My Little God参戦記(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May FOX GOD be with You―

★今日のベビメタ

本日4月25日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

ステージの入れ替えを経て、2番目のバンドは、前述したとおり山本容子のバンドrain bookで、「心の力」「いのちのうた」「砂山」「あなたの風になりたい」の4曲を披露した。

「砂山」は、「♪うーみはあーらーうーみー、向こうは佐渡よー」というおなじみの童謡だが、村山遼(G)は、師匠の藤岡幹大が考えたナチュラルハーモニクスのリフ、ジャズ的なコード進行で、ピアノとの美しいアンサンブルを奏でていた。レコーディングで、藤岡は試し弾きしながら「ちゃうなー」とか言いながらアンサンブルを完成させていったという。

19:20。女性4人男性1人がフロントに並び、下手G、ベース、ドラムス、上手G、キーボードという大編成のバンドが登場。地獄カルテットのNOV(V)率いる、藤岡幹大の同僚だったMIの講師やスタッフで構成されたMI Squad Goalsというバンドだった。

「なだそうそう」(夏川りみ)「A Day in the Life」(ビートルズ)「Little Wing」(ジミ・ヘンドリクス)といった曲のカバーで、同僚を送る葬儀の演し物といった趣き。

続いて登場したのは、大村孝佳(G)、GO(D)、小川洋行(B)、TOKI(V)で構成されたMI Cannon。ボーカルのTOKIはC4のメンバー、小川洋行はTRICK BOXのメンバーであり、前2バンドとはうって変わって、大神様の超絶技巧全開のビジュアルメタルチューンを熱演。

セットリストは

1.High Works

2.Night Of USA

3.Solitary Universe

4.Battery

ぼくの位置は上手最前柵で、大神様と至近距離。よく見てくれるなあと思ったら、ぼくの隣にはItchie-METALさんのライオン頭があり、それで目立ったのだろう(^^♪ 

そしてぼくらの周りのベビTを着ていない女性たちは、もう大神様にくぎ付けであり、目が完全に♡になっていた。なるほど。愛する大神様の恩人、小神様の追悼ライブだから、大神様ファンも駆け付けたというわけである。ありがたい。というより、世界最高峰のテクニカルギタリストが、あれだけのビジュアルを持っているということが稀有なことなのだ。

TOKI氏(V)は、「生きている者が藤岡幹大を送るためではなく、彼の立場に立って、できなかったこと、つまり幼い娘さんたちの成長を、仲間たちやファンがサポートするために、このプロジェクトを継続していきたい」というようなことをおっしゃった。

MI Cannonの最後、大村神はESPのSnapper藤岡モデルを高々と掲げてステージを降りた。また入れ替え時間があり、20:40ごろ、次のバンドが登場した。

前田遊野(D)、BOH(B)、桑原あい(P)、西脇(K、ハーモニカ)のレギュラーメンバーに加え、ISAO神(G)、そして藤岡幹大の弟子だった岡聡志(G)を加えた仮バンドである。

セットリストは、『仮音源』と『TRICK DISC』から、すべて藤岡氏オリジナルのインストゥルメンタルのフュージョンナンバー。

1.Jamrika~2.忍者Groove

この曲は、仮バンドが桑原あいと初めてジャムったときに、BOHのフレーズに藤岡幹大がバックングをつけていってできた曲という。タイトルも「仮ジャム」のアナグラムになっている。5拍子だが、ベースは5/8拍子、ドラムスは倍の5/4拍子で叩いているから、結果変拍子になっている。『仮音源』は一発録音だという驚くべき曲。

これを8弦ギターのISAO神が見事に弾きこなし、テーマ出しが終わると、桑原あいによるラテンジャズピアノが炸裂する。ゴンサロ・ルバルカバと山下洋輔を足して、ロマンティックフレーバーを乗せたようなフレージング。

ISAO神によるテーマを挟んで、西脇辰弥によるキーボードとハーモニカのソロが加わる。恐ろしいほどの厚みを持った演奏が繰り広げられ、最後には、『仮音源』所収の「忍者Groove」の和風の一節が加わってフィニッシュ。

続く2曲目は、TRICKBOXの『TRICK DISC』(2007年)に収録された

3.HarmonyX

だった。全編、藤岡幹大の必殺技、フレットハーモニクスで構成された美しい曲。これをISAO神が弾き、アドリブを入れてから、下手にいる岡聡志にバトンタッチ。美しい容姿と眼鏡をかけた物静かな青年が、白く長い指でアル・ディメオラのようなパッセージを弾きこなし、それがどんどん加速されていく。

『99%藤岡幹大(仮)』のP.56-57に、Rain Bookで出た村山遼とともにインタビューが掲載されている。初めて岡聡志を見た観客は、その上手さと、藤岡幹大直伝のフレージングに驚愕したはずである。師を継ぐ神バンドのギタリストになってくれたらいいのだが。次の

4.Chuku

は、藤岡幹大が、仮バンドでやるなら誰にも弾けないような曲にしようといって作り、『仮音源』に収録した曲だそうだ。この曲は13拍子で、常人には、BGMで流れていても絶対にリズムが取れない。藤岡幹大は「1拍2拍3拍1拍2拍1拍2拍3拍」とリズムをとっているのだそうだ。想像を絶する。それを、BOH、西脇、桑原、ISAOは、譜面を見ながら真面目な顔で弾いている。岡聡志は無表情。前田遊野だけが楽しそうに複雑なリズムを刻んでいるのが面白かった。

仮バンドは、単なるフュージョンバンドではなく、Animals as Leadersなどと肩を並べる、超絶技巧のマスロック(Math Rock)バンドなのである。

最後の曲は

5.Snow Flakes

だった。『仮音源』の最終曲で、3拍子の親しみやすいメロディ。冬のどんよりとした曇り空に雪が舞ってくる。どんどん寒くなってくるはずなのに、雪を見ると、なぜかこころが温まってくる。家へ帰って家族と笑いあいたくなる。

超絶技巧のギターの鬼才なのに、藤岡幹大は子煩悩なお父さんでもあり、日本の童謡を何十曲もギターアレンジした。ヘビースモーカーなのに、澄んだ星空を愛する人だった。

その優しさが、この曲に溢れていた。

仮バンドの演奏を十分に楽しんだ後、幕が閉まり、またステージの入れ替えとなる。

21:35、満を持して大トリが登場。久世敦史(V)、青山秀樹(D)、Leda(G)、Shoyo(B)の布陣による大村バンドである。両ギター神は、ESPのSnapper藤岡モデルを持っている。

やっぱり最後はメタルじゃなくちゃ。

青山神が、シンバルを4つ打ちして、ハイスピードのメタルチューンに突入する。久世敦史のハイトーンシャウト、青山神のタイトかつパワフルなドラミング、大村神、Leda神の超絶ギターに会場のボルテージは一気にヒートアップする。

セットリストは以下の通り。

1.Pleasant Surprise

2.Holy Tomorrow

3.Shadows Of Eternity

4.Tell Me Why

5.Every Time

6.Distant Thunder

7.Never Surrender

(大村さん、ツイートありがとうございました)

大村神とLeda神は、ときおりポジションを変えてステージ前面に出て、客席を煽る。ベースのShoyoは、上手PAに足をかけてアピールする。みんな驚くほど若く、美しい。

2.「Holy Tomorrow」や4.「Tell Me Why」のサビで、久世敦史が客席にシンガロングを促すと、会場は大合唱となる。ぼくの周りにいた女性客たちは、両手を振り上げ、目に涙を浮かべてステージを見つめている。

あっという間に7曲が終わり、バンドのメンバーが去っていく中、大村孝佳は上手に残り、ライブ全体の締めくくりとして、もういちど各出演バンドの代表から一言を求めた。

USBの須藤満、Rain Bookの山本容子、MI Squad Goalsのベース、MI CannonのTOKI、そして仮バンドのBOHの各氏がそれぞれメッセージを発した。

BOHは、「二人のお嬢ちゃんが成長して、将来、お父さんは素晴らしい仲間とファンを持っていたと思ってくれることが一番うれしいこと」と述べ、「これからも藤岡幹大をよろしくお願いします」と結んだ。

気がつくと、ドラムセットには青山秀樹が、下手にはBOHが、上手には大村孝佳がいる。

この時点で22:00を回っており、ライブが始まってから4時間を超えていた。オールスタンディングなので、客は開場時間からだと5時間立ちっぱなしだった。

だが、この数年間、藤岡幹大と海外で苦楽をともにしてきたこの三人がステージにいる以上、何かやらないわけにはいかない。

この日本が生んだ世界最強のスリーピース、『Kerrang!』認定のBest Live Bandがやったのは、2016年の楽器フェアで、藤岡、大村両氏がデモンストレーションで弾いていたオリジナル曲だった。

https://www.youtube.com/watch?v=Mue58HHqCxw

(2分45秒あたりから)

当時この曲は名前がなかった。だが、今回、大村氏は、ツイッターでこの曲を「The Hill Of Wisteria」だとした。Wisteriaとは藤の花のこと。Hillとは丘。だから、このタイトルは…。

オクターバーによるハモリフレーズを弾きながら、大村孝佳が人目もはばからずに泣いている。泣きながらものすごい速さでパッセージを刻んでいく。青山秀樹はとんでもない速さでダブルバスドラを叩き続け、体全体でリズムを刻む。BOHは大きなアクションで、うねるような魂のベースラインを弾く。ボーカルはない。SU-のボーカルがなくても、YUI、MOAがいなくても、これは神バンドだ。

途中、「CMIYC」や「Mischief Of Metal Gods」の神ソロを彷彿とさせる瞬間が幾度もあった。言い古された例えだが、走馬灯のように、ヨーロッパ、高地メキシコ、猛暑のアメリカ、砂埃舞う国内のフェス、豪雨の東京ドーム、極寒の横アリ、SSA、ついこの間の広島の映像がぼくの脳裏をよぎった。涙があふれてきた。「The Hill Of Wisteria」は、必ず3rdアルバムに入るだろう。

藤岡幹大はもういない。

それはぼくらが受け入れねばならない事実だ。

だが、藤岡幹大は生きている。

大村孝佳、Leda、青山秀樹、BOH、宇佐美秀文らバンド仲間の心に、そしてぼくらすべてのファンの心の中に。

死ぬことによって永遠に生きる。それはBABYMETALのテーマでもある。

BABYMETAL神話では、過去は未来、未来は過去である。

Metal Galaxyに帰天された藤岡幹大こそ、メタルの神キツネ様そのものだったのかもしれない。

さあ、頭を上げよう。Metal Resistance第7章の幕開けだ。