屋根裏獣 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日3月27日は、過去、BABYMETAL関連では大きなイベントのなかった日DEATH。

 

2012年5月、さくら学院の「世界の授業」。

最後にコスタリカを紹介したMOAはウミガメの習性を説明した後、「さくら学院のメンバーも、さくら学院を故郷と思って、何年たっても戻ってきて“アリバダ”しようね」と言っていた。

土曜日に行われたさくら学院2016年度卒業式のあと、既卒生との集合写真がさくら学院職員室Twitterに公開された。

森ハヤシ先生の隣にSU-、最後列の倉島颯良の隣と前にYUI、MOA。堀内まり菜、磯野莉音の歴代会長、学年末テストでSU-と最下位争いをした野津友那乃、優等生系譜の杉崎寧々、飯田来麗、白井沙樹らの顔も見える。

毎年恒例となったさくら学院アリバダ写真。三人の素顔が見られる一年に一度の機会となっております。それにしてもSU-さんの地味さがいいね!

 

BABYMETAL以外に、もう一人ぼくがベンチマークしているアーティストが、小保方晴子さん似の天才ギター女子、吉澤嘉代子であります。

ぼくは、フルアルバム2枚とミニアルバム2枚を所持しており、ライブは8月末のミニアルバムリリースライブ(渋谷タワレコ)と、11月の「うつくしい人たちツアー・追加公演」(恵比寿ガーデンプレイスホール)に参戦致しました。

全然メタルではなく、ロックですらありませんが、引きこもりから路上ライブを経てヤマハのコンクール優勝という経歴、独特の世界観にもとづいた現代詩のような歌詞の言葉の選び方、ファルセットを多用し路上で鍛えた正確なピッチの歌唱力、アメリカンポップスのコード進行やジャズっぽいリズム感を持つメロディラインの美しさなど、中島みゆき、椎名林檎級の逸材と確信しております。

その吉澤嘉代子のメジャー3枚目のフルアルバム「屋根裏獣」が、2017年3月15日にリリースされました。2月に先行MVが配信された新曲「地獄タクシー」

https://www.youtube.com/watch?v=KxiRy_UMZfI

や、昨年8月にリリースされたミニアルバム「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」からの「ねえ中学生」(feat.私立恵比寿中学)を含む全10曲。

これにともなって、4月29日からの「獣ツアー」(岡山、仙台、東京、福岡、大阪、名古屋)も開催決定。

さらに、アルバムには収録されなかった新曲「月曜日戦争」が、地上波で、関東は日本テレビ系で4月15日(土)深夜、関西は読売テレビ系で4月13日(木)深夜から放送される、バカリズム原作・脚本・主演ドラマ「架空OL日記」の主題歌に決定いたしました!

BABYMETALが繭籠りしているうちに、ついに吉澤嘉代子が全国区になる日が来たのではないか、とファンの間では盛り上がっております。

先日、ほうきの会(ファンクラブ)先行抽選があり、ゲンを担いで、魔法のほうき靴下(というグッズがあるのだ)を着用して、5月7日(日)東京国際フォーラム公演に応募したら、なんと一発当選致しました。落選されたファンの方、ごめんなさい。

ですが、気をよくして、ニューアルバム「屋根裏獣」のインプレッションをば。

 

01 ユートピア

暑い夏、一人でプールへ行って半日過ごすのが好きなのかな。しかし市民プールの騒々しい現実が、吉澤嘉代子にはこう見えているのだという異世界への入り口。ファズのかかったロックギターソロをバックに、目の前のプールの光景がハレーションを起こし、孤独なベッドの水底へ、悲しい夢の浜辺へと遷移していく。

そしてふと気づくと、「場内には少し前に流行ったポップス」。

タイトルを確認すると「ユートピア」。地方の公営市民施設にありがち。一曲目から吉澤劇場にヤラれる。

02 人魚

ガットギターの弾き語りで、オープニングの「海」のイメージが引き継がれる。人間の男に出会った人魚姫のモチーフだが、女性にとって、恋が、7つの海ほどの広さを持った過去のアイデンティティと訣別する契機となるという、吉澤嘉代子ならではの感情が表現される。

03 カフェテリア

ガットギターはそのまま3曲目に引き継がれる。海辺のカフェに努める店員の、常連客への淡い恋心を描く短編小説のようなお話になっている。絶対等身大じゃない作り話とわかっていても、「私の心はじんじん」に萌える。

04 ねえ中学生

2016年8月にリリースされたミニアルバム「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」に収録された曲。イントロに小学生っぽい縦笛合奏部分がついた。私立恵比寿中学がコーラスを担当しているが、嗚呼、松野莉奈はもういない。

05 屋根裏

小林旭の「さらばシベリア鉄道」風。これまでの吉澤嘉代子にはなかった曲想。昭和歌謡曲をこよなく愛する吉澤嘉代子だが、これは新境地ではないか。しかし、屋根裏に「居た」という設定の遠い親戚の叔父さんへの淡い慕情というフィクションが、風来坊のイメージから「シベリア鉄道」風になってしまう。あっははは。ぼくは好きですね。次は加山雄三だな。

06 えらばれし子供たちの密話

アコギをフィーチャーした久保田利伸?っぽいアーバンR&Bのメロディ、リズムだが、コーラスの和音の使い方が吉澤節。

この曲を、他のミュージシャンに楽曲提供したら、おしゃれなカフェ向きの曲になっただろう。だが、吉澤は昭和の電話機の着信音SEを入れ、正確なピッチで「ルルルルルルル」と歌い、「ねえ中学生」に通じるオブリのコーラスを入れる。

中島みゆき「節」があるように、このアルバムは、吉澤嘉代子「節」といってよい「らしさ」が確立した自信を感じさせる。

元・少女の繊細な感情を表現した「ストッキング」、昭和ヒーロー戦隊の主題歌っぽい「ケケケ」から、グランジ風の「泣き虫ジュゴン」、ビッグバンドをバックにした「綺麗」、リリカルな弾き語りの「東京の絶景」まで、幅広い音楽性を持つ吉澤だが、映画のワンシーンのような歌詞世界、繊細な心情を表現するメロディラインとコード進行、オブリのコーラス、そして何よりあの声と歌唱法は、吉澤「節」としかいいようのないシグネチャーサウンドだと思う。

8月の「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」で、一癖も二癖もある共演者とコラボしたことで、スタッフ含めて、「吉澤嘉代子らしさ」とは何かという共通認識が一段レベルアップしたのではないか。

07 地獄タクシー

先行配信MVが公開されている。曲想はモロ4ビートのジャズ。一時期の椎名林檎がやっていたようなジャズの歌謡曲への応用。クレイジーケンバンドにも通じる昼メロ風歌詞。それを演じて歌う吉澤嘉代子の“気持ちよさ”を感じる。MVで見るより、CDで聴いた方が、吉澤らしさが味わえると思う。

08 麻婆

「ガリ」に続く食べ物ソング。激辛麻婆豆腐を愛するあまり、麻婆豆腐の化身と化し、伝説をねつ造した吉澤世界が展開する。曲中に入る中華風SEと、サビの「ウー麻婆!」が脳内でリフレインし、「今日は麻婆豆腐だな」と決意させる。

09 ぶらんこ乗り

アコーディオンをフィーチャーした、サーカスのジンタ風メロディ。

深読みかもしれないが「ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよーん」という萩原朔太郎の詩を想起させ、吉澤の大正~昭和初期文学志向がうかがえる。しかし、朔太郎の詩は、一言一句たりとも引用されず、見事に構築された場末の恋の物語が展開する。

10 一角獣

「夜の橋を渡ると…」から始まる歌詞は、まさにパラレルワールドとしての吉澤世界。

夜に橋がありますか?彼女の中では、夜の夢の世界へは、橋を渡って行くのだ。

その世界に登場するモチーフは、「わたしの代わりに鳴いてる一角獣」。

「読みかけの本があるうちは守られている気がしていた」というのは、少女の頃をさしているだろう。

だが、「誰かに会いたいのにそれが誰だかわかんないよ あなたじゃないのは確かなはずだけど」「一角獣鳴いたら迎えに来てよ ゆめの中ひとりぼっちのわたしはずっとあなたに会いたい」と歌う吉澤嘉代子は、もう少女ではない。

古今東西、「一角獣が鳴く」瞬間を表現した詩人、小説家がいただろうか。

カエサルの『ガリア戦記』、プリニウスの『博物誌』を引いて、一角獣のエッセイをものしている渋澤龍彦、種村季弘、荒俣宏など、オカルトウンチク系の作家は一通り読んできた。

一角獣(ユニコーン)は、その角に不思議な治癒力があるが、象にも立ち向かう獰猛な性格で、人に馴れない。唯一、清らかな処女にのみ抱かれるという架空の聖獣である。それが「鳴く」という話は読んだことがない。

一角獣を操る処女ではなく、密かに捕獲しようと企む者でもなく、一角獣そのものに自らを仮託する吉澤嘉代子とは、いったい何者?

アルバムタイトルの「屋根裏獣」とは「屋根裏」と「一角獣」を指すのだろう。

全10曲、まるでアングラ演劇を見たような異世界体験。それでいて、全然暗くない。

吉澤嘉代子は、やっぱり凄い。