獣ツアー参戦記 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日5月9日は、2015年、メキシコ公演(メキシコシティ、Circo Volador)が行われた日DEATH。初の高地ライブで、神バンドソロを2回挟むなどセトリの工夫があったにもかかわらず、過酷なライブとなりましたが、「ヘドバンギャー!!!」から「ROR」と続くアンコールフィニッシュでメキシコファンを感動の渦に巻き込みました。

大型連休最終日の5月7日、恵比寿ガーデンホールで、さくら学院2017年度転入式が行われ、7代目生徒会長に山出愛子、トーク委員長に岡田愛が選出されました。鹿児島から最遠距離“通学”をしていた山出愛子は、歌唱力において中元すず香、菊池最愛と同じく卓越した歌唱力、シグネチャーボイスの持ち主。今年度の転入生は小等部5年に、田中美空、八木美樹の2人。田中美空は、「譲れないもの」を聞かれて「犬だけは譲れません」と天然キャラ爆発。期待できます。
結成以来7年目を迎えたさくら学院。松井愛莉、三吉彩花、BABYMETALら一線で活躍する卒業生が増える中、山出愛子は、「史上最高のさくら学院を目指します!」と力強く宣言したとのことで、胸が熱くなりました。

同日、ぼくは吉澤嘉代子「獣ツアー2017」に参戦したので、そのインプレッションを。
吉澤嘉代子は、BABYMETALとともにぼくが追いかけているシンガー・ソングライターで、現代詩のような言語感覚の歌詞と、ポップで多彩な音楽性、独特のファルセットを多用しつつも、路上ライブで鍛えた正確なピッチの歌唱力を持つ。
ギターも弾くから「ギター女子」の括りだが、「等身大」の自分を歌うのではなく、自ら創造したキャラクターを演じて曲を作るのが特徴。幼いころ「魔女の宅急便」を見て魔女修行に明け暮れていたが、サンボマスターと出会い、ほうきをギターに持ち替えて、音楽という本物の魔法を身に着けた。中島みゆきと同じくヤマハのコンクール優勝者でもあり、可能性は無限大である。
2017年3月15日に3rdアルバム「屋根裏獣」をリリースし、今回のツアーは岡山、仙台、東京、福岡、大阪、名古屋と回る。
ぼくが参戦した東京国際フォーラム・ホールCは、SU-METALこと中元すず香が2013年3月31日にさくら学院卒業式を挙行した由緒ある会場である。
BABYMETALとのつながりはそれだけであるが、シャーロットのSpectrum Centerと比べるとやはり小さい。ここでSU-が「My Graduation Toss」を歌い、MOAが「卒業しないで!」と抱き着いたのだなあ、とちょっと感慨。
ファンクラブ先行では落選し、ヤマハのモバイルチケットシステムで当選したため、ぼくの席は2階だったが、真正面だったので非常によく観えた。


舞台中央にはファンシーな白い鏡台。例によって小芝居に使うためであろう。
定刻10分押しで客電が落ち、ピンクのビザールギターをもって吉澤嘉代子が登場したオープニングは「屋根裏獣」の1曲目、「ユートピア」。市民プールの情景が、遠い海の情景、悲しい恋の妄想へと変形していく。「♪オロロン、オロロンと泣くのでしょう」は生で聴くと相当色っぽい。吉澤劇場、開幕である。
2曲目、吉澤はエプロンをつけて登場。どうやら今回の小芝居のストーリーは若奥様。しかし、エプロンといえばあなた、デビュー当時、ソックリと話題になった小保方晴子さんですがな。あ、あれは割烹着か。場内誰も突っ込まないが、一人ニヤつく。
「♪ラブラブ」というロックンロール風の曲だが曲名は不明。
「夫」を愛しているという小芝居が続く中、3曲目は「屋根裏獣」および「美しい人たち」に収録の「ねえ、中学生feat. 私立恵比寿中学」。
4曲目も、仕事に行った「夫」が電話をかけてくれないという小芝居が続く。しかも待つ電話は昭和の黒い固定電話である。「♪ラリルレリ」はロカビリー風。やはり吉澤嘉代子は“昭和”が好きなのだなあ。
ここで、「夫」のお母さんから電話が入り、「何やってるのカヨコさん。初めていらっしゃった方もいるのだから、小芝居の意味をちゃんと説明しなさい」と叱られた吉澤は、ようやく観客にライブ参加のお礼と、今回は「若奥様」に扮してストーリーが進みますというアナウンス。
続いてヒップホップ風にバックバンドのメンバー紹介を始める。
東京会場のバックバンドは次の通り。
D:伊藤大地、B:ガリバー鈴木、K:山本健太、G:Kashif
全員若手のセッションミュージシャン。
「屋根裏獣」の収録楽曲は、4ビートのジャズから、アコースティックな弾き語り、軽快なポップ、ベンチャーズ風、へヴィなパワーポップまで多様だが、しっかりバンド感を出していた。
5曲目「えらばれし子供たちの密話」はKashifのアコギをフィーチャーし、親に隠れて、夜遅くまで電話で話し合うという子ども時代のワクワク感を表現した楽曲だが、後半のファルセットの「Hmm…Hmm…」のメロディ感は「ねえ中学生」や「未成年の主張」につながる吉澤節である。
6曲目「屋根裏」。小林旭の「さらばシベリア鉄道」風の楽曲で、イントロのリフは、銀色のヤマハSGを抱えた吉澤自身が弾いている
7曲目「人魚」。アルバムでは2曲目に位置し、市民プールから海辺妄想へとつながっていくが、今回のステージでは、架空の「夫」との出会いを描くように置かれている。一人の男性を愛し、海を捨てる「人魚」に託した、恋して変わっていく女性の宿命?が表現される。
だがその相手は、そこまで自分のことを愛してくれてない風。それでも自分をきれいだと思ってくれればいいというセリフから、8曲目は「綺麗」。2階席だったせいか、前回の秋のライブでは盛り上がった「キラッキラッキラッキラ」「ぴかっぴかっぴかっぴか」のフリを回りは誰もやってない。新規さんが多いのかな。それはそれでいいことだけれど。
電話をくれない「夫」への想いが募っていくが、姑、小姑には「ダメな嫁」扱いされ、やっと帰ってきた「夫」にも「お前、ダメじゃん」と言われて、大鎌を振り上げて殺してしまう小芝居からの9曲目は「地獄タクシー」。
まあ、アルバムの曲からして最初からこうなることは予想できたがな。
えとですね、吉澤嘉代子のライブというのは、こういう女子中学生が考えそうな学芸会風シナリオと説明的演技に生ぬるい目でつき合いつつ、楽曲、世界観、サポートミュージシャンの演奏、そして吉澤嘉代子の歌唱、「天才がそこにいる」感を楽しむものなのであります。
あ、いいこと言った。そう、吉澤嘉代子は「会いに行ける天才」なのであります。
間違っても、吉澤嘉代子のライブに、ユーミンや中島みゆきのような壮大なスペクタクルや大会場のスケール感を期待してはいけない。
そして「若奥様芝居」終了後は、さらにチープな「獣昔ばなし」。
ステージ下手に置いてある巨大ラジカセから流れる「昔々、あるところに辛い麻婆豆腐を作る痘痕の婆がおったとさ…」という語りで始まる10曲目「麻婆」。
これもアルバムから想像した通り、吉澤はチャイナドレス風の衣装に着替え、中国風の竜の神輿?を担いで客席を回り、「ウー麻婆!」「ウー麻婆!」と観客にシンガロングさせる。1回客席を一周すると、そのまま楽屋に消えた。
ここでKashifによるアコギのソロ。場内はロマンチックな雰囲気に。ゆっくり出てきた吉澤は、鏡台の前に横座りして、11曲目「カフェテリア」を歌う。あれれ、まだ若奥様小芝居は続いていたのか?
しかし、生で聴く「♪私の心はじんじん」は、やっぱり萌える。
そこにかけたわけでもないだろうが、サーカスの“ジンタ”風の3拍子に、ピアニカに持ち替えたキーボードのイントロから、12曲目「ぶらんこ乗り」。
やっぱりもう小芝居とは関係なく、中国コミック→海辺のカフェ→夕暮れのサーカスと、独特の吉澤世界が展開する。
そして13曲目、フィニッシュソングは、アルバム最後に置かれた「一角獣」。
ぼくはファーストアルバムの「泣き虫ジュゴン」と同じく、カラフルな吉澤世界の「素」がこれだと思っている。「♪誰かに会いたいけど、それが誰だかわかんないよ、あなたじゃないのは確かなことだけど」と歌いながら最後には「♪あなたに会いたい」と絶唱する。ポップな吉澤嘉代子もいいけれど、こういう名曲があるのが、彼女の真骨頂である。

アンコールの拍手に迎えられて一人で出てきた吉澤は、今回のツアーのグッズを紹介。「地獄タクシー」Tシャツ、「選ばれし子供たち」ボトル、麻婆キャップなどなど。そして吉澤Tシャツを着たバックバンドが再登場し、初メジャーシングル、初テレビドラマ主題歌となる5月14日発売の「月曜日戦争」をアンコール1曲目に持ってきた。
バカリズム脚本のドラマの視聴率次第だけど、売れるかなあ。
ここで吉澤が衝撃告白。実はこれまで出してきた3枚のアルバムの楽曲構想=「やりたかったこと」(吉澤談)は、デビュー前に決まっていたというのである。あの多様な音楽性は、路上ライブの頃から書き溜めてきた楽曲に、すでに包含されていたというのである。恐るべき才能。「会いに行ける天才」とか浮かれている場合ではない。いや、ファンとしては浮かれていいのか。
そして、吉澤はこの3枚のアルバム収録曲の中で「一番大事な曲」という「ストッキング」(1stアルバム「箒星図鑑」収録)を熱唱。
そういえば歌詞の冒頭は「♪金曜ロードショウ、何となく観てしまう。魔女の宅急便に泣いた十三歳の夏にはもどれないことを知るーうー」だったっかな。
今日の記事の頭で書いたように、ここに吉澤嘉代子というアーティストの原点があることは確かなのだ。
客電が落ちてもまだアンコールの拍手は止まない。一人で出てきた吉澤は、「月曜日戦争」にカップリングされるという楽曲の、なんと“カセットテープ”を持っている。どこまで行っても昭和だ。その曲は、高校時代に作ったという「フレフレフラレ」という曲。
もちろん、アレンジが施され、プロによる演奏になっているが、そのシンプルな歌詞とメロディラインはキャッチ―で、「今」プロが作ったといってもおかしくない。それをラジカセに入れてカラオケにして、吉澤は歌いながら1階客席から、ぼくのいる2階客席まで回ってくる。「♪フレフレフラレー」というシンガロングは、当然全員初見だが、2階席に立った吉澤が、1階席を見下ろして指揮者のように歌わせる。
この曲は、今後のライブの定番になるな。そう思った。
1時間30分16曲のライブで、昨年11月18日の恵比寿ガーデンホール(あれ、さくら学院2017年転入式と同じだ、ご縁ですね)の時とかぶったのは「綺麗」だけ。これをほぼ1人で書いている。BABYMETALとは真逆の、恐るべき多産。
もし、まだ知らない人がいたら、吉澤嘉代子、ぜひ注目してみてね。