韓国のメタル事情 | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

今年2016年8月13日、韓国・仁川で行われた韓国最大のロックフェス「Inchon Pentaport Rock Festival」で、日本の大阪出身のメタルバンドCrossfaithが、このフェスで自身2度目となるヘッドライナーを務めた。

来年1月11日のMETALLICA+BABYMETALソウル高尺Sky Dome公演を控えて、韓国のメタル事情が気になった。様々な掲示板サイトで、「韓国にはK-POPだけでメタルはないんじゃないの」(2チャンネル)とか、「韓国人は守旧的で、纏足のような奴隷精神で育っているので、メタルのように挑戦的で抵抗精神、旧世代と旧価値観に挑戦する思考と個人主義の音楽に人気があるわけがありません。(中略)日本は脱アジア的理性レベルを持っているのでメタルに合っています。」(お隣速報)などという書き込みがあったから、本当かなーと思って調べてみた。

大嘘だった。

韓国には、1980年代から世界を目指したHR/HMバンドがあったし、前記した仁川ロックフェスは2006年から毎年、日本のフジロックと重なる時期に開催され、韓国・英国・米国・日本のアーティスト60組以上が出演していた。フジロックで遠路はるばる来日した欧米のアーティストが、その前後、足を伸ばして仁川のフェスに出ていたのだ。

会場はソウル中心部から車や電車で1時間30分ほどの仁川経済特区、松島で、メインステージの収容人数は2万人、サブステージやキャンプゾーンも入れるともう少し増える。

2009年にフェスの運営会社が分裂し、フジロックと全く同じコンセプトで山間部のスキー場で行われる「Jisan Valley Rock Festival」を立ち上げた。そのため、仁川の方は日本のサマーソニックと連動した時期に移行し、2大夏フェスとして共存しているという。

仁川ロックフェスには、2007年にL’arc~en~Ciel、2010年にDir en Greyと気志團、2011年にはマキシマム・ザ・ホルモンが出演し、Crothfaithは2014年に初めて出演してトリを取り、大ウケして、今年もAt the Drive-in(米国)とともに2日目のヘッドライナーとなったのである。

日本のフェスと連動した日程で欧米のバンドを呼びやすくするとか、成功している最中に運営会社が分裂しちゃうとか、フジロックの丸パクリとか、いろいろ言いたいことはあるが、少なくとも韓国に大規模な夏フェスが存在し、欧米日のバンドが出演して、ファンを集めていることは間違いない。

またもウィキペディア頼みだが、韓国にはロック史もちゃんと存在する。日本ほどの市場規模や多様性はないものの、反動的な政府による弾圧に抗してきた、日本にはない味わい深さをもっている。

 

-------ウィキペディア「K-ROCK(韓国の音楽)」より引用。

韓国のロックは、1950年代後半に、申重鉉(シン・ジュンヒョン)とそのバンドによって始められた。(中略)申重鉉は1962年に、韓国最初のロック・バンドであるエド・フォー(Add 4)を結成した。1970年代には、音楽は政府から厳しい検閲を受けた。申重鉉は、薬物乱用の咎で投獄された。韓大洙(ハン・デス)はアルバム2枚の発売を禁じられた後に、自ら母国を去ってニューヨークへ移り住んだ。申重鉉の投獄は、韓国のロックの制作活動を低調なものとしたが、他のアーティストたちの中には、サヌイリムのように、1980年代に韓国のポピュラー音楽界をダンス音楽が席巻する前の1970年代後半から台頭した者もいた。

1980年代に入ると、ポピュラー音楽の嗜好は、ロックから離れてしまった。ロックのシーンは、へヴィメタルが支配し、特に復活(ブファル)、白頭山(ベクトゥサン)、シナウィが「ビッグ3」と称された。

1990年代はじめ、盧泰愚大統領以降の民主化を経て、ロック音楽は復活した。国外からの情報は、以前より自由に流入するようになり、韓国の若者たちは短期間のうちに数十年分の外国のポピュラー音楽に接することとなり、自らバンドを始める者もいた。

-------引用終わり

 

このあと、90年代から2006年までの朝鮮パンク(Chosun Punk)の流れの話になっていくのでここでやめておくが、要するに、「民主化」までは政府によって未分化なロック全般が弾圧されていたが、「民主化」でロックが解禁されると、パンク、ハードコア、ハードロック、メタル、オルタナティブ・ロックなど、海外音楽にインスパイアされた様々なタイプのバンドが結成され、ロックフェスも開催されるようになっていったということだろう。歴史が浅いので日本の70年代みたいにコピーバンドが多いが、みんなそれなりに頑張ってきたのだ。

「民主化」が、かえって反日言動を自由化し、慰安婦、戦後賠償、靖国参拝、歴史認識、日本の“軍事大国化”など、政治の失策を糊塗する目的もあって「外敵」としての反日言論が盛んになっていったという側面があるが、ことロックに関しては、「解禁」は喜ばしいことだろう。

80年代の「ビッグ3」の筆頭、復活(ブファル)というバンドは、国内で35万枚を売るアルバムもいくつか出しており、世界進出にあたって、日本のLOUDNESSに挑戦状をたたきつけたことでも知られる。その他、Crash、BLACK SYNDROMEなど、今では「大物」「重鎮」とされるバンドも存在し、韓国のメタルシーンは案に相違して、ある程度の活況を呈しているのである。

今年9月には、韓国の“実力派”とされるメタルバンドHAMMERING(ハマリング)とWICKED SOLUTIONS(ウィキッド・ソリューションズ)が来日公演を行ない、横浜ではMEPHISTOPHELES、SIXRIDEといった日本のメタルバンドが迎え撃った。

つまり、メタルシーンでは、反日の、嫌韓の、ということは脇に置いて、日韓は音楽で交流しているし、ロックフェスに来場するファン層も一定数存在する、ということなのだ。

考えてみれば、こういうシーンが存在するからこそ、METALLICAは韓国・ソウル単独公演を決めたのだろう。それでも仁川ロックフェスの来場者数がせいぜい2~3万人の国で、世界最強のメタルバンドMETALLICAといえども、物価や所得水準から見て日本円に換算すると3万円以上に相当する高額チケットで、高尺球場2万2千人を埋めるのは厳しいとみて、BABYMETALに助っ人を頼んだのである。

 

東日本大震災など日本の自然災害を「祝福する」動画とか、朴大統領が国際的な席で日本の首相に非礼な態度をとるとか、朝日新聞とライター本人(吉田清治)が捏造を認めて2014年に謝罪した記事、すなわち史実ではない慰安婦の“強制連行”や“性奴隷化”のフィクションを元ネタとして制作された明らかに意図的で荒唐無稽な反日映画『鬼郷』を、ソウル市長が推薦して350万人が見たとか、福島で韓国人青年がキツネ様の像を大量に叩き壊すとか、まあ、あれだけむちゃくちゃな反日言動をされれば、ぼくだって嫌韓になる。

ひとつだけ書くとすれば、歴史を歪曲し、捏造しているのは韓国の政府やマスコミであり、韓国人はもっと自分の目と頭で考えてほしいということ。

例えば、ソウル西大門にある独立門。ほとんどの韓国人は、あれは日本からの独立を記念したものだと思い込んでいる。しかし、実は1894年の日清戦争で、日本が李氏朝鮮の清からの独立を認めさせた際に、喜んだ韓国人が、もともと清国の使者に土下座して臣従の礼を行う場所にあった迎恩門をぶち壊して新たに作ったものだ。記念碑にちゃんと史実が書いてあるというのに。つまり、自分の目で見ず、間違った教育を疑うことがないのだ。

もっとはっきり言えば、韓国人ネット民というのは、政治や財閥の腐敗への鬱憤を、実害を被ることのない反日言動で晴らしたつもりになっているが、実は、国家権力や周囲の圧力が怖いから、史実と向き合い、見識と展望を持って自国の政治批判ができない卑怯者の群れではないか。事実に基づかない書き込みお断りというルールも徹底されず、感情的な書き込みを野放しにして、せっかくの自由なネットを、事実検証のメディアとして活用できない国の何がネット大国か。

とまあ、これはある程度の知識や経験を持つぐらいには年を食った日本人男性としてのぼくの「政治的」な意見であって、さしあたってBABYMETALとは何も関係ない。

本当にぼくが言いたいことは、音楽に関わる人は、価値観として、音楽>政治であっていいということだ。

ぼくは、政治家も、企業で働く人も、自衛隊に勤務する人も、宗教家も、教育者も、芸術家も、みな「この世界をよくするため」に働いているのだと思っている。

「お金を稼いで家族を食わす」ためだけに働かなければならない人や、「金儲け」のために犯罪まがいの仕事をしなければならない人は不幸だと思う。どんな職場であっても、問題点を見出し、顧客に対するサービスや、働く環境を改善していこうという気概をもって仕事に取り組めば何かが変わっていく。世界は少しだけ、よくなっていく。

そういう改善を許さず、「お前は言われたまま、ロボットとして働いていればいい」という上司しかいない職場だったら、ぼくは辞めちゃう。どんな職種でも境遇でも、「世界をよくする」ために今日の仕事を精一杯やっている人は、尊敬に値すると思う。

そして、政治家には政治家の、軍人には軍人の、労働者には労働者の、アーティストにはアーティストの、それぞれの「世界をよくする」役割とやり方がある。そこに貴賤や上下はない。

ちょっと話がそれる。前にも書いたと思うけど、なんでも自分でやってみないと気が済まないぼくは、大学時代、時代遅れの政治的運動に関わっていたことがある。あるとき、その寄せ集めの団体の連絡会議が金曜日の午後8時30分からあったのだが、その頃の金曜8時といえばあなた、新日本プロレスの絶頂期じゃないですか。ぼくらは学生会館で8時からテレビにかじりついて見ていて離れられなくなった。長州が藤波に「かませ犬」発言をして名勝負数え唄が始まったあたりだ。時間を過ぎてもぼくらが来ないので、サヨク党派の人たちが呼びに来た。女性の活動家が「あんたたち、何やってるの。プロレスなんかより、○○集会の方が大事でしょう」と言われたのにカチンときたぼくは、「おれにとっては、プロレスのほうが大事なんだよ。会議を遅らせることはできても生放送は二度と見られないから」と言い返すと、「あんた、小学生なの?馬鹿なの?」と散々コケにされた。

しかし、今でもその気持ちは変わらない。政治や軍事やお金はとても大事なことだが、人間のすべてではないし、政治のほうが「上」だという言い募る奴は、ソ連や東欧や中共の文化政策の顛末を見てわかる通り、明らかに間違っている。

「人はパンのみにて生きるにあらず、神の愛によって生きる」というのは聖書の言葉だが、メシを抜いてでも金を貯めてライブに行く、というのが正しいメタラーではないか。

ここはBABYMETALのブログだから、音楽の役割とやり方という視点で物事を見ている。

日韓のメタルバンドが日本と韓国で相互に交流していて、ファンがいることが確認できた以上、そこには、政治的なテーマである反日も嫌韓も関係ない。

政治的な意見はそれぞれあるだろう。ぼくの意見はさっき書いた。

だが、それを脇に置いといて、METALLICAがどういう演奏をし、BABYMETALがサポートアクトとしてどういうセトリとパフォーマンスで臨み、それを韓国ソウルSky Domeの観客がどう受け止めるか。そこにだけ注目すればいいと思うのだ。

もちろん一人の人間の中には、政治的意見とメタルファン/メイトという要素が共存しているから、韓国人にBABYMETALが色眼鏡で見られる可能性は十分あるし、2万人以上の観客がつめかけるのだから、反日扇動目的の奴が紛れ込まないとも限らない。そのへんは十分に注意するつもり。ちなみにぼくの家は戦国末期から続く“草”(忍者)の家系なので、男系にのみ伝えられる家伝の体技を習得している。関節技と当て身の体系…では全然なくて、すきを見て逃げるというだけだが(^o^)v

BABYMETALは、どんなアウェイでも、観客を沸かせ、勇気づけてきた、百戦錬磨のパフォーマーであることも忘れてはいけない。

韓国にもメタルコミュニティや、ファンベースがちゃんとある。

社会全体が反日でも、いや、だからこそ、政治的弾圧を受けてきたメタラーやメイトはそうではないという可能性もあるのだ。もう一度言うが、政治的意見とMETALLICA+BABYMETALのライブとは関係ない。ただただ観客を沸かせ、勇気づけるのがアーティストの仕事であり、ぼくらはそれを受け止め、楽しめばよいのだ。

だって、それが音楽というものの役割とやり方でしょ。世界を少しだけ、よくするための。