UKロック事情(1) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May the FOX GOD be with You―
★今日のベビメタ
本日6月13日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

6月6日の早朝発~午後ロンドン到着から、6月12日午前のヒースロー発~6月13日早朝羽田着まで、あっという間の1週間だった。考えてみたら、ブログを書く以外で日本語を使ったのは、ロンドンアイの日本食屋台の女性と注文のときに話したのと、ダウンロード2日目のBABYMETAL終了後にエーブックさん、ITCHIE-METALさん、PAPIMETALさんたちと立ち話をしただけで、1週間ずっと英語でしゃべっていた。
ここからは、滞在期間に見たイギリスの文化とかロック事情について考察してみたい。
ネタ元はRichardや彼のお兄さんのMichelさん、それとぼくがダウンロードで直接見たり聞いたりして考えたことだ。

初日に6月6日午後1時過ぎに、ヒースロー空港到着。タッチダウンは予定時刻より早いくらいだったのに、そこからが長かった。
実は、ヒースロー空港は、パスポートコントロールがやたら遅いので有名なのだ。
ここ数年のテロ対策でセキュリティが厳しいからというより、単に入国審査官の人数が足りないからである。ラインは日本同様、自国民=UK/EUパスポートホルダーと、それ以外に分かれている。

前者はあっという間に通れるのだが、ぼくらが並ぶ後者のラインには、ムスリムやインド人が多く、300人くらい並んでいるのに、たった5人しか入国審査官がおらず、ちんたらちんたらやっている。
アメリカでは、空港にもよるが、入国者の列の長さに応じて、臨機応変に係官を増員して対応することが多い。日本でももちろんそうだ。
しかし、東南アジアでは、実際にパスポートにスタンプを押す審査官は数人しかいないのに、その周りに制服を着たおっさんや、スーツを着たお姉さんが何人もダベっていて、審査官も時々その話に加わり、興が乗ると交代してどっかへ行ってしまい、そのラインに並んでいた客が困惑するという光景がよく見られる。
あれの本家本元は、世界に冠たる大英帝国だったのだ。
1時間半かかってパスポートコントロールを出たら、当然バゲージリクレイムには、すでにぼくのスーツケースがぐるぐる回っている。それをピックアップして出口へ。
そこに懐かしくも優しい笑顔を浮かべたRichardがいた。

2017年6月16日にハリウッドのホテルで出会ってからちょうど1年。BABYMETALのご縁で、日英×アリ50男同志がお互いの家へ泊る関係になったわけだ。
ロンドンの西=駒沢公園の位置にある空港から、ヒースローエクスプレスで直行約15分、市内環状線北西部=新宿の位置にあるパディントン駅に着く。

ここに初日に泊まったホテルがある。
目の前はハイドパーク。北へ徒歩で20分くらいのところにAbby Roadがあるというロケーション。
Richardにロビーで待っていてもらい、もうすでに午後4時になっていたので、部屋で荷をほどいてすぐにロック観光に出かけた。
ロンドンの印象はですね、鉄道および地下鉄網、バス網が発達していて、しかも右側通行なのでほとんど東京と同じだということですね。

地震がなく、V2ロケット以外、空爆も受けていないので市内はすべて100年前~200年前に建てられたレンガ造りの歴史的な建物ばかりだし、地下鉄の構内は丸いチューブの中。その微妙な違いを除けば、アメリカと比べると、何もかもこぢんまりとしていて、日本と同じサイズ。地下鉄の車内は東京より小さい。東京や大阪のような日本の大都市は、みなロンドンをお手本にしたのだから当たり前かもしれない。
物価は高い。ヒースローエクスプレスが22£(3300円)、たばこが13£(1900円)、コーラが2£(300円)、地下鉄の一日乗り放題が12£(1800円)である。
初日、2日目は地下鉄の路線図を頭に入れて、メインの移動手段に使った。
パディントン駅は3つの地下鉄路線が乗り入れており、ほかにBaker St.など、いくつかの複数乗り入れ駅を覚えれば、ロンドンおよび郊外には乗り放題でいける。
初日の最初の訪問地は、Oxford Circus駅近くのHendel&Hendrix博物館だった。
有名な話だが、学校で習った古典音楽家ヘンデルと、ロックギタリスト、ジミ・ヘンドリクスは、苗字が似ていて、かつ、200年の時を隔てて同じアパートに住んでいた。
現在もその建物が残っており、それがHendel&Hendrix博物館になっている。ぼくとRichardはなんといってもロックファンだから、ジミヘンがお目当てである。


ジミヘンの部屋が住んでいた当時のままに再現されており、彼が寝ていたベッドに寝たり、使っていたギターやマーシャルのアンプやステレオセットに触ることもできる。このへんがロックですね。だが、ヘンデルの部屋をのぞいて驚いた。服のセンスが、まったくジミヘンと同じなのである。

こういうのを見ちゃうと「輪廻」とか「生まれ変わり」ってあるのかもな、と思ってしまう。
そのあと、地下鉄に戻り、一駅先の駅で降り、ロンドンギターストリートと呼ばれるDenmark St.を冷やかし。お茶の水の楽器街と比べると、どの店もやっぱりこぢんまりとしている。フェンダーの値段は日本と同じだが、どの店に行っても、ダン・エレクトロやハグストロムが並んでおり、力を入れている感じがした。
Richard御用達のお店には、6ネックギター(7弦、6弦、4弦ベース、5弦ベース、6弦ギター、12弦ギター)や、紙が丸まったようなシェイプの「異次元から来たギター」が展示されていた。
ここでもう18:00を回り、ギターショップも閉まってしまった。

二人とも空腹&喉が渇いたので、RichardオススメのMontagu Pykeにて乾杯した。Montagu Pykeは、お茶の水でいうと、坂を下って行って右側のキッチンジローの位置にあり、Club Marqueeをモチーフにしたロック酒場である。


ビートルズ、ストーンズ、レッドツエッペリン、ジミヘンなどのロックミュージシャンにまつわる品が店内のいたるところに飾られている。それに交じってカール・マルクスの肖像なんてのもある。


ミートパイ&肉のロースト。付け合わせはポテトフライ(=チップス)とエンドウ豆(ピーズ)なのがイギリスらしい。チップスはごはんなのだ。

ここでRichardと、Dark Side BABYMETALの是非について議論した。
彼はSonisphere 2014以来のベビメタファンである。正確にはその時は、姪がハマり、本人はピンと来なかった。だが1年後、Reading フェスティバルで「メギツネ」を見て衝撃を受け、ドはまりした。タイミングよくWEMBLEYが告知されたので一家そろって見に行った。
最後の方のシーンでデロリアンにも映っている。東京ドームには行かなかったが、2017年3月に初来日し、6月にはハリウッドでぼくと出会った。そしてそのあと7月の白キツネ祭りで来日し、ぼくのうちに泊まり、RIJにも行った。
今年はインスブルックのVIPでBABYMEALを見ている。開場前の待機列の写真は彼のものだ。2017年3月以来、日本のラウド系アイドルにも興味があり、2代目アニメタルや、ゆくえ知れずつれづれやPASSCODEのCDも持っている。LOVEITESのHyper JapanおよびカムデンUnderworldでのギグも見ている。
その彼の意見をまとめると、
1)Dark Side BABYMETALは、これまでのBABYMETALではなく別のバンドである。
2)とはいえ、ヴィジュアル、楽曲、歌唱、ダンス、演奏のクオリティは相変わらず高く、やはり唯一無二の存在である。
3)三人のダンスは完璧なバランスだったが、4人になるとバランスが壊れて、中心が見えなくなる。SU-のボーカルに集中するためには、ダンサーは2人の方がいい。
というもの。これに対してぼくは、今のBABYMETALは一時的にYUIが不在のDark Sideにいるだけで、いずれ元に戻る。ダンスの女神が入ったのは、「メタル表現としてのダンス」を強調するためで、よりBABYMETALらしさが増したのではないか。4人のダンスのシンクロ率は、背後の努力を感じさせる。YUIの復帰とともに三人組としてのBABYMETALは正―反―合と進む「弁証法」のように、一段階進化するのではないか、という意見。
だが、Richardや彼のファミリーは、YUIは、子どものころからプロであることを強いられてきたので、他の道を探したくなるのは当然で、おそらく大人の女性として、自分のやりたい道を進むのではないかとクールに見ていた。
1)2)あたりの意見は、ヨーロッパでBABYMETALがどういう風にみられているかということと密接に関係している。
ヨーロッパでは、今もなおBABYMETALというバンドのファンが爆発的に増えている。
それは、2016年までの活躍があっての上のことだが、「Distortion」ほか4曲も新曲がドロップされた5月8日の衝撃以来、コスチュームもスタイルも一新され、音楽的にはDjent的フレーズや音像が導入されて、Kawaiiだけでなく、新しい段階に進化したという受け取られ方をしているのだ。
『Kerrang!』1725(6月9日号)のRock Chart(P.13)では、先週新曲を出したバンドが上位に来る中、発売から1か月以上たった「Distortion」は13位で、メタル系ではベビメタの2バン前に凄い盛り上がり方をしたBury Tomorrow が2週間前にリリースしたフィニッシュ曲「Black Flame」が4位、IMMORTALの「Northrn Chaos Gods」が15位、Tremontiの「Bringer of War」が19位というラインナップ。


アルバムなので比較にならないかもしれないが2016年の「Metal Resistance(EU版)」の最高位は15位である。「Distortion」は発売初週に1位になり、1か月後でもベスト20圏内にいる。

Download特集の記事では、大トリのGNRのアクセルローズの隣に、「我々はBABYMETALに何が起こっているか見ることができるか?」という煽り記事。

要するに、BABYMETALは、YUI抜きでも、“本場”UK/ヨーロッパのメタル市場で、依然メタルファンの興味と関心を集める、ビッグな存在なのだ。

YUIがいなけりゃベビメタじゃないという意見はよくわかる。ぼくだってSU-、YUI、MOAのTrilogyこそベビメタだと思っている。
しかし、少なくともRichardを始めとするヨーロッパのメタルファンは、YUI不在のDark Side BABYMETALにバンドの「進化」を見て、かつ強烈に支持しているのである。
(つづく)