ちっちゃくないもん | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日5月22日は、過去BABYMETAL関連では大きなイベントのなかった日DEATH。

 

ぼくの寝室には世界地図が貼ってある。

ダイソーで買ったメルカトル図法の世界地図である。太平洋をはさんで右に南北アメリカ、上にユーラシア大陸、左にアフリカ大陸という配置で、日本が世界の中心に来る。

いわば日本標準の世界地図だが、その中で赤く塗られた日本はとても小さく見える。

地図は世界観を作る。

日本の経済規模は世界有数なのに、とても小さい国である、という思い込みは、ぼくの小学校時代から形成されてきた。これを逆に考えて、とても小さい国なのに、世界有数の経済大国になったのだから、日本人は凄いのだ、という思い込みにも転じる。

最近、こういう世界観を修正しなければならないなという世界地図がいくつか現れた。

ひとつは、2016年のグッドデザイン大賞を受賞した「オーサグラフ世界地図」(慶応大学政策・メディア研究科鳴川肇研究室+オーサグラフ株式会社)。

多面体図法を用いて、心射投影と正射投影を組み合わせ、大陸の面積と形の歪みを最小限に減らし、平面に収めた世界地図で、アフリカが大きく、ユーラシア大陸、とりわけヨーロッパ地方が小さく、南米の形が横長に見える。グリーンランドはオーストラリアの3分の1程度だし、南北アメリカをつなぐ地峡と同じように、南アメリカと南極大陸が狭い地峡でつながっていても不思議ではないように見える。

メルカトル図法を見慣れた目には、これらの大陸の大きさや形が歪んで見えるが、実はこれが本当の姿なのだ。つまり、メルカトル図法によって形成されたぼくらの世界観の方が歪んでいたというわけだ。

これを見ていると、日本からヨーロッパへ行くのに、ロシア上空を通っていくのが最も直線的だというのもわかるし、南米へ行くのに、アメリカ南部を経由するのも合理的だとわかる。さらに、アフリカ東岸で発生したホモ・サピエンスが、中東を経由して北へ向かえばヨーロッパに行くし、ユーラシア大陸の海側を進み、右折すれば東南アジアからオーストラリア、ミクロネシア、ポリネシアへと広がっていくし、内陸をまっすぐ進んでいけば、シベリアを経由して、北アメリカ、南アメリカへと到達したこともよくわかる。

大陸からちょっと突き出した温暖湿潤な弧状列島である日本は、氷河期のシベリアへ向かうのを躊躇した人々が、樺太やカムチャツカ半島からアリューシャン列島を通って、ちょっと南へ戻って発見した、ちょうどいいファイナルディスティネーション(最終目的地)だったのだろう。もちろん、中国南部から琉球列島沿いに来た人々や、朝鮮半島から来た人々もいた。少なくともその三方向からたどり着いた人々が共存するための知恵が、宗教的権威としての天皇制であり、「和をもって貴しとなす」という憲法だったのだろう。

もうひとつの世界観を変える地図は、ネット上にある地図である。

http://thetruesize.com/

これは、一見何の変哲もないメルカトル図法の世界地図に見える。しかし、国名を指定することで、その国を同じサイズのまま地図上で移動させることができる。

日本列島をヨーロッパに移動させてみると、実は、ドイツからフランス、スペインまでを覆う、長大な列島であることが分かる。フランスやスペインは正方形に近い形だから、面積では日本より大きいのだが、ベルリンを網走に置くと、マドリードは鹿児島に当たる。

日本が一国でEUに匹敵する経済規模を持っているのは、不思議でも何でもない。日本は、国の大きさ、人口、そして多様性において、少なくとも西ヨーロッパに匹敵する規模を持っているのだ。

同じように、日本をアメリカに持って行ってみる。

BABYMETALレッチリUSサポートツアーの「振り返り」で書いたように、ワシントンDCからフロリダ・マイアミまで、BABYMETALの移動距離は、北海道-鹿児島間を往復する距離だった。しかし、それは都市間をジグザグに行ったり来たりするからであって、ニューハンプシャー州からジョージア州まで、ほぼ日本列島が覆いかぶさり、フロリダ半島は奄美から沖縄までの感じである。

6月にKORNと回る西海岸も、面積こそアメリカの方が大きいが、長さでいえば、オレゴン州、アイダホ州からカリフォルニア半島の先っぽまでが、ほぼ日本列島+沖縄と同じである。

アメリカと日本のGDPの差は3-3.5倍。同じく人口は2.5倍。

アメリカの都市圏は、東海岸~南部、西海岸、中西部の3か所しかない。そのほかの地域は原野、森林、砂漠に点々と田舎町が連なるばかりだ。日本列島はそれぞれの都市圏とほぼ同じ大きさだから、「アメリカは50州もある巨大な帝国」、「日本は小さな島国だ」と思い込む必要はない。要するに日本が3個分だと思えばわかりやすい。

中国に関してもそうだ。

日本列島は、北京から上海、香港までのいわゆる沿岸地域にちょうど重なる。

人口が多いから、必要以上に中国は大きいと思ってしまいがちだが、経済の発達した沿岸部と日本の国土はほぼ同じ面積である。

つまり、日本は小さくない。

西ヨーロッパ、アメリカ東海岸、西海岸、中国沿岸部とほぼ同じ大きさであり、経済規模も地域を限ればほぼ同じ。人口の多い中国はともかく、近代化され、一定の国土と人口からなる世界の先進地域のひとつというだけだ。

なぜ、ぼくらは、日本は小さな島国だと思い込まされてきたのか。

ひとつには極地に近いヨーロッパが、メルカトル図法では巨大に描かれるということがある。ロシアは面積が世界一の国であるが、アフリカ大陸に重ねてみると、半分しかない。

カナダも巨大な国土を持つと思ってしまうが、オーストラリアに重ねてみると、ほぼ同じ大きさである。グリーンランドは、オーストラリアの3分の1しかない。

逆に、赤道近くにある国は、北へ移動させるととんでもない大きさだということがわかる。

SU-の好きなアフリカのウガンダの隣にあるコンゴ民主共和国は、東西ヨーロッパ全土分の面積がある。内海を含むフィリピンは、イギリスのほぼ2倍の大きさである。

ぼくらは、見慣れたメルカトル図法の世界地図で、北にある国は実際以上に大きく、南にある国は実際以上に小さいと思わされてきたのだ。

ぼくらが日本を小さいと思わされてきたのは、もうひとつ、教育の影響があるだろう。

敗戦後、GHQの民間情報教育局(CI&E)は、日本が再びアメリカの脅威となる軍事大国にならないように、軍人の戦争責任だけでなく、国民全体に「戦争に対する罪の意識」をもたせようとした。いわゆるWGIP(War Guilt Information Program)である。

1945年に発行された「太平洋戦争史」や、ラジオ番組「真相はかうだ」などにより、日米戦争は、アジアを欧米列強の植民地から解放するための「大東亜戦争」ではなく、アジアを侵略する日本に対して、真珠湾攻撃の「卑怯なだまし討ち」によってアメリカが立ち上がった正義の「太平洋戦争」であり、本土爆撃や原爆投下、敗戦という苦難はすべてアメリカ軍ではなく、無謀な旧日本軍人の責任であるとされた。

CI&Eは、日本国民に「戦争は罪」であるという贖罪意識と「日本はとても小さな島国であり、西欧列強と伍して戦うなどという大それたことはできないのだ」という意識を植えつけ、いわば精神的な武装解除を行ったのである。

戦争の放棄と戦力の非保持、基本的人権の尊重を旨とした新憲法が1947年5月3日に施行され、1951年に署名され1960年に改定された日米安全保障条約の「セット」によって、戦後日本の基本路線が定まった。そのため、教育やマスコミ、言論界のベースは、WGIPから逸脱することができなかった。

それが日本の軍事的・政治的安定をもたらし、対米従属といわれながらも、70年間の繁栄をもたらしたことは事実である。しかしもちろんそれは、アメリカのおかげではなく、こうした条件を課せられつつ、日本人が必死で働いてきた結果である。さらにいえば、もともと十分な広さの国土と人口を持ち、1500年間継続した統治機構があり、明治時代以降、近代化に成功した先進地域の一つであった日本は、それだけのポテンシャルを持っていたのである。

現在、インターネットの発達によって「太平洋戦争」への評価も、日米安全保障条約と憲法のセットも、世界観も、あらゆることが見直し可能な時代が到来している。

欧米とは「異質」で「遅れた」「東洋の小さな島国」にも関わらず、そこで生まれたBABYMETALが「本場」の欧米を席巻しているといった見方には、ぼくはちょっと違和感を覚える。

日本は開かれており、海外とは地続きである。日本のパスポートを持っていれば、北朝鮮を除いて、世界中のどこの国にでも自由に渡航できる。宗教的な抑圧もない。日本ほど自由で、大きな経済規模を持つ先進地域なら、卓越したロック音楽のアーティストや演奏者が生まれてくるのは不自然ではない。実際、70年代から日本には素晴らしいロックバンドが数多く存在したし、海外進出したバンドもあった。

欧米が「本場」という言い方は、ファンの需要があるためバンドも多く、市場が大きいということに過ぎない。その市場でアイドル出身のBABYMETALが、しかも日本語の楽曲でデビューするのは確かに大変であり、ましてやその楽曲、歌唱、ダンス、パフォーマンスが、耳の肥えたオーディエンスに評価されたことは、文句なしに偉業である。しかしそれは「起こり得る筈のない奇跡」ではなく、少なくとも起こる可能性があったことだ。

その偉業を達成できたのは、ひとえに人の心を動かす、クオリティの高い音楽を創ろうという少女たちとチームベビメタの努力のおかげだが、もうひとつあげるとすれば、「日本はちっちゃな島国だから」という思い込みに対して、「ちっちゃくないもん」(by YUI)、「抜かすんでダイジョブDEATH」(by MOA)と言い続けた、その心意気にあるのではないか。

それは実現した。

シャーロットで見たYUIもMOAも本当にデカくなっていた。

2011年度のスペシャルドラマで「アイリン、ずるい」と言っていたお人形さんのようなYUI、2013年、初出演したテレビ埼玉「Hot Wave」で、「ちっちゃい頃」テニスをやっていた話をしようとして、司会者に「今もちっちゃいよ」と突っ込まれ「ちっちゃくないです‼」と返していたMOAとは、別人のようだったよ。

あれ、何の話だったっけ。