Palladium参戦記(4) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

(現地時間6月17日午後7時)

★今日のベビメタ

本日6月19日は、2013年、2ndシングル「メギツネ」がリリースされ、TV埼玉「Hot Wave」に2度目の出演をした日DEATH。このとき、YUIに身長を抜かれた話題となり、MOAが「(もう一度)抜かすんで、ダイジョブDEATH!」と言ったのが、無茶苦茶可愛いです。

 

ヘルイェーのOAが終わったのは午後9:00。

「前座」だと思っていたが1時間12曲も演奏し、ほぼ対バン状態で重い音とチャドのグロウル、シャウトに疲れ果ててしまった。

このインプレッションは後日。

休憩時間、一日中列に並び、ヘルイェーでとどめを刺された痛む腰、棒のようになった足を休めるため、座り込む。背もたれがあるので楽だ。

午後9:27、BABYMETALのバックドロップが上がる。ヘルイェー後半からまた客が増えており、狭い会場に大歓声が沸き起こる。

「チャッチャッ、チャチャチャチャ、ベイビーメート―」の声が響く中、客電が落ち、暗闇に「A long time ago…In Heavy Metal Galaxy, Far, far away…」が始まる。

「Are you ready?」に場内は「Yeah‼」という怒号のような歓声で充満する。「It's time to Metal Resistance with BABYMETAL,METAL, METAL, METAL…」

から「BABYMETAL DEATH」が始まった。

目の前のアリーナ席最後列が、どんどん前に行く。圧縮である。

下手から、フードをかぶった三人がしずしずと登場してくる。

スクリーンがないため、アップの表情はわからないが、BABYMETAL体操でお立ち台に上がったYUIとMOAの体のキレは素晴らしい。下手のMOAのコスチュームからだと思うが、赤いものがぴょーんと上手側客席に飛び、SU-がちょっと心配そうにその方向を見る。だが、大したことではないので、トランス状態からステージを駆け回る三人の表情は、徐々に緩んでいき、下手へ回ったYUIは盛り上がる会場にコスプレの女の子を見つけたのか、指さしでニコニコ顔になる。上手のMOAも「DEATH、DEATH…」の大合唱の中、ニコニコしている。いやあ、やっぱベビメタはいいね!

2曲目は「Yava!」。地名煽りのできる「いいね!」ではなく、セカンドアルバムの曲を持ってきた。今回は単独ライブなので、「What’s Up?Hollywood!」みたいな地名連呼は不要ということだろう。SU-のボーカルは突き刺すような高音の伸び。会場のPAは音が悪い。ヘルイェーのときもそうだったが、高音が強調されすぎて時折ハウる。MOAとYUIの声もよく出ているのだが、ややカエル声に聴こえる。ただ、三人のダンスの息はぴったりで、キレキレ。この曲特有の「あれどっち、これどっち」のフリがピシッと決まる。

3曲目は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」

イントロが流れた瞬間、会場から大歓声。思えば2014年のThe Fonda Theatreでは、この曲がまさかハリウッドで流れるなんて…という驚きがあったと思うが、今回はヴィニー・ポールをOAにして、「ぱっつんぱっつん前髪ぱっつんキューティスタイル…」である。振付は2010年のデビュー時から一切変わっていない。大きくなった身体で踊るロボットダンスがカワイイ。一発目の「今何時!」から会場は叫ぶ。2発目からSU-の煽りが「Sing!」と入るとほぼ会場の全員が叫ぶ。ヘルイェーが重かった分、みんな知っているベビメタらしいポップチューンで、ノリノリとなる。目の前にいるヒスパニックの女の子、隣にいた長身の金髪モデル風美人が「リンリンリン!」と踊りながらニコニコ顔になっている。

4曲目、セカンドアルバムでおなじみの「あわ玉」の電子音のイントロが流れ、神バンドの三人がステージ前面にせり出してくる。1月ガンズ以来の「あわ玉神ソロ」である。

本日の、そしてKORNツアーの神々は以下の通り。

下手ギターの神、藤岡幹大神。安定の変態ソロ。アームアップでぎゅーんと音が伸ばすと大歓声が湧く。上手は東京ドーム以来の大村神。LEDA神とはやはり一味違い、手数が多くキレキレの速弾きソロ。表情も豊かで客席を煽りまくる。お帰りなさい、大神様。

BOH神も前半の指弾きから後半のスラップ奏法まで首尾一貫、練られたソロ。一見豪快な禿神は、生真面目さの塊である。

そして、4月の東海岸にはいなかった青山神のソロ。手数の多さ、正確なリズム感。あれだけ叩きまくっているのに、上半身がピシッと安定している。かど神の荒々しさとは対極の端正なドラミングである。いきなりヴィニ―・ポールとの対バン状態だが、やはりBABYMETALには青山神がいなくてはならない。

もう一度イントロが流れ、三人が「ハイ、ハイ…」と入ってくる。観客席は興奮のルツボと化す。このあたりで、下手にクラウドサーファーが次々に現れた。アメリカ人はホント好きですねー。後ろから見ているとよくわかるが、サーファーを避ける動きに連動して、前列は上手、下手へと圧縮がウェーブしている。

あとから最前列下手にいた方から聞くと、そのあたりは女性が多く、圧縮で大変キツイ状態だったとのこと。そこへ上からサーファーが来るので、たまったものじゃなかっただろう。

「あわ玉」が終わり、大歓声の中、ウェンブリー、東京ドームと同じ壮大なオーケストラのイントロが流れる。

6曲目、SU-ソロの「Amore-蒼星-」である。

「あーいーのこーとばあー」と冒頭からSU-の歌声に魅了される。ピッチは正確。ぶっ速い青山神のブラストビートとツインリードで、リズムが乱れそうなところ、SU-の歌が入ると曲の芯が決まる。SU-の歌は、神バンドを引っ張っていくひとつの楽器なのである。ウェンブリーと同じく2番終了後に短い無音状態になるが、そのあとはDVDと同じく超正確な原キーのアカペラで歌い始める。そして、マントを着ていないのに、キレキレのダンス。男前な表情、ぞくぞくする目の配り。今回は、改めてSU-のパフォーマーとしての底知れぬカッコよさに気づかされた。

暗闇にドラムの「ドンドンッドドン」「メタ!」が響く。会場も「メタ!」の大合唱。

YUI、MOAが合流して「メーター太郎、メーター太郎」と7曲目「META!メタ太郎」が始まる。意外なことに、アメリカの観客はこの曲が大好きみたいだ。多くの女性客が敬礼のフリコピをしている。また、東京ドームの「WooWooWoo」のシンガロングを知っているようで、みんな歌っている。今回のセトリは、セカンドアルバムからの曲が多く、14曲中、ファーストからは「BMD」「ド・キ・ド・キ☆モーニング」「メギツネ」「ギミチョコ」の4曲のみ。そして、単独ライブだけにアメリカの観客も曲をよく知っている。東海岸と違うのは、ヒスパニック系、黒人系の観客も大勢いたことだ。スノッブな日本文化好き層だけではなく、幅広い人種、階層にBABYMETALが受け入れられているということだろう。

暗転後、デモーニッシュなイントロが響く。

9曲目「Sis. Anger」である。観客はやはりKawaii&ブラックメタルのギャップを楽しんでいる。

YUI、MOAのダンスのキレ、歌唱力の素晴らしさは特筆される。PAが悪く割れた音なのに、日本語ラップがちゃんと滑舌よく聴こえる。

Redditに、YUIとMOAの声質について、似ていて聴き分けができないとか、YUIの方が高音寄りだというスレが立ったが、しかしぼくの耳には、MOAの方が高い周波数で、金属的なほど遠くまで届くのに対して、YUIの方が若干低音寄りで、しっとりと聴こえる印象がある。この曲のようにユニゾンだとはっきりとそれがわかる。観客はこの曲もお好きなようで、「ざっけんじゃねーぞ」のところで「オイ!オラ!」と合の手を入れる。このへんはヒスパニックが多いので、「オラ!」が「Hola!」に聴こえるのかもしれない。

暗転して二人が袖に下がると、「さくらさくら」のメロディが繰り返される。今回は、「メギツネ」衣装に着替えて、下手からゆっくり登場し、深々とお辞儀をして、着物を脱ぎ…と憎らしいほど時間をかける。

戦後まもなく、ここ、西海岸ではWWAというプロレス組織があり、グレート東郷らの日系人レスラーがヒールとして活躍した。悪役“ジャップ”として、リングに登場すると塩をまき、キモノ風のコスチュームをイライラさせるほど時間をかけて脱ぎ、抗議する相手の金髪白人ベビーフェイスのレスラーと観客の憎悪を煽る。そしてブーイングがピークに達したところで“卑怯にも”脱いだ下駄で相手レスラーに殴り掛かり、塩を目になすりつける。最初は「奇襲」にたじたじだった白人ベビーフェイスは、後半、堪忍袋の緒が切れて、ジャップレスラーを叩きのめす。こうして、興業は大盛り上がり、日系人レスラーは大金を稼いだ。

そんなことが、文化系プロレスファンのぼくの頭の片隅に浮かんだ。

BABYMETALに関してはそんなことはない。イントロの間中、観客は「ハイ!ハイ!」と合いの手を入れて、「さくらさくら」の終わりを待つ。

和楽器のフレーズで、YUI、MOAの白狐ポーズがぴたりと決まる。

一気に「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の大熱狂タイムのスタート。

「♪いにしーえーのー」からのSU-の歌は、必死でハウリングを防ごうとPAがフェーダーを動かすので強調周波数が変わるが、ピッチは正確である。モニターがなく、三人の顔のアップが見られないのが残念だが、後ろから見ていると、観客が「塊」になって左右に動いている。そしてブレイク。

「Hey Guys Clap your hands!」「Now, let’s jump up with the Fox god。Are you ready?」

最初は可愛く。次は「Are… you… ready?」と鋭く。最後には「あーーゆーーレディーーーー↑」とシャウト。観客は「ウオー‼」と応える。そしてすぐに、「あそれ、ワン、ツー、あワンツースリージャンプ!」とジャンプ。アリーナのほぼ全員がジャンプしている。

「ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!ジャンプジャンプOne more!」で、もう4小節。

こうなるともう会場が圧倒的に狭いことに欲求不満さえ感じる。もっと広く、もっと天井の高い大会場、あるいは野外こそBABYMETALにはふさわしい。

大熱狂の「メギツネ」の後は、照明が暗転し、10曲目「ギミチョコ」。

いつものパターンと言えばその通りだが、やはりここロサンゼルスで一番人気はこの曲だった。

昼間、列に並んでいた前後の現地メイトさんたちは、ダダ漏れのリハ中から「ギミチョコ」に食いついていた。

青山神のドラムとBOHのベースのタイトなリズムキープに、藤岡・大村両神の跳ね回るギター、そこに三人のヘンテコ頭指しダンスがのっかるこの曲はやはり最強である。

観客は「ずっきゅん」「どっきゅん」に唱和し、SU-のボーカルには「チョコレートチョコレート」と歌をかぶせる。今回は煽りナシ。CD音源通りに曲が終わる。

照明はさらに青く変わり、11曲目「KARATE」。

イントロが流れると「ウオー」という歓声が会場を満たす。

BOHはぴょんぴょん飛ぶ。大村神も表情で観客を煽る。

ブレイクのところは、期待通りレッチリ仕様だった。

「How you feeling…How you feeling, Hollywood!」

観客「Yeah!!!」

「Take your phone out」「Turn on your camera light」「Oh my gosh, its amazing!」「I wanna see more!」「Show me your light!」と畳みかけ、ハミングに入る。

メロディラインは堂々としたもの。アドリブでちゃんと「♪Wowowow」につなげる音程だが、結構冒険する。

最後の握り拳をキツネサインに変えるフィニッシュもぴたりと決まる。

ここで、ウェンブリーと同じ壮大なオーケストラとナレーションが会場に響く。12曲目「The One」である。

三人は金色に輝くガウンを纏って下手から登場。会場のボルテージがさらに高まる。

「♪No reason why, I can’t understand it…」と歌いだすと会場はSU-の歌に聞きほれる。

「We are The One forever we are only one…」のところ、YUIとMOAのコーラスは、生歌。で、ちょっとピッチがずれた。

間奏部分で、三人は歩みを速める。だがいかんせんステージが狭い。三人の動きはウェンブリーのように島部分に進むのではなく袖に行って、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のように中央に集まるので、“能”のような動きとなった。

「♪ララララ―」のところでは、ウェンブリーと同じタイミングでSU-が「Sing it!」と叫び、観客もシンガロングする。客席にはオランダ、メキシコ、日の丸、BABYMETAL旗が揺れる。ぼくもベビメタ旭日旗を持ち込んでいたが、これは後述。

曲が終了し、暗転。

会場からは「ベイビーメート―」の合唱と、「One more song!」の声が響く。ぼくの後ろの手すりの上にちょこんと座って見ていた5歳くらいの女の子が可愛い声で「BABY、METAL!BABY、METAL!」と叫んでいる。

ウェンブリーなら、ここで紙芝居から「Road of Resistance」で終了だ。

しかし、ここで聴きなれないオーケストラが響く。客席に緊張が走る。

幻想的なイントロから、ドラムとへヴィなリフと電子音。

観客席から悲鳴交じりのどよめきが起こる。

シンセサイザーと激しいドラム。壮大なプログレ、シンフォニックメタル。

「♪In the air…」

SU-の歌声がイリュージョンのような空間を切り裂く。世界初ライブとなる「From Dusk till Dawn」である。リハの音漏れを聴いてすぐにアップしたとおりだった。!(^^)!

SU-のソロではなかった。両脇にYUIとMOAがまさに「表現」となるMIKIKO師直伝のダンスを踊っている。SU-がマイクを離している間にコーラスも歌っているかもしれない。

EU盤とUS盤にしか収録されていないので、公式歌詞カードは存在しない。ネット上に出回っている歌詞は、ライブでのものと違う気がする。詳細は後日確認したい。

https://www.youtube.com/watch?v=TlxNYKY8Ipc

「ブレイク!」以降のダンスは、このユニットが「メタルダンスユニット」であり、ダンスがメタルの一つの表現となっていることがよくわかる。

激しく楽しいだけがBABYMETALじゃない。意味深な歌詞を観客に伝える総合アートとしてのメタルなのだ。これは、今後のBABYMETALの方向性を示唆する。

観客は歴史的瞬間に立ち会ったことに大興奮。そして大感動は、14曲目、フィニッシュ曲の「Road of Resistance」でやってきた。

いつものように戦国時代の雄たけびのSEから、三人がBABYMETAL旗を持って登場。

SU-が客席を2つに分けるWall of Deathのポーズをすると、アリーナの客席が紅海のモーゼのように二つに分かれる。「1、2、3、4」から大モッシュ。観客はいったんぶつかった後、キレイに反時計回りに回りはじめ、アリーナ席の中央に直系40メートルほどのサークルができる。それは曲の間中、途切れることなく回り続けた。誰かリーダーが命じたわけではない。少なくとも数百人~千人以上の観客が同じことをしたのだ。ぼくの隣にいた長身の金髪モデル風も、ヒスパニックの女の子も、日本人の中高年ご夫婦の奥様の方も、がまんできなくなってサークルの中に入っていった。観客全員に喜びがあふれている。

それは、「FDTD」を世界初披露してくれたBABYMETALに対する「御礼」のようだった。

なんてすばらしいコミュニティなのだろう。ここにはThe Oneで見たように、また、列に並んでいた人たちにインタビューして分かったように、アメリカと日本だけではく、UK、ハンガリー、チェコ、オランダなどのヨーロッパから、また南米コロンビア、隣国メキシコ、アジアから台湾、インドネシアなどのファンが、2017年初のBABYMETAL単独ライブを心待ちにして集まっていた。

そして、その思いは、ぼくのように幸運にもこの場にいられたメイトだけでなく、日本で、世界で、Palladiumのライブに心を寄せていたすべてのメイトさんの心に直接つながっている。

「WooWoo…」のシンガロングの際には、少し回転が弱まり、歩きながらキツネサインを突き上げる形になったが、シンガロング後半からは当然のようにスピードアップして回り続けた。

「命が続く限り、決して背を向けたりはしない」「今日が明日を創るんだ、そうぼくらの未来 on the way」のあとは、

Come on Hollywood!!

でした。

そして、「ぼくらのResistance!」

「We are?」「BABYMETAL」はステージが狭い分上手、下手へはいかなかったが最後のSU-の「We--------------Are----------------?」は過去最高レベルの長さ。ヘルイェーのチャドの屈伸シャウトに学んだか。

観客も負けじと「BABY--------METAL--------!!!」と応え、SU-の「Get your Fox Hands U-----P!」「あー」で大団円。

最後のSU-の挨拶は、

「Very big thanks to coming our special live tonight!」観客「Yeah!!」ピーピーピー。

「You guys amazing!」観客「ウオー!!」ピーピーピー。

「See you!」観客「See you! ウオー!」

だった。

大満足、大興奮、大感動のライブだった。

終了は午後10時40分。外は昼間の灼熱が嘘のように涼しかった。

(つづく)