神出鬼没 | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日3月4日は、BABYMETAL関連ではこれまで大きなイベントがなかった日DEATH。

 

三人がどこから出てくるか?

BABYMETALの単独大箱ライブのだいご味である。

2016年9月19日東京ドーム初日。KOBAMETALの映像が終わって「ROR」のイントロがかかり、大画面モニターに三人が映る。ゆっくりと階段を降りてくる。だが、ぼくがいたグラウンドレベルのThe Oneシートからは、生の三人が見えない。「どこにいるんだよー」とまわりで悲鳴が上がる。実は、三人は中央タワー屋上、さらにそこにしつらえられた富士山のような階段の上に降臨していたのだった。天孫降臨かっ!

二日目。ぼくは三階席のモッシュッシュシートにいた。そこからは中央タワーの屋上がよく見える。KOBAMETAL映像が終わり、そこに白装束の三人が出てきた。「今日もあそこからか」と思ったら、それはフェイクで、実はグラウンドレベルの花道の先端円形部分にスッポンが仕込まれていて、「BMD」の途中、磔にされたポーズでせり上がってくると、会場は一気に「ウォー!!」と盛り上がった。

2016年4月のウェンブリーでも「紙芝居」のイントロの途中、正面階段状に白装束の三人がすっくと立ち、会場から大歓声が沸き起こった。そして「BMD」が始まると、観客席中央の島舞台の中から本物の三人がすっと出てきた。やはり白装束はフェイクだったのだ。その驚き、神秘的な降臨感に会場は騒然となる。つかみはオッケーというわけだ。

観客が予想もしないところから登場することによって、「キツネ様に召喚された三人の少女が只今降臨!」というギミックにリアリティが出てくる。

2015年1月の「新春キツネ祭り」(SSA)では、感動的なBGMとともに、2014年の欧米ツアーのスチールを見て涙ぐんでいると、棺桶が飛来し、その棺桶の中からそれぞれ名前が呼ばれ、舞台に登場するというしかけ。これもCGによる嘘っぱちだが、「幼いメタルの魂は、キツネ様の命に従って…」というギミックに、三人の実際の欧米での苦闘が重なり、本当にこの場で奇跡が起こっているのだというリアリティが生まれる。

2014年11月のNY、ロンドン追加公演では、会場は小さかったが「BMD」が鳴り響く中、舞台正面階段の上に、エレベーターで瞬間的に三人がせり上がってくる。その降臨感に、噂のBABYMETALを一目見ようと集まった観客はどよめいた。

さらにさかのぼること2014年7月のロンドンForumでは、舞台に白い紗幕がかけられており、「紙芝居」に続き「BMD」が始まると、紗幕が落とされ、三人と神バンドが現れるという単純な仕掛けだった。それでもタイミングよくスパーンと幕が落ちた瞬間、それだけでBABYMETAL降臨!という感じに会場が包まれる。

2014年、欧米でBABYMETALに関心が持たれたのは、「ギミチョコ!」MVとならんで、三人が空中浮遊している写真だった。それは「We are?」「BABYMETAL!」のあと、「3、2、1!」でお立ち台からジャンプした瞬間をとらえたものだ。これが、ネットで拡散され、欧米人に「日本からきた魔法のメタル少女たち」のイメージを植えつけた。

 
   

 

そして、実際にライブに足を運んでみると、嘘臭く神秘的な「紙芝居」に続いて、大迫力の「BMD」の生演奏のさなか、三人の少女が「降臨!」する。そりゃ「スゲーっ!」て、一気に魂持ってかれるわな。

ド派手なポップシンガーなら珍しくないが、ここまで登場の演出にこだわるロックバンドは少ない。

たいていは、楽器を抱えてぐだぐだとステージに上がり、音合わせをして、フロントマンが観客に「行くぜ!」かなんか言ってイントロのリフを弾き始めるというのが定番だろう。

シンプルさ、ラフさというのがロックのカッコよさの一要素だから、そういうのも嫌いじゃないけどね。

ディープ・パープルの大名曲「Smoke on the water」は、あの有名なギターのリフ4小節のあと、ドラムスがハイハットとスネアだけで加わり4小節、次にベースが入って4小節、最後にキーボードが入って4小節と徐々にメンバーが合奏に参加していき、ついにボーカルの歌が始まるという構成になっている。だんだん仲間が増えて戦闘態勢が整っていくというスタートのしかたは、梁山泊方式というか、ゴレンジャー方式というか、観客をワクワクさせていく「物語」の始まりにふさわしい。

これに近かったのが、2014年3月1日の日本武道館「赤い夜」。

「きーつーねー、きーつーねー」のSEが流れると、中央舞台と島舞台の三か所のスッポンから、合掌して祈るような姿で、それぞれせり上がってくる。そして三人は、あれ、なんていうだろうね、右足を一歩出して止まり、左足を一歩出してまた止まるという歩き方。ベビメタのライブで時折見せる特有の歩き方でゆっくりと舞台中央に集まってきて、三人がそろったタイミングで「女は女優よ」のポーズをとり、イントロのリフに入っていく。

これも悪くないですよね。

別々に出てくるといえば、2012年12月21日Legend”D”の「Over the Future」-Rising Force Ver.-(パワーメタル風)。

最初、YUIとMOAのBLACK BABYMETALだけで1番を歌い、観客を「さくら学院オーディションの頃に比べて、随分しっかりしてきたなあ。背も伸びたなあ」とほっこりさせたところに、短い間奏のあと、階段の上にSU-が登場。可憐Girls時代の持ち歌の2番を、♪「こんな、困難だって案外平気だし…」と歌いあげ、「やっぱりSU-ねえちゃん、歌上手いなあ」とびっくりさせるという仕掛けであった。

天から降ったか、地から湧いたか、BABYMETALは神出鬼没。

あの東京ドーム、三人は中央タワーの天空や花道先端のスッポンから出てきたが、回りはぐるり5万5千人の観客に囲まれていた。円形舞台と花道はグラウンドレベルから2メートルくらい高くはなっていたが、三本の花道の先端はグラウンドで、どこにもブルペンやダッグアウトに直接抜けられる道はなかった。してみると、三人も神バンドも、開場のときからあの中央構造物の中にいたということになる。つまりぼくらは、ずっと見えないBABYMETALを見ていたのだ。あのタワー、小さな4階建てのビルくらいありますよ。三人にしてみれば「ゼッタイに見つからない、とっておきの場所」に「かくれんぼ」している気分だったかもしれない。もっとも骨人間が何度か框のようなものを運んでいたから、トイレだけは外でして、それに入って戻ってきていたということも考えられる。

レッチリサポートアクトツアーの初日、4月12日(現地時間)ワシントンDCまであと1か月あまり。

今、SU-は、YUIは、MOAはどこにいるのだろう。何をしているのだろう。

案外ぼくらが見ようとしていない「とっておきの場所」に潜んで「かくれんぼ」しているのかもしれない。