世界征服への道のり(3) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日2月8日は、BABYMETAL関連ではこれまで大きなイベントのなかった日DEATH。

 

前回、80年代~90年代のラウド系音楽、NWOBHMからグランジへと動いていく流れの中で、KOBAMETALが純粋なメタル、ハードコアファンではなく、メタリカの「ハイブリッド性」に惹かれていたのではないか、と書いた。

それがBABYMETALの楽曲に生きている。

だから、デスメタルからパワーメタル、シンフォニック・メタルも取り入れるし、リンプビズキットなどのNu-Metalへの抵抗もない。

こう考えてくると、ファーストアルバム「BABYMETAL」の凄さがよくわかる。

Kawaiiメタルの代名詞、パンテラ風リフと70年代歌謡曲の振付のJ-POP「ド・キ・ド・キ☆モーニング」や、EDM、ヒップホップから童謡まで入っているKawaii Nu-METALの「いいね!」、リンプビズキットへの“オマージュ”といわれるが、実は「父兄」をおちょくる過激な歌詞とマイナーペンタのファンクだった「おねだり大作戦」や、シュールだけど実はマスコミの自主規制をあざ笑う「4の歌」。

かと思えばメタリカオマージュの「BABYMETAL DEATH」、シンプルなパンクコアだけどスラッシュメタルとも共通し、かつPerfumeみたいなテクノポップも含んだキラーチューン「ギミチョコ‼」。和風ブルース・ファンク「メギツネ」、SU-の卓越した歌唱力が味わえる「紅月-アカツキ-」(X-Japan風味)、「悪夢の輪舞曲」(聖飢魔Ⅱ+ドリームシアター風味)、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(ジャーマンメタル風味+合いの手)。

”メタルオマージュ”の範疇を超えた、ものすごいハイブリッドの振幅だと思いませんか。

セカンドアルバムには、BABYMETALのアンセムといえる「Road of Resistance」、APMAで世界中に配信された「KARATE」、ウェンブリーの万国旗、東京ドームの幻想的な5万5千人のコルセットの光を現出したドラマチックなシンフォニック・メタル「The One」がある。

ただ、SU-ソロの「Amore-蒼星-」「No Rain No Rainbow」もそうだし、BBMの「GJ!」「Sis. Anger」もそうなのだが、ぼくら日本人にはすごくクールで、BABYMETALらしさがより先鋭化したように思うが、ファーストアルバムにあったような無意識のファンキーさ、子どもっぽい荒々しさがなくなり、洗練されたように感じるのも確かだろう。

「シンコペーション」にはわずかにブルースコードが使われているが、J-Rockっぽいカッコよさで目立たないし、そもそもUS盤、EU盤には入っていない。

それでも、Kawaiiハードコアの「あわ玉フィーバー」、フォークメタルの「META!メタ太郎」や超難曲「Tales of the Destinies」が1枚に同居していることを考えると、やはりBABYMETALの異様な振れ幅の大きさを感じざるを得ない。これまで2枚のアルバムしか出しておらず、三人はまだ10代だというのに。

ブルースやブルーノートに拘泥せず、ここまで多様な音楽性を持ち、アメリカ人に受け入れられた外国出身のバンド/アーティストは、音楽史上、ひとつしかない。

The BEATLESである。

「ブルースとの向き合い方」で述べたように、ブリティッシュロックの初期、イギリス人ギタリストやバンドのほとんどは、アメリカの黒人ブルースマンや白人ロカビリーをお手本としていた。

しかし、ビートルズは違った。

もともと、ジョン・レノンやジョージ・ハリスンは、ご多聞にもれず、アメリカのR&B、ロカビリーから音楽に入った。最初期の「Love me Do」や「Please Please me」「Roll over the Beethoven」は、ブルーノートが多用されているし、ジョンのハモニカ、リンゴのドラムスには、ロカビリーの雰囲気が濃厚である。

しかし、50年代アメリカンポップスに影響を受けたと思しきイタリア系の血を引く作曲の天才、ポール・マッカートニーの曲は、単純なブルース3コードでは収まらない。

7も使うが、sus4、6、△7、#でない9を入れたカラフルなコードや、転調を多用する独創的な和声感覚をもっていた。

「A Hard Days Night」(Key=G)の冒頭、通常のドミナントD7ではなく、四度を入れたD7sus4というコードを聴いただけで、「あ、ビートルズだ」とわかる。

「Please Please me」(Key=G)の歌いだし「Last night I said these words to my girl」(G→C→G)のあと、そのままD7に行くのではなく、転調しB♭→C→D7とやっている。

この曲がビートルズの最初の大ヒット曲になったのは、このフィルインの面白さと「Come on、Come on、Come on Come on…」と畳みかけていくサビのキャッチーさゆえだと思う。

また、いろんな曲の終わりも、例えばKey=Gなら、ブルースならトニックに短七度(♭7)を入れてG7で終わるところ、フレットを1つ落とした六度を入れてG6で終わると、とたんにビートルズになる。

サブドミナントをマイナーにするのもビートルズらしさを醸し出す。3コードブルースの終わりの形の定番であるサブドミナント→ドミナント→トニックの進行C→D7→Gが、ビートルズではAm→Cm→G6とか、Am7→Cm7→G△7になる。すっげーおしゃれ。今から55年前ですよ。

「Yesterday」(Key=G)では、「…All my troubles seemed so far away」のところ、メロディラインはG→B7→Emと進行するのに、バッキングのコードは、G→F#m7→B7→Emとなっている。へんな進行なのだが、これがあの「Yesterday」の切なさを表現している。

これは、伝統的なブルースフィーリングから出てくるものではない。

では、ポップスなのか。

しかし、4人はギター2人、ベース1人、ドラム1人という神バンド構成で、生演奏する。

ジョンの歌い方はけっこうシャウトだし、ハモニカも吹く。ジョージ・ハリスンはサザンブルースに影響を受けたスライドギターもやる。後年の作だが、「Come Together」は相当に黒っぽいし、「Get Back」のエレピはビリー・プレストンだ。つまり、大きくはロックの範疇にある。だが、通常のロックバンドではない。では何か。

Only OneのThe BEATLES である、としか言えない。

(つづく)