Download大勝利!(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May the FOX GOD be with You―
★今日のベビメタ
本日6月11日は、2015年、「Kerrang!」誌の「The Spirit of Independence Award」を受賞し、2016年は、Download Festival in Parisに出演した日DEATH。

「メギツネ」が終わるとすぐに、「Give me…Give me…」というSEが流れる。観客はそのたびに「Chocolate!」と叫ぶ。そして、ステージ正面にMOA、両脇にダンスの女神、ステージ中央奥にSU-という布陣で、「ギミチョコ!!」が始まる。
暴力的な音圧と、3人がダイナミックに踊る迫力に、観客はヒートアップする。早くもモッシュ&サークルピットとクラウドサーフが始まる。
ステージ中央で、MOAがニコニコしながら、「あたたたたーたたーたたたズッキュン!」「わたたったーたたーたたたドッキュン!」と歌い踊ると、観客が同期して叫ぶ。
今日のMOAのメイクはさほど濃くなく、カワイさが爆発している。それだけでなく、USツアー、ヨーロッパツアーをこなし切った自信からか、また体が一回り大きく見える。
SU-もだが、ヘッドギアが定着して、カワイくて美しい女神官という雰囲気。これが現在のヨーロッパメタル市場では、とても大事なのだ。このことは後述する。
2番では、SU-が前面に出て、MOAと両女神がステージ後方に移動する。
4人のダンスのシンクロ率は完璧である。ファンカムをぜひご覧いただきたい。
ギターソロ。藤岡モデルを持ち、藤岡神のポジションでソロを取る大村神がカッコいい。後半のワーミーが、藤岡神よりよく跳ねている。

実はステージを撮影していたのだが、ここらでイギリス人男性がぼくの頭上を間断なく通っていくので、危険と判断して撮影を中断した。「ギミチョコ!!」はもはやBABYMETALの代名詞であり、やはりこの曲で盛り上がりたいファンが大勢いるのだ。
しかし、まだ3曲目だぞ。
MOA、両女神が去り、ステージにはSU-METAL一人になる。
4曲目「TATOO(仮)」のイントロがDjentかつへヴィな音になっている。
Download UK2018の三日間を通してみた印象は、観客が熱狂するバンドは、例外なく音の作りがへヴィかつDjentにアップデートされているということだ。いくつかのパンク系バンドやポジパン風バンド、さらにオールドスクールのロックンロールバンドは、音自体が古臭くて、熱狂的女性ファンが最前列にいるのだが、やっぱり観客全体にはウケてない。
BABYMEALの音は、ちゃんと重いしカッコいい。しかもシアトリカル。コスチュームやスクリーンの映像やレーザーショウも表現のひとつであり、わずか30分のショーでも、ちゃんと準備しているバンドとそうでないバンドには大きな差ができる。
翌日、同じステージの同じ時間に上がったスウェーデンの超テクニカルメタルバンド、Djentの生みの親、メシュガー(Meshugah)だって、Ozzyだって、ちゃんと物語性をもった舞台設定、映像、照明でステージングされていた。
たいして演奏が上手くもないパンクバンドやオールドスクールのバンドほど、この辺が甘く、普段着で出てきて、過去のヒット曲と男前のフロントマンの煽りだけが上滑りしていた。フェスを通してみれば、そういうバンドの企画力やアーティストとしてのパワーがよくわかる。ベビメタが強いのは、KOBAMETALが、ちゃんと海外のロックフェスに通って、何が新しいかをちゃんとつかんでいることだと思う。
「TATOO(仮)」も、ブルージィになりがちな曲調なのに、音がへヴィで、SU-は下手、上手と移動し、観客に向けてシアトリカルに表現する。

他の女性メタル系ボーカリストも同様で、ヴィジュアルと歌唱力・表現力の勝負になっている。2016年~2017年が、英語での煽りを学んだ年だったとすれば、これから数年は、大観衆の前での表現力が勝負になる。
「♪ひらひら落ちる」で、残心を焼き付けて曲が終わると、キーンというSEのハウリング音。不穏なドラムと」Djentなギターのリフが響く。
「♪Wow Wow Wow Wow…」というコーラスが聴こえると、観客席からまだも大歓声があがり、大合唱が始まる。上手下手にダンスの女神が現れ、MOAも中央にスタンバイする。
3回目の「♪Wow Wow Wow Wow…」から、完璧に息のそろったダンスとイントロが始まる。客席は大歓声で、またもモッシュとサーフが始まる。
「Give up Give up」と繰り返すグロウルに対して、
「Can’t stop the power」「Stop the power」「Can’t stop the power」「Caught in a Bad Dream」
「Can’t stop the power」「Is this a Bad Dream?」「Can’t get the power」「Distortion!」
まで、イギリス人観客はよく歌う。日本語の歌詞=SU-の歌部分はわからないから歌わないが、英語および「Wow Wow Wow Wow」になると途端に大合唱するのだ。
だが、本当は、
「♪ひずんだ カラダ 叫び出す」「♪ひずんだ イタミ 切りつける キタナイセカイだった」「♪ひずんだ ツバサ 飛べるなら」「♪ひずんだ シハイ 恐れない 偽善者なんて KILL 捨てちまえよ」
「♪ひずんだ ギセイ 傷つける キタナイセカイだった」「♪ひずんだ コトバ 届くなら」「♪ひずんだ ネガイ 叶えたい」
「♪ひずんだ ヒカリ 奪われる キタナイセカイだった」「♪ひずんだ キズナ 終わるなら」「♪ひずんだ チカイ 忘れない」
「♪このセカイがこわれても」
という日本語の歌詞に、どれだけ重みがあるか、世界中の人々にわかってもらいたいと思う。
藤岡神の逝去は事実。YUIの不在の本当の理由はわからない。
だが、歪んだ世界の中で、BABYMETALは理不尽に起こる出来事と戦っている。
その戦いは、誰もが予想もしていなかった不幸や不運に、日常生活や人生の中で直面する状況でもあるのだ。
「Distortion」はメタル表現としても最新形だし、歌詞の内容にも普遍性がある。だから2年ぶりの新曲というだけでなく、観客の心を撃ち、励ますのだ。
次の曲は「KARATE」。
4人の息のそろった正拳突きに、大観衆が「オイ!オイ!」と唱和する。
BABYMETALが戦う女戦士たちであることは、2016年の「KARATE」「Road of Resistance」からヨーロッパに知れ渡っている。Metal Resistanceというギミック=「設定」は、ちゃんとヨーロッパ人に理解されているし、だからこそ広範なファンベースが生まれたのだ。
ぼくの隣にいるフランス人二人も、ハンガリー人二人も同じ。日本語の歌詞をインターネットの翻訳で理解し、三人の来歴やパフォーマンスの意味を理解し、ほれ込む。
「KARATE」は彼らにとって、魂の歌なのだ。
2017年から、途中の煽りがなくなり、「Everybody, Jump!」がなくなった。だが、今年のUSツアー以来の、ブレイクで、MOAが中央ステージで倒れ、SU-が階段を上って助けに行き、二人のダンスの女神もそれぞれ助け起こし、4人が肩を組み、さらにMOAが泣きながら階段を下りてくるのをダンスの女神が心配そうに支え、ちょうど「Everybody, Jump!」のタイミングで、舞台前面にいる三人が、毅然とダイナミックなダンスをする瞬間、やっぱりぼくは泣いてしまったよ。背後ではモッシュ、頭上をサーファーが流れてくる中、ちょっと最前列の柵から離れて、泣いてしまったよ。最後に4人が握りこぶしをキツネサインに変えて掲げるシーンは、涙で前が見えなかったよ。
4人がくるりと背を向け、日蝕旗をもって並ぶ。
フィニッシュ曲「Road of Resistance」である。イントロが終わり、SU-が前面に立ち、客席を分けるしぐさをすると地平線まで埋まった大観衆が「Wall of Death! Wall of Death!」の大合唱となる。

4人が十字架の隊形をとり、「1234!」の掛け声から、見事なとしかいいようのないシンクロ率で、馬上の女戦士ダンスが始まる。
そして、客席では、巨大なサークルピットが中央上手寄り、上手最前列の背後、下手奥の3か所で起こる。歌に入り、それがやや静まると今度はサーファー。大男のイギリス人、小柄な女性ファン、最後には目の前をITCHIE-METALさんが通ったので笑った。
Bury Tomorrowより多い。現場にいたのだから間違いない。
モッシュ、サークルピット、バイキングWOD、サーファーの数は、ライブに対する観客の満足度やアーティストに対する敬意や愛情のバロメーターである。この意味において、BABYMETALは、2018年Downloadセカンドステージ3日間のチャンピオンだった。

<セットリスト>
1.In the Name of
2.メギツネ
3.ギミチョコ!!
4.TATOO(仮)
5.Distortion
6.KARATE
7.Road of Resistance
メンバー:SU-METAL、MOAMETAL
ダンサー:下手MINAKO神、上手MINAMI神
神バンド:下手ギター大村神、ベースBOH、ドラムス青山神、上手ギターISAO神
ギグの始まる前、舞台前面の垂れ幕が二重になっていて、「2019年…DOM」という文字が見えたので、すわこれは2019年にどっかのドームでライブをやるのか、あるいはUKでやるのかと思って、フランス人と喜んだのだが、終わってから、それが他のバンド用だと気づいてちょっとがっかりしたのは事実だ。
だが、そんなことはどうでもいい。
もう一度言おう。何がDark Sideか。心配は無用。ヨーロッパでのBABYMETAL人気は全然揺らいでいない。むしろファンベースは広がり、強くなっている。
あとは、3rdアルバムとYUIの復帰だ。
2016年のDownloadは、初日金曜日のメインステージ午後イチで、豪雨の中、大勢の観客にBABYMETALを知らしめた。
2018年のDownloadでは、2日目土曜日、メインステージのトリが19:00~22:20の長時間フルライブで話題を集めたGuns and Rosesが控えるセカンドステージの16:45~17:20という時間帯で、約3万人の観客を集め、最高のギグを行った。
The Last show is the best。
BABYMETALについて語られるこの言葉は、イギリス人もフランス人もオランダ人もドイツ人もハンガリー人も知っていたよ。
ありがとうBABYMETAL。ちょっと遅くなったけど、USツアーからヨーロッパツアー、お疲れ様でした。

ゆっくり休んでからだと心を癒してください。
ぼくは、BABYMETALの味方です。