ベビメタ嫌い(6) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日、4月6日は、2012年、初単独ライブ、タワレコ渋谷店「15分一本勝負」に出演した日DEATH。

 

第4類型 オジサンがスゴイスゴイというからベビメタがキライな人

 

テレビに出てるアイドルはカワイイし、ちょっとおバカで親しみが持てる。しかも一生懸命だから自然に好きになっちゃう。握手会で直接触れあえるし、グラビアで水着姿も見れる。

ベビメタはオジサンがスゴイスゴイ言って取巻いてて、なんか怖い。

音楽や文化の歴史なんて知らないし、洋楽も聴かないから、ベビメタの何がスゴイのかわからない。チケット髙いし、接触不可だし、好きになる以前に、近寄りがたい感じ。

こういう人が、もっとも強敵である。

今やベビメタ嫌いのメインはこういう人たちではないか。

どうすればよいか。

それは、究極的には、ベビメタ嫌い第一類型の情弱のおじいちゃんと同じように、あなたの人柄で、「お前が好きなら否定はしないよ」てな感じで認めてもらうしかない。

でも、メイトとしては、友達に、もうちょっと愛するBABYMETALの印象を良くしてもらいたい。

それには、知識や論理ではなく、アウェーの中、必死で戦う三人の姿を見せるのがよいと思う。東京ドームとかSSAとか広島グリーンアリーナとか大会場の単独ライブ、あるいは黒赤白ミサ、5大キツネ祭のような限定ライブではスゴすぎて逆効果である。

YouTubeには、無数の海外ライブのファンカムが上がっている。

その中で、比較的新しいものとして紹介したいのが、2017年のKORN、STONE SOURらとのミニフェスツアーの2日目、6月20日のカリフォルニア州CHULA VISTAのMattress Film Amphitheaterである。

メイトさんにはYUIちゃんバースデイライブとして知られるが、このライブで特筆すべきなのは、BABYMETAL登場時、ステージ前には数百人ほどの観客しかおらず、なかなかのアウェーだった点である。

いくつかのファンカムがあるが、ステージから推定30mほどの位置に固定されたカメラで撮影されたものが、もっとも全容が分かりやすい。

https://www.youtube.com/watch?v=pno4UhzIzQw

BABYMETALのバックドロップが上がり、「紙芝居」が始まっているのに、ステージにズームインするまで、カメラからステージまでの空間の後ろ半分はガラガラ状態なのが映っていて、上手から下手へかけて、砂ぼこりが舞っているのがわかる。

ステージ前はVIP席だった可能性もあるし、Amphitheaterはすり鉢状の野外劇場で、カメラ位置の後ろの芝生部分にはもっと人がいたかもしれない。しかし、照りつける陽射しの中、なんとなく閑散としている感じである。

「♪ダダダダダダダ、ダダダダダダダ…」というイントロに続いて、下手からフードをかぶった三人が出てくる。最前列には、日本やハリウッドから引き続き参加している熱心なメイトさんがいて、「オイ!オイ!…」といつものように合いの手を入れているが、固定カメラの映像で見ると、その集団以外、ノッている客はいない。カメラの前にいる集団の最後方にいる客は、後ろを向いたり、友達と話したりしていて、全然集中していない。

彼らにとっては、STONE SOUR、KORNが本命であり、BABYMETALは一座の一員ではあるが、メインの2つ前の、ワケのわからん日本の女性新人バンドに過ぎないのだ。

「♪BABYMETAL DEATH、BABYMETAL DEATH…」という早口のSEに続いて、イントロのリフが始まり、ツインギターが「♪きゅいーん」と鳴っても、両手でキツネサインを掲げているのは、最前列の集団だけである。

「SU-METAL DEATH!」「YUIMETAL DEATH!」「MOAMETAL DEATH!」「BABYMETAL DEATH!」が終わっても、歓声は最前集団だけ。

ギターソロになって、藤岡神の超絶フレーズが放たれると、ようやく観客の関心が集中し始める。「DEATH!DEATH!…」と三人がバラけてお立ち台で観客を煽ると、徐々に観客がステージ前に集まってくる。固定カメラの後方にいた客、あるいはBABYMETALから見ようと来た客が集まり始めたのかもしれない。2016年の西海岸単独ライブでも1時間近い入場遅延があったように、アメリカ西海岸の時間感覚は東南アジア並みなのである。

曲が終わると、「♪キーン」というSEが響き、陽光に満ちたCHULAVISTAがキツネ様の「結界」に包まれる。三人はその場にとどまり、ダラリと上半身を下げる。

短いSEに続いて二曲目「YAVA!」のイントロが始まる。

速いスカのリズムに乗せてSU-が「♪ラーララララララララ」と「エリーゼのために」のフレーズをかまし、「♪どれでも同じだとみんなそういうけれど…」と歌い始める。

そのピッチは超正確。もちろん観客には何を歌っているのかわからないだろうが、表情の豊かさで惹きつけられていく。SU-の回りで踊るYUIとMOAは、キレッキレのフリと豊かな表情で、行進したり、ヘンテコな手の動きをしたりする。「♪ヤバッ!」のところでは口に手を当て、Kawaii表情でストップしたかと思うと、頭を叩きながら小刻みにジャンプする。

6月のCHULAVISTAは暑い。ぼくはその数日前にハリウッドに居たが、華氏86度(摂氏30度)を超える猛暑だった。その中を黒い衣装を着て激しく歌い踊る過酷さは、想像を絶する。

日本語がわからなくても、観客はSU-の歌と表現力、YUI、MOAのダンスに魅了されていく。「♪チガウ!チガウ!」に合わせて踊る女性客も現れた。

だが、カメラ前がいっぱいになったわけではない。ハッキリ言ってそれほど大きくもないステージまでの空間には、まだ余裕がたっぷりある。

2016年にぼくが見たCarolina Rebellionでは、BABYMETAL開演時に振り向くと、もう後方の地平線いっぱいまで人で埋まっていた。2017年4月のレッチリ@シャーロットでも、2万人収容の会場がベビメタ登場時にはほぼ9割がた埋まっていた。

しかし2017年6月のCHULAVISTAでは、BABYMETALが始まっているのに、ステージ最前柵のスペースに空き地があるという状況だったのだ。

三人が下手へ引っ込むと、神バンドのメンバーがステージ前にせり出してくる。青山神のドラムが始まる。「神バンドソロ」である。

藤岡神が、ニコニコしながら変態的なスケールで速弾き+アーミングを交えたソロフレーズを突き刺すと、大村神は鋭くカッコいい速弾きフレーズを繰り出す。

気づくと、固定カメラ前に居る観客の中で、後ろを向く人はひとりもいなくなっている。全員集中してステージを見ているのだ。多くの人がスマホで動画を撮っている。ソロが終わるたび両手を上げて、ミュージシャンを称えている人もいる。

続くBOH神も、まず指弾きの速いフレーズを繰り出し、中盤でスラップを聴かせ、最後はハイフレットへの移動で青山神にバトンを渡す。

青山神は表・裏、2ビート・三連符×4とリズムを変える変幻自在で手数の多いドラミングを聴かせ、最後はツインバスドラを「ドコドコドコドコ…」と足で鳴らしながら立ち上がって観客席にアピールする。観客席は大歓声に包まれる。

すかさず、BABYMETALの三人が「ハイ!ハイ!…」と入ってくる。固定カメラ前の観客の4割くらいが、三人と同じように手を上げ、「ハイ!ハイ!」と言っている。

そして、「1・2、1・2・3・4!」から三人の息の揃ったダンスが始まり、デス声の「もういいかい」にKawaii「まあだだよ」という掛け合いのシークエンスになる。

アメリカ人にとって、曲調はあくまで不気味でブルータルである。観客には「Catch me if you can」(追いかけっこ)という曲名さえ知らない人が多いから、何をやっているのかもわからないだろう。これはSlipknotの場内行進と同じく、神バンドと三人のJapanese Girlsによるメタルパフォーマンスなのだ。

曲が終わり、三人の少女が疲れ果てて倒れ、下手へ去ると、観客席はざわざわし始める。

もう最前柵の中はかなり詰まってきている。おそらくカメラの後ろにも人がいっぱいいるのだろう。歓声のボリュームが開演時とはだいぶ違う。もう少し近くでBABYMETALを見ようと観客が詰めかけて来たらしい。

その場内に「♪きーつーねー、きーつーねー、わたしはめーぎつねー…」というSU-の声が流れる。しかし、三人はなかなか出てこない。

「さくらさくら」のメロディによるリフが繰り返され、ようやく出てきた三人は黒いキモノ風のガウンを羽織り、遠目にも白いキツネ面で顔を隠している。舞台中央で、客席に向かって深々とお辞儀をした三人は、キツネ面を外し、色っぽくキモノの肩をはだけたところで一瞬ポーズをとってから、くるりと回転して着物を脱ぎ、ようやく観客の方を向く。

のんびりしたカリフォルニアの初見客も、このジャポニズムな所作には度肝を抜かれるはずだ。メタルなのにオリエンタリズム。メタルなのにゲイシャ。

次の瞬間、ドラムスとF単音のギターが轟き、SEの琴の音が入り、三人がメギツネポーズをとる。そしてへヴィなリフに続いて、SU-を中心にYUI、MOAがキツネサインをしながら向き合い、観客を見渡したところで、「♪キュイーン」と狐火のようなピッキングハーモニクスが入り、曲が始まる。

Kawaii Japanese Girlsが「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と叫びながら踊る。最前列の観客は踊り狂っている。

その熱狂は「?」だらけだった後ろの観客にも伝わっていく。

「♪いにしーえーのー」と始まったSU-の歌の意味はもちろんわからないだろう。

だが、この日のSU-の歌声は、完璧なピッチと響き渡る高音域で、神バンドを従え、CHULAVISTAの野外ステージを完全に支配した。

一切修正なしのファンカムである。まだ見ていない人はぜひ見て欲しい。2017年6月20日のSU-の歌唱は、また壁を突破し、信じられない領域に達していたのだ。野球でいえば160kmを超えた剛速球である。

ブレイク。

イントロと同じく「♪きーつーねー、きーつーねー、わたしはめーぎつねー」というイントロとともにSU-がキツネ面を持って、中央に立つ。

バンドはG→G#→Fmと煽りのコードを入れ、藤岡神が「♪ピロピロピロ」とオカズを入れる。

SU-がキツネ面を持ったまま、お立ち台に上り「Hi!CHULAVISTA!Make some noise!」と叫ぶと、観客席から大歓声が沸く。考えてみればこれが初めて観客にも理解できる英語でのSU-のコミュニケーションである。

「On the count of three, Let’s jump up with the FOX GOD. Are you ready?」

三つ数えたらキツネ神と一緒にジャンプしましょう。準備はいい?

もちろん言葉は理解できる。だが、キツネ神ってなんだ?ジャンプするのか?

初見の客は戸惑うが、そんなこと関係なく、SU-はサディスティックに「A---re-- yo---u--ready!?」と叫ぶ。

その有無を言わせぬクイーンぶりに観客席は「ウォー!」と答える。

すかさず、バンドが高まり、SU-が「1!2!1・2・3、Jump!」と叫ぶ。

そして「Jump!Jump!Jump!Jump!、Jump-Jump-Jump-Jump!」と休むことなく踊りながら煽り立てる。YUI、MOAも全力で踊る。

観客はもう踊らずにいられない。さっき最後方で友達を呼んでいたオジサンも、女性客も、いっしょになってジャンプしている。

ここが、この試合、じゃなかったライブのポイントだった。

和風のメロディラインとへヴィなリフがミックスされ、ジャパニーズ・ファンクメタルとでもいうべき曲調になった「メギツネ」は、ライブではSU-の超絶歌唱とYUI、MOAのダイナミックな「ソレソレ」ダンス、そして英語での煽りとFox Godジャンプで、海外の初見ファンを熱狂させるキラーチューンになった。それはCHULAVISTAでも実証された。潮目がガラリと変わったのだ。

メギツネポーズで曲が終わると、すかさず、神秘的なSEが流れる。

2016年APMAsでAmazonが全世界配信してくれた「KARATE」である。

三人の両手が斜めにピタリと決まり、曲が始まる。「KARATE」もまた、日本の神秘をイメージさせる曲だ。

全然強そうに見えない正拳突き、ヘンテコなYUI、MOAによる「♪セイヤ、セセセセイヤ、ソイヤ、ソソソソイヤ、押忍!」という振付もダンスでしかない。だが、その動きと愛らしさは、観客をとろけさせる。

始まったSU-の歌は、メロディラインがアラビックスケールで、やはりエキゾチズムを感じる。だが、「♪ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ…」というサビに入ると、典型的なC→G→Dm→Amという「戦争を知らない子どもたち」のコード進行となって安定する。

ブレイクになると、クリーンなギターがDに完全4度を織り交ぜるアルペジオを奏で、ビートルズコードにも似た、爽やかな「時間が止まった感」が会場を支配する。

そんな中、SU-は「How you feelin’ tonight?」とスラングっぽく問いかけ、もう一度「How you feelin’ tonight, CHULAVISTA?」と叫ぶ。

もう大歓声としか言いようのないボリュームで会場が沸く。

そして「Let us hear your voice.」と言うと、観客は口々に「Yeah!」と声を出す。

「We‘re so happy to (be) come here」と文法的には間違っているが、意味は通じる文で観客に呼びかけた後、「Also, today is really special day for us. Happy birthday, YUIMETAL!」とYUIの誕生日を祝福した。これに観客は大歓声を上げる。

SU-は観客に「Let her hear your voice.」「We want to sing with you.」と言ってから「♪Woo Woo Woo~」と歌ってみせ、「Singin!」とシンガロングを要求する。観客は、もう、SU-に言われるがまま、シンガロングする。途中「I can’t hear you!」と煽るところもあり、最後は、またしても「Everybody、Jump!」で観客をジャンプさせる。

カメラ前の観客は、ほとんどが大喜びでジャンプしている。BABYMETALは、ガッチリと初見の観客の心をつかんだのだ。

「♪走れ~ええーええーええ~」のところのSU-の声のすさまじさといったら。野球でいえばイチローのレーザービームである。

キツネサインポーズに万感の思いを込め、曲が終わる。

この固定カメラのファンカムでは、後ろを向いた三人の姿しか見えないが、最前列上手にいたトマト君付近から撮られたファンカムでは、中央のSU-が左YUI、右MOAの背中をポンポンと叩いて、「あと1曲」と気合を入れる姿が映し出されている。

「ギリギリギリ…Give me…Give me…」というSEが流れ、フィニッシュ曲「ギミチョコ!!」となる。

この曲は、2014年の「YouTuber’s React」で反響を呼び、レディ・ガガがステージ下で踊り狂って「I’m a fan」とツイートし、2016年には「The Late Show with Stephen Colbert」でも生演奏された。いわばアメリカにおけるBABYMETALの代名詞である。

音楽的にはJ-POPでもメタルでもない、とんでもない曲である。

基本的にEの単音の連続に、「♪C!I!O!チョコレート、チョコレート…」のところで半音上昇進行のコードが重なるだけのシンプルな構成なのだが、それに調子ッぱずれのキーボード、ヘンテコな踊り、「♪あたたたたーた…ずっきゅん」という奇声が絡み合って、BABYMETALにしか作れない楽曲世界を生み出している。

この曲での観客の役割は、手拍子を打つことだけである。

だが見よ。ライブが始まったとき、冷淡だった観客のほぼ全員が手拍子を打ち、踊り、BABYMETALという日本から来たKawaiiアーティストを心から楽しんでいる。

曲終わり、青山神が「ダダン!」と一拍入れ、バンドが「ジャーン」とEコードをかき鳴らす。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」と同じく、この曲もEで終わるのだ。

そして三人はお立ち台に上り、SU-が「We are?」YUI、MOA&観客が「BABYMETAL!」と答えるコールアンドレスポンスを繰り返す。

最後に「See You!」といって去っていく三人に大歓声が上がった。Sonisphere2014 と同じ。灼熱のアウェーでの30分間の戦いにBABYMETALは見事大勝利!したのである。

このように、BABYMETALは、数百人しかいない海外の会場で、予備知識のない観客の前で演奏をはじめ、歌と踊りと演奏で注目させ、どんどん観客を呼び込み、乗せ、踊らせ、シンガロングさせ、最後には大勢の観客にBABYMETAL という名前を叫ばせ、歓呼の声に送られて去っていくというライブ活動を、もう4年も繰り広げているのだ。

決して、プロモーターの力で数万人が簡単に集まるわけではない。こういう地道で厳しい戦いこそ、海外ツアーの実態なのだ。

BABYMETALがスゴイのは、大物バンドに前座として呼ばれるからではない。それはあくまで結果に過ぎない。

灼熱、豪雨、極寒、砂埃の舞う会場。日本語は通じない。チュチュをはいたアジア人の女の子に対するメタルヘッズの偏見と好奇の目。

口パクでは見向きもされない。生歌・生演奏は当たり前。その上で、歌唱力、演奏力、表現力のオリジナリティとエクセレンシーが求められる。ダンスできるだけじゃなくて、ユニークかつキレッキレじゃなきゃ評価されない。

そういう厳しい観客を、まだ中高生だった2014年以降、BABYMETALの三人は、神バンドと共に力づくでねじ伏せてきた。ツアーが組まれれば、来る日も来る日もライブに臨み、結果を出してきた。その事実こそがスゴイのだ。

BABYMETALの世界進出とは、日本語が通じない世界のどこでも、会場にいるお客さんの心を動かし、楽しませるライブ・アーティストであり続けることに他ならない。なんならメタル・アイドルといったっていい。

滝行や山登りやバンジージャンプやスカイダイビングの「ヒット祈願」も、全国握手会やバラエティ番組でのリアクションも、一生懸命な「アイドル」の姿だろう。

BABYMETALは、アイドルの本業である歌と踊りで、それをやっているということなのだ。

だから、ぼくはBABYMETALを応援するし、彼女たちから力をもらえるんだよね。なあ? 認めてくんない?

これでもベビメタ嫌いと言い続けるとしたら、あなたのお友達は、優しさのカケラもない鬼かもしれないなあ。

(この項終わり)