シャーロット公演 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May the FOX GOD be with You―
★今日のベビメタ
本日5月18日は、2013年、DEATH MATCH TOUR五月革命@Zepp Diver City Tokyoが行われ、2018年にはテネシー州ナッシュビル@Marathon Music Works公演(日本時間5月19日)が行われる日DEATH。

シャーロットは、東海岸からフロリダ半島に向かうノースカロライナ州第二の都市で、金融業やエネルギー業で、近年目覚ましく発展している。
BABYMETALは2016年には郊外のスピードウェイで行われたCarolina Rebellionに出演し、昨年は、レッチリの前座として、収容2万人のThe Spectrumでライブを行った。ぼくはそのどちらにも参戦したのだが、今年は行けなかった。
去年行ったとき、妹の旦那の妹の家族に会ったのだが、ぼくがベビオタだということは知らなかったのに、妹の旦那の妹の娘(大学生)は昨年の州都ローリー公演を見ており、妹の旦那の72歳の母親もテレビで「ギミチョコ!!」を見たと言っていた。妹の旦那の妹の旦那は銀行員で、かなりカタい白人エスタブリッシュ家庭だが、BABYMETALファンだったのだ。
BABYMETALがライブを複数回やった海外の都市は、今年の予定も含めると、NY(2014,2016年)、シャーロット(2016,2017,2018年)、アトランタ(2017,2018年)、シカゴ(2015,2016年)、コロンバス(2015,2016、2018年、Rock on the RangeとAPMA)、LA(2014,2016年、2017年ハリウッド)、ロンドン(2014,2015,2016年,2018年)、パリ(2014,2016年)、ケルン(2014,2016年)、ウイーン(2015,2016年)の10都市。
この中で、3年連続でBABYMETALがライブをやった都市は、ロンドンとシャーロットしかない。ロンドンはロック/メタル発祥の地であり、ダービーのダウンロードフェスティバル(2015年)を含むから、知名度や人口から見て、アメリカ東海岸の地方都市シャーロットの3年連続は不思議だ。
いずれにせよ地元には、強固なファンベースが形成されており、今年は待望の単独ライブとなり、かなり早い段階でSOLDOUTした。
The Fillmoreは、ビルが立ち並ぶ中心街よりやや北に位置し、織物工場を改装した古風なライブハウスで、天井にはシャンデリアがいくつもぶら下がっている。


収容人数は2,000人となっているが、オールスタンディングのため、会場内は後方まですし詰め状態で、観客にとっては今回のツアーで最もハードなライブだったと思う。
<セットリスト>
1.In the Name of
2.Distortion
3.Elevator Girl(仮)
4.TATOO(仮、SU-ソロ)
5.GJ!(MOAソロ)
6.紅月-アカツキ-
7.メギツネ
8.ギミチョコ!!
9.KARATE
10.Road of Resistance
11.THE ONE(Unfinished Ver.)
ギター(下手Leda、上手ISAO)ベース(BOH)ドラムス(青山秀樹)
セトリは、USツアー共通。
ステージは狭い。両サイドステージで踊るダンスの女神がステージ幅のぎりぎりに見える。
天井も低い。日蝕のロゴマークが上3分の1しか見えず、長身のダンスの女神が手を伸ばすとシーリングライトにつきそうである。
だが、しかし。
ステージ前面に張られた紗幕に「Metal Resistance Episode Ⅶ」の文字が浮かび、「Dark Side」「Chosen Seven」の物語が、低い男の声で語られると、観客は熱狂的な歓声を上げ、理不尽な運命の中で戦うBABYMEALの姿を一目見ようと、圧縮が始まる。
昨年のSpectrumは、収容人数2万人のNBAスタジアムで、「紙芝居」の「A long time ago, in a heavy metal galaxy far, far away …」と語ると、レッチリを見に来た観客からは笑い声が起きた。アメリカ人ならだれでも知っているように、これはStar Warsのパロディだからだ。
だが、今年の観客はBABYMETALを見るためだけに集まった人々であり、待機列を耐え、入場し、前座のSkyharborが終わって、セッティングが終わり、いよいよ待ちかねた本番!という雰囲気だったからである。
1曲目「In the Name of」で、太鼓がドンドコ鳴り響き、エジプト風のガウンをまとった4人にスポットライトが次々に当たり、錫杖が動かされるたびに、大歓声が涌く。
これから、Dark Sideを旅するBABYMETALのメタル・ショーが始まるのだ。
思うに、2012年に初めての1,000人超えの会場での単独ライブLegend “I”が行われ、仮想敵「巨大勢力アイドル」との戦い、Metal Resistanceのストーリーが明らかにされてから、BABYMETALは、その物語の中を生きてきた。
2014年以降の海外ライブでは、生演奏、生歌唱、生ダンス、生煽りのメタルバンドとしての卓越性が、ギミックを超えた評価を得たわけだが、今年のUSツアーでは、藤岡幹大神の急逝、YUIの欠場というリアルなハンディキャップを超える「Dark Side」の物語が、虚実皮膜の訴求としてアメリカ人観客に提示されている。
ツアーが始まった当初、藤岡神の逝去にも、YUI不在に対しても、運営が一切コメントを出さないことに対し、非難、批判、怒りが渦巻いた。
だが、ライブを見たアメリカ人ファンたちは、その物語を受け入れ、熱い声援を送ってくれるようになった。それはもちろん、藤岡神なしで頑張っているBOH神、青山神、Leda神、ISAO神の神バンド、メタル表現としてのキレッキレのダンス、殺陣を披露しているダンスの女神たち、新曲を4曲もドロップした運営陣の気合、そして存在感とオーラを増したMOAのパフォーマンス、ますます破壊力を増したSU-の歌唱が、Best Live BandとしてのBABYMETALの価値を維持し、向上させているからだ。
だが、それだけではない。傷つき倒れた仲間のために、世界のどこかで泣いているYUIのために、光を求めて彷徨うBABYMETALのDark Side物語の悲劇性が、その全体を支え、ライブにリアリティを与えているのだ。
もちろんこれは言語矛盾だ。
ライブこそリアルであり、あのヘッドギアも、コスチュームも、謎だらけのDark Side=Chosen Sevenの物語も、しょせんギミックであり、フィクションである。
だが、熱狂するアメリカ人観客のファンカムを見る限り、今のBABYMETALのライブが、単なるライブ以上の何か、あえて言えば「聖なるもの」になっているように見えるのだ。
2曲目、「Distortion」のイントロ、キーンというハウリング音の中で「♪Wow Wow Wow Wow」というコーラスが聴こえると、観客席は大歓声であふれる。
BABYMETALは戦う。理不尽な運命の中で立ち上がる。その意志と気概の波動が、客席のすべての人々に、そしてインターネットを通じて、海を越え、全世界のメイトさんに伝わっていく。
ギミックに満ちたメタル・ショーだが、聖なるリアリティをまとった唯一無二の表現。
これがBABYMETALだ。
「Distortion」のコーラスにYUIが入っているかどうかは、まだわからない。
公式MVの1‘28“の「Can’t stop the power」だけが、他と声質が違い、YUIの声だというご意見を寄せられた方もいた。
その真偽はともかく、「♪Caught in a bad dream」、「♪汚い世界だった」と歌いながら、「♪歪んだ翼、飛べるなら」「♪歪んだ支配、恐れない」「♪歪んだカラダ、叫び出す」「♪歪んだ絆、届くなら「♪歪んだ願い、かなえたい」「♪この世界が壊れても~」と歌い上げるSU-の歌声は、混沌の暗闇を引き裂き、光をもたらす強さを持っている。
「BABYMETAL DEATH」~「ギミチョコ!!」~神バンドソロ~「Catch Me If You Can」または「あわだまフィーバー」という昨年までのライブオープニングとは全く違うが、絶望や苦悩を発散する音楽であるメタルをコアとするBABYMETALにとって、自らのリアルな苦境を乗り越えるこのDark Sideでの表現は、人々の希望の光となる。
なお、昨日、PA卓付近で、Rock on the Rangeのものと思われる37分7曲のセットリストが撮影され、ネットで拡散された。これが本物である保証はないが、詳細なタイムテーブルであった。そこには「TATOO-2」という表記があり、単独ライブセトリの4曲目「ゆらゆら(仮)」の別バージョン(神バンドソロ付き?)と見られるため、ぼくのブログでも4曲目を「TATOO(仮)」とすることにした。
シャーロットでも、6曲目「紅月-アカツキ-」でのダンスの女神たちによる殺陣は大喝采を浴びていた。昨年のレッチリ前座では、「KARATE」の間奏部で、SU-が観客席に呼び掛けてスマホのライトを点灯させ、東京ドームを思わせる幻想空間を現出したことが評判になり、フロリダ半島を南下するにしたがって、BABYMETALの人気が定着していった。
アメリカでは2015年以来となる「紅月-アカツキ-」の殺陣が、今年のUSツアーでの見どころとなっているようだ。
メタル女戦士のSU-METALがマントを翻して歌う「紅月-アカツキ-」こそ、ジャパメタの極致であり、Legend “I”で、Dark Sideに堕ちたYUI、MOAを救うために立ち上がる曲である。前述したように、今年のUSツアーは、あの「メタル少女歌劇団」の物語性にアメリカ人観客を巻き込んでしまう壮大な試みなのだ。
だから、パワーメタルであり、BABYMETALのアンセムである「Road of Resistance」への熱狂度が以前よりも増しているし、8分の6拍子のプログレッシヴ/シンフォニックメタルである「THE ONE」のドラマチックな編曲も観客の心を揺り動かす。


注目したいのは、フィニッシュ曲「THE ONE」の歌詞だ。ここでSU-は音源と違い、1番も2番も「♪This is our song This is our dream Please take us to the land of dreams」と歌う。このDark Sideの物語は、あくまでも「夢」、もっといえば「悪夢」なのだ。そして、「夢の彼方にある場所へ、私たちを連れて行ってほしい」と訴えかける。
悪夢の中にいる人が、自分では悪夢だと気づかないように、夢から覚めたとき、このDark Sideの本当の意味がわかる。それは光り輝くBABYMETALの新しい段階である。
だから、ぼくらも、BABYMETALとともに、希望をもって悪夢の中を歩もう。
明日は、アメリカ音楽の原点、ブルースとロックンロール発祥の地、ナッシュビルである。