ダウンロードジャパン参戦記(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日3月22日は、2014年、ビルボード200で1stアルバム「BABYMETAL」が187位にチャートインした日DEATH。

不在であることによって、その存在感の大きさに改めて気づかされる。
昨年2016年6月、イギリスのドニントンパークで見たBABYMETALは、ホームである日本で初めて開催されたダウンロードジャパン2019には結局出演しなかった。
ダウンロードUK2018のヘッドライナーだったオジー・オズボーンもいない。2月の終わりにキャンセルとなった。
だが、ダウンロードジャパン2019には、BABYMETALゆかりのバンドが多く出演した。
かつて在籍したクリストファー・アモットが「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のレコーディングに参加したArch Enemy、2015年の『Metal Hammer Golden Gods』アワードでプレゼンターを務めたスコット・イアンがいるANTHRAX、かつてYUIがつるっ禿げヘドバンに感動したケリー・キングのいるSLAYER、そして、2016年にAPMAsで共演したメタルゴッドロブ・ハルフォードがフロントマンで、昨年12月、シンガポールで共演したJUDAS PRIESTがヘッドライナーである。
唯一の日本人バンドであるMan With A Missionも、2017年のGuns‘ N RosesのOAをBABYMETALと分かち合い、サマソニ2017ではBABYMETALの前に出演していたから、ご縁のあるバンドといえる。
出演10バンド中5バンドが、なんらかの形でBABYMETALと関係している。もっともこれらのバンドは世界のヘヴィメタル市場のトップバンドなので、そこに進出したBABYMETALと関係ができるのはある意味当然なのだが。
BABYMETALは、「メタルの復権」を企図して結成された。
日本では80年代にヘヴィメタルがブームになったが、やがて「ヘビメタ」はギャグとなり、ついには死語となった。
それが2014年の海外進出によって「ベビメタ」が話題を集めることで、「メタル」が音楽の1ジャンルとして再認識された。現在、BABYMATALをきっかけに、再び、あるいは初めて「メタル」を聴き始めた層は確実に存在する。
ANTHRAX、SLAYERは、METALLICA、MEGADEATHと並んで、スラッシュメタルの四天王である。
また、出演バンドのうち、Amaranthe、Halestorm、Arch Enemyは、いずれも女性ボーカリストをフロントマンとするメタルバンドである。タイプは違うが同じセグメントにいるBABYMETALファンとしては、見ておかなくてはならない。
さらに言えば、GHOSTは、BABYMETALをきっかけに誕生したメタル文化誌『ヘドバン』に何度か掲載された演劇性の高いバンドであり、そのステージは見ておきたい。
BABYMETAL不在でも、これらのバンドが文字通り一堂に会し、日本で開催される世界的メタルフェスにどのくらいの観客が集まるか。どんな観客が集まるか。
もしかしたらBABYMETALが出演するかもしれないとの淡い期待をもって昨年のうちに購入しておいたチケットだが、興味をそういうふうに切り替えて参戦したのだった。
結論からいうと、ダウンロードジャパン2019は大成功だったといえるだろう。


幕張メッセ展示場9-11をぶち抜きにし、オールスタンディングとした場合の収容人数は約3万人。だが、午後1時ごろには、場内の人口密度に逃げ出した人たちで通路はごった返していた。18:20~20:00のSLAYER、JUDAS PRIESTの時間には、場内は身動きも取れないほどパンパンになった。
問題があったとすれば、今回これほどの大物をそろえたのに1日開催で、しかも会場が展示場9-11周辺だけ、物販も一か所だけ、外へ出ようにも出入り口が一か所だけだったため、VIPスペース以外には落ち着いて座る場所さえなく、一般来場者は一日中立つか、歩くか、壁際に体育座りするしかなく、ホスピタリティが皆無だったということだろう。
BABYMETAL不在でも、2019年の日本は、ダウンロードフェスティバルが開催できる状況にある。それが確認できたのが大収穫だった。

幕張メッセに到着したのは10:00。開場は9:30だが、駐車場には車が300台くらいしか停まっていない。
展示場のほうへ歩いていくが、人は少ない。もちろんベビTを着ている人などいない。
やっぱりBABYMETALがいないと、ダウンロードでも客は少ないのか。
そう思いながらデイリーヤマザキを左折して展示場9-11へ向かうと、そこには幕張駅方面から来た来場者が大勢いた。一般来場者はぐるりと回って1Fから入場する。
10:20過ぎ、雨が降ってきた。最悪である。
ペデストリアンデッキから見下ろすと、物販ブース前には大勢の人。
ダウンロードジャパンには、来場者サービスが二つあった。
ひとつは、出演バンドのサイン会。オフィシャルグッズブースのリトグラフを買うと、Like a StormとAnthrax、ディスクユニオンのブースでCDを買うとArch Enemy 、Amaranthe、Halestormのサイン会に参加できるのだ。ただし、バンドは一つだけしか選べず、整理券の数には限りがある。
もうひとつは、終演までいると、来場者全員にポスターが配布されるということ。
とりあえず、Arch EnemyかAmaranthe狙いでCD列に並んでみる。だが、列の動きは非常に遅い。ブースまで約10メートルの2折なのに、前にいる人たちが全然動かない。最後尾の係の人は、「ぼくの見るところ2時間待ちですね」と言っている。
雨も降っている。サイン会目当てで、演奏を見られなかったら、本末転倒だ。
10:30、Like a Stormが始まった。慌ててそこを離れ場内へ。

場内は、ピットをはさんで北側にTears Stage、南側にBlood Stageが組まれ、アーティストが交互に登場する2ステージ構成。
Like a Stormは、2005年にニュージーランドで結成され、現在はアメリカで活躍するバンド。今回が初来日となる。
ステージは北側のTearsステージ。
メインヴォーカルの前には、長い管のようなものがあり、ビヨーンビヨーンという音が聞こえる。これは、「ディジュリドゥ」というオーストラリアの先住民アボリジニの民族楽器とのことで、メタルと民族楽器の組み合わせなので、フォークメタルの趣もあるが、全体の音はデス寄りのメタルコア。

場内はまだ6割程度の入りで、次のAmarantheのためにBloodステージ側にも人がたまっているので、オープニングの悲哀はいなめない。昨年発売されたアルバム『Catacombs』からのシングル「The Devil Inside」はカッコよかった。
11:10。ほとんど間髪を入れず、反対側のBloodステージでAmarantheが始まる。
Amarantheは、スウェーデン出身で、3ボーカル体制という斬新なアプローチのメタルバンド。グロウルのヘンリク・エングルンド・ヴィルヘルムソン、ノーマルヴォーカルのニルス・モーリン、そして紅一点、バンドのアイコンであり、「センター」であるエリーセ・リードが、各楽曲でパートを受け持つ。
バンドの音楽性を作っているのは、金髪で謎めいた風貌のオロフ・モルク(G、Key)で、
ヨハン・アンドレアセン(B)、モルテン・ローヴェ・ソレンセン(D)とともに、超絶技巧かつメロディック&重厚な楽曲が続く。
予習は動画をいくつか見ただけだったので、現場では楽曲名が確認できなかったが、素晴らしいステージだった。
1曲目から3曲目まで、MCを入れずノンストップで楽曲を畳みかける。
グロウルと男性ノーマルと女性ボーカルでは、ごちゃごちゃしてしまうと思いきや、ヘンリクのグロウルがラップのように使われる中、ニルスのハイトーンがメロディーを歌いあげ、そこへ、満を持してエリーセの美しくよく通る声が響き渡る。
隣にいた若い女性が、Amarantheのファンらしく、エリーセが登場し曲が始まると「ヤバイ、ヤバイ、カッコイイ!」と叫ぶ。
3人はステージ上を動き回りながら、観客を煽り、時に絡み合いポージングする。目を奪われていると、「金星人」のようなオロフの超絶ソロが始まる。すべての要素が絡み合い、このバンドにしかできない音の世界を作っていく。
ジャンルは、プログレメタルなのかなあ。とにかく完成度が高い。
4曲目の前には、エリーセによるMC。「アリガトウ」の「ト」にアクセントが置かれるので、大阪弁みたいに聞こえる。始まったバラードは、「Amaranthine」。
エリーセの澄み切った声が場内に響き渡る。これでぼくはヤラレましたね。そこへ、ニルスがハモりながら重なる。ヘヴィなギターが入ってくるとグロウルのヘンリクがScreamする。さらにオルフのメロディックなギターソロ。涙モノでした。
続く5曲目はニューアルバム『HELIX』からの「GG6」。美しいバラードの次は、激しいラップメタルという構成もしびれた。
圧巻は9曲目の「Call Out My Name」。北欧パワーメタルの曲調だが、後半3人のフロントマンが、ステージ前面に出て扇風機ヘドバンを見せる。エリーセはこのとき、ポニーテールに髪をまとめていたが、それが美しくくるくる回る。まるで「連獅子」である。
あまりにAmarantheが良かったので、終演後、サインをもらおうと思い立ち、外に出てもう一度CD列に並ぶ。この時点では列は1列しかなく、CDブースには、「Arch Enemy、Halestormのサイン整理券は終了しました」との貼り紙が。
だがしかし。Amarantheはまだあった。「Amarantheのサイン会集合時間は12:45です。」というアナウンスの中、ぎりぎりで『HELIX』を購入し、整理券をゲット。
エントランスロビーの中にあるブースへ急ぐ。
13:00。
Amarantheのメンバー6人全員が、ブースに着席。エリーセは、ステージでみるとグラマラスに見えるが、意外に小柄で顔がちっちゃい。

6人全員と、一言ずつ感想を話しCDリーフレットのそれぞれのページにサインをもらったが、金色のインクが乾かず、べったりとついてしまった。


(つづく)