ソウルメタリカライブ(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

2013年、BABYMETALは、FMNack5の「Idol Showcase i-ban」に出演しました。

 

(1月11日ソウル高尺スカイドーム、承前)

BABYMETALは、スタンディングS席の入場途中から、定刻通り19:20に始まり、きっかり20:00に終わった。入場はまだ続いている。いったん外へ出て仕事先に電話を入れ、一服して元の場所へ戻る。それから8:20を過ぎて、ラーズ・ウルリッヒ(D)が登場してスネアをたたく。ものすごい音量。さらにカーク・ハメット(G)が登場してコードを弾く。ものすごい音量。BABYMETALの1.5倍。ぼくはスタンディングS「ダ」の柵の下手最前列にいたので、レフトのPAのモロ前で、耳栓が必要かなと思う。

音出しが終わると、また引っ込んでしまう。ベビメタの時は、サイドスクリーンのみ、しかも横長のシネマサイズだが、METALLICA用には、ステージ上の屏風状の3面を含めた縦長フルサイズになるようだ。実際、ライブが始まるとそれぞれの曲に、イメージビデオが入る。アンコールの3曲でも入ったから、最初からそういう演出なのだろう。METALLICAといえども、こういうところで前座と差をつけるのだ。

METALLICAは、ライブ前、特別に作らせた練習用スタジオでジャムって、調子の上がったところでステージに登場するのが習慣ときく。今回はなかなか出てこず、結局Hardwiredが始まったのは、チケット記載の時間より1時間遅れの9:00過ぎだった。

セットリストは、以下の通り。

1.Hardwired、2.Atlas, Rise!、3.Sad But True、4.Wherever I May Roam、5.The Unforgiven、6.Now That We're Dead(初披露)、7.Moth Into Flame、ロブ・トゥルージロ(B)ソロ、8.Harvester of Sorrow、9.Halo on Fire(初披露)、10.The Four Horsemen、11.One、12.Master of Puppets、13.For Whom the Bell Tolls、14.Fade to Black、15.Seek & Destroy

(アンコール)

16.Battery、17.Nothing Else Matters、18.Enter Sandman

1.2.6.7.9.は、ニューアルバム「Hardwired...to Self-Destruct」の1枚目、曲順どおりである。だが、大音量かつ超速のタイトル曲「Hardwired」の合いの手「Self-Destruct!」は、ぼくのまわりではやっている人がいない。ライブではアメリカ人が叫んでいるのに。たぶん、知らないのだろう。

2.はぼくの大好きな曲。中高年よ、我慢してきたものを解放し、立ち上がれと叫ぶ「Atlas、Rise!」でジェームズが嬉しそうにこぶしを突き上げているのに、やっぱり周りの人はやっていない。Rのセンター付近ではやっている人が見えたかな。

曲が終わった後、ジェームズの「韓国の友だちに会えた。ずいぶん長かったな。今日は新しいアルバムの間に古い曲をはさんでいくぞ」というMCが入り、観客席の映像が映る。それを見て客は沸く。このタイミング、覚えておいてね。2曲目だよ。

3.4.5.は「METALLICA」(1991、ブラックアルバム)から。このあたりから観客席が、曲に合わせて一緒に歌ったり、拳やメロイックサインを突き出したりし始める。ぼくのとなりにいた30代と思しき女性も体を揺らして叫んでいる。前にライブをやっているということで、韓国でも「大物」としての知名度があり、名曲は知っているのだ。客席にはアメリカ人も多い。米軍関係者だろう。

5.「The Unforgiven」の後、カーク・ハメット(G)のソロになる。弾きまくっているときのカークの顔は、口を開け、目を閉じ、眉間にしわを寄せ、苦いものを食べて「不味っじいー」と言っているときの顔、あるいはムンクの「叫び」。これがアップになり続けるのでつい笑ってしまう。ソロの表情で笑ったのは、カルメン・マキ&OZの春日博文(G)以来だ。両者ともフレーズと連動して口が開いてしまう。

6.「Now That We're Dead」は、ニューアルバムからの曲だから、観客の多くが知らない。だが、この曲のラーズのドラミングが凄かった。ミドルテンポで8ビートを刻んでいるだけなのだが、一発一発が重く、それが曲の進行につれてさらに重くなってくる。ここではラーズの顔のアップの連続。このリズムにどうしてもノッテしまう。CDではそこまでノル曲と思わなかったのだが、この音は人を狂わせる。凄い。最後には内野スタンド席の客までヘドバンで揺れていた。これが、本来のメタルの力である。

7.「Moth into the Flame」は若い新人女性ア-ティストに「どんどん有名になって明るい光に集まって我を忘れていると、炎に触れて燃え落ちてしまう蛾みたいになってしまうぞ」と警告する曲。なんかBABYMETALを思わせる。

8.の前にはベースのロブ・トゥルージロのソロ。山口智弘(グッさん)を彷彿させる顔とゴリラのような寡黙なマッチョマンが、ズシズシとガニマタ歩きでパフォーマンスする姿は、やはりウケる。

そして10.「The Four Horsemen」(1983、Kill 'em All)、11.「One」(1988、...And Justice For All、メタル・ジャスティス)、12.「Master of Puppets」(1986、Master of Puppets、メタル・マスター)というMETALLICA名曲オンパレード。

中でも、「One」は、ドーム中をレーザーが飛び、スモークがたかれる中、スクリーン全面に白骨化した兵士が歩き回る「紙芝居」で、ドラムとベースとギターの単音ピッキングによる銃弾のような音が響き渡る。これが「BMD」のオリジナルである。

さらに、かつてSU-やMOAが聴き込んでいると答えていた「Master of Puppets」。

ジェームズが「Master!」と叫ぶと、観客席も「Master!」とレスポンスする。このC&Rは曲中ずっと続く。ベビメタには冷ややかだった観客は、METALLICAの名曲には大声で反応している。熱狂する客席の映像も映る。ただ、モッシュやダイブ(クラウドサーフィン)は皆無。スタンド席は座ったままでシャウトするだけだ。ファンカム、望遠カメラ取り放題だから、会場の禁止ではなく、これが韓国の習慣なのだろう。

フィニッシュに向かう13.「For Whom the Bell Tolls」、14.「Fade to Black」は「Ride the Lightning」(1984)から。またもカークのソロが入る。棒で弦をこすり、カメラにこすりつけ、床に置いて靴で踏みつけ、カメラに向かってメロイックサイン。観客のカーク人気は高く、昔のリッチーみたいなウケ方。どんどん過去に向かって観客の知ってる率も上がり、ボルテージが上がる。柵の外ではビールで酔ったアメリカ人たちが踊り狂っている。

最後はデビュー作「Kill ‘em All」(1983)から15.「Seek & Destroy」。パンク色の強いスラッシュメタル。

ジェームズが、観客に何かいいたげに退場したあと、やはりアンコールとなり、16.「Battery」(Master of Puppets)、ラブ・バラードの17.「Nothing Else Matters」、最終曲は眠れ眠れの18.「Enter Sandman」(Master of Puppets)。

観客はみんな曲を知っており、大合唱となった。最後にジェームズが「Hardwired to Sef Destruct、買ってね!また来るからね!」と叫んで終わり。終演は23:15。2時間15分のライブだった。

Sky Domeに到着した18:00から、5時間15分立ちっぱなしでヘドバンし続けたため、腰を曲げると激痛が走る。

「ダ」にいた日本人の方とは、いつの間にか離れてしまい、外で探したが見つからない。みんなは明洞で焼肉と言っていたのだが。寒い。しかたがない。明日は早いから、タクシーを探して帰ろう。

ところが、タクシーがつかまらない。ドーム前の数か所で、タクシー列と思しきものが形成されており、そのひとつに英語で「Are you waiting for Taxi?」と聞くと、そうだという。だが、タクシーは予約して呼ぶのが主流で、韓国の電話番号を使うアプリで呼ぶらしい。なかなかタクシーがつかまらないのを見かねたのか、若い韓国人の男性が、「ここではみんな予約でタクシーに乗る。フリーのタクシーが来たら止めてあげる」と言ってくれる。また、うしろの大学生とおぼしきカップルが「ベビメタ」「イルボン」と言っているので話しかけたりした。

30分くらい待っていたが、タクシーはつかまらず、雪が降ってくる。

親切な男性が、「雪が降ってきたから、フリーのタクシーはますますつかまりにくくなる。もう少しソウル側に移動した方がいいかも」と言ったので、電車で帰ろうと思い、反対側に回ると、若い日本人の集団がいた。これから明洞へ行こうとしているという。日本語のできる韓国人女性が、親切に終電は終わったと教えてくれる。バスはまだあるのに。

ただ、この時点で12:00を回っていたので、話しているうちに、ぼくは腰も痛いし、明日は早いし、ホテルまで歩いて帰ることに決心した。

こういうこともあろうかと、ドーム近くのホテルをとったのだから。

外国人とは話せるのに、つるむのが苦手で、結局一人の方が気楽なのだよなあ。

雪の降るハングルだらけの道を、地下鉄2駅分、歩く。歩きながらいろいろ考える。

なぜ、ベビメタは受けずに、メタリカは受けたのか。

SU-、YUI、MOAの三人は全力パフォーマンスだった。新ベーシストを迎えた神バンドも超絶の演奏を見せつけた。ステージの出来は、2017年の初ライブにふさわしく、気合いとエネルギーに満ちたものだった。なかなか盛り上がらない会場の雰囲気に立ち向かおうとするSU-の気概やYUI、MOAの心情を感じて、胸が熱くなる瞬間もあった。

三人に対するブーイングやペットボトル投げ入れなどなかったし、会場で、ぼくらが日本人であることがバレても、反日的な言動には出会わなかった。終演後、若い韓国人はとてもフレンドリーで、困っているぼくを助けようとさえしてくれた。

ううむ。単に、「ベビメタを知らなかった」というだけなのか。

東京ドームには韓国人メイトも来たのだから、ファンベースもあるのだろう。それが広がらないのは、なぜか。

あれだけのパフォーマンスを見ても、熱狂できないのは、なぜか。

(つづく)