちに眠ってしまった。もうダメだ。おじいちゃんだな。
言い訳すれば、おどろおどろしい意匠を凝らした大音量のメタルなのだが、GHOSTは、とても心地よい音楽なのだ。
ふと気づくと、髭男爵、じゃなかったGHOSTを一躍有名にしたフィニッシュ曲「Square Hammer」(2016年)をやっていた。大音量なのだが、キーボードのリフがおしゃれで、美しいディストーションのギターのメロディライン、甲高いコピア枢機卿のヴォーカルとのバランスもいい。ヘヴィではなく、ポップな趣で、売れたのもなるほどよくわかる。
次は17:10のBloodステージのSUM41だが、さてどうするか。
18:20のSLAYERから続くJUDAS PRIESTの終演21:30まで3時間立ち続けになるので、SUM41は、階段に座ったまま、遠くから見ることにした。
「We Will Rock You」(Queenのカバー)をやったりして楽しいバンドだったな。
SUM41が終わったので、場内に突進する。SLAYERを見てからJUDASへ行くことは無理なので、JUDASにできるだけ近づくべく、SLAYERはスクリーンで見ることにしてBloodステージの一般席下手柵前近くへ。
18:20。この時点で、Bloodステージ前でも、もうピットはパンパンである。
一瞬暗転し、SLAYERが始まる。
(つづく)