キツネ祭BD(4) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日2月21日は、2015年、ヨーロッパでのロックフェス参加(ミュンヘン、ニュルブルク→のちにゲルゼンキルヒェン、ウイーン)が発表された日DEATH。

 

●2017年7月25日Silver Fox Festival@Zepp Divercity Tokyo

―「紙芝居」より引用―

メタルレジスタンス第5章の幕開けと共に、キツネ様によって解き放たれた5つのメタルの魂は5匹のキツネたちへと憑依した。やがてその5匹のキツネたちはThe Chosen Fiveの元へと導かれるのであった。

「黒」「赤」「金」「銀」「白」。

この夏、日出づる国で5色の狐火が舞い踊るのだ。

諸君、首の準備は出来ているか?

もう一度聞く。首の準備は出来ているか?

STAY METAL ”銀キツネ祭り“の幕開けだ!

―引用終わり―

 

銀キツネ祭りも、2017年に初めて行われた限定ライブである。

60代以上と小学生以下という設定は前代未聞。小学生の同伴者、つまり本当の父兄の方も参加できたわけだが、主催者側の趣旨としては、おじいちゃん世代と孫の世代のためのライブということだろう。

誰かが言っていた。

欧米のメタルフェスには親子連れが多い。そうしてメタル文化が継承されているのだと。

「SILVER FOX FESTIVAL」タイトルバックの白黒映像には、コスプレをして、Zepp Divercityの入場を待つ小学生たちが映っている。

「金キツネ祭り」に続き、このライブは「世代継承」のライブなのだ。

60歳以上といったって、ぼくが子どもの頃、つまり50年前のイメージとは全然違う。

寿命も定年も伸びている。ぼくだってあと数年でその年を迎えるのだが、少なくとも「老人」の自覚はない。いわゆる団塊の世代はさらに一回り上になるが、元気な方が多い。

小学生は2階シート席なので、モッシュッシュピットは、60歳以上、あるいは小学生の同伴者の大人たちで満ちている。そこだけ見れば、「黒キツネ祭り」と同じだ。

だから、「紙芝居」が始まった瞬間の歓声、「BABYMETAL DEATH」のイントロの「オイ!オイ!」の合いの手、紗幕が落ちた瞬間の大歓声は、やはり年季の入った野太い声だ。

「赤キツネ」、「金キツネ」と違って、ベビメタ体操をする三人は無表情で、ときおりMOAがニヤリとするくらい。ブルータルに徹している。

小学生には、大音量で不気味なデスメタルの曲調、「DEATH!DEATH!」と熱狂する大人たちの姿は衝撃だろう。怖いと思うかもしれない。だが、三人はお構いなしに、いつものように観客を煽る。これがBABYMETALの「降臨」というものだ。

「♪きーつーねーきーつーねー」のSEが流れても「金キツネ」と違って、客席は歌わない。大歓声が上がるだけだ。このライブを召喚したキツネ様に捧げる「メギツネ」。

曲に入っても、三人はブルータルな表情をキープする。YUI、MOAのダンスは、キレッキレというより、ひとつひとつの振りを丁寧に踊っている感じ。

SU-がキツネ面を被るブレイクの煽りパートになって、ようやく三人が笑顔になる。

お立ち台に立ったYUIのニコニコ顔、MOAはしゃがんで最前列の観客とコミュニケーションしている。

SU-「Hey! Divercity! Welcome to Silver Fox Festival. We’re so happy to see you! Are you ready?」ここで、YUIとMOAが両耳に手を当てて微笑みながら小首をかしげて踊る。やっぱりKawaii。二階席が暗くて小学生たちの姿が映らないのがもどかしい。

「A—re  Yo—u Ready!? 1,2,1,2,3 Jump!」でいつものように大熱狂のソレソレ大会に突入。

小学生たちに、もう怖さはないだろうが、大人たちの熱狂は異様に映るだろう。

「あわだまフィーバー」のイントロが流れ、そこから神バンドソロへ。「あわだまかくれんぼ」である。

「CMIYC」では、ドラムが「♪ズンズンチャッツカ、ズンズンチャッ」、ギターが「♪ジャジャ(休休休休休休)ジャジャジャジャジャ(休休休休休休)」というリズムだが、「あわだま」の場合は、ドラムが「♪ズズタズンズタッ、ズズタズンズタッ」、ギターが「ジャジャジャジャ(休休)ジャジャジャジャ(休休)」というリズムを刻む。ほぼ同じBPMだが、この微妙な違いが、各パートのインプロヴィゼーションにも反映する。

両ギタリストは、赤いVシェイプのBABYMETALモデルに持ち替えている。

藤岡神はアームで音を揺らす幻想的なフレーズで中盤まで繋ぎ、後半はハイ・フレットまで駆け上がってからきゅいーんとアームアップして大村神にバトンタッチする。大村神もこのリズムに乗ってハイ・フレットを使った速弾きから下降していき、指板をいっぱいに使った縦横無尽なフレーズを聴かせ、アームアップしてBOH神にバトンタッチ。

BOH神はハイ・フレットの指弾きから、絶妙なタッピングを見せたあと、パンチの利いたスラップ奏法に移行。フレーズはマスロックっぽくなっている。青山神も、「金キツネ」とは全く違うテクニシャンぶりを見せつける。ダブルバスドラのビートを維持したまま、裏―表が瞬時に入れ替わるカラフルなソロ。

リズムがちょっと変わっただけでこれほどインプロヴィゼーションの幅が広がるのが、神バンドの凄みなのだ。それをしっかりと”STAY METAL”の観客に見せつけた。

「ハイ!ハイ!」と三人が入ってくる。笑顔で客席を煽ったあと、「1234!」から「あわだまフィーバー」の曲に入ると、またもや振付どおりのアンドロイド的な表情に戻る。

「♪あーイェイ!」のところ、SU-が「Singin!」「もっと!」と煽ると、ようやくYUI、MOAの顔に笑顔が戻る。だがSU-の歌に入るとまたアンドロイドに戻る。

ううむ。「赤」「金」と全然違う。これは意図的だ。

耳の肥えたメタルヘッズたちに、ライブで、楽曲と歌唱とダンスパフォーマンスと演奏の圧倒的な「完成度」を見せること。

それこそが、BABYMETALが世界をねじ伏せてきた基本的な構えだ。

「重音部のメタル少女歌劇」だと思っていた2012年Legend “I” の観客。

「アイドルなんて…」と思っていたLOUDPARK 13の観客。

「J-POPなんて…」と思っていたSONISPHERE 2014の観客。

予想をはるかに上回るSU-の歌唱力とカリスマ性、YUI、MOAのKawaiさとダンスパフォーマンスの激しさ、神バンドの超絶的な演奏力。

ライブバンドとしてのBABYMETALの実力と完成度に、耳の肥えたベテランのメタルヘッズほど驚愕し、BABYMETALの虜になっていった。

今日はSILVER FOX FESTIVAL。観客はベテランのメタルファンと小学生。

小学生が自分からBABYMETALのファンになるとは考えにくい。

夏休み。みんなお父さんやら、おじいちゃんやらに連れて来られたのだ。

いい年をしてアイドルにハマるなんて、ちょっと恥ずかしい。だが、パパやおじいちゃんは断言したのだ。「おれの人生で出会ったバンドの中で、ベビメタが最高なんだ」と。「愛するおまえだからこそ、一緒に見てほしいんだ」と。

だから。

そんなおじいちゃん=銀キツネたちや、お父さん=親キツネたちの言葉が嘘にならないように、BABYMETALは最高の状態を見せなければならない。それが、今日の三人の生真面目なパフォーマンスの理由だろう。

「ヤバッ!」もきっちり振り付けどおり、表情を作り、丁寧に踊る。

楽曲が訴える「日常生活への違和感」=「メタル魂の卵」を観客に伝えようとしていたのだ。

「ド・キ・ド・キ☆モーニング」もそう。

この曲は小学生にとっては一番親しみやすい曲だろう。

だが、パンテラ風リフ部分やロボットダンスのところ、SU-は表情を付けてコケティッシュに歌うが、YUI、MOAは振り付けに忠実に踊っていた。それが「♪よねっ」でガラリと表情が変わり、ニコニコ顔で「♪リンリンリン」とKawaiく、楽しく踊る。その“なんじゃこりゃ感”こそ「アイドルとメタルの融合」BABYMETALたるゆえんなのだ。

「Road of Resistance」の戦国SEが流れる。赤坂Blitzよりは広いが、狭い会場、高齢者が多いピットではWODはできない。それでも客席は声を振り絞って合いの手を入れる。

三人は決意に満ちた表情で、やはり丁寧にパフォーマンスしている。

「♪Woo woo woo woo woo」とシンガロングで応える観客。

これでいい。

子どもたちよ。激しいブラストビートと美しいツインギターとカッコいい歌で、聴く者に勇気を与える音楽。この曲のようなのを「パワーメタル」というのだよ。

SU-が「♪進め!答えはここにある」と歌うとき、YUIとMOAは微笑みながら、ピットを指さす。

子どもたちよ。人生には悲しい出来事や、何もかもうまくいかない時もある。だが、人間は、逆境の中でも心を励ます音楽という素晴らしいものを発明した。音楽の力で強くなれる。それがヒトである証、FOX遺伝子だ。だから、SU-は「Get Your Fox Hands Up!」と叫ぶのだ。

暗転後、SEが流れ、「ギミチョコ!!」が始まる。

この曲は小学生でも知っているだろう。YouTubeで見たあの曲が、それ以上の迫力とパフォーマンスで完璧に再現される。な、凄いだろ、BABYMETALって。

続いて「KARATE」。

「♪セイヤ、セセセセイヤ!」のところ、もうMOAは笑顔を隠し切れない。YUIもニコニコしながら体が躍動している。

涙こらえても、心折られても立ち上がって前へ進むのだ。それがBABYMETALのメッセージだ。そして親から子へ、子から孫へ、愛する者に伝えたいメッセージだ。

握りこぶしをキツネサインに変えて掲げたところで暗転。これが残心というものだ。

雨だれと雷の音が鳴り響き、不穏なオルガンのメロディが高まると、SU-が「♪伝説の黒髪を…」と歌い出す。「ヘドバンギャー!!!」。

この日のこの曲のSU-の歌声は特別だった。聴き比べるとわかるが、いつものような決意を込めた力強さというより、歌詞に込めた慈しみのような心が伝わってくる。「金キツネ祭り」を経て、年少の観客へ伝えようとする気持ちが生じたからだろうか。

「♪いーちごーの夜を忘れはしない…」という歌詞は、今、小学生の子狐がいつか迎える自立のときを先取りしているだろう。だが、それはBABYMETALも神バンドも銀キツネも親キツネも、みんなたどってきた道なのだ。いつかおまえがその日を迎えても、恐れることはない。自分の信じる道を進んでほしい。メタルの道はどこまでも続くのだから。

壮大なオーケストレーションが会場を包む。

5大キツネ祭り初の「THE ONE」である。

BABYMETALの三人は、まばゆいメタル色のガウンをまとっている。

それはまるで、祖父の代から親の世代へ、子・孫の世代へと続く、輝かしいメタルの世代継承を表現しているかのようだ。

「♪We are THE ONE, Together we're the ONLY ONE. You are THE ONE, Forever you’re the ONLY ONE…」と英語で歌われた歌詞は、小学生にはわからないかもしれない。

だが、今日、ここで行われた「銀キツネ祭り」は、耳が痛くなるような大音量、会場を埋め尽くした大人たちが狂ったように叫ぶ衝撃映像とともに、一生の思い出になるだろう。

そしていつかきっと、なぜおじいちゃんやパパが、ここに連れて来てくれたのか、わかる日が来る。

愛されていたのだ、と。

(つづく)