BABYMETALへの愛 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日2月27日は、これまでBABYMETAL関連では大きなイベントのなかった日DEATH。

 

「ヘドバン」Vol.13、もう読みました?

歌川国芳調のジェームズとキツネ面を被ったどくろに「平成二十八年~平成二十九年 メタル黄金時代ノ幕開ケ」となぜか懐古調の表紙で、右下にはでかでかと「ソウル公演徹底追跡レポートメタリカ×ベビーメタル」とある。

4-5ページには、“ロック写真バカ一代”ロス・ハルフィンによるメタリカのポートレート。6-7ページ高尺スカイドームをバックに、次のような文字が躍る。

「『ヘドバン』的メタル大願成就!!!!!! 2017年1月11日。現地時間19時20分過ぎ。『ヘドバン』はこの瞬間が訪れるのをVol.1の頃から夢描いてた…。」

「本当に…本当に…本当に実現してしまった!!!!!!」

「この組み合わせこそが 平成二十九年…メタル黄金時代ノ証明 メタル黄金時代ノ幕開ケ」

!の数にエモーションが表現されている。最初、電車の中でこのページを開けて読んだとき、こみあげてくるものがあって、ぐっとこらえたりしたのだが、何度も読んでいるうちにしまいに笑けてきた。BABYMETAL愛ですね。

TBSの報道特集「メタル復権とBABYMETAL」で、シレッと職権を濫用するメイトディレクターと、ベビメタにもメタルにもまったく興味・関心のなさそうな女子アナにはさまれて「メタルとは何か」を説明しようとしていた梅沢編集長の姿は朴訥としたイメージだったが、『ヘドバン』こそは、ベビメタを機に、世間にメタルを認知させようとする熱量で、KOBAMETALの伴走者といえる存在である。

その紙面は、一度踏み込めば、ギミックと野心と怨念とド根性と人生が交差するメタルの世界の奥深さを体現している。基本は特集を組むバンド、例えばVol.13はSystem of a Down、Pantera、人間椅子、大村孝佳、The 冠、清らへのインタビュー、ディスコグラフィ紹介。

BABYMETALは発刊のきっかけだから、毎号登場している。記事はそれぞれ思い入れの強いライターに書かせ、歴史的存在については業界人やへヴィファンへのアンケートを実施し、そのコメントを掲載したりもするから、その情報の厚み、熱量は半端ではない。

メタル専門で男臭いばかりかといえば、ライターによって異なる視点から見たへヴィメタル/パンク/ラウド音楽史や特集が、毎号手を変え品を変え掲載されているし、BOH氏の連載「神ラーメン一期一会」、ヤスナリオの連載「メタルめし」があったり、Marry’s Blood SAKIの聖飢魔Ⅱ愛に満ちた「悪魔狂信者日記」や近藤チマメのアイドルエッセイ「愛して恋してアイドルホンキートンク」などの記事もあったりするから、入門者には格好の勉強材料となる。

広告は表2-4以外ほとんどなく、あっても自社の本の告知だったりする。別冊宝島方式。編集方針を支持するなら、読者が買い支えるしかない。(Vol.13、1300円、絶賛発売中)

ぼくもその場所にいたソウルメタリカ公演については、ライブレポート記事だけでなく、梅沢編集長と林記者による対談も掲載されており、梅沢氏の高校時代からのメタリカ愛とその変遷、現在「BABYMETALを機にメタルを再興させる雑誌」の編集長という立ち位置になった人生が交錯する。

ぜひ、読んでほしいので記事は引用しません。(^^♪

前回、「ジャンルに貴賤なし、ジャンル内に貴賤あり」という村松友視の言葉を借りて、BABYMETALが「虚実皮膜」として二重の「設定」を懸命に演じてきたと書いた。

どんなにつまらない仕事でも、みじめに見える境遇でも、それを全力でやり抜くことによって、人は輝き、その仕事、境遇そのものの価値観を変えてしまうことがある。

さくら学院は、決してAKB、ももクロ級の売れっ子アイドルグループではない。

初代生徒会長=センターの武藤彩未は有名ジョッキーの娘で、中元すず香も参加した可憐Girlsは、テレ東のアニメ「絶対可憐チルドレン」を見ていた女子小学生にとっては全国区の存在だったが、活動期間はわずか1年で、一般アイドルファンがついたわけではない。

今や売れっ子モデル、タレントとなった松井愛莉、三吉彩花も、当時はキッズモデルだったし、飯田来麗、堀内まり菜、杉崎寧々、佐藤日向も、モデルやCM、キャンペーンに時々起用されるキッズタレントに過ぎなかった。つまり事務所に所属するキッズモデルの“有望株の寄せ集め”だから、いきなりアイドル戦国時代の第一線に放り込むのではなく、「学校」というコンセプトのもと、「成長期限定ユニット」として育成するしかなかったのだ。

そんななか、中元すず香、水野由結、菊池最愛はプロデューサーに呼ばれ、「アイドルとメタルの融合」をやれと言い渡される。漠然とアイドルになることを夢見ていたが、まだ子どもだからアイドル業界のことも、もちろんメタルのこともわかっていない。ただプロデューサーと振付師の先生の指示に従ってレッスンをこなし、レコーディングに臨み、ライブの客前で披露した。

普通のアイドルユニットと違っていたのは、ここからだ。

「やらされている」だけであれば、1年もすれば、アイドルとしては変な「設定」に嫌気がさして、「私、こんなのもうイヤ」となるか、「本当にやりたいのはこんなことじゃない」とか言って手を抜くということだってあり得た。BABYMETALの成功を見て、二流プロデューサー主導で作られた「メタルアイドルグループ」はたいてい長続きせず、売れもしない。

しかし、この三人は違った。

さくら学院の楽曲同様、いや派生ユニットだからこそ三人組のBABYMETALとして、メタルとは何ぞやを学び、「お客さんを笑顔にする」「三か月練習して初めて人の心を動かす表現になる」という教えを体現するために、全力で取り組んだ。

「アイドルとテクノの融合」を体現するために、どれほどPerfumeが過酷な練習を重ねているかを見ていることも大きかっただろう。

何度も書くが、その熱量が2012年の「ヘドバンギャー!!!」で「父兄」中心の観客をヘドバンの渦に巻き込み、KOBAMETALをして、神バンドを登場させたLegendシリーズを構想させ、さらに2013年の五月革命以降のロックフェス席捲、2014年の日本武道館と海外進出へと三人を導いていったのだ。

そしてその「本気度」が、“メタリカ命”だった梅沢編集長の「メタル魂」を揺さぶり、シンコーミュージック社内で「Burrn!」とは編集方針の違う季刊誌『ヘドバン』を創刊させたのである。

こういうBABYMETALの存在は、「アイドル」と「メタル」の両ジャンルを逆照射する。

歌詞のあざとさや、大人が作った「ビジネスモデル」が鼻について、ぼくはどうしても好きになれないが、AKBグループのアイドルたちも、ライブではその熱量が観客を熱狂させる。

欅坂のデビュー前の初単独ライブでは、平手友梨奈の発するオーラに観客はヘドバンして盛り上がったという。だからこそ、去年、BABYMETALと欅坂が共演したMステを見た後で、「秋元康は、欅坂を愛情深く育てようという気がない」「もったいない」と書いたのだ。その危惧は図らずも秋のナチス騒動で現実化した。あれは「なかったこと」になったのか?

メタリカがベビメタをソウルに呼んだのは、日本人のメタルバンドとして、今もっともセンセーショナルで熱量を感じる「バンド」だと感じたからだろう。

2010年当時、メタリカでさえメタル界の住人しか知らなかった。それがBABYMETALの成功によって、「メタル」という言葉がサラリーマンの酒場で語られるようになり、音楽業界としても、メタルは「うまくやれば売れる」ジャンルとして認知されてきたと思う。

つまらなく見える仕事、みじめに感じる境遇の中でも、目の前の作業に全身全霊で取り組み、ジャンルを超え、世界を変えてしまうこと。

もちろん、三人は疲れを知らない子どものピュアさでやり抜いてきただけかもしれない。「長い目で見る」ことを覚えてしまった大人が、ふたたび子どものように純粋に、生真面目に何かに取り組むことは難しい。

それでも、今、この閉塞した同時代にBABYMETALがそれをやってのけていることに、ぼくは励まされる。BABYMETALへの愛は正義だ。