2014年の評論家たち | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日3月6日は、BABYMETAL関連では大きなイベントのなかった日DEATH。

 

BABYMETALは日本で初めて、欧米で複数年にわたってライブツアーを行い、フェス出演も含めると、数十万人(2016年の公式発表だけで45万人)におよぶ観客を動員したアーティストである。日本語で歌い、かつまだ10代の少女たちでもある。

複数年にわたって欧米でライブツアーを行っているバンドは他にもあるが、これまでのところ、動員力はBABYMEALに及ばない。

同じくベテランの日本人歌手が、ラスベガスでディナーショーをやったり、海外のジャパンフェスで客演したりすることもあるが、たいていは単発で、集まる観客も現地在住の日本人中心である。

海外で1万人以上を動員した日本のアーティストとしては、中国、韓国、台湾、シンガポールなどでのジャニーズ系もしくはAKBグループが思い浮かぶが、これとてJ-POPアイドルという音楽のポテンシャルとともに限界を示しているといえなくもない。

やはり、BABYMETALは日本の音楽史上、“最も遠くまで行った”アーティストなのだ。

その理由については、これまでさんざん書いてきたので繰り返さない。

BABYMETALが遠く感じる今、海外デビューとなった2014年当時、BABYMETALに対して内外のマスコミや専門誌、評論家たちが何を言ってきたか、ちょっとまとめてみた。

 

●The Daily Dot(アメリカのネットメディア)

「日本から飛来した、バブルガムとキラキラに包まれた燃える戦いの斧こそ、BABYMETALである」「完璧なピッチで表現された狂気的なコンセプトは、“すべてやりつくされた”と思っている君の脳を徹底的に破壊する可能性を秘めている」「(デビュー曲の「ギミチョコ!」は)チョコレートを食べることについて書かれた史上最高のメタル音楽」「ただし、マジなメタルヘッドに見せると彼/彼女は君を許さないだろう」(2014年3月4日、翻訳:jaytc)

https://www.dailydot.com/unclick/babymetal-metal-japanese-pop/

●The Guardian(イギリスの新聞)

「BABYMETAL:ニーソを穿いた日本のロッカーズ」「もちろん、BABYMETALはメタルレベルの現象ではない。これはJ-POPであり、舞台裏で魔法のような天才策士が閃きによって創り出したものだ。」「これは止められない世界的現象になる。私は降伏した。次はあなたの番だ」(2014年3月13日、翻訳:jaytc)

https://www.theguardian.com/music/musicblog/2014/mar/13/babymetal-craze-japan-rockers-knee-socks

●Japan Times(在日外人のための英字新聞)

日本の歌謡史を歴史的に説明しながら、BABYMETALがその最終進化形であると明言。

「BABYMETALは、“アイドルから世界へ”を明確に表現している。今、日本で何が起こっているのか?“私の初めてのメタルin東京2012“を求める海外ファンの要求に対して、丁寧に作られた作品を提示している。」(2014年3月25日、翻訳:jaytc)

http://www.japantimes.co.jp/culture/2014/03/25/music/babymetal-arent-the-latest-chapter-in-the-wacky-japan-story/

●Time(アメリカの一般雑誌)

「日本のポップメタルバンドは、海外のメタルファンを獲得できるか?イエス。可愛いゴス衣装を着て、楽器を演奏しない三人の10代の少女たちだ。イエス、曲は太ることを心配しながらチョコレートを食べる曲だ。だが、イエス、2月にリリースされてから、この曲は580万のYouTube視聴件数となり、iTunesで日本のロックチャート4位となり、デビューアルバムはビルボード200にランクインした。しかしBABYMETALは試練に直面している。今年のソニスフィア・フェスティバルへのラインナップが発表されたのだ。アイアン・メイデンやリンプビズキット、アリス・イン・チェインズと同じ土俵に立つのだ。UKでの最初のギグだというのに」(2014年4月11日、翻訳:jaytc)

http://time.com/57391/babymetal-jpop-sonisphere/

 

2014年の「BABYMETAL」リリースと「ギミチョコ!」MVの公開が、海外に対する“デビュー”だったため、各紙・誌とも、BABYMETALの音楽性そのものを正面切って批評しており、衝撃を受けたことを表明し、これがグローバルに発展するかどうかを論じている。

特に日本在住の外国人向けの英字新聞ジャパンタイムズは、70年代、80年代、90年代とそれ以降の女性歌手~アイドルの歴史を詳しく説明し、「アイドルとメタルの融合」がそうした歴史の上に立ち、世界へ打って出る画期的なプロジェクトであることを力説している。

これに対して、日本の音楽専門誌は、2013年1月のメジャーデビュー以降も、モー娘。やAKB48、ももクロらの「アイドル史」をよく知っており、なおかつBABYMETAL側もTVに出て笑顔を振りまいていた「メタルアイドル」だったので、「ヘドバン」誌を除いて、正面切って「メタル」としてとらえるメディアはなかった。

ようやくBABYMETALが「ライブバンド」として評価されるようになったのは、ソニスフィアとレディ・ガガのサポートアクト以降である。ただ、「BABYMETAL」リリース後のタイミングで、ギター専門誌は相次いでスコアを掲載している。ロックテイストのあるアイドルソングは、バンドをやっている高校生=読者の需要があるからだ。また、老舗のメタル専門誌は、2014年度中は論評せず、2015年3月の創刊30周年座談会で、「なぜBABYMETALを掲載しないか」について、ちょこっとだけ説明している。

 

●Burrn!(シンコーミュージック・エンタテイメント)

「アミューズがプロモーションをすれば取材をする。ただし、インタビューをするなら女の子3人よりも制作側」(2015年3月号)

しかし、2017年1月のMETALLICAソウル公演で、BABYMETALが初の日本人前座を務めたライブは取材し、見開き2ページで紹介している。

「とにかく重要なのは、日本のグループがMETALLICAのオープニングを務めるのは今回が初だということである。これもまた、事件だ。本誌としてもその現場を見届けないわけにはいかないだろう。」(2017年3月号)

●ヘドバン(シンコーミュージック・エンタテインメント)

「メタルと真っ向から向き合っている」「極めて緻密な音作りがファンを感嘆させ魅了している」(ヘドバンVol.1、2013年7月)

2012年に出版業界から一時離れていた梅沢直幸は、Legendシリーズのライブを見て衝撃を受け、古巣のシンコーミュージックに企画書を提出。BABYMETALを機にメタルに興味を持つファン層を想定して創刊されたのが「ヘドバン」である。

●YOUNG GUITAR(シンコーミュージック・エンタテインメント)

メタル色の強い同誌だが、2014年4月号に「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のギタースコアを掲載。2016年5月号では表紙にMINI-ARROWを抱えた三人を掲載し、BABYMETALの歴史やマーティ・フリードマンのインタビュー、奏法解説を掲載した。結成当時、メタルを知らないアイドルだったことについて、「誰にだって初めて知る瞬間はある」「頭でっかちにメタルというものを捉えるのではなく、本能のままに感じて楽しんでいる現在の三人の姿は、清々しさを覚える」と書いた。

●GUITAR MAGAZINE(リットーミュージック)

ヤンギよりもジャズ、ブルース、ロックとジャンルが幅広いギタマガは、2014年5月号に「ヘドバンギャー!!!」のスコアを掲載。採譜は藤岡幹大神である。

BABYMETALについては、「2013年にメジャーデビューしたメタルアイドル」という簡単ンな囲み解説だけだが、同誌にはギター専門誌として、専門学校MIの広告がよく掲載されており、小林信一、LEDA、BOH、大村孝佳、藤岡幹大らが、この号以前から講師として写真付きで紹介されていた。

メディアとしてソニスフィア前にBABYMETALを高く評価していたのは、TBSである。

 

●TBS「NEWS23」

2014年6月26日に放映されたTBS「NEWS 23」で、BABYMETALの三人が第二次安倍政権のクールジャパン担当の稲田朋美大臣(現在は防衛大臣)の執務室を訪れる。この番組のディレクターはガチメイトさんであり、「海外での成功事例」として売り込んだらしいが、実は「ギミチョコ!」の再生回数が1000万を超えたところで、まだ初欧米ツアーに行く前である。

稲田:「日本よりも海外で声かけられたりするの?」

SU-:「いえ、あの。でも歌を歌ってくれたりします」

稲田:「クールジャパンって知ってる?私がその初代大臣」

MOA:「聞いたことはあるけど、よくわからないDEATH」

稲田:「あなたたちのように海外でがんばって発信している人たちを応援するのがクールジャパンなのよ。」(2014年6月26日放映)

なお、「NEWS23」では、2015年8月15日にも「メタル復権とBABYMETAL」という特集を放映。「ヘドバン」編集長の梅沢直幸が解説し、伊藤政則がビデオ出演している。

ソニスフィア2014を含む初の欧米ツアーとレディ・ガガのサポートアクト以降は、「BABYMETAL現象」は世界的なものになった。

 

●Metal Hammer(編集長アレックス・マイラス)

「本物のメタルか、ギミックか、という議論が起こることこそ価値ある存在である証拠だ。そんなの関係ないよ!BABYMETALは面白いじゃないか!」(NHK「BABYMETAL現象」2014年12月)

2015年5月に、アメリカ・コロンバスのROCK ON THE RANGEフェスでBABYMETALを見た後、「音楽、特にロックやメタルでは多くの人たちが「起こるべきことはもう既に起きた」と思っています。ドキドキするようなことは新しいことはもう何もない、歴史に残るようなことはもう全て起こった後だと言われている今、ああいう歴史が作られる瞬間を見ることが出来たのが凄く嬉しかった。それと同時に「彼女たちは注目するに値しない」と言った人たちに対して、中指を立てている気分でした(笑)。」(ヘドバン・スピンオフNo.4インタビュー、2015年8月)

「ブリクストンでライブを見るまで、本当のところ、魅力やどのような現象が起きているのかわかりませんでした」「BABYMETALは、40年続いてきたメタルの歴史の新たな1ページなのです。ブラックサバスはこの音楽を発明したとき、こんなことが起きるとは考えてもなかったでしょう」「(最大の魅力は?という質問に)勇気だと思います。多分、まだまだ世界ではなにが起きているのか全然わかっていなくて混乱している人がたくさんいるでしょう。その混乱している部分こそが素晴らしいところなので、そこでなにが起きているか、自分たちのような存在が伝えていくべきだと思っています。」(QJ vol.125 インタビュー、2016年4月)

●ジョナサン・グリーン(ear Music UKのメタリカ、BABYMETAL担当)

「契約する前にソニスフィアで見てるんだ。驚異的だった。バックステージにいたんだけど、みんな立ち止まってたよ。何なんだこの3人組は!?って感じで、小さくて、ヘンテコな衣装を着て、でも本当に存在感があって…。なんというか政権交代っていうかね、新しい子達が登場して、古いやつらが敬意を表してるんだ。ロックという音楽において、すごく重要な瞬間だったと思うよ。BMの成功は、ロックの歴史を書き換えたというかね。」(QJ Vol.125 2016年4月)

●伊藤政則(日本のメタル評論家。Burrn!顧問)

「あれは2012年だったと思いますけども、サマーソニックにBABYMETALが出演したときにですね、たまたまカメラマンとしてやってきたロスハルフィンというイギリス人の有名なカメラマンがいるんですけどね。彼がBABYMETALのパフォーマンスを見て”なんだこれは“と。メタリカのラーズ・ウルリッヒを連れてって、”こんな面白いのがいるよ“と。」

「やっぱりヘヴィーメタルっていうとマッチョなイメージで、すごく男臭い世界っていうのがあって(中略)そんな中に10代の3人の女性シンガーが在籍するBABYMETALが活躍したっていうのは、ある意味マッチョと対極に位置するわけだから、海外のジャーナリスト、カメラマン、それからミュージシャンから見ると、すごく新鮮な風を巻き起こす。そういう存在に映ったんじゃないですかね。」(2014年12月30日NHKFM「メタルゴッドJP」)

 

セイソク氏の「2012年だったと思いますけども…」はやはり間違いで、2013年のことである。番組中に流れるBABYMETALのインタビューも、直接セイソク氏が会って話したのではなさそうである。2016年12月29日にも「メタルゴッドJP」で、メタリカのソウル公演に行くことが告げられたが、実はBABYMETALのライブを見るのはこのときが初めてだったということも判明。前述TBSの「メタル復権とBABYMETAL」で、氏が「BABYMETALは海外のメタルファンにズバリハマるでしょう」と力強く言っていたので、「わが軍」と思っていたが、案外頼りないなあ。未だに「ベイビーメタル」って呼ぶし。

この2014年の海外の驚きが、2015年に世界的に拡大し、2016年のWembleyから3度目の欧米ツアー、東京ドームで一応の頂点に達した。

確かに海外での展開・大活躍で、2016年の実績を超えるライブツアープランを作るのは大変だろう。昨年は前年12月の段階で、4月のニューアルバムリリースと、ウェンブリーを皮切りにしたワールドツアー2016、その締めくくりとしての9月の東京ドームが発表されており、1月~3月は、その具体的日程が発表されていった時期だ。今年は4月のレッチリ帯同以外は、「ベビメタ祭り映画ツアー」のみだから、逆算すれば、9月くらいまでの単独ライブツアーは「ない」ということになる。

いくらなんでもそれは考えたくない。

しかしまあ、2014年当時、欧米のメタル業界やファンは「日本のアイドル」がメタルをやっている「なんじゃこりゃ」感に驚き、そして、楽曲やパフォーマンスには、KOBAMETALやメンバーや神バンドの「初期衝動」ならぬ「ロック魂」が含まれ、非常に完成度が高いという二度びっくりを経験した。

今や知名度や認知度を上げる時期は終わり、アーティストとしてファンを「待たせる」「渇望させる」存在になったという段階なのだろう。

数か月から数年、バンドの消息が分からないなどということは、70年代の外タレならいくらでもあり、次作が出たときにまたまたビックリということはよくあった。今はネット、SNS時代だから情報がないのは「異様」に見えるが、そのへんもKOBAMETALのいう「様式美」なのかもしれない。

ソウルメタリカTシャツは、3日のイベントが終わって10時にアスマートを見たときにはもうSold Outの赤文字だった。これもまた様式美か。

ぼくらは「次のいいもの」が出てくるまで、古いネタをほじくり返しながら、じっと我慢して待ち続けるしかないのだろう。先は長い。