好きすぎてツライ(4) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日、4月11日は、2017年、「Live at Tokyo Dome」のワールドプレミア上映会が全国18劇場で行われた日DEATH。

 

「Road of Resistance」編

●2013年10月7日深夜、「BABYMETALのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)が放送された。初の冠番組というふれこみだったが、実際には10月20日のLOUDPARK出演を控えた一夜限りのプロモーションだった。

アナウンサーの吉田尚記が進行を務めるリスナーからのメールコーナーで、「海外で印象に残った国、将来行ってみたい国は?」という質問に、こんなやりとりがあった。

SU-「SU-MEATALは9月に行ったインドネシアのジャカルタです。日本のフェスみたいな感覚で、終わった後もテンションが上がって、みんなでもう一回やりたいねと言ってました。」

吉田「YUIMETALさんはどうですか」

YUI「YUIMETALは、アメリカとかフランスとか行きたい国があったんですけど、今はどこでもいいからとにかくたくさんの国に行きたいです。」

吉田「本当はヨーロッパとかがメタルは盛んなはずですよね。そういう本場に行ってみたいというのは?」

YUI「どの国って指定するんじゃなくて、いろんな国に行って、いろんな人と会って、いろんな人と話したいな、みたいな」

吉田「それは、ツアーですね。ワールドツアーですね」

三人「わあ!やった!」

吉田「ポルトガルから入りスペインを通り、ベルギー、フランスみたいなそういうツアー」

SU-、YUI「行きたい!行きたい!」

MOA「行きたいな~」

吉田「夢が広がりますね」

番組の中では、LOUDPARKでイングヴェイ・マルムスティーンと同じステージに立つことや、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(初回限定版-Nemesis ver.-)に、元アーチ・エネミーのギタリスト、クリストファー・アモットが参加していることも言及されていた。

だが、吉田尚記も、番組の中で三人に「メタル教育」を施そうとしたダイノジ大谷、NoGod団長らも、BABYMETALが世界的なメタルアーティストになるとは、予想だにしていなかっただろう。

だが、この放送からわずか75日後のLegend “1997”で撮影された「ギミチョコ!!」MVが、欧米で大反響を巻き起こし、4か月後の2014年2月にリリースされた1stアルバム『BABYMETAL』は米ビルボード200の187位にランクインしてしまう。

3月の日本武道館「黒い夜Dooms Day-召喚の儀-」で明らかにされたように、7月からBABYMETALは、本当にフランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダを回る初のワールドツアーを成功させた。

2015年にはメキシコを含む10か国のワールドツアー、2016年には『Metal Resistance』が米ビルボード200の39位、全英チャート15位に入り、日本人初のWembley Arena公演、東京ドームに11万人を集め、2017年にはレッチリ、METALLICA、ガンズ、KORNに帯同するまでに成長した。

おそらく当時BABYMETALと共演したすべての大人たちは、驚きを通り越して、唖然としているだろう。今までの常識では考えられないことが起こっているのだから当然だ。

「BABYMETALのオールナイトニッポン」から1年後、奇跡のような道なき道=ワールドツアーを転戦する「世界のBABYMETAL」のアンセムとして作られたのが「Road of Resistance」なのである。

●2014年の欧米ツアーの追加公演、BABYMETAL Back to the US/UK Tourの最終日、ロンドン02 Academy Brixton公演で初披露された。DVD『Live in London』で見ることができるが、アンコール時の「紙芝居」では、人間はネットのA.I.に魂を委ねたために「生きる力」を失ったこと、生身のライブに参加することで魂を取り戻すのだといった物語が示された。BABYMETALの「敵」が巨大勢力“アイドル”であるということは封印されたかに見えた。

しかし、現在でもこの曲の「紙芝居」の背景は「戦国時代」である。確かにこの画面に登場する“武将”の顔はSlipknotだったり、METALLICAだったり、ロブ・ハルフォード(ジューダスプリースト)だったりするが、「メタル戦国時代」とは、実は、日本でいう「アイドル戦国時代」ないし「アイドル下剋上」の変形ではないか。

要するに、他の「アイドル」たちは日本で「アイドル戦国時代」を戦っているが、BABYMETALは世界で「メタル戦国時代」「メタル下剋上」を戦っているんだよ、という主張である。

こういうKOBAMETALの大言壮語がたまらなく好きである。

●日本でこの曲が初披露されたのは、2015年1月10日の「新春キツネ祭り」だった。

欧米ツアー終了後、2014年12月20日に限定ライブApocrypha-S-@豊洲PITが行われ、12月22日にはNHK「BABYMETAL現象」が放映され、12月26日にはテレビ朝日「Music Station」に出演し「イジメ、ダメ、ゼッタイ」を披露したから、正確には帰朝報告公演とはいえない。しかし、2万人というベビメタ史上最多となる規模からして、「新春キツネ祭り」が凱旋公演の意味を帯びていたことは間違いない。

そこで初披露されたのが、道なき道を行くBABYMETALのアンセム「Road of Resistance」だった。

約10か月前の日本武道館「黒い夜」で、生贄のように見えた三人とはまるで違う。BABYMETALは本当に欧米進出を成功させ、NHK「BABYMETAL現象」で取り上げられたように「世界のベビメタ」になっていた。

冒頭の「紙芝居」では欧米各地でのライブの様子がスチール写真で紹介され、「メタルを忘れた人々に、メタルの心をよみがえらせ、世界をひとつにした」というナレーションが流れる。さくら学院時代から三人を見続けてきた観客にとっては、奇跡のように思えたはずだ。その思いは今もなお、続いている。

●「紙芝居」終了後、イントロのバンド演奏の中、三人がBABYETAL旗をもって登場してくる瞬間が好き。イントロのバンド演奏が終わるとき、旗で半分顔を隠す三人がカッコいい。

「旗揚げ」という言葉や「旗幟を鮮明にする」という言葉があるように、旗を掲げることは、ひとつの主義主張をもって現実社会に戦い=Resistanceを挑むということを意味する。

「世界征服」、「メタルで世界をひとつにする」、「アイドルでも、メタルでもないOnly OneのBABYMETALというジャンルを作る」という荒唐無稽のように思えた夢は、生身の彼女たちの戦いによって現実の目標になった。それをBABYMETAL道という。

「アイドル」に固執することなく、「メタル」にこだわることもなく、「日本」や「世界」という言葉の響きにも惑わされてはなるまい。

BABYMETALとは、そこがどこであれ、ただひたすら観客の心に思いを届けようとする純粋なアーティストなのだ。

だからぼくらはその旗のもとに結集する。「Road of Resistance」は、ぼくらのアンセムでもあるのだ。

●SU-が中央のお立ち台に立って客席にWODのしぐさをしたあと、三人は舞台中央に三角形をなして並び、「1234!」と掛け声をかけて曲が始まる。これに合わせて客席ではサークルモッシュが発生する。この掛け声が大好きである。

三人が同時にScreamすると、一番高い声はMOAが、やや鼻にかかった中高音域をYUI-が担当し、意外やSU-は一番低い音域を担当することになる。「Catch me if you can」の「1、2、1234!」や「メタ!META太郎」の最初のコーラスでもそうで、MOAの声が一番耳に残る。このバランスは絶妙であり、他の三人組がやるとBABYMETALらしさが出ない。ジョンのだみ声にポールの甘い声と鼻にかかったジョージのコーラスが重なって「ビートルズの声」になるように、「1234!」は他の誰もまねできないシグネチャーボイスなのだ。

●歌に入る前の三人のダンスは、風雲急を告げる戦場に赴く馬上の女戦士のような振付である。右手で鞭を振るうような動きをしながら、前傾姿勢のまま、シンクロして向きを変える。この動きは、1番が終わった後にも繰り返され、シンガロングに入る前には、ギターのピロピロに合わせて、SU-が一人、両足を小刻みなすり足のように動かし、右手で鞭を振るいながら、一人ステージ中央前面に躍り出てくる。METROCK 2015東京@新木場で、ステージ側から撮影されたプロショットがカッコいい。

●この曲は、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」と同じく、「♪Go for Resistance~Resistance~」から、それまでの悲壮なC#m(短調)から一転して平行調のE(長調)に変わる。

これは、「普遍音楽文法」の記事で触れた「ジャイアントロボ」主題歌の展開で、ドラマチックな英雄感を感じさせる。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がSonisphere2014で、日本語のわからない6万人のメタルヘッズをノックアウトできた理由のひとつは、C#mの悲壮な短調で始まり、YUI、MOAの偽闘&ギターソロ後のサビ「♪君を守る~か~ら~」のところで、C#m→C#sus4→C#という長調化があり、そこから半音下がってCに転調し、最後は「(C)イジメ→(D)ダーメー→(E)ダーメー」で、最初のC#m(短調)の平行調のE(長調)で終わるという奇跡的な曲構成にある。

日本語がわからなくても、短調から長調へ変わる曲調は「絶望から希望へ」というメッセージとして伝わる。これこそ人類がホモ・サピエンスという単一種であることの証拠、「普遍音楽文法」である。

思えばデビュー曲、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」でも、「♪よねっ!」のところで、「(Dm)DDEEFFGG→(E)AAG#G#F#F#EE」と短調(Am)から長調(A)になる。

これこそBABYMETALの楽曲の一大特徴であり、それが「Road of Resistance」にもしっかりと表れているのである。

「♪心は一つ」で指を合わせる三人が好き。

●この曲には初披露の2014年アカデミーブリクストンから、観客に一緒に歌うことを促すシンガロングが組み込まれていた。当初は、SU-が「♪Woowoowoowoo~」と4小節からなるフレーズを2回ソロで歌い、次の4小節の頭に「Singin!」と叫ぶとバンドが止まり、SU-が2小節ごとに歌って観客とのC&Rのような感じになり、4回目でバンドが入るという短い構成だった。

しかし「新春キツネ祭り」では、3回目ではバンドが止まらない。YUIとMOAがBABYMETAL旗を持ち、「進軍」しながら客席中央の花道を移動する。バンドがストップしたのは島舞台に立ち、SU-が再度「Singin!」と叫んだ後だったが、2万人の観客だけのシンガロングは走ってしまい、クリックでリズムをとっているSU-が入ったとき、リズムがズレてしまった。

現在は、SU-が「♪Woowoowoowoo~」と歌い出し、8小節を1回だけ丸ごと歌って見せてから、「Singin!」と叫んでそのまま8小節丸ごと観客に歌わせ、バンドが止まっても、ハイハットがリズムキープし、ベースやギターがメロディに加わるパターンが定着した。

ぼくの悩みは、車の中やBDなら高音が出るのに、現場だと声が上ずってしまい、高音が裏返ってしまうことである。

●なんといっても、シンガロングの後、「♪命が続く限り、決して背を向けたりはしない。今日が明日を作るんだ。そう、ぼくらの未来On The Way~」の後のSU-のシャウト「かかってこいよぉ!」が好き。海外では「Come on(会場・フェス・都市名)!」となる。

とりわけ公式MVになっている「新春キツネ祭り」は特別である。

2014年に海外進出し、NHKで特集番組に取り上げられるほどの大活躍をした三人は、当時まだ高2と中3だった。このときのSU-の雄叫びは、「アイドル」を脱し、世界で勝負するという前代未聞の運命を引き受ける決意を、天に向かって叫んでいる気がして、ぼくは見るたび心が震えた。あの感動がこのブログを作らせたといっても過言ではない。

●そのあと、「君が信じるなら進め!答えはここにある」と歌いながら、SU-は右手で舞台の床を指さす。

それは三人にとって、「答え」は、ライブという戦場で毎日歌い踊ることの中にあること、会場に集まった観客=THE ONEの歓声がその「答え」であるという確信である。

その確信は、BABYMETALを愛し、応援するぼくら観客にとっても同じことである。

人生には、思い通りにならないことや、うまくいかないときもある。だが、投げ出してはならない。諦めてはならない。どんな過酷で、不可能と思われる課題でも、自分の可能性を信じ、毎日為すべきことを積み重ねていけば、必ずいつか道は開ける。「♪今日が明日を作るんだ」という歌詞はそれを明白に示している。人生の「答え」は遥か彼方の遠いどこかにあるのではない。今、ここにあるのだ。

(つづく)