ブルースとの向き合い方(1) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日2月1日は、2012年、BABYMETALの初Live動画が公開された日DEATHが、それよりなにより2013年、Legend ”Z”で、解散かと思われたBABYMETALが、観客の“We are BABYMETAL!”という心からの叫びによって、神バンドが生演奏する「BABYMETAL DEATH」とともに白装束で復活し、中元すず香のさくら学院卒業後も、BABYMETALが継続することが明らかになった、涙、涙の復活祭DEATH!

 

ジェフ・ベックを生で見たのは、スタンリー・クラーク(B)と来日した時以来だった。

70年代後半、ロンドンではパンクムーブメントが起こっていたが、「上手い」ことに至上価値を置く日本のハードロックギター小僧たちは、レインボウ→ヴァン・ヘイレン→へヴィメタルに行くか、フュージョン→ジャズに行くかに二分された。

そして後者だったぼくは、ジャズ~フュージョン系の超絶ギタリスト-和田アキラ、渡辺香津美、アル・ディメオラ、ラリー・カールトン、リー・リトナーらに魅了され、ジャズ・ギターの教則本(ソノシート付)でコードやスケールを勉強してはみたが、チンプンカンプン。さらに、ジョー・パスとかジム・ホールとか、理解不能なジャズ・ギターの巨匠を知るに至り、ついに投げ出し、聴く側に回ったのであった。

しかし、小学校5年生で親父のクラシックギターと「平凡」「明星」の歌本でコードを覚え、中学時代に3コード/ペンタトニックからエレキギターを始めたぼくに関していえば、社会人になって数年、ジミヘンっぽいけどテキサス風の出で立ちのストラト使い、スティーヴィー・レイ・ヴォ―ン(SRV)が話題になると、中学時代にやっていた3コード/ペンタトニックのブルース/ロックンロールなので、「あ、これ知ってる世界だ」と思い、さらにGibson、Fenderの陰に隠れていたセミアコ―スティックギターメーカーのGretchを弾きまくるブライアン・セッツアーのストレイ・キャッツを知るに至っては、カントリー系にも興味を持ち、カントリーの超速弾きチキンピッキングの名手たちを経て、カントリージャズの巨匠チェット・アトキンス御大にたどり着くのであるが、もう、ブルース、カントリー、ジャズ、HR、HMの世界がこんがらがってしまい、仕事も忙しくなって、ギターなどどうでもよくなってしまったのであった。すべてジェフ・ベックのせいである。

そんなことはどうでもいい。

そのジェフ・ベックのライブは、60年代R&Bの曲が多く、フレージングもベック流ペンタトニックが中心であった。

前にも書いたローリング・ストーンズの11年ぶりのスタジオアルバム「Blue & Lonesome」は、リトル・ウォルター、ハウリン・ウルフ、オーティス・ラッシュなど、ミック・ジャガー(V、ブルースハープ)やキース・リチャーズ(G)が若かりし頃にお手本とした1950-60年代のアメリカ黒人ブルースの曲を一発録りで演奏した12曲。キャッチコピーは「構想50年、制作3日」。

初期を彷彿させる荒々しさとともに、50年の歳月を経て、当時はどうしてもかなわなかった南部の黒人のような“味”が出ている。知らないで聴くと60年代のブルースマンのコンピレーションかと思う。

たまたま隣のスタジオにいた71歳のエリック・クラプトン(G)を、73歳のミックが無理やり連れてきて2曲弾かせてもいる。いずこも変わらぬ縦社会。

ヤードバーズ、ローリング・ストーンズ、The Whoなど、ブリティッシュ・ロック第一世代のお手本は、アメリカ南部黒人のブルースマンたちだった。ロックという音楽の心臓部には、ブルースという「血」が流れている。

BABYMETALはレッチリ、メタリカ、ガンズの前座を務めたわけだが、当然アメリカン・ロックにもブルースの「血」が脈々と流れていた。

これから、BABYMETALが本格的にアメリカ進出を果たすのにあたって、避けて通れないこのブルースという音楽について、何回かに分けて考えていこうと思う。

 

ブルースという音楽は、きわめて単純な形式である。一度覚えてしまえば、誰でもどこでも、何歳になっても、キーさえ合わせれば、アドリブ、セッションができる。

コードは3つしか使わない。Key=Gなら、

トニックG(四小節)→サブドミナントC(二小節)→トニックG(二小節)→ドミナントD7(一小節)→サブドミナントC(一小節)→トニックG(一小節)→ドミナントD7(一小節)→無限ループとなる。

歌詞も定型である。

G「今朝彼女がどっか行っちまったオイラどうすりゃいいんだ」→C「今朝彼女がどっか行っちまったオイラどうすりゃいいんだ」→G→D7「おおベイビーお前がいなきゃ」→C「オイラ干上がっちまうぜ」→G→D7→無限ループ

出だしの歌詞を2回繰り返し、最後の1回でオチをつける。短歌や俳句と同じ定型詩である。

弾き方も簡単だ。

ギターというのは、同じ押さえ方でフレットを移動するだけで、キーが簡単に変えられる。6弦開放=E、1フレット=F、3フレット=G、5フレット=A、7フレット=B、8フレット=C、10フレット=Dというように。フレットを挟み込んで固定しキーを変えられるカポタストという器具もその原理である。シンガーの音域に合わせてキーを変えればいい。

だから、リズムギターは、Key=Gであれば、3フレットでトニックGのコードを押さえた形のまま、8フレットに移動してサブドミナントC、さらに10フレットに移動してドミナントDを鳴らせばよい。

ソロもほぼ定型だ。西洋音階では、1オクターブにはキー=Cであればドレミファソラシの7つの音があるが、ブルースでは、ドレミソラの5つの音しか使わない。5つの音だからペンタトニックという。

これをギターのフレット上で押さえると、キー=Gなら、6弦3フレット-6フレット、5弦3フレット-5フレット、4弦3フレット-5フレット、3弦3フレット-5フレット、2弦3フレット-6フレット、1弦3フレット-6フレットを適当に弾いていけば、バッキングがトニックでも、サブドミナントでも、ドミナントでも、あら不思議、ソロになっちゃう。

この“形”のまま、さっき言ったようにフレットを移動することで簡単にキーが変わる。

キー=Gで3フレットだったのを、Aにしたければ5フレット、Bにしたければ7フレットにすればよい。

あとは、弦を押さえたまま、くぃーんと6弦側に引っ張ると「チョーキング」というものになって、例えば3弦5フレットをチョーキングして2弦3フレットの音、2弦6フレットをチョーキングして1弦5フレットの音にする。これを入れると、いなたい「ブルース」というものの出来上がり。

バリエーションはいろいろあるが、これが基本。セッションでは、例えば「Gのスローブルースね」といえば通じる。

こんな単純な音楽形式なのに、深い表現力をもったいわば「魔法の音楽」なのである。

(つづく)