作曲者を探せ | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日3月2日は、2014年、日本武道館にてLegend“DOOMSDAY”黒い夜が行われた日DEATH。終盤、YUIMETAL、MOAMETAL聖誕祭in Europeが発表され、三人は棺桶に入って飛び去りました。

 

久しぶりのBABYMETAL公式からのアナウンスで、4月11日の「Live at Tokyo Dome」の“ワールドプレミア”と、4月1日からの東京、大阪、名古屋、福岡、札幌を回る5大都市“フィルムフェスツアー”が発表されました。

ワールドプレミアの方は、「Live at Wembley」の発売日と同じく、4月11日に各地の映画館での一般上映、またフィルムフェスツアーは、お正月にぼくがやった「新春ベビメタ祭り」と同じく、Legend“I,D,Z“からLive at Wembleyまでの4年間のライブ映像を時系列に沿って一般上映するとのこと。映画館では全部通しというわけにはいかないので、各会場10回に分けての10日間上映で、5大都市を回るから「Tour」だということのようです。

http://liveviewing.jp/contents/babymetal_filmfes/

まあ、4月はBABYMETALアメリカですし、2014年パリ、ケルンとか、2015年黒ミサ、赤ミサとか、限定版でしか販売されてなかったやつもあるので、「歴史の空白」を埋めたい方は行く価値があるかな。

全部持ってるという人のためには、会場でしか買えない復刻Teeや限定グッズが用意されるとのこと。

大画面大音量で、メイトさんと盛り上がりたいしグッズも買えるなら行く、という人向け。

単独ライブ=生じゃなかったことで、ロスにもだえ苦しむメイトさんからは、「これじゃない感がハンパない」「Tシャツ屋かよ」とお怒りの声が上がっております。

何もしないよりマシですし、一般の方がBABYMETALの歩みを知れるチャンスだと考えましょう。ただ、ぼくとしては、どうせ生じゃないなら、完全未公開のバックステージ映像で編集された「BABYMETAL:真実の瞬間」を期待しますね。さくら学院だってAKBだってやっているんですから。

 

今日のお題は、紙芝居のBGMの作曲者。

ライブのイントロ、「A long time ago… In a Heavy Metal Galaxy far, far away…」と始まる「紙芝居」のバックに流れるあの音楽。映画「スターウォーズ」の完全なパクリなのに、ナレーションが進むうちにBABYMETALの由来とレジェンドが説明され、神秘的な降臨感に会場を包んでしまう。そしてシンバル4つ打ちから「BMD」が始まり、三人が登場。会場を興奮のるつぼに叩き込んでいく。凄い曲だと思いませんか。

もともと、2012年4月の「メタルアイドル」時代の「アイドル横丁祭り」に出演したとき、KOBAMETALは、BABYMETALの出囃子としてフランスのニューエイジミュージックユニットeRaの曲を流していた。カトリックのミサにテーマをとり、ラテン語か、イエスが話していたという中東アラム語のような意味不明のコーラスが入る、宗教的雰囲気をもった曲が多い。

こんな曲で登場する「アイドル」はあり得ないから、異様この上ない。(「イジメ、ダメ、ゼッタイ」初回限定版DVD“D”盤に収録)

「BMD」のイントロは、eRaの曲調に似ている。しかし、eRaにもまったく同じ曲はなく、あくまでもBABYMETALのオリジナルである。いったい誰が作曲したのだろうか。

2012年のLegend“I”のオープニングは「ランランララランランラン…」という「風の谷のナウシカ」の童謡風モチーフにメタル伴奏をつけた曲で始まり、神バンド初登場シーンで、この「BMD」イントロに似た曲が使われる。翌年2月のLegend“Z”の復活シーンでは、完全にこの曲からの「BMD」なので、この頃には完成していたことは間違いないが、作曲者は公表されていない。だが、1stアルバム「BABYMETAL」はこの曲から始まる。

CDの「BMD」のクレジットにはLyric & Music:KITSUNE of METAL GOD、Arrangement:Yuyoyuppeとある。してみると初期から参加していたゆよゆっぺが、あのイントロBGMも作ったと考えるのが妥当なのではないか。

しかし、Legendシリーズライブ終わりの「ターミネイター」みたいな「次回、乞うご期待」で使われるオーケストラ音楽は作風が違う。

2015年12月の横浜アリーナのFinal Chapter of Trilogyの「KARATE」の前、松岡修造を思わせる「紙芝居」のバックに流れていた、ピョーという日本の竹笛の音が入るBGMがこれに似ていて、オーケストラ編成で、ドラマチックな映画音楽っぽい。

あるサイトで、この音源がそっくりそのまま2016年7月のAPMAsのロブ・ハルフォードとの共演の前の「紙芝居」(Metal God and Fox God…Their meeting was not coincidence)で使われていたという発見が報告されていた。

確かに確認してみると同じだ。そのサイト主は、このBGMの後半のメロディが、「Breaking the Law」のリフのメロディと同じだから、横アリの時点で、ロブハルとコラボすることが予定されていたのではないか、と言っているが、それはどうかな。厳密には同じメロディじゃないし。

「KARATE」の作曲者もYuyoyuppe。だが、和風楽器が入って、映画音楽っぽいことを考えると、「BMD」の前のイントロBGMとはどうも違う作風のような気がする。

映画音楽っぽいといえば、Wembley Arenaや東京ドームで、「Amore-蒼星-」の導入部、SU-の背中に白い翼が生えていくときにも壮大な交響楽がかかる。この部分はCDには収録されていないが、曲自体はNORIMETAL作曲で、Arrangement:教頭となっている。

「メギツネ」「ROR」の作曲も手掛けたNORIMETALとはロックバンドDugoutの“ロマンチック担当”リーダーVo&G、のりぞう(あるいはのりぞー)。

教頭先生とは、Velforest、キラキラ☆メロデス学園、K&K、Vice Principalとかで、アニメ音楽なども手掛けるDTM作曲家、アレンジャーらしい。BABYMETALでは「紅月-アカツキ-」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」「ROR」「Amore-蒼星-」のアレンジを担当。

Vice Principalのブログでは以下のような「自己紹介」をしている。

―――引用―――

http://vicep.net/?page_id=401

音大講師の父とピアニストの母親の間に生まれず、

3歳でピアノを始めず、7歳の時にジミヘンに出会わずギターも始めず、

15歳の時にコンテストで入賞せず、当時メディアで「天才」と謳われず時の人とならず、

18歳の時にカナダに音楽留学せず、実際のところほぼアニメを見て過ごす救いようの無い人生。

好きなあんかけスパ:モントレー

好きな味噌煮込み:黒豚入り一半鍋

好きなきしめん:吉田

好きなスガキヤ:ピアゴ西城店のオッサンが作るやつ

―――引用終わり―――

性別も不明、謎だらけだが、あんかけスパ、味噌煮込み、寿がきや、ピアゴ西城店という固有名詞から、どうやら名古屋出身らしい。『ヘドバン』に「教頭先生のはぐれメタル・ハンター」というコラムを連載中。

「Road of Resistance」の作曲者は、Mish-Mosh、NORIMETAL、KYT-METALで、アレンジは同じく教頭である。KYT-METALというのも教頭先生のことなのだろう。

この曲の前にも「紙芝居」のBGMとして「Uncharted Road…Today rather than yesterday. Tomorrow rather than today…」という悲壮感あふれる映画音楽のようなオケがかかる。

ライブで、BABYMETALの来し方をスチール写真で振り返る場面、例えば2015年1月の「新春キツネ祭り」の冒頭や、2016年4月の「Live at Wembley」の「The One」の前の感動的なオーケストラも映画音楽っぽい。「The One」と「Tales of Destinies」は、Mish-Mosh作曲で、アレンジがtatsuo、Mish-Moshとなっていて、教頭先生の名はない。

Mish-Moshとは、尚美学園ミュージックカレッジ専門学校のアレンジ・作曲学科卒業生の重村紗里さんと宮坂宜明さんの音楽クリエイターユニットであり、同校HPに掲載されている。

http://www.shobi.ac.jp/library/debut/arrange-compose/mish-moshbaby_metalmetal_resistance.html

tatsuoとは、福岡県出身のギタリスト、アレンジャーで、仮面ライダーシリーズ、ももクロ、ゴールデンボンバーなどにも楽曲提供しているベテラン。BABYMETALでは、「メギツネ」「おねだり大作戦」「4の歌」「META!メタ太郎」「Tales of Destinies」「The One」で、アレンジ、ギター、ベースを担当。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Tatsuo

楽曲・レコーディングに関してはNARASAKI、ゆよゆっぺ、tatsuo、LEDA、のりぞう、教頭先生、Mish-Moshといったベテラン、新進気鋭の作曲家、アレンジャー、ミュージシャンが、KOBAMETALの総指揮の元、よってたかって制作しているのがBABYMETALだ。

さてこの中で、ライブの「KARATE」「Amore-蒼星-」「ROR」「The One」の前にかかるドラマチックなオーケストラ編成の映画音楽っぽいBGMの部分を作っているのは誰か。

ぼくの勘では、ズバリMish-Moshのお二人ではないか。

教頭先生のアレンジは「紅月-アカツキ-」や「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のようなピアノのアルペジオの美しいスタイルで、壮大な交響楽の雰囲気はない。

Tatsuoは楽器がギター、ベースなので、対位法的な交響曲をゼロから作るのは難しいだろう。むしろ「メギツネ」や「おねだり大作戦」のような和楽器を加えるアレンジを得意としているので「KARATE」のトラックの上に♪ピョーという竹笛を入れたのは彼かもしれない。

ゆよゆっぺは、eRaに似た「BMD」のイントロのように、神秘的なシンセサイザーミュージックは得意と思うが、本格的な交響楽はどうかな。

という消去法で残ったのがMish-Moshなのだ。

Mish-Moshは2012年1月に初披露された「いいね!」の作曲者。早くからBABYMETALとともに活動している。

そういえば「いいね!」も「現実逃避行~」から曲調ががらりと変わり、ブレイクで「コガネムシ

」が使われるなど複雑な構成を持っている。

セカンドアルバムに収録された「Tales」と「The One」は、非常にシンフォニックで、対位法がバンバン使われていて、Legend シリーズ以降のライブ終了時にかかる「次回、乞うご期待!」の「ターミネイター」っぽい交響楽の構造にも似ている。

あくまでも想像に過ぎないが、「いいね!」で見せた才能に、歌の作曲者としてだけでなく、「メタル少女歌劇団ミュージカル」の劇伴としての交響楽も依頼され、それが非常にBABYMETALの世界観に合っていたために、KOBAMETALはライブの「紙芝居」のBGMを依頼し続けたのではないか。それがウェンブリーや東京ドームの「Amore-蒼星-」や「NRNR」や「The One」前の壮大なオーケストレイションとなってぼくらの心を打った。ほんと勝手な想像ですけど。

海外のゴリゴリのメタルヘッドの中には、「紙芝居」の交響楽がディズニー映画みたいで嫌だという人もいるが、ぼくは大好きですねえ。

ロック魂とは、苦境にもめげず「てやんでえ、ふざけんな、やってやるぜ、かかってこいやー!」という荒々しく逞しく立ち上がるガッツのことだ。それはロックやメタルという音楽が始まる前から、いや、すべての人間の本能に内蔵されているものだと思う。

幼いSU-、YUI、MOAの中にも本能的にロック魂が備わっていた。それを引き出したのがBABYMETALなのである。

だから、クラシック音楽の中にもロック魂を感じるときがある。

ベートーベンの第九交響曲。「歓喜の歌」だけが有名だが、第一楽章から通して聴くと、人生の紆余曲折を経て、苦悩から歓喜へと突き抜けるドラマチックな構成になっていたことがわかる。喉も枯れよとばかりに大合唱になる「歓喜の歌」はロックだ。

ドヴォルザークの「新世界より」の第四楽章の最後、低音部から高音部へと何度も駆け上がっていくパッセージは、ロックだ。そのあげく最後の「ジャン」「ジャン」「ジャン」「ジャン」といつ終わるんだよ、というくらいに最終コードがかき鳴らされるのは、「We are?」「BABYMETAL!」とおんなじ衝動だろう。

BABYMETALの楽曲には、J-POPとメタルの融合だけでなく、オーケストラ編成でしか表現できないドラマチックな感情も内蔵されているのだ。

ミュージカルだからこそ、映画館で見ると再発見があるかも。