世界征服への道のり(4) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

2月9日は、2015年ワールドツアー(メキシコシティ、トロント、シカゴ)の日程が発表された日であり、2016年にはNHKのBABYMETAL特番「BABYMETAL革命~少女たちは世界と戦う」の制作が発表され、THE ONEメンバーにスタジオライブ観覧者募集の召喚状が発信された日DEATH。ああ、同じベビメタロスでも、Fox Dayを控え、東京ドームまでのスケジュールが矢継ぎ早に発表されていた頃が懐かしい。

 

昨日、私立恵比寿中学出席番号9番の松野莉奈さんが、18歳という若さで帰天された。6日には家族と旅行した報告をSNSにアップしていたが、7日のライブは体調不良のため欠席していた。原因はまだ確定していない。2011年2月26日放映分の「月刊MelodiX!」でさくら学院(重音部BABYMETAL)と共演していた。ご冥福を祈ります。

 

The BEATLESはロックバンドなのに、主演映画のタイトルは「Help!4人はアイドル」だった。その音楽性は、ブルースやブルーノートに拘泥せず、多様であり、大きくはポップス、ロックの範疇だが、他のどのロックバンドとも違う。つまり、ビートルズは、Only OneのThe BEATLES だとしか言えない。

あれ?このフレーズ、どっかで聞いたことが…。

2014年にファーストアルバムが米ビルボードのワールドアルバム部門で1位になったこと(総合は187位)や、2016年にセカンドアルバムがビルボード200の39位になり、坂本九以来53年ぶりの日本人総合チャートトップ40入り、東京ドームには11万人を集めたという事実や、日本人が日本語の歌を歌って欧米の観客が熱狂しているという情報だけで、BABYMETALは逆黒船だ、21世紀のBEATLESだ、スペルも似てるし、みたいな主張をするつもりはない。

アメリカ市場での受容という観点から、その音楽性を探ってみたら、要素的にはビートルズと重なる部分があるぞ、というだけだ。

少しまとめてみよう。

 

●出身地

The BEATLES    イギリス

BABYMETAL      日本

どちらもアメリカから見て海外であり、伝統的な文化がある。

●メンバー構成

The BEATLES    男性4人組

BABYMETAL      女性3人組

60年代の動画を見るとわかるが、4人とも若くてお茶目でカワイイぞ。

●デビュー時の支配的な音楽

The BEATLES    ポップス。同ジャンルの「ロカビリー」は不良の音楽だった。

BABYMETAL      J-POP。同ジャンルの「メタル」は落ちこぼれの音楽だった。

●音楽性

The BEATLES    R&Bバンドが多用するペンタや7や#9の定番ではなく、多様。

BABYMETAL      メタルバンドが多用するペンタや7や#9の定番を忌避し、多様。

●アメリカのTV初出演

The BEATLES    CBS「エド・サリバン・ショウ」

BABYMETAL      CBS「レイト・ショウ・ウィズ・ステファン・コルベア」

同番組は「エド・サリバン・ショウ」の後継番組であり、同じ収録スタジオだった。

●世間の評価

The BEATLES    ロック?ポップ?きゃーきゃー。カワイイ。礼儀正しい。

BABYMETAL      メタル?アイドル?きゃーきゃー。カワイイ。礼儀正しい。

●同業者の評価

The BEATLES    すげーコード進行。こいつらだけは真似ができない。

BABYMETAL      すげー歌唱力、ダンス、演奏技術。こいつらだけは真似ができない。

●音楽史における位置

The BEATLES    1960年代British Invasionの象徴。結果、ロック史上最高のバンド。

BABYMETAL      2010年代Japanese Invasionの象徴。今後どうなるかはOTFGK。

 

1962に結成されたThe BEATLESは、デビューシングル「Love me Do」が全英17位、2枚目の「Please Please me」が1位になり、翌年4月のファーストアルバム「Please Please me」が毎週連続1位になっている最中11月に出たセカンドアルバム「With the BEATLES」がまた即1位を獲得。出演したTVは1500万人が見たといわれる。

しかし、ビートルズは、意外にもアメリカ進出まで2年の歳月を要している。

アメリカのロカビリー・シーンではチャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーが絶大な人気を誇ってはいたが、良識人の眉をひそめさせる“不良”の音楽だった。イギリスで大人気のビートルズも、アメリカではなかなか火がつかなかった。

この理由については、当時ビートルマニアと呼ばれる熱狂的なファンがついており、“フーリガン”のように思われていたので、EMIのアメリカ発売元キャピトルは契約を拒否、最初期のEPは、小さなレコード会社から細々とリリースされていたためとされている。

しかし、1964年、CBSの「エド・サリバン・ショウ」に出演すると、若く、エルヴィスのように腰を振らず、1曲ごとに深々とお辞儀をする礼儀正しいビートルズは、たちまち全米のアイドルとなった。

音楽的にも、バンド形式こそとっていたが、コード進行にはブルース臭さがなく、ポップス的で、コーラスが入るロマンチックな響きを持っていた。

で、1964年の全米ツアーでは、1ヶ月に24都市を回り、失神者が続出するほどの熱狂的歓迎を受けた。1965年には史上初となる野球場(NYシェイ・スタジアム、5万5千人)でコンサートを行った。

1966年には初来日し、日本武道館で3日間の公演を行い、ブルーコメッツ、ブルージーンズ、ザ・ドリフターズ(オイッス!)らが前座を務めた。ちなみにこの頃のGSに“ブルー”が多いのは、ブルース、ブルーノートの意味であろう。当時、赤尾敏ら右翼団体は“神聖な”日本武道館で、毛唐のポップコンサートなど「世も末だ」といって、街宣車を出して抗議行動をしたという。

その危惧は当たっていなくもなかった。1966年、日本公演のあと、フィリピンでの公演の際、大統領夫人イメルダ主催の晩餐会をキャンセルしたため、国民が暴徒化。8月のアメリカではジョンが「ビートルズはキリストより有名だ」と発言、バイブルベルトのキリスト教信者が激怒してツアーバスを取り囲む事件が発生。ローマ教皇が「予想外の成功を手にした若者が豪語しただけに過ぎない」と赦しを与えたのは42年後の2008年だった。

結局このアメリカ公演を最後に、ビートルズはライブ活動を停止することになった。

そのころからメンバーは長髪にしはじめ、ジョンはベトナム反戦運動などの政治活動に身を入れ、ジョージも、おりからのカウンターカルチャーの影響を受けて、インドに行き、瞑想してサイケデリックな曲を作ったりするようになる。さらに、オノ・ヨーコの登場からバンド内の人間関係がぐちゃぐちゃになり、ジョージとポール、ジョンとポールの仲は決裂、ジョンが脱退意志を示し、ポールが脱退し、ついに1970年にアルバム「Let It Be」を最後に、解散してしまう。

小学校4年生だったぼくは、ラジオから流れてきた「エルピー、エルピー、エルピー、イェー、エルピー」というサビを聴いて、能天気にも「ああ、この人たちはLPレコードが出て喜んでいるんだな」と思った。(いや、ネタじゃなくて)

たぶん、ぼくの世代が、現役のビートルズを聴けた最後の世代なのだと思う。

BABYMETALは、まだこの最初のステップ、国内でアルバム2枚が同時に1位になるというところまでも行っていない。「エド・サリバン・ショウ」の後継番組である「ザ・レイトショウ・ウィズ・ステファン・コルベア」に出演し、イギリスではビートルズと同じウェンブリー・アリーナに立ったが、アメリカでは大規模会場での単独ライブもやれていない。つまり、まだまだ革命的な大人気!というわけではないのだ。

ビートルズ以来、そのコード進行は研究されつくし、たいていのポップス曲がなんらかの影響下にあるといっていい。現代のヒット曲の多くが「これ、どっかで聞いたことのあるメロディだな」と思えるほど、もう新しいことは何もないように見える。

しかしそんな中、「ギミチョコ‼」は、逆に複雑なコード進行というものがなく、ひたすら6弦Eを刻み続ける無調性音楽で、カワイイ女の子がヘンテコダンスをしている。BABYMETALは、ガールズポップとしては、あり得ない曲を作って見せたのだ。

また、「メギツネ」や「おねだり大作戦」や「KARATE」は、欧米人にはオリエンタルなブルース・ファンクに聴こえるはずで、相当ユニークである。

The BEATLESは「ロカビリー」という不良の音楽を、誰でも楽しめるポップスに高めた。BABYMETALは「メタル」という落ちこぼれの音楽に立脚しながら、ロック史・メタル史の様々な要素に加え、和風メロディや70年代歌謡曲までもハイブリッド化し、なおかつそれを誰もが楽しめるレベルにまで広げている。バンド形式でないというところも、実は、視点を変えればビートルズの登場と位相は同じになる。

●パフォーマンス形態

The BEATLES    従来バンドを従えたスターシステムだったのをバンド形式に変革した。

BABYMETAL      従来バンド形式だったのをバンドを従えたスターシステムに変革した。

●制作形態

The BEATLES    プロの作家・編曲家による曲作りが主流だったのを自作に変革した。

BABYMETAL      自作が主流だったのをプロの作家・編曲家による曲作りに変革した。

つまり、ビートルズが演奏形態や曲作りも含めて「革命」を起こしてしまったのと同じように、BABYMETALも、従来の主流とは異なるアプローチで音楽界に「革命」を起こしてしまう可能性をもっている。前に書いたが、WOWOWの「2016年音楽界総括」で、バンド形式にこだわらないアーティストが世界的にも増えているということが「トレンド」として語られていた。

BABYMETALが、BEATLESと同じようにJapanese Invasionを牽引し、そのユニークさから孤高の存在になっていく可能性は十分にあるのだ。ただし、アメリカが受容できるかどうかという観点で見ると、重大な問題がBABYMETALにはある。

(つづく)