ヒューストン大勝利! | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May the FOX GOD be with you―

★今日のベビメタ

本日5月14日は、2015年に米国・シカゴ@House of Blues公演が行われ、2016年には、米国・サマーセット@Northern Invasionフェスに出演した日DEATH。

 

ヒューストン。

BABYMETAL World Tour 2018でのテキサス州最後の町で、NASAの宇宙基地と石油産業で知られ、市としては全米第4位の人口を持つ。

文化度も高く、クラシック、オペラ、バレエ、演劇のすべての劇場が揃い、ダウンタウンにおける劇場の座席数は全米第2位(Wikipedia)という。

もちろん、ブロードウェイミュージカルや、ロック、ブルース、ヒップホップ、テハーノなどの音楽も盛ん。ビヨンセがこの町の出身者だが、ホイットニー・ヒューストンはニュージャージー出身。

現地時間5月13日19:00~(日本時間5月14日9:00~)、BABYMETALヒューストン公演が行われた。

一部豪雨となり肌寒かった日本とは違って、日曜日のヒューストンの最高気温は34度で、日が陰った開演時でも29度。

会場のRevention Music Centerは収容人数2400人で、ダラスHOBに比べると格段に大きく感じる。ジャックダニエルの樽が飾られた階段やロビーの雰囲気は「これぞテキサス!」という感じ。アメリカは最先端の宇宙科学と荒っぽい西部劇の舞台が同居している。

いつもながら、BABYMETALはこうして世界の隅々を回っているのだなあ。さくら学院「Wonderful Journey」が実現しているのだ。YUIちゃんはいないけど。

イベントホールは長方形で、シーリングに黒い鉄パイプが走り、左右および後方に二階席がある武骨な作り。フロア後方には革張りのVIPシートもある。

舞台後方に日蝕ロゴが設置され、前回までと同じく、中央に3段の階段付きのステージ、左右にはそれよりもさらに一段高いサイドステージがしつらえられているが、今日は舞台が広いため、サイドステージへ至る上手、下手奥の階段まで、フロアからしっかり見える。

そして、ここヒューストンで、Dark Side BABYMETALは過去最高のライブを更新した。

<セットリスト>

1.In the Name of

2.Distortion

3.Elevator Girl(仮)

4.ゆらゆら(仮、SU-ソロ)

5.GJ!(MOAソロ)

6.紅月-アカツキ-

7.メギツネ

8.ギミチョコ!!

9.KARATE

10.Road of Resistance

11.THE ONE(Unfinished Ver.)

ギター(下手Leda、上手ISAO)ベース(BOH)ドラムス(青山秀樹)

セトリは、前回までと同じ。4曲目のSU-ソロ新曲は、「TATOO」という説が流れているが、これは刺青という意味であり、「たまゆら」ならまだしも、歌詞の内容とも、BABYMETALの姿勢ともそぐわない。なので、とりあえずまだ「ゆらゆら(仮)」としておく。

終演後の日本時間5月14日12:00に出されたBABYMETAL公式ツイッターの写真を見て驚いた。

「ROR」のシンガロングと思われるシーンで、舞台下手にMOA、中央ステージ上手寄りにSU-、両サイドステージにダンサー2人がいて、それを、フロア席を埋め尽くしたアメリカ人の大観衆がこぶしを振り上げてBABYMETALを讃えている。

タイトルは「Thanks Houston Texas」。

ファンと共に撮影されたツイートが公式から出されることなど、いままでなかった。

涙が止まらない。

もう4日目なのだから、そろそろ湿っぽくならないで、Dark Side BABYMETALの戦いをクールに記述していこうと思うのだが、こういうのを見せられると、やっぱり胸がしめつけられる。

海外参戦組のSNSもそうだ。あえて名を挙げるが、PAPIMETALさんは、「史上最高のギミチョコを見た!とんでもない弾け方!あんなに楽しそうなすぅちゃんを見たこと無かったぞ。勿論他の曲も最高だったけどね。」「凄いライブを見せてもらいました」とツイートした。冷静沈着な海外ツアー全通のPAPIさんをしてここまで言わせるほど、凄いライブだったのだ。

プレッシャーのかかる大舞台ほど、実力以上の力を発揮するBABYMETALという天才児ユニットの真骨頂が、またもや発揮されたのである。

SU-とMOAは、ぼくらと同じく1月8日にLittle God藤岡神の逝去を知らされた。

さらに、その49日が明け、ワールドツアーのスケジュールが発表された2月末から4月1日の「Apocrypha~Chosen Seven」トレイラーのリリースまでのどこかの時点で、KOBAMETALから、USツアーでのYUI欠場とDark Side BABYMETAL構想を聞かされたことだろう。

それからカンザスシティ公演を迎えるまでの数か月間、20歳のSU-METALと18歳のMOAMETALはどうやって気持ちを立て直し、新しく入ったダンサーたちとのダンスフォーメーションを練り上げたのだろう。

神バンドの大村神、Leda神、BOH神、青山神、ISAO神+宇佐美神は、4月23日のMy Little Godに向けてリハを繰り返し、また新曲4曲の練習やレコーディング、新しいオーケストラ曲の制作に明け暮れたはずだ。

ぼくらが藤岡神の逝去を嘆き、ベビメタロス期間を呆然と過ごしていたのに対して、彼らは絶体絶命の不安と焦燥を乗り越え、新しい戦いに向けて牙を研いでいたのだ。

運営側の説明不足や秘密主義への批判は当然ではある。

しかし、それ以上にぼくらメイトは、BABYMETALがライブそのもので語るグループだということを知っている。

2012年10月、プロデューサーであるKOBAMETALは、楽曲制作の段階で、ライブでの盛り上がりを考慮してすべての曲をアレンジすると明言している。

それはハッタリではない。SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALはプロデューサーの意図をも上回るパフォーマンスを見せてくれる真のアーティストなのである。

ぼくらはいつだってそのライブ・クオリティに驚嘆させられ、BABYMETALというプロダクトに全幅の信頼をおいてきた。

プロデューサーが莫大な印税収入とプロデュース料を受け取りながら、プロダクトとしての楽曲やライブは現場に丸投げし、アウトプットのクオリティにほとんど関わらない巨大勢力「アイドル」とは違う。

5月8日初日カンザスシティの衝撃は、世界中を駆け巡った。

だが、ライブのファンカム映像を見れば、Dark Side BABYMETALが、すさまじいプレッシャーの中で練り上げられた高度なショーであることは一目瞭然であった。

それはツアーがオースティン、ダラスへと進むにつれ、より一層明確になった。

2人のダンサーの正体は依然明かされない。

ひとりはELEVENPLAY所属、ひとりはJAC所属という説もあるが、それは決して明かされないだろう。大村バンドのライブ映像(『藤岡幹大追悼ライブDVD』所収)を見れば明らかだが、「世を忍ぶ仮の姿」の神バンドメンバーも、BABYMETALのバックバンドであることを明かすのはNGとされているからだ。

まあ、2人が「ダンスの神」であることくらいは認定してもいいはずだ。

戌年の2018年、手負いのキツネ様は、Dark Sideを旅するにあたって、BABYMETALにさらなるパワーを与えるため、神のごときダンス力を持つ2人の「ダンスの女神」を遣わした、てな感じ。

そのダンスの女神たちは、「GJ!」では、“逆BABYMETAL”の姿を見せ、一人で歌うMOAの存在感を引き立てた。「紅月-アカツキ-」では、見事な殺陣でアメリカ人観客たちを熱狂させ、黄金のマントを翻して歌うメタルの女戦士SU-METALの歌唱に力を与えた。

そして、新曲「Distortion」と「Elevator Girl(仮)」では、4人による目まぐるしいフォーメーションとキレッキレのシンクロを披露し、BABYMETALの魅力を拡大した。

SU-METALの破壊力を増した歌唱に加わるのが、ツインテール2人のKAWAII METALから、筋肉質のポニーテール3人のKAKKOII METALへ。これは正常進化ではないか。

問題は、唯一無二と思われた3人のバランスがよかった既存曲である。

それではヒューストンの8曲目、「ギミチョコ!!」を見てみよう。

青い照明に4人のシルエットが浮かび上がる。

舞台前面、センターにMOA、左右にダンスの女神2人。後方の中央ステージにSU-。

キリキリキリ…というSEと「Give me…Give me…」と繰り返すグロウル。

「…Give me Chocolate」に続いてバンドが入ってくると、4人は一糸乱れずシンクロしつつ、腕をグルグル回し、ジャンプする。そのジャンプが高い!

調子っぱずれのキーボードに合わせたあの“拒絶ポーズ”の角度もピッタリそろい、そこからSU-の遠隔操作に合わせた前面3人のチョコレートポーズのうねりも、バッチリあっている。

「♪あたたたたーた、たーたたたズッキュン、わたたたたーた、たーたたたたドッキュン」

「♪ズキュンドキュンズキュンドキュンヤダヤダヤダヤダNever never never」をMOAが一人で歌う。その間SU-とダンス女神たちは腕組みしている。

MOAが終わると、後方のSU-が「♪C!I!Oチョコレートチョコレートチョチョチョいいかな」と歌い出し、ダンス女神2人はMOAとシンクロして踊り出す。

つまり、MOAがラップに近いScream担当、SU-がメロディ付きの歌担当という、2パート構成の曲になっている。そしてダンスは全員が踊る。特に舞台前面に3人が揃うと凄い迫力になる。

2番。「♪あたたたたーた、たーたたたズッキュン、わたたたたーた、たーたたたたドッキュン」「♪ズキュンドキュンズキュンドキュンヤダヤダヤダヤダNever never never」をMOAが一人で歌っている間、なんとSU-はMOAと同じ振りで踊り、今度はダンス女神たちだけが腕組みしている。そして、SU-の歌パートは全員ほぼ同じ振付で踊る。

ぼくらはライブ会場でここまで気づかない。だが、見ているうちに、無意識のうちに1番から2番へ、曲のヘンテコな世界観の虜になってしまう。このきめ細かさ、巧みさこそBABYMETALなのだ。

ギターソロはLeda神が担当。フレージングやワーミーの入り方が細かいところで藤岡神とはもちろん違い、ファンカムでは後半のISAO神とのハモリが聴こえない。だが、軽量のスタインバーガーを生かして、派手なアクションを見せてくれる。

その間、SU-とMOAは拍手を促しながら、舞台前面に出てくる。中央から下手へ走り込んで来て笑顔を見せ、上手へ移動。そのあとSU-が下手に来て満面の笑みを見せる。2人とも笑顔が弾けている。2人のダンサーは後方のステージに異動し、やはり笑顔で拍手している。そこへMOAが駆け込み、後半は、SU-が舞台前面、中央ステージにMOA、両サイドステージに2人のダンス女神という布陣になる。

誰かが、このフォーメーションを上から見ると、Yの字になると言っていた。

YUIのY。

確かにそうだが、それは穿ちすぎだという気がする。

「♪だからちょっとだけちょっと♡お願いなんです」のところ、4人が左足を可愛く上げる。

「♪早くチョコレート、チョコレート」のところで、両サイドダンサーが中央ステージに降りてくる。そして「♪よこせチョコレート、チョコレート、Please!」のところ、4人の息がぴったり合う。

そこからの4人のシンクロダンスは、ちょっと神がかり的である。

「♪パーパーパパパパ」と曲が終わった瞬間、大歓声。

確かに、四人組のDark Side BABYMETALは、迫力、世界観の訴求、そしてノリという意味で、最高のパフォーマンスである。これを見れば、YUIがいないからバランスがどうのこうのという批判はふっとんでしまうだろう。

フィニッシュの「THE ONE」。

静かなピアノのアルペジオが流れ、SU-の歌声が響き渡る。海外らしく、大声で合唱している客もいる。歌が進むにつれ、「ROR」でサークルモッシュしていた観客が、静まり返り、SU-の歌声に聴き入る。

「♪We are THE ONE」のYUI、MOAのコーラスが、懐かしい陽だまりのように感じる。

2番が終わり、かすかなストリングスが残る中、観客から大歓声が上がる。

次の瞬間、バンドが大音響で入ってくる。このドラマチックな構成に、見ている者はどうしたって感情が爆発してしまう。ツインギターのメロディが終わると転調して、ブラスによるC→D→E、C→D→E、G→A→Bのところになると、スモークのたかれたステージ後方からMOA、そして両サイドのダンス女神が現れる。

そして、「♪(C)Stand in the (DonC)circle pit (Cm7)side by side(F)Hand in hand (C)in」という神秘的で何かが始まりそうなコード進行の中、後方の3人が大きく手を挙げる。

「♪(C)Stand in the (DonC)circle pit (Cm7)raise your hands(F)Ah Ah」で、会場が一つになったところで、「(E)This is (B)our song、(D)This is (A)our dream(C)Please take us(G)to the land of (A)dream far (B)away」となる。ここのキーは、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の最後の最後、「ギミチョコ!!」の通低音、「META!メタ太郎」の最後に響く、BABYMETALのフィニッシュコード、勝利のEである。

そこからさらに「♪(C#)We are THE ONE (E)forever(A) we’re THE ONLY(B) ONE」という循環コードに入っていく。このC#こそ、悲壮な短調であるC#mの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が、最後のサビのところで長調に転じる勝利の瞬間のコードである。

つまり、この「THE ONE」には、過去BABYMETALが大勝利を収めてきたコードEとC#が2つながらに使われているのである。この巧みさは、ダンスと同様、BABYMETALの楽曲が、いかに丁寧に作られているかを示している。

そして、それをがっちりと受け止め、卓越した歌唱とダンスで観客を熱狂させ、大感動のフィニッシュに持っていくDark Side BABYMETALの4人の気迫と力量。

2018年USツアー4日目、ヒューストンで、BABYMETALは記憶に残る大勝利を収めた。

だが、まだUSシリーズの前半戦が終わったばかり。戦いはこれからだ。