カンザスシティ公演レポート | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May the FOXGOD be with You―

★今日のベビメタ

本日5月10日は、2013年、DEATH MATCH TOUR五月革命@大阪BIG CATが行われ、2016年、米国ワシントンDCシルバースプリングス公演@The Filmoreが行われた日DEATH。なお、2018年のテキサス州オースティン@ACL Live at the Moody Theaterは、日本時間5月11日午前10時開演予定DEATH。

 

カンザスシティ。

童話『オズの魔法使い』で、主人公ドロシーが住んでいたのがカンザス。

飼い犬のトトといっしょに竜巻に飛ばされてOZの国にたどりついたドロシーは、カンザスへ帰るために魔法使いの住むエメラルドの都へと、トト、「脳」を欲しがるカカシ、「心」を欲しがるブリキの木こり、「勇気」を欲しがる臆病なライオンといっしょに冒険を続ける。

かくしてカンザスはOver the Rainbowの彼方にある懐かしい我が家、アメリカ人の心の故郷というイメージになる。

HR/HMファンにとっては、ドロシーの「…Over the Rainbow…Rainbow…Rainbow…」というセリフは、コージー・パウエル、ロニー・ジェイムス・ディオ在籍時のリッチー・ブラックモアズ・レインボーのイントロに他ならない。

音楽関連でいえば、ビートルズが「ビートルズ・フォー・セール」(1964)でカバーした「Kansas City」というR&B曲もあるし、カウントベイシー楽団など著名なジャズマンを輩出した町でもある。

名物はバーベキューで、World Capital of Barbecue(世界のバーベキューの都)とも呼ばれる。BOH氏のTwitterには、赤身の巨大ステーキバーガーの写真が掲載されていた。

カンザスシティ(KC)は、ミズーリ州(MO)側と、カンザス州(K)側にまたがっており、中心部のミズーリ州側(KCMO)にあるUptown Theaterのキャパシティは1,700人。

今年最初の単独ライブとあって、会場前には例によって前日から世界中のメイトさんが集まり、入り口前で夜明かしした方もいたようだ。前夜のうちに大型のツアーバスが2台搬入され、大掛かりなステージが組まれることが予想された。

だが、入場してみると場内は狭く、バルコニー付きの劇場という趣き。

舞台は古めかしいプロセニアム・アーチ(額縁)がついており、その上部にChosen7のモチーフであるコロナ輪が設置されていた。これに照明が当たってピカピカすれば、リッチー・ブラックモアズ・レインボーだ。

中央には正方形の大きなステージ、その両脇には、下手・上手それぞれに一段高いサイドステージがある。下手サイドステージの前はBOH神とLeda神の演奏スペース、上手サイドステージの前はBABYMETALのロゴ入りダブルバスドラのドラムセットともう一人のギター神のスペース。

正方形ステージの前には3段の階段があり、階段から舞台の縁までは目視で約3メートル。ここも歌い踊るスペースになる。要するに上手、下手のお立ち台が、バンドの後ろになったということだ。

場内はぎゅうぎゅう詰め。午後8時(日本時間9日午前10時)にスタートしたSkyharborが終わり、恒例のBABYMETALバックドロップではなく、小箱用の白い幕が張られた。

9時15分(同午前11時15分)、その幕に「Metal Resistance Episode Ⅶ」という重厚な文字が映し出される。「紙芝居」のナレーションは男声。英語で「Light and Darkness…」から始まるDark SideのThe Chosen Seven Apocryphaが語られる。不吉な予感。

いよいよBABYMETALの2018年がスタートする。

<セットリスト>

1.In the Name of

2.Distortion

3.(仮)ダダダダダダ

4.(仮)ゆら揺れ(SU-ソロ)

5.GJ!(MOAソロ)

6.紅月-アカツキ-

7.メギツネ

8.ギミチョコ!!

9.KARATE

10.Road of Resistance

11.THE ONE(Unfinished Ver.)

広島BaptismⅩⅩで初披露されたインスト曲「In the Name of」のドラムビートが鳴り響き、幕が落ちる。中には、金色のガウンを着て女王然としたSU-を中心に…3人ではなく4人いる。4人は全員、SU-と同じ錫杖を持ち、何も言わずにトントンしているだけ。会場は一瞬静まり、ざわざわし始める。これが第7章のOvertureになるのだ。

SU-は、黒い細身のスカートに金色のジャケットを着て、頭には黒い王冠をかぶっている。後ろには同じ格好をしたMOAもいるが、YUIが見えない。その代りに、2人の同じ衣装を着たダンサーが踊っている。

YUI不在。広島の再現だが、メンバーが4人になっている。観客に衝撃が走る。由結ちゃんコールもあったらしい。

微妙な空気の中、キーンというSEが鳴り響く。ドラム音が繰り返される。

そこへ「Wow Wow Wow Wow」とコーラスが入る。

2曲目、ツアー直前にいきなりリリースされた「Distortion」。

ドラム音が繰り返され、コーラスが入るライブ仕様。やっぱカッケー!

YUIはいないけど、場内は大歓声である。みんなさすがにもうこの曲を知っている。

気づくと、MOAはツインテールではなくポニーテールで大人っぽくなっている。舞台前面にいるのはSU-で、その後ろの中央ステージにMOA、そのサイドステージに2人のダンサーというフォーメーション。

神バンドのメンバーは、黒い衣装に白塗り。確認できるのはLeda神、BOH神、青山神の3名で、上手ギタリストは不詳。

だが、ジェント的なツインギターと、ツーバス踏みっぱなしの青山神、ボトムを支えるBOH。神バンドの演奏力はやはり凄い。

ダンサーはキレッキレ。中央ステージにいるMOAの存在感も半端ない。どれほど練習を重ねたか。この動画を見れば、彼女たちの思いの強さがわかるはずだ。

SU-の歌声は狭い会場のわんわん響く音響の中をつんざくような、すさまじい声量と音域。まさに歌の女神である。

「♪歪んだカラダ、叫び出す(WowWowWowWow)」「♪歪んだ痛み、斬りつける汚い世界だった」「♪歪んだ翼、飛べるなら(WowWowWowWow)「♪歪んだ支配、恐れない、偽善者なんて切り捨てちまえよ」という歌詞が、理不尽な状況に直面しているBABYMETALの「戦い」を象徴しているかのように思える。「In the Name of」の微妙な空気は完全に変わった。曲が終わった瞬間、嵐のような大歓声。これはやっぱり名曲になる。

3曲目は、またもいきなりの初披露で、曲名さえもわからない。曲調はポップなロックンロール。SU-を中心に4人が見事なフォーメーションで踊る。「ダダダダダダ」という歌詞が印象的。仮称「ダダダダダダ」としておく。

曲の終わりで、MOAと2人のダンサーは退場。4曲目はSU-のソロ。これまたファーストドロップで、曲名がわからない。曲調はミドルテンポのR&B。ちょっと安室奈美恵を思わせる。もちろんもっとへヴィな音だが。聞き取れた歌詞は、「♪…どうかしてる…ゆらゆら揺れる」。仮称「ゆら揺れ」としておこう。

新曲ばかり4曲連続ドロップ。YUIは不在だが、BABYMETALは攻めている。これで意気に感じないメイトさんはいないだろう。

場内に三三七拍子が響く。5曲目は「GJ!」。広島では、YUIのパートを観客が埋めていたが、今回はMOAがソロで歌い通した。ピッチは正確。金属的でよく通るシグネチャーボイス。2人のダンサーを従えた姿は、第二のSU-である。もちろん、観客も「もっともっと!」と大合唱する。わかっているのだ。MOAはYUIの分まで背負っている。その思いが太平洋の荒波を超えて、びんびん伝わってくる。

6曲目。青い照明の中、オーケストラによるイントロが流れる。後半、不穏な雰囲気が高まっていき、あのピアノのメロディがかぶさる。SU-ソロ「紅月-アカツキ-」である。

「♪幾千もの夜を超えて―」と歌い出した瞬間、会場が感動に包まれる。

パイロはない。だが、かつてLegendシリーズのライブで、Dark Sideに堕ちてしまったYUIMETALとMOAMETALを救うために立ち上がったメタル女戦士SU-METALの凛としたあのまなざしは健在である。

どんなことがあっても、SU-METALは仲間を見捨てない。その決意、雄々しさ、カッコよさに鳥肌が立つ。

ツインギターの間奏部では中央ステージで、2人のダンサーが偽闘を繰り広げる。それは「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でのYUIとMOAの偽闘のようでもあり、かつてのSU-同士の戦いのようでもある。

曲の終わり大歓声が涌く。

7曲目「メギツネ」、8曲目「ギミチョコ!!」は、BABYMETALの代名詞だが、4人で構成されるメタルダンスユニットの新しいフォーメーションを見せてくれた。その迫力は、昨年までとは一味違う。「Kawaii」(Cute)から「Kakkoii」(Cool)への進化だと思う。

9曲目「KARATE」。

前にSU-。中央のステージに3人というフォーメーション。イントロでの4人の腕の角度はピッタリそろっている。

「♪セイヤ、セ、セ、セ、セイヤ」のところ、よく通るMOAの声が心地よい。

SU-のフリが大きい。あらためてダンサーとしてのSU-のキャパシティを感じる。

もちろん、歌に入れば、すさまじい声量で「♪涙こぼれても立ち向かっていこうぜ」と歌うその歌詞が胸に迫る。

ブレーク。SU-は中央ステージへ這い上がり、倒れているMOAとダンサー2人を一人ひとり助け起こす。そして4人で肩を組んで前へ進んでいく。ダンサーたちと入れ替わり、中央で「♪ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ…」とSU-が歌い、MOAを中心に前へ出たダンサーたちが舞台前面で踊る。そのドラマチックな演出に、感情がわしづかみにされ、涙があふれる。

10曲目「Road Of Resistance」。

イントロで中央ステージにSU-とMOA、両サイドステージにダンサー2人の合計4人が黒地にコロナの描かれた旗を背負って立っている。これはこれでメチャメチャカッコいいぞ。

戦国SEが流れる中、とったフォーメーションは、前にMOA、中央ステージにSU-、両脇にダンサー。

「♪1234」の掛け声から、「♪東の空を…」と歌い出したSU-の声が、また太くなっている。前のMOA、中央後方のSU、両サイドのダンサー2人の、ダンスのシンクロ率は半端ない。バンドを取り囲むようにダイナミックに踊る4人の存在感は圧倒的である。

何度も言うが、ツアーに向かって、4人は練習に練習を重ねたに違いない。すさまじいシンクロ率と体のキレ。

観客は驚嘆とともに大歓声を上げる。

「♪Wow Wow Wow Wow」のシンガロングは、会場を埋め尽くす勝利の雄たけびだ。

今は、このメンバーで戦っていく。

SU-、MOA、2人のダンサー、神バンドの気合に観客が呼応するダイナミズムに、見ているぼくは涙が止まらない。

「今日が明日を作るんだ、そう、ぼくらの未来、On the Way!」の後のSU-の叫びは「カンサスシティ!」

11曲目。静かなオーケストラとピアノのアルペジオで始まる「THE ONE Unfinished Ver.」。

「♪No reason why I can’t understand it. Open your mind we can understand it」
「♪Please let me know if you know this is the end of the world. Let me know if you know it’s the truth」とSU-が静かに歌い始める。
「♪We are THE ONE…」のコーラスにYUIの声が聴こえる。
SU-の後ろからは後光が差し込む。本当の女神のようだ。
2番を歌い終わった瞬間、広島と同様、バンドが入り、SU-の後ろの中央ステージにMOAとダンサー2人が気迫のこもった顔で入ってくる。それはYUIの不在に、MOAが2人の心強い新しい仲間を率いてきた、という風に見える。
「♪Stand in the circle pit side by side(Hand in hand)」
「♪Stand in the circle pit raise your hand(Ah-Ah-)」
神は、乗り越えられぬ運命を人に与えない。
世界の終わりを呪詛するメタルバンドは多い。だが、世界はまだ終わっていない。
BABYMETALはそれを証明するために生まれたのだ。
だから、どれほど理不尽な運命が襲い掛かろうとも、BABYMETALは仲間とともに乗り越えていく。
だから、THE ONEのみんなも私たちについて来て。
Metal Resistanceの旗のもとに。BABYMETALとともに。
そういうメッセージが伝わってきた。
SU-の「Singin!」という叫びに応えて、客席が揺れ、「♪Lalalala…」と大合唱する。
BABYMETAL World Tour 2018 Metal Resistance第7章。
荒野を彷徨うツアーは始まったばかりだ。
がんばれ!戦え!ぼくらのBABYMETAL!