へヴィメタルガールズ | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

昨日は一日お休みしてしまいました。

24日のクリスマスイブ降誕祭ミサは夜7:00からで、パーティのライブが終わったのが10:30過ぎ。昨日25日は、児相の許可が出たので、朝7:45に家を出て、9:00に養護施設に次女を迎えに行き、高速を使って地元に戻り、次女とともに、教会の10:00からのクリスマスミサに与った。

次女は初聖体も済ませたのだが、児相に拉致されて以来、ミサに出るのは2年半ぶりだった。25日のミサ後は子ども向けのミニパーティがあり、フィリピン人グループの「Feliz Navidad」(ぼくが伴奏)、クリスマスの「紙芝居」、チェンバロと縦笛の演奏など演し物があり、次女はそれなりに楽しんでくれたようだ。

終了後、2年ぶりの自宅で、一昨日から作っておいたローストチキンとサラダ、ソーセージ盛り合わせ、舞茸スパゲティでささやかなクリスマスのお祝いをし、買い物に行ってから、また高速を使って、午後4:00に施設に戻した。

施設には、本当に保護者のいない子どももいるのだが、なぜ、ぼくの次女が、ぼくの強い要望にもかかわらず返してもらえないのか、未だにまったくわからない。施設では、新しい棟の建設が進んでいるのだが、次女の担当者だった男性職員が突然退職したという。これ以上は書かないが、なんかヘンな感じ。

ぼくがBABYMETALにハマっていることは前に話したので、次女はTVのモノマネ歌合戦で、元乃木坂メンバー永島聖羅&しーくいーんのベビメタのモノマネ(64点)を見たそうだ。なので、行きの車中は「BABYMETAL」の「ギミチョコ!!」を聞かせ、「これが本物な」と言うと、「全っ然似てないじゃん」と正しい評価。

彼女はボーカロイド(初音ミクほか)にハマっていて、その中でもメタル系の曲を歌うボカロがお好みのようで、BABYMETALはまんざらでもないご様子。ならばとてMETALLICAの「Hardwired to Self-Destruct」を爆音で聴かせたら、ゲラゲラ笑い、「何言ってるかわからないけど、面白い。」という。「クリスマスにこんなの車で聴いてるの、私たちだけじゃない?」と言う。

「メタルがわかる賢い女子になってほしいなあ」と冗談めかして言うと、「メタル親子だね」とのお言葉。悪くない。うん、全然悪くない。

帰りの車中で「Metal Resistance」を聴かせると、辞めた男性職員の愛聴盤だったそうで、「KARATE」と「メタ太郎」をよく聴いていたとのこと。彼は心折られちゃったのかなあ。故郷に帰ったとのことなので、メタルのパワーで頑張ってほしい。

 

韓国で今年ヒットしたミュージカルがある。

2016年3月から6月にかけてロングラン公演が行われた俳優キム・スロの演劇プロジェクトによる「へヴィメタルガールズ」というお芝居である。

あらすじは、16年勤めてきた食品関連の中小企業がM&Aされ、リストラの危機にさらされたアラフォーの女性4人が、新しくやってくる社長がヘビメタファンだという情報をつかみ、ヘビメタバンドを結成して、リストラを免れようと奮闘努力するという爆笑コメディらしい。直接見たわけではなく、韓国のメタル事情を知るためにサイトを漁っていたら引っかかったので調べてみただけであるが、このあらすじからも、韓国社会のいろいろな事情が、垣間見える気がする。

まず、新社長がヘビメタファンだという設定。ヘビメタファンは、どこの国でも日本と同様、ギャグになるほどの“変わり者”だが、実は知的で高学歴。社長になっていてもおかしくはない。コメディとはいえ、韓国社会にもそういうリアリティがあるということだ。

突然の会社のM&Aとリストラ。これもまた、今やどの国のどの会社にも起こりうることだ。日本でいえば、今年、シャープの社員食堂に流れたNHKニュースで、自社が台湾の会社に買収されたことを知った社員たちがびっくりしている光景が話題になった。

韓国は、10大財閥系企業の売り上げがGNPの75%を占め、財閥系企業に入社できれば「勝ち組」、それ以外は「負け組」という財閥社会である。財閥系の企業に入れる可能性を賭けた大学入試や就職活動は熾烈を極める。

だから長年勤めた会社をリストラされるというプレッシャーは、日本よりはるかにきついのだろう。

「へヴィメタルガールズ」のあらすじに関する情報は、胡散臭いヘビメタ男2人が経営するインチキスクールに通って必死でメタルをマスターしてゆくというところまでしかなく、4人の出演者が、露出の多い黒い革ジャン姿で「嬢メタル」になり切っている舞台写真や、メタルスクールのシーンダイジェストしか見ていないので、結末がどうなったのか、実は知らない。

しかし、日本から見に行った方のブログに「ハチャメチャなストーリーだが、言葉がわからなくても楽しめる。」「同じアラフォーなので共感した。」といった感想が書き込まれていた。そこから勝手に予想すると、4人のアラフォー女性たちは、メタルに取り組む必死の努力の中で、自分たちの眠っていた可能性に目覚め、会社に頼らずに生きて行く、新しい道へ踏み出してゆくという結末になるのではないかと思う。実は、新社長はヘビメタファンではなかった、とか、新社長に気に入られてヘビメタ姿でCMに出演することになるが、やっぱり会社は倒産しちゃうとか、バリエーションはいろいろ考えられるけど。外れていたらごめんなさい。

この舞台が面白かっただろうということだけははっきりとわかる。出演者はプロのミュージシャンじゃないからカラオケだが、歌は生歌。典型的な嬢メタルだけじゃなくて、スリップノット風とか、メタリカ風とか、バリエーションも見せ、メタルへの“オマージュ”が感じられる。最後にはメタルという音楽のバカバカしさとパワーで、4人の必死さが観客席に伝わり、共感を呼ぶのだと思う。

 

歴史上、明→清→日本→アメリカと、支配者がころころ変わってきたため、韓国人は、宗主国に支配されている間は、屈辱的なほどおもねって臣従するのに、支配者が没落したとみるや罵倒しまくり、旧支配層に対しては非人間的な行為を平気でやる国民性になってしまった、というようなことがよく言われる。

ヘビメタ好きの新社長に気に入られようと、恥を捨ててヘビメタをマスターしようとする、という「ヘヴィメタルガールズ」のストーリーにも、こうした国民性が反映しているのかもしれない。

ネット上の韓国人の反日言動だけを見ていると、こういう国民性は永遠に理解できないし、今回の大統領退陣デモだって、「水に落ちた犬を叩く」という、日本人には集団ヒステリーとしか見えない騒動の先に、民衆がどんな国家像を描いているのか、まったく見えてこない。

ただ、もし、ぼくの予想どおりだったら、ヘヴィメタル音楽が、アラフォー女性たちを、会社に頼らず自立して生きていく決意に導き、勇気づけるという「へヴィメタルガールズ」のストーリーは、韓国社会の希望に満ちたメタファーになるのではないか。

プロジェクトの中心メンバーであるキム・スロという俳優は、たぶん、ヘビメタ好きなんだろうな。

ヘヴィメタルという音楽は、ギミックもありつつ、大音量で、ザクザク刻まれる歪んだギターリフと、ドラムのブラストビート、社会への批判や暗い衝動を絶叫する音楽である。しかし、それによってしか表現しえないものがあり、それによって聞くものを勇気づけ、立ち上がらせる音楽でもある。

前回ご紹介したように、韓国にもヘヴィメタルコミュニティがあり、強権的な政府によって弾圧されてきた歴史から、社会批判的なスタンスをもっているアーティストも多い。

ぼくの考えでは、発展途上国にありがちのアジア的血縁主義による政治家の汚職や、不安定な政権による政策の失敗、財閥支配の問題こそ、韓国社会の根源的な病理であり、それを糊塗するために、「外敵」としてデタラメな反日言動が行われているに過ぎない。

「ヘヴィメタルガールズ」はコメディ・ミュージカルではあるが、そのプロットには、政府や財閥に振り回されず、自分の足で誇り高く自立していこうという社会的メッセージが秘められていたのではないか。これがロングランになったということは、韓国社会にも、そういうストーリーに共感する雰囲気があるのではないか。

もちろん、あくまで予想通りのストーリーだったら、ということですけど。

全然違っていたらどうしよう。