ジェフ・ベックライブ@東京国際フォーラム参戦記 | 私、BABYMETALの味方です。

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★今日のベビメタ

本日1月31日は、BABYMETAL関連では大きなイベントのなかった日DEATH。

 

お伝えした通り、昨日東京国際フォーラムホールAにて、ジェフ・ベック来日公演が行われ、参戦してきた。

ぼくは毎日通勤で、京葉線東京駅から地下鉄有楽町駅に行くときに東京国際フォーラム構内のホールA、B、Cの前を通る。ジェフ・ベックのライブがあるのを知ったのも通勤途中のポスターだった。

東京国際フォーラムでは、2013年3月31日に、「The Road to Graduation Final ~さくら学院 2012年度 卒業~」が行われた。その時のホールはやや小さいC。中元すず香の卒業式のために約1,500人が集まった。MOAが「卒業しないで…うえーん」と泣いて抱き着いたのもここである。

 

着いたのは開演30分前の18:30。50代以上のオジサンが圧倒的に多い。わずかに見かける女子も50代と思しき方が多く、30~40代は、会社の上司に連れてこられた感が強い。エリック・クラプトンとは大違いである。

物販は意外に並んでおり、15分待ちくらい。

客電が落ち、19:06スタート。5,000人入る会場は、2階最上段を除いて、いつの間にかほぼ満員である。

冒頭、ベックが白いストラトをもって下手から登場。ノイジーなブルースっぽいベック節を聴かせる中、客席後方からトラメガ(ハンディメガホン、英語でLoud Hailerというらしい)を持ったつなぎの姉ちゃんが歌いながら登場。2016年7月にリリースされた最新アルバム「Loud Hailer」からの「The Revolution Will Be Televised」である。

豆タンクのようなこの女性ボーカルが本日のもう一人の主役、ロージー・ボーンズ。ベックはサングラスをかけ、黒いシャツにグレーのスラックスという出で立ち。80年代の香りがする。

続くセトリは以下のとおり。(L)は最新作「Loud Hailer」から。

1.The Revolution Will Be Televised(L)、2.Freeway Jam、3.Lonnie on the Move、4.Live in the Dark(L)、5.The Ballad of the Jersey Wives(L)、6.You Know You Know、7.Morning Dew、8.A Change Is Gonna Come、9.Big Block、10. Cause We’ve Ended as Lovers、11.O.I.L. (L)、12. Thugs Club(L)、13. Scared for the Children(L)、14. Beck’s Bolero、15.Blue Wind、16. Rollin’ and Tumblin'、17. Superstition、18. Right Now(L)

En1.Goodby Pork Pie Hat、En2.A Day in the Life、En3.Going Down

2.「Freeway Jam」(ブロウ・バイ・ブロウ)のイントロで、ああベックだ、と思う。あの80年代が一気に蘇る。50代が中心のはずの客席は落ち着いたものだ。だが、曲終わりには歓声。

続く3.はロニー・マックの「Lonnie on the Move」で、ベックはラテン調のブルースロックを聴かせる。客入れの際に流れていたBGMは60年代のR&B、ロックンロールだった。

この冒頭三曲で、本日のメニューが明らかになる。ロージーをボーカルにした最新作からのパワフルなファンク、「ブロウ・バイ・ブロウ」や「ワイアード」の頃のフュージョン、そして、もはやアートのような超絶テクのソロ、とりわけベック流ブルースを聴かせる曲。

4曲目は、ニューアルバムからの「Live in the Dark」。

本日のドラマーは男性だが、ベーシストとサイドギターは女性。ここでのベックはガールズバンドの渋いギタリストという役回りに徹しているかのようだ。

冒頭にも登場したボーカルのロージーは、紺のベレー帽にカーキシャツで、南米の革命家風の出で立ちになっている。お尻も胸もデカいが、背は低くハスキーな子どもっぽい声のダイナマイトな方で、大股で動き回る姿は笑ってしまうほどパワフルカワイイ。歌詞の内容は辛辣だが、深刻さは感じさせない。むしろ絡むベックのギターが「何か」を訴えているようだ。

5曲目もニューアルバムからで、「The Ballad of the Jersey Wives」。家庭に閉じ込められた女性の欲求不満とか、社会への苛立ちが刺さるように伝わってくる。曲が終わるとロージーはマイクをつり下げ、そのままステージに置いて去ってしまう。

次の6.「You Know You Know」は、85年の「フラッシュ」に収録されたマハビシュヌオーケストラのカバー。ベックの変幻自在のソロに続いて、ベースのロンダ・スミスがステージ前面にせり出してきてスラップベースを聴かせる。さらにドラムのジョナサン・ジョセフのソロとなる。いわば演奏者のテクを見せる「CMIYC」のような位置づけ。

ところが、次の7.「Morning Dew」(ジェフ・ベック・グループ)で、全然違う展開になる。男性ボーカリスト、ジミー・ホールが登場。ブルースハープができるウルフルズのトータス松本が、シャウトするとイアン・ギランになるという感じ。60年代R&Bであるサム・クックの8.「A Change Is Gonna Come」では、「Change!」と観客を煽る。もう全然違うバンドになってる!これにもベックはストラトから繰り出される鋭い音質のブルースフレーズでバックをつける。なんちゅう変幻自在。これでもう一本ライブの柱が加わった。

ジミー・ホールがやんやの喝さいを受けて退場すると、またもベックのソロのお時間となる。

9.「Big Block」(ジェフベックズ・ギターショップ)はベック・ブルースの極致。

続く10.「Cause We’ve Ended as Lovers」(ブロウ・バイ・ブロウ)は懐かしくて涙がチョチョぎれる。右手の小指がボリュームに届くストラトならではのボリューム奏法(ヴァイオリン奏法ともいう)は、ギター少年の間で大流行したよね。

と感傷に浸っていると、再びロージー登場でニューアルバムからの11.「O.I.L.」。

ベックはテレキャスターに持ち替え、鋭いカッティングでファンクのリフを刻む。これとロージーの掛け声「Hey!」がまた合うんだ。後半はボ・ディドリー風の四角いギターでスライドを聴かせる。めちゃめちゃカッコいい。ベックがまたストラトに持ち替え、続く12.「Thugs Club」も、アートなソロからファンキーなリフを刻んで、ロージーが、経済格差が広がる現状への苛立ちを訴えつつ、「Alright!」と声をあげる。歌詞の内容がわかるオーディエンスで、もう少し小さな規模のライブだったら、「Hey!」とか「Alright!」とシンガロングするところだろう。

曲終わりにロージーがステージに座り込んでしまう。ベックがニューアルバム「Loud Hailer」を作ったのは、現代の社会状況に対して、「大声で言いたいことがある」からだという。

その代表曲ともいえる美しいバラード13.「Scared for the Children」である。ゲームの画面ばかり見ている子どもたち。コンピューターに管理される現代社会。それが「怖い」というのだ。サビは「This is the end of the age of the innocent」(今は無垢の時代の終わり)。

座り込んだまま歌うロージーの表現力は、ミュージカル女優並み。また、ギター職人ベックの意外な社会派ぶりがうかがえる。

しんみりしたところで、またもベックの超絶テクのお時間です。

ボレロのドラムに乗った14.「Beck’s Bolero」の次は、なんと仙台まではやらなかった15.「Blue Wind」をやってくれた。前に、BABYMETALとの絡みで「Tales of the Destinies」の藤岡神のギターシンセの音だと書いたあの曲である。急きょ演奏することになったようで、サイドギターのカーメン・ヴァンデンバーグが、ドラム、ベックとのタイミングを合わせられず、後半グダグダになったところはご愛敬。高校時代に必死でコピーした曲のモノホンが聴けた。うれしかったDEATH!

と感激しているとまたも男性ボーカルのジミー・ホール登場。マディ・ウォーターズの名曲、16. 「Rollin’ and Tumblin’」。ブルースハープの腕も確かで、ベックとの掛け合いがカッコよく、会場のボルテージが上がる。

からの、出ました17.「Superstition」。クラヴィネットがないのに、ストラトのリフだけでキーボードっぽい音を出している。ジミー・ホールが会場に手拍子を要求。ようやく乗ってきた観客は手拍子で応える。いやあ、本当にバンドがいくつもあるようである。

最後はロージーが登場して、ニューアルバムからの18.「Right Now」。ヴァン・ヘイレンのやつじゃないよ。今こそ立ち上がるとき、と呼びかける社会派ファンク。

ちょっと唐突な感じで舞台の照明が明るくなり、ベックたちはお辞儀をして退場する。

もちろん、これで終わるわけはないので、アンコール。

En1.は「Goodby Pork Pie Hat」(ワイアード)である。今日は「ワイアード」率高し。しびれました。続くEn2.はビートルズの「A Day in the Life」。メンバーが退場したので、これで終わりかと思ったら、まだ拍手は続き、二度目のアンコール。最終曲はEn3.「Going Down」(ジェフ・ベック・グループ)。

ジミー・ホールとロージー・ボーンズが「Down Down Down!」と声を合わせ、大団円。

いつの間にか、1階席は総立ちになっていた。

ボーカリストがいないときは、演奏家としてのベックの超絶テクを聴かせるバンド。それも60年代のR&B仕様と80年代フュージョン仕様が同居する。さらによく聴き込むと、イギリス人ならではのフォークっぽいフレーズや、エフェクターを多彩に使い、ノイズも表現にしてしまう前衛アート的なセンスも感じられる。

ジミー・ホールがボーカルをとるときは、R&Bをベースにした70年代ブリティッシュ・ハードロックバンド。

ロージー・ボーンズがボーカルをとるときには、90年代の香りのする社会派ガレージ・ファンクを、今風に女の子がやっているというバンドになる。

つまり、このライブは、ベックがたどってきた音楽遍歴を次から次へと見せていく走馬灯のような多彩さに満ちていた。それは50年のロックの歴史そのものだ。そして驚くべきことにそれは、すべてジェフ・ベックという希代の天才ギタリストが、その時代ごとに作ってきたものなのだ。

こんなアーティストは、世界にただひとりしかいない。

懐かしかったし、とても勉強になったライブだった。