世界征服への道のり(5) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日2月11日は、BABYMETAL関連では、これまで大きなイベントのなかった日DEATH。

 

MINI-ARROW試奏をご覧いただいた方、コメント、ありがとうございます。

スマホで譜面台に乗せて、夜遅く撮影したため、爆音が出せず、録音ボリュームが小さくて申し訳ありませんでした。

弦を張り替え、もう少し細部を調整してから、再挑戦したいと思います。え、もう勘弁してくれという声も(-_-;)

 

世界征服への道のり、まだ続くんですねえ。

多様な音楽性、普通のバンドとは一線を画すユニークなアプローチなど、BABYMETALが、BEATLESと同じように、ローリングストーン誌のいう2010年以降の「Japanese Invasion」を牽引し、孤高の存在になっていく可能性は十分にある。

しかし、アメリカでのBABYMETAL受容を考えると、重大な問題がある。

それは、もうお気づきと思うが、言葉の壁である。

ライブでは、今のところ定型の煽りのみだし、海外でのインタビューもシナリオが決まっているから、簡単な英語の受け答え+翻訳でなんとかなっている。また海外メイトさんは一生懸命日本語を勉強してくれるから、歌詞の意味もある程度わかってくれている。

つまり、これまでは特に問題はなかった。本人たちも「音楽は国境や言葉の壁を超えて伝わる」と思っている。

だが、ぼくは、そこにこそ大きな問題が潜んでいると考えている。

ビートルズの時代は、告知手段がマスコミ(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)しかなかった。彼らはイギリス人だから、英語の歌詞はそのままアメリカで理解されるし、スターとしての肉声-いいことも悪いことも-ダイレクトにファンに伝わり、カリスマ性を与えていった。

BABYMETALは日本人で、日本語で話し、歌う。当然、欧米人には理解できない。

しかしBABYMETALはダンスの他にもうひとつ、言葉のハンディを補うしくみをもっていた。

今はインターネット時代。告知手段はBEATLES時代のようなマスコミだけではない。サイトでの公式な告知には英語版もあるし、ファン個人がファンカムや日本での報道をアップすれば、すぐに英語やスペイン語の字幕をつけて再アップする人が現れる。ネット上の評論やTwitterやFBの情報も同時翻訳ソフトでとりあえず意味が分かる。

これまで日本のどのバンド、アーティストも為しえなかった海外で大人気という事態は、単に楽曲がいいから、三人のパフォーマンスや神バンドの演奏力が凄いからだけではない。

アイドルの「成長」を「親目線」で応援するドルオタという日本特有のしくみを、「日本から来たKawaii少女たちが本場のメタルに挑戦している」と思ったメタルファンたちが、そっくりそのまま受容したからだ。それを支えたのはYouTubeのファンカムや、Twitterの同時性であり、何よりも三人が「成長する子ども」だったからである。

ファンカムが伝えるライブでの激しいパフォーマンスや演奏は、文句なくこのグループがメタルライブバンドであることを証明する。その一方、さくら学院時代や、それ以前の映像にも「Eng Sub」(英語字幕)がついていて、チェックすることができるので、彼女たちの幼いころからの「成長」を追っていけるのが、BABYMETALの一大特徴なのだ。

過酷なライブの最中、ステージ裏でYUIやMOAが倒れ込んでいる写真や、巨大な野外ステージ裏で不安そうにお互いを励ましあう映像なども見受けられる。それを見た後、大舞台を大歓声のうちに終えた三人が誇らしげに笑っているのを見れば、ボロボロ泣いてしまう。

成長過程を知れば知るほど、感情移入せざるを得ないというのが、海外でもファンベースが急速に拡大した秘密である。子ども時代から知っているからこそ、その成長と活躍がまぶしく感じられる。マイケル・ジャクソンと同じだ。

これが、ぼくがこのブログでさんざん主張してきたことであった。

アイドル「なのに」メタル「なのに」海外で大人気、なのではなく、アイドル「なのに」メタル「だから」海外で大人気になったのだ。

だがしかし。

2016年4月以降、BABYMETALはTV出演をしていない。プライベートのTwitterもしていない。2ndアルバムリリース&ウェンブリー前後と、東京ドーム直後に、いくつかの雑誌インタビューには答えているが、それ以外の肉声がファンに伝わることはない。

世界的な著名人になったにもかかわらず、三人はまだ社会的保護の必要な10代だということや、アーティストとしての神秘性、希少性を担保するためには、必要な措置だとも考えられる。握手会アイドルではないし、むやみに露出するとリスクも大きくなる。

だが、このままでいいのか。

BABYMETALへの「親目線」の応援を担保してきた「成長」過程を追える映像は、レッチリ以降の前座ステージ上とわずかなバックステージ写真だけ。もっと三人の喜怒哀楽や葛藤の生の声が見たい、聞きたい。AKB48のドキュメンタリーDVDみたいなのでもいいからさー。

このままでは「親目線」が発揮できず、ファンベースの拡大が止まってしまうのではないか。

もし、これまでのように成長過程が追える動画や肉声での露出をしないということが、BABYMETALは、もう「子ども」ではない、純然たるアーティストなのだという意思表明なのだとしたら、そして「世界と戦う」ならば、本人たちが主体的に英語で受け答えし、ファンにメッセージを伝えてカリスマになっていく、という過程がどうしても必要なのではないか。

 

先輩格のPerfumeは英語で喋るわけではないが、一定の海外ファンがついている。

One OK RockのTAKAは英語を喋り、積極的に海外ツアーをこなしているが、欧米でBABYMETAL以上の動員力があるわけでもない。

欧米で一定程度の安定したファンベースを作るという意味では、BABYMETALは十分にその水準に達している。

TAKAがツイートしたように、BABYMETALでも日本から海外のライブに遠征するメイトさんの最前列固定化はあるにしても、今のところプライベートを追いかけまわすようなことにはなっていないし、それを三人が不快に思うこともないようだ。何せ圧倒的に現地人のファンが多いのだから。ちなみにぼくは根性なしなので、「ドセンに突撃!」ができないで、いつもピットの中盤から後ろですけどね。

しかし、「世界征服」=全米が熱狂するほどのカリスマ的人気を獲得するには、やはりファンが理解できる英語が話せなければいけないのではないか。

いやいやいや。これまでだってBABYMETALは日本語で歌い続け、「音楽に言葉の壁はない」と証明してきた。海外ファンは日本語を勉強すればよいではないか。それで「世界征服」ができないなら、それは世界が悪いのだ。

これは永遠のジレンマのように思える。

 

そもそも「世界征服」とは何か。

2013年正月「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のPRで日本テレビの「ハッピーMusic」に出演したBABYMETALは、今年の抱負を聞かれて、書き初めで「世界征服」を掲げた。署名は、YUIMETAL、SU-METAL、MOAMETALの順。

メジャーデビューシングルのリリースを控え、ギミックとして聖飢魔Ⅱがデビュー時に掲げた「地球征服」を“オマージュ”したもので、まあ、ギャグですよね。

しかし、その後の展開は聖飢魔Ⅱをも上回るハイペースで、2014年には欧米デビューし、あれよあれよと世界のメタルファンの人気者になってしまった。

聖飢魔Ⅱは、1982年に学生バンドとして結成、1985年のメジャーデビュー時から、自分たちは悪魔であり、地球を征服するために降臨したのだと言い張っていた。そしてライブを黒ミサといい、シングルを小教典、アルバムを大教典として、悪魔教の布教活動を続け、本当の世紀末、すなわち1999年には「地球制服」を成し遂げ、解散することを公約していた。

もちろん全部ギミックであるが、デーモン小暮の歌唱力、エース清水(G)、ルーク篁(G)ら、バンドの演奏力はピカイチで、ぼくも最初の大教典を買い、「蝋人形の館」「怪奇植物」「ファイヤーアフターファイヤー」は耳コピした。

1989年にはメタルバンドとして初めてNHK紅白歌合戦に出場し、デーモン小暮が「写ルンです」のCMに出演するなど、「お茶の間の人気者」になった。海外進出は1991年、ニューヨーク、ロンドン、セビリアの三か所で、この年のみであった。

解散間近の1999年、聖飢魔Ⅱはダウンタウンが司会の「Hey! Hey! Hey! ミュージックチャンプ」に出演した。解散するというが「地球征服」は成し遂げられたのか、そもそも「地球征服」とはどういう状態を指すのかという浜田雅功の質問に、デーモン小暮は、「我々の意のままに世界が動く状態」と答えた。それに対して松本人志が「じゃあぼくが頭を剃ったのも、(無意識に)聖飢魔Ⅱの意思に従ったということなんですね」と突っ込むと、デーモンは苦笑しながら「そうだ」と大きくうなづいた。お茶の間の誰もが知っていて、ギミックだとしても、アーティストとして生活者になんらかの影響力のある存在になることが、聖飢魔Ⅱの「地球征服」だったのである。

1999年12月31日、東京ベイNKホール。

「DOOMS DAY」と銘打たれた最終日の黒ミサ、最終曲の「EL DO RA DO」演奏後、メンバーはそれぞれの棺桶の中に入り、光に包まれて消えていった。

あれ?これ、どこかで見たような…。

はい。BABYMETALの日本武道館「DOOMS DAY黒い夜」(2014年3月2日)や、新春キツネ祭り(2015年1月10日)の冒頭の演出は、聖飢魔Ⅱへの“オマージュ”なのである。東京ドーム「黒い夜」(2016年9月20日)でも「紙芝居」の中に、BABYMETALが目指すべき「EL DO RA DO」が何度か出てきていた。

したがって、BABYMETALが2013年に掲げた「世界征服」とは、聖飢魔Ⅱの「地球征服」の“オマージュ”であって、ギミックに過ぎない。だから、真に受ける必要は何もない、BABYMETALは「世界征服」にこだわらず、やりたいようにやればいいのだ、というのも一つの見識ではあろう。

しかし、実際にBABYETALは、聖飢魔Ⅱを上回る速度と規模で世界へ進出している。

聖飢魔Ⅱ、というよりデーモン小暮が「お茶の間の人気者」になったのは、ひとえに彼のタレントとしての才覚による。あれほど臨機応変にトークできるメタル・ボーカリストはいない。同時期にその個性的な外見でTVに出ていたが、やがて出なくなったサンプラザ中野くんについて、デーモンは「カメラの前に立つとその面白さが半減するタイプかな」(「ヘドバン」創刊号)と評している。当たり前である。現在は吉本興業に所属しているデーモンの方が特異なのだ。

BABYMETALの三人、特にフロントマンのSU-はそういうキャラではないし、「お茶の間の人気者」市場は、巨大勢力“アイドル”が牛耳っているので、敢えて目的にせず、海外に進出したのだ。そしてこれによって「世界征服」がただのギミックではなく、ある程度のリアリティを持つことになった。聖飢魔Ⅱの「地球征服」が、日本人の誰もが知っている「お茶の間の人気者」になることだったとしたら、BABYMETALの「世界征服」は、世界中の誰もが知っている「世界の人気者」になることではないのか。

(つづく)