仮バンド「仮音源-DEMO-」 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
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★今日のベビメタ

本日5月5日は、2016年、BABYMETALワールドツアー2016、ボストン公演(米国ボストン、House of Blues)が行われた日DEATH。

 

昨日ようやく、仮バンドのデビュー作「仮音源-DEMO-」が届き、さっそく聴きました。

とんでもないアルバムだった。ロッククイーンの系譜をちょっとお休みして、インプレッションを。

1曲目「Common time’s Logic」を聴いた瞬間、想起したのは、キューバの天才ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバの「Rapsodia」(1993年)である。ラテン系のマイナーコード進行とリズム、サックス・トロンボーン・トランペットからなるホーン隊、Calmeraの構成がそう思わせるのだが、藤岡幹大のアルペジオ・リフと超絶テクが曲想を広げていく。フェイドアウトしていくBOHのボウ弾きもお洒落。

2曲目の「Chuku」は8分の13拍子という変態的リフのフレームワークによるスリリングな曲。時折スプラッシュ・シンバルを交えて叩きまくる前田遊野は、90年代日本を代表するジャズ/フュージョン・ドラマー、村上“ポンタ”秀一(「PONTA BOXⅡ」1995年)を思わせる。BOHの指弾きソロ、西脇辰弥(2016年11月の楽器フェアライブで共演)によるシンセサイザーのソロ、藤岡幹大によるソロと続く流れは、まるで音で空間を構築していくような感じ。

ゴンサロ・ルバルカバとジェフ・ベックが共演しているといった印象は、2曲目の藤岡ソロの途中から徐々にロック寄りに移行し、3曲目の「忍者Groove」で、まったく違うものとなる。BOHがとんでもない速弾きリフのベースラインを弾く中、へヴィなディストーションとギターシンセの2種類の音を使い分けつつ展開する藤岡らしい“歌うギター”に酔いしれる。一瞬だけ和風のモチーフが現れるのが“忍者”なのだな。

4曲目の「Djentleman」ではISAO(G)が加わり、まさに、音で会話しているようなジェントの音になる。前田のブラストビートに乗って、BOH、ISAO、藤岡が奏でるソロの超絶フレージング合戦は、現代日本ミュージシャンにあって、最高水準。唖然とするような速弾きが展開する。音を追っていくだけで異世界の迷路に落ち込んでいくような眩暈を感じる。

5曲目「Jamirika」はピアノが入るだけに、またジェフ・ベックとゴンサロ・ルバルカバの共演といった趣になる。桑原あいは、ライブで共演している動画では、山下洋輔を思わせるリリカルなフリージャズの印象であったが、ここでは前田、藤岡のけしかけるオカズに乗せられて、アタックの強い、ドライブ感のあるタッチで弾きまくる。後半は、それを上書きするような藤岡のジョン・スコフィールドをほうふつさせるハードなソロとなり、あれよあれよと引き込まれているうちに終わってしまう。

6曲目、「Snow Flakes」は愛らしいメロディ。音の方向はジェフ・ベックだが、藤岡幹大というギタリストは、ギター1本で、なんてメロディックな“歌い方”をするのだろう。BOHと前田はここへきて正確かつエモーショナルなリズムを刻み、曲のイメージを音像に定着させるバッキングに徹している。

これで終わり。いやー、もっともっと聴きたい。

全編インストゥルメンタルだが、1曲1曲がカラフルな絵画のようで、飽きるということはない。フュージョンだが、喫茶店で流すBGMにはできない。BOH、前田、藤岡、西岡辰弥、ISAO、桑原あい、カルメラ(S、Tp、Tb)の各ミュージシャンのそれぞれが、「言いたいこと」を楽器で言っている。楽器というのはかくも雄弁なものなのだ。

見事なアンサンブルであり、一言でいえば、スゲーです。

これはNYだろうがLAだろうがロンドンだろうが、北京であろうがキンシャサであろうが世界のどこだって売れるよ。一昔前なら100万枚売れる、記念碑的アルバムだと思う。

BABYMETALの神バンドで有名になった、現代日本のサポートミュージシャンたちが、手慰みに作ってみました、というレベルじゃない。

たった6曲のこのアルバムは、歴史的名演というにふさわしい。

「Metal Resistance」が21世紀屈指のメタルアルバムであるなら、「仮音源-DEMO-」は21世紀屈指のフュージョン・アルバムである。

BABYMETALファンであるなら、音楽好きであるなら、一家に一枚。

是非。

去年11月、幕張でこの三人に貰ったサインは家宝DEATH。