好きすぎてツライ(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日、4月9日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

「ド・キ・ド・キ☆モーニング」編

●2011年3月2日、テレビ東京「月刊Melodix」で、さくら学院の制服を着た中学1年生のSU-、小学校5年生のYUI、MOAによって、この曲が初披露された。SU-が「♪ぱっつんぱっつん前髪ぱっつん」と歌うと、YUI、MOAが「♪Cuty Style!」とScreamしたあと、片手を頭に、もう片手を腰にあてた悩殺ポーズで、ぴょん、ぴょんとせり出してくる。このあどけない一生懸命さがたまりません。

●2012年4月6日に、タワーレコード渋谷店地下スタジオで行われたBABYMETALの初単独ライブ「15分一本勝負!見えづらくってゴメンなさい」は、実際にはアンコールで「君とアニメが見たい」を披露したが、元々は「いいね!」と「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だけで終わるセトリだった。そのため、「いいね!」が終わった後の暗転で、イントロ部分のバックに、「チョ待って、チョ待って。今何時?え?もう最後の曲になるの?それじゃ、行っちゃいますか!ドキドキモーニング!」というSU-のMCナレーションが入っていた。

デビュー当初は、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」こそBABYMETALの代名詞であり、フィニッシュソングだったのだ。ちなみに、このライブで、初めて、上手と下手に「お立ち台」が設置された。このスタジオは何度か行ったことがある。天井が低く、奥行があって300人くらい入るが、床が完全にフラットなので、スタンディングの後ろの方は、ステージのアーティストが座っちゃうともう見えない。YUI、MOAは小っちゃかったから、お立ち台がないと見えなかっただろう。また、アンコールの「君アニ」が終わった後の去り際のセリフは、「See You!」ではなく、「Thank You!」だった。

●「♪一直線なら一等賞よ」「♪女子会参加でガールズトークよ」「♪三秒待ってよ速攻変身」という中学生のSU-の“お姉さんぶり”に、年下のYUI、MOAが「♪チョーすごーい!」「♪チョーやばーい!」「♪チョーはやーい!」と素直に感心し、尊敬している。こういう幼い女の子たちの関係性がメチャメチャ愛おしい。オジサンがこういうことを言うと、変態とかロリ××とか思われるわけだが、全然そうではなく、親戚の子どもたちや、なんならスズメの学校を見るような気持ちである。カワイイものはカワイイのだ。

●「♪知らないフリはキライキライ…」のところのYUIとMOAのロボットダンスが好き。ロボットダンスは普通、無機質で非人間的な不気味さを表現するものだが、YUI、MOAがやると、あどけなく、純真無垢でピュアな感じを受ける。それが好き。

ちょっと補足説明しておくと、現在ぼくらはロボット=A.I.が人間の職を奪う「敵」かもしれないという事態に直面している。‎SiriはA.I.だし、ネット上のサイトの多くが、すでにA.I.によって運営されている。グーグル社のレイ・カーツワイルは、シンギュラリティは近いと予言してぼくらに底知れぬ不安を抱かせているが、これに対して、イギリスの女性作家デボラ・インストールのベストセラー小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』と並んで、YUI、MOAのロボットダンスは、欧米人が考えるA.I.のイメージに、恐怖ではなく、子どもっぽさや無邪気さ、親しみやすさを感じさせる重要な役割を果たしている。

おおげさではなく、ベストセラー小説はせいぜい100万部だが、2012年11月にアップロードされた「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のMVは、現在までに2000万回以上視聴されている。BABYMETALは欧米人にKawaii Metalとして紹介されたが、このロボットダンスにみられるように、子どものような「アイドル」の姿は、きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeと同じく、テクノ・オリエンタリズムの表象として受け取られた。「日本」は世界の未来であり、日本人労働者のイメージがそうであるように、そこで歌い踊る「アイドル」は人工的なクリーチャー=A.I.に見えたのだ。

だが、BABYMETALのYUI、MOAのロボットダンスは、無機質で不気味なものではなく、驚くほど子どもっぽく、Kawaiiものだった。MV収録時、YUI、MOAはまだ小学生だったのだから当たり前だが。

●「♪よねっ!」のところのギターが、「(Dm)DDEEFFGG→(E)AAG#G#F#F#EE」と短調から長調になるのが好き。

●サビで三人は「♪リンリンリンッ」「♪お・ね・が・いチョ待ってチョ待って」とカワイイ振付けで踊る。もちろん振付師は世界のMIKIKO師である。

ぼくはこの振付けが「私の彼は左利き」(麻丘めぐみ)、「年下の男の子」(キャンディーズ)、「UFO」(ピンクレディ)、「どうにもとまらない」(山本リンダ)、「魅せられて」(ジュディ・オング)などと並び、歴史に残る名振付けだと思う。考えてみたら、フリ付きの日本のアイドルソングが、アルバムながら世界規模で発売され、ビルボード200にランクインしたのは、ピンクレディでもなし得なかったスゴイことではないか。

●この曲に戦後日本歌謡史のエッセンスが詰まっているのが好き。

例えば、「♪リンリンリン」は、フィンガー5の「恋のテレフォンナンバー6700」(1973年)を思わせる。フィンガー5は、1972年に米軍占領下から日本に復帰したばかりの沖縄出身で、マイケル・ジャクソンが所属したジャクソン5を真似たファミリーグループである。

「♪チョ待って、チョ待って」のフリは、元スパイダースの井上順(当時は順之)が、70年代の歌番組でやっていた、ぴょんと飛び上がって腰を曲げ、右手を前につき出し、首を傾ける所作に酷似している。なんという曲か、あるいはギャグだったのか今となってはわからないのだが、確かにやっていたんだ。

「♪今何時?」は、事務所の先輩でもあるサザンオールスターズのデビュー曲「勝手にシンドバッド」(1979年)へのオマージュである。この曲タイトル自体「勝手にしやがれ」(元タイガースの沢田研二、1977年)と「渚のシンドバッド」(ピンクレディ、1977年)のミックスである。

つまり、欧米人の思い込みとは裏腹に、日本人にとってBABYMETALの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」には、米軍占領下の沖縄、ジャクソン5から、エレキブーム~GS、振付で踊りながら歌う歌謡曲の国民的アイドル、SASによる日本語ロックの創生、そして当然「アイドル」に至る戦後の日本大衆音楽の歴史が凝縮されているのだ。

KOBAMETALはそれにメタルのリフをつけた。

戦後歌謡史の最後にメタルを付け加えたのがBABYMETALのデビュー曲であり、それが世界に進出し、前人未到の成功を収めているのである。

●2016年4月2日のWembley Arena公演でこの曲が披露されたとき、SU-は、「紅月-アカツキ-」や「悪夢のロンド」や「Amore-蒼星-」とは打って変わって、コケティッシュに表情を変えながら、カワイイ声で「♪ぱっつんぱっつん前髪ぱっつん…」と歌った。

2014年時点では、「メギツネ」や「ヘドバンギャー!!!」と「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の歌い方にはあまり差がなかった。しかし、ウェンブリーでは、明らかにこの曲をカワイく歌おうとする意識が感じられ、以降もそれが続いている。すさまじい表現力を持ちながら、その一つとして可愛さもキープするSU-METALが大好きだ。

●3番が終わった後、三人がいったん、ピョンと飛び上がってから倒れるのが好き。

硬いステージの床に倒れるのは痛いと思うのだ。だが、三人はわざわざ飛び上がってから倒れる。これは、遠くからでも振り付けとして倒れたのがわかるようにメリハリをつけているのだと思う。スゴイことだ。体の固くなっているオジサンでは、肋骨が折れちゃうよ。

そのあと、「もう朝か」と欠伸をしながら目覚め、「ヤバいこんな時間だ」と気づいて飛び起きて「♪リンリンリンッ」に戻る小芝居も大好き。

(つづく)