ソウルメタリカライブ(1) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

仁川国際空港着は定刻より1分早い15:08だった。

携帯をオンにしたとたん、仕事先から電話が入ったので、入国審査前に成田で送ったデータの説明で20分くらい使った。審査の列も長く、税関を出たのは15:45だった。ぶっちゃメタルさんの情報だと、スタンディングは、17:30集合に間に合わないと、入場番号が無効になるという。A’rex-地下鉄だと、ホテルに入って、スカイドームまで間に合いそうもない。バスだと所要時間は1時間弱なので、間に合いそう。インフォメーションの女性に、梧柳洞行きのバスを聞くと、6014番で16:08発とのこと。ちょうどよかった。ブースでチケットを買う。9000₩(約900円)

それにしても寒い。気温はー1度。

ヒートテックのジーンズ、タートルネックシャツ、靴下でアンダーをかため、Dr.マーチンのブーツと赤いセーターと革ジャンで備えたつもりが、成田の空港内では暑く、現地では寒いという中途半端な結果になった。

バスは、本土に入り、金浦空港を突っ切って一路梧柳洞方面へ南下していった。

車窓から見る高速道路と田舎風景、中層ビル、マンション、コンビニ、商店が並ぶソウル郊外の街並みは、ベトナムやインドネシア、フィリピンとは全然違う。ほとんどすべての字がハングルであるほかは、ちょっと建物にレンガが多いかなというくらいで、道路標識の色やデザインも同じ。漢字と英数字だけなら日本だ。試みにハングルを読んでみるが当然遅すぎて読めたと思ったら通り過ぎているし、読めたところで韓国語なので意味が分からない。

ひとつだけ読めたのが、하익렌탈という言葉。バイクレンタル、である。市街地に入ると渋滞にかかり、結局ホテル到着は17:20ごろだった。

ちょうどぼくが入っていったとき、数人の日本人メイトさんがエレベーターから出てきて、タクシーでスカイドームへ向かうところだった。時間がないので、挨拶だけしてぼくは部屋に行って、またデータを作ってメールを送り、セーターの代わりにベビTを着て出かけた。

車は右側通行なので、横断歩道を渡ってすぐそこにいたタクシーに「スカイドーム」というが、通じない。あとから明洞から来た方にも聞いたが、どうも「ネクセンヒーローズ」というプロ野球チームはあまり人気でないらしく、高尺スカイドームといってもピンとこないらしい。ホテルからドームまでは1メーター3000₩(約300円)。少しだけ渋滞したので3500ウォンになったが、財布の中には1000₩札が3枚しかない。5000₩札を出したら、運転手が「いいよ」といっておまけしてくれた。「カムサムニダ」といって降りた。17:55。

スタンディング席と、座席は入口が違う。歩いていくと、物販のテントがひとつだけあった。覗いてみるとベビメタTはすでに売り切れ。メタリカTは別に欲しくはないので、素通りしてスタンディング席入口へ。가、다の入口と、나、라の入口が途中で別れる。

 

もう17:30をとうに回っているが、それぞれの入場番号順に並んでいる。17:30遅刻無効というシステムはなかった。

列は、韓国人ばかりだが、メタリカTはみかけても、ベビメタTにはお目にかかれないなあと思っていると、日本人の方が数人、同じ列に来た。うれしくなっていろいろ話した。

18:30入場開始という情報もあったのだが、19:00を過ぎてもまだ列は動かない。

メタリカTでもいいから、もう一度行ってみるかということになって、物販のところにもう一度行ってみると、メタリカTも売り切れている。情報によるとベビメタTは2時過ぎにはあと50枚となっていたそうだ。メンバーも今日のフライトで韓国へ来たというから、スタッフが手持ちで段ボールを持ち込んだのだろう。2万人の会場でそれはない、という気がする。しかも、アスマートで「残り」を販売するという。現地に行った者としては「残り」があるなら、現地で売れよ、といいたくもなる。でもまあ、来れなかった方も、記念Tは欲しいだろうな。ぼくはグッズにさほど執着しないので、ま、生で見られるのだからいいかという感じだけど。戻ってきて、情報にあった開演時間の19:20過ぎて、ようやく列が動き出した。ゾロゾロ行くと、あれれ、会場の中から「BMD」が聞こえてくる。

なんと、ダの列が会場に入ったときには、すでにベビメタが始まっている!

こんな理不尽は初めてである。この会場のスタッフにとって、あくまでもメタリカが主役で、前座なんて、見られなくてもいいと思っているに違いない。

だから、会場に入る列の中で思いっきり「B!A!B!Y!...デス!デス!」と叫びながら入場してやった。

会場に入って見渡すと、座席エリアはガラガラ。スタンディングRもセンターには人が多いが、下手、上手の後方はがら空き。柵で区切られたスタンディングSはもっとひどく、柵付近には人がいるが、その列以降はグリーンのシートが丸見えである。

ステージまではかなり遠く感じる。ピッチャーマウンドから、ライト、センター、レフトを見る感じ。

スタンディング席後方の韓国人観客の中には、座布団状のものを持参し、ステージなんか見ないで座りこんだり、ダベったりしている。「BMD」の最中ですよ。

BMD終了後、ぼくらメイトは「ウオーッ」と叫ぶが、ぼくの周りの韓国人ファンは、怪訝そうな顔でぼくを見る。

続くCMIYCで、異変に気付く。ギターは下手LEDA神、上手大村神、真ん中のドラムは青山神なんだが、その間にいるベーシストが長髪である。え、BOH神、毛が生えたのか?

やはり、後から聞くところによると、新ベーシストであるらしい。神バンドはBOHがリーダー格、まとめ役のような気がしていたのだが、そういえばブログで「別の方」をサポートするとか言っていたような。CMIYCのソロでは、BOH神ほどのパフォーマンスや表情はないが、クールに馬鹿テクを決めていた。しかし、それにも韓国人観客は、あまり歓声を上げていない。

「ハイ!ハイ!」と入ってきた三人が、いつも以上に気合を入れているのがわかる。SU-の歌は、ときおりマイクが割れるほどの声量である。そして、「I want to see a big circle! Make a big circle! Bigger Bigger!」と煽るのだが、スダンディングRのセンターでさえ、サークルモッシュはできなかった。どうも作り方を知らないようなのだ。つまり、ベビメタをYouTubeでもチェックしていない。あとのMETALLICAの曲、それも古いものはよく知っていて、合いの手は歌を歌っていたから、ベビメタに関心がないメタルファン層なのだ。

日本人ということもあるのだろう。ポップはK-POPであって、J-POPは眼中にない。ベビメタはメタルとしても認めていない、という感じ。欧米のファンから見ると、数年遅れといことである。今回初めてベビメタを見て、ショックを受け、これから調べ始めるのだろう。

続いて「メギツネ」。これも最初の「ソレ、ソレ、ソレソレソレソレ!」ではあまり動かない。ダの後方から見ているとよくわかる。最前付近しか動いていない。あとは地蔵か、最悪柵に持たれて座っている。だが、SU-の煽り「Here comes the Fox God. On the count of Three, everybody Jump Up OK? Are you ready? Are you Ready?」と畳みかけると、ようやくダ列後方でもジャンプが出始めた。

続く「ギミチョコ!!」。これすらも知らない客が多い感じ。つまり、あのヘンテコダンス、♪「チョコレートチョコレート...」というメロディラインを、初めて見て笑っている女の子やそれにつられて笑っている男の子がぼくの周りにも多かった。(後述)これにはさすがにびっくりする。「世界のベビメタ」を知らないメタリカファンなのだ。

「KARATE」。これもロブ・ハルフォードとの共演でAmazonが全世界に流してくれ、素晴らしいヒット曲になっているはずであるが、韓国人は知らないらしい。

「Woo…Woo…Woo」とSU-がマイクを向けても、悲しいくらいの音量しか、観客席から返ってこない。ぼくが声を張り上げて「Woo…Woo…Woo」と歌うと、数人の韓国人がぼくの方を見るのだ。三人はもう汗だくで、全力パフォーマンスを見せている。MOAの「Woo…Woo…Woo」が、いまや野球場にしては小さく見えるドームに響き渡っても、観客は歌わない。歌ってくれよ。

最終曲「ROR」。三人が旗を持って掲げても、観客席は「ワー」と叫ばない。WODのポーズをしてもモッシュサークルを作らない。三人が世界を熱狂させる戦いをしてきたことも、この曲がBABYMETALのアンセムであることも知らないのだ。

「Woo…Woo」のシンガロングも、やはり悲しいほど音量が小さい。観客は歌わない。

「かかってこいやあ」のところ、SU-は何も叫ばなかった。

C&Rはいつもどおり4回。さすがに最後の方ではみんな「BABYMETAL!」と叫んでいたが、2万人の大歓声というわけではなかった。

そのあと、レッチリでは、「It’s Time for RHCP!」といって喝さいを浴びていたが、今回は何も言わず、「See You!」といつものポーズで去っていく。

その背中に、観客席は...笑ったのだ。それがあざ笑いだったとは言うまい。本当にFunnyだったと思ったのだと思う。

メタリカのことは明日書くけれど、終演後、タクシーを待つ列のうしろで、「ベビメタ」「イルボン」という声がしたので、振り向いて、そのカップルに、まずは韓国語で、「チョヌン イルボンサラム ...ニダ」と言ってから、英語で「How do you feel about BABYMETAL?」と聞いてみると、「Shocking」と女の子がいい、とてもファニーなJ-POPだった、と言った。ぼくが、「J-POPとメタル音楽の融合だけど、今はもう本当のメタルだよね」と言うと、女の子は「本当のメタル?あれはアイドルでしょ」と言い張る。「YouTube、見た?」と聞くと、「I can’t understand Japanese」と言う。日本語だから見ないということか。

このように、やはり、日本だからということで、実際のBABYMETALを見ていない、世界で戦う若いアジア人の女の子たちを、感動をもって支持する観客がほとんどいなかった、ということだろう。それほど反日の根は深い、ということか。悲しいなあ。

もちろん、BABYMETALに歓声を送る日本人が意地悪をされたとか、いやな目にあったということはない。ベビTを着ているおとなしそうな若い韓国人の男の子も何人かは見かけた。だが、METALLICAに対する圧倒的な支持、熱狂と比べれば、はっきりいってBABYMETALは受けていなかった。たぶん、客席のほとんどが初めてだからだ。バイアスのかかった眼でしか見ていなかったからだ。現地プロモーターの宣伝も、マスコミでの事前情報の伝達も少なかったのだろう。大山を動かすには、単独ライブをこの地で何度かやらねばならないだろう。カメラはとり放題だったので、前列にいた方のファンカムや、プロシュートも上がるだろう。前の方だけのアップだったら、それなりに盛り上がったライブに見えるかもしれない。しかし、後方では…。それが、ぼくが見た現実である。

METALLICAのライブは素晴らしかった。

だがBABYMETAL共演のサプライズはなかった。