好きすぎてツライ(10) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日4月18日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」編

●この曲の初披露はさくら学院2011年度転入式7月23日で、前年2010年11月28日に初披露された「ド・キ・ド・キ☆モーニング」に続く、重音部BABYMETALのオリジナル楽曲第二弾である。そのため、2011年には、TIF2011(8月28日)、タワレコNo Music, No Idol(10月12日)さくら学院祭(10月23日)で、2012年には、Women’s Power 20th Aniversary(2012年1月9日)、タワレコ15分1本勝負(4月6日)、第2回アイドル横丁祭(4月8日)、さくら学院2012年度転入式(5月6日)、タワレコPop'nアイドル02(6月23日)、ヘドバ行脚(7月7-8日)、Legendコルセット祭り(7月21日)、SuG LIVE BATTLE 2012 (8月20日)の各ライブで「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が父兄の前で生披露された。

しかしこの曲は、さくら学院のCDにも、インディーズCDにも入らず、セトリに入っていても配信動画ではカットされた。

Women’s Power 20th Anniversaryで初披露された「いいね!」とタワレコ15分1本勝負で初披露された「君とアニメが見たい」は、2012年3月7日リリースのスプリットシングル『BABYMETAL×キバオブアキバ』に収録された。

タワレコPop'n アイドル 02で初披露された「ヘドバンギャー!!!」は、2012年7月4日単独名義インディーズデビューシングルとなり、そのカップリング曲「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」は、リリース後のLegendコルセット祭りで初披露されている。

2012年度までのライブで「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の動画が残っているのは、Legend “I”(10月6日)、Legend “D”(12月20日)だけで、その後のさくら学院祭2012(10月27日)、AFA2012シンガポール(11月10日)でもこの曲部分だけが動画からカットされた。

要するに、この曲は2013年1月のメジャーデビュー曲となることが最初から決まっていて、それまでは音源や動画に残さないという方針が徹底されていたのである。

●それはなぜか。

BABYMETALが現在までにリリースした全27曲中、KOBAMETALが作詞者の一人にクレジットされている曲は10曲あるが、KOBAMETALが作曲者としてクレジットされているのはこの曲だけである。(作詞NAKAMETAL TSUBOMETAL作曲KxBxMETAL TSUBOMETAL)。

「BABYMETALのオールナイトニッポン」で、YUIはこの曲のMV収録時に、KOABMETALからギターを教えてもらったと言っていた。

大学時代にはメタルバンドを組んでいたというKOBAMETALが、この曲のサビや基本的なメロディを作った可能性もある。

ちなみに「ヘドバンギャー!!!」(Key=Dm)や、「BABYMETAL DEATH」(Key=B♭m)、「ギミチョコ!!」(Key=E)、「メギツネ」(Key=Fm)など、ほとんどのBABYMETALの楽曲は、ギターリフに7弦が必須であるが、初期の「ド・キ・ド・キ☆モーニング」(Key=Am)、「紅月-アカツキ-」(Key=F#m)と同じく、この曲は通常の6弦ギターで弾ける。

「普遍音楽文法」の記事で書いたように、この曲は魔法のようなコード進行構造を持ったパワーメタル/メロスピである。

Aメロの「♪夢を見るーこーとーそれさえも持てなくて 光と闇のはーざーまーひ・と・り」までのコードはC#m→B→A→Gm#→F#m→E→F#m→B。これを、6弦をルートにするコードのセーハするフレットで見ると、9F→7F→5F→4F→2F→0Fと、どんどん下降していき、開放弦Eのどん底から、2F→7Fと戻る。

サビの前半「♪イジメ(ダメ)イジメ(ダメ)かっこ悪いよ」は、C#m→F#m→B→Eで、同じく5弦ルートの4F→6弦ルートの2F→5弦ルートの2F→6弦ルートの0Fで、やはり全体が下がっていく感じになり、後半の「傷ついてー傷つけてー傷だらけになるのさー」の部分A→G#→F#m→E→A△7→G#7は、同じく6弦ルートのセーハコードなら5F→4F→2F→0Fと下がり、6弦ギターなら5弦ルートのAメジャーセヴンス(4弦2F3弦1F2弦2F)→4FのG#7に戻る。ここは、(6弦5F5弦6F4弦4弦7F)→G#7でもよいし、7弦ギターなら(7弦4F6弦6F)→G#7になる。

サビの最後は「♪君を守るーかーらー」はA→B→C#mで、5F→7F→9Fとなる。

要するに、ギターのフレット位置でわかるように、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は、どんどん下降していって、少し上昇するというコード進行になっているのだ。

人類には言語能力と同じく、生まれつき共通に備わった「普遍音楽文法」というものがある。

長調(ドミソ)には明るい感じを受け、短調(ドミ♭ソ)には悲しい感じを受ける。

下降していくコード進行には「状況が悪化していく感じ」を受け、上昇していくコード進行には「状況が好転していく感じ」を受ける。短調/長調、下降/上昇を繰り返すことによって、観客の心は無意識のうちに、絶望や希望を行ったり来たりすることになる。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は、これを最大限に生かした曲である。

間奏部のツインギターも、下降するフレーズと上昇するフレーズのせめぎあいとなっている。YUIとMOAの戦いにSU-が割って入る偽闘は、それを視覚化したものである。

ギターソロの最後、「AG#F#E・G#F#ED#・F#ED#C#・ED#C#B」と下降していったフレーズは「G#A#CC#・A#CC#D#・CC#D#E・F#G#A#CC#」と上昇して終わる。

「♪愛しさと切なさと…」のあと、サビが繰り返され、サビの最後「♪君を守るーかーらー」のところは、A→B→C#sus4→C#と、短調のC#mだった曲調は長調化する。

ここからがすごいのだ。

長調化したと思ったら、そこから半音下がってCに転調する。

「♪イジメ、ダーメ、ゼッタイー(ダメダメダメダメ)イジメ、ダーメ、フォーエバー」のところはC→D→Em→Bm→C→D→Gなのだが、ギターで演奏すると、5弦ルートの3F→5F→7Fから、6弦ルートの7F→8F→10Fから、5弦ルートの10Fという流れになる。

5弦ルートと6弦ルートを使って、フレットはどんどん上昇する。下降することがない。

これを2度繰り返したのち、最後の最後、「♪イジメ、ダーメー、ダーメー」のところは、

C→D→E、6弦ルートの8F→10F→12Fと上昇しきったところで、Eに転調する。

このEは、曲冒頭の「♪夢を見ることそれさえも持てなくて光と闇のはざま」とどんどん下降していった果ての0Fのどん底のEである。

それが、曲のフィニッシュでは、上昇しきった果ての大勝利の12FのEになる。

C#mは、もともとEの平行調である。曲中3回の転調(C#m→C#→C→E)を経て、短調がいつのまにか平行調の長調になる。Amで始まった曲がCで終わるようなものである。

日本語がわからない観客も、C#mから始まり、どんどん下降していくコード進行に絶望が深まっていくのを感じ、下降と上昇とのせめぎあいには、希望と絶望の戦いを感じ、上昇フレーズが勝利し、長調化し、コードがどんどん上昇していって、最後にEとなった瞬間、希望の大勝利!という無意識のドラマを体験することになる。

魔法である。これがSonisphere 2014の奇跡を呼んだ。

もしKOBAMETALがこのコード進行を考えたのなら、これこそ天からの授かりものだと思っても不思議ではない。ライブで披露はしても、メジャーデビューまで音源や動画を残さなかったのもうなずける。

(つづく)