キツネ祭BD(3) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日2月20日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

Legend S-洗礼の儀-@広島グリーンアリーナが3月31日(土)20:00~WOWOWで放映されることになりましたね。1ヶ月以上先ですが、編集されたプロショットがあるということは、一部に危惧されていたデロリアンの発売もほぼ確定でしょう。

 

BABYMETALは2014年以降、男性限定の黒ミサ、女性限定の赤ミサ、白塗り限定の白ミサは何度か開催してきたが、10代限定の金キツネ祭り、60代+小学生限定の銀キツネ祭りは2017年に初めて実施された。

BABYMETALファンには中高年が多い。2010年からのさくら学院の「父兄」をベースに、2013年の神バンドを帯同した国内ロックフェス出演によってロックファンに広がり、2014年12月にNHKの特集番組「BABYMETAL現象」で知ったかつてHR/メタルに熱狂した中高年に広がり、さらに世界的な活躍のニュースによって各層に広がっていったので、一応アイドルでもあるはずなのにSU-、YUI、MOAと同世代のファンが少ないという年齢構成になっている。

これは、BABYMETALのチケットが、海外進出以降、国内アーティストとしては破格といえるほど高額になったこと、会員限定BDボックスセットやグッズ等も他のアイドルと比べて割高であり、「大人買い」できる層をターゲットにしていることも影響している。

このことについて、ぼくは文句を言いつつも一定の理解をしている。

BABYMETALは、シングルCDを数か月おきに出すという「アイドル」のフォーマットをとっていない。今はCDが売れる時代ではないし、国内でシングル曲を売り続けるには、ポップでキャッチーな「売れる」曲にしなければならないし、テレビ露出も必須だ。それにしても”巨大勢力アイドル“には太刀打ちできない。

他のアーティスト同様、ファンベースを確保し、ライブとグッズ、数年ごとのアルバムで収益を上げるしかないのである。

BABYMETALは、80年代にピークのあったへヴィメタルの「復権」=Metal Resistanceを標榜していたので、客層はさくら学院の「父兄」から、必然的にロックフェスへ通うHR/メタル好きの音楽ファンに移行していくことになる。

耳の肥えたこの客層に訴求するために、楽曲に凝り、神バンドをつけた。ミュージシャンのギャランティや機材運搬費、舞台装置その他を含めて、通常の「アイドル」の何倍ものコストがかかる。それを回収するためにチケットやグッズは比較的高額になったが、ターゲットをコアな音楽ファン層に定めていたから成立した。

いや、この「ハイリスク・ハイリターン」のプロジェクトを企画倒れにしなかったのは、ひとえに、ステージ上の三人が、過酷な努力によって、耳の肥えた観客をがっちりつかんだからである。そこがまず凄い。

だが、KOBAMETALはここで満足せず、2014年から本格的に海外のへヴィメタル市場に参入する。

海外のライブ活動は渡航費、滞在費など、日本より費用がかかる。エージェントやレーベルと契約してプロモーションを依頼すればその分もコストがかかる。

だが、海外では国内ほどチケットを高額にはできない。その費用も、当初はせっかく作った国内での収益の持ち出しによって賄われたはずだ。

これも「ハイリスク・ハイリターン」の賭けであり、ステージ上の三人および神バンドは必死だったと思う。そしてその戦いにもBABYMETALは勝利した。

海外での高い評価によって、BABYMETALには、より「プレミア感」がつくことになった。

こうして国内ライブのチケット、グッズはより高額化したが、2016年の東京ドームでは11万人を集めるほど、ステイタスを上げることに成功した。

海外単独ライブのチケット代は、日本のほぼ半額。しかも会場費と集客のバランスを考えると2000名程度の会場しか望めないから、実は非常に効率が悪い。ウェンブリーは持ち出しだったかもしれない。だが、地道にそれをやったことで得たBest Live Bandの称号により、BABYMETALには、ロックフェスや大物バンドの前座は、あご足つきで1ステージ30分30M$のギャランティが出るといわれる。

おそらく現在のBABYMETALは、アミューズのアーティストの中では「稼ぎ頭」になっており、売れるまでにかかった累積費用は回収され、損益分岐点を超えているだろう。

しかし、単体として黒字になった分、今はBABYMETALの収益が、アミューズの他のアーティストを支えるコストに転嫁されているはずだ。

どの会社でも同じだが、売れる商品、稼げる部門の収益は、赤字部門の補てんに回される。さくら学院のコストだって、当初はそうやって、先輩の「サザンオールスターズさん、福山雅治さん、Perfumeさん」(三吉彩花@月刊Melodix)ら、他のアーティストの収益で賄われていたはずなのだ。そうして独り立ちした後は、後輩のコストを支えて育てる。

アミューズは海外でもプロモーションしているから、会社に入った収益はそちらにも回る。大物アーティストというのは、そうやっていろいろな関係者を食わせているのだ。

だから、彼女たちが見せてくれる夢によって、辛うじて日々を生きている中高年バツ2独身であるぼくは、懐が許す範囲内で、チケットとグッズを買ってBABYMETALを支えることはやぶさかではない。

だが、ファンの主力がアラフィフ、アラ還のオジサン中心というのでは、BABYMETALの先行きはいかにも心細い。

そこで金キツネ世代だ。

初めてのCD、初めてのライブ参戦は、一生忘れない。

初めてではないにしろ、中高生の頃に好きになったバンドは、人生の宝物になる。

今は敷居が高い感じのするBABYMETALだとしても、一度でもライブに足を運び、1枚でも音源を買ってくれれば、社会に出て、使えるお金が増えた時に、BABYMETALの主要顧客になってくれるはずだ。そしてBABYMETALはそれだけの価値があるアーティストなのである。

だから、金キツネ祭りは、BABYMETALにとって、2017年で一番大切なライブだったかもしれない。

そしてBABYMETALは勝利した。

 

●2017年7月20日The Gold Fox Festival@赤坂Blitz

―「紙芝居」より引用―

メタルレジスタンスの幕開けと共にキツネ様によって解き放たれた5つのメタルの魂は5匹のキツネたちへと憑依した。やがてその5匹のキツネたちはThe Chosen Fiveの元へと導かれるのであった。

「黒」「赤」「金」「銀」「白」。

この夏、日出づる国で5色の狐火が舞い踊るのだ。

諸君、首の準備は出来ているか?

もう一度聞く。首の準備は出来ているか?

10代の子狐たちよ。”金キツネ祭り“の幕開けだ!

―引用終わり―

歓声が若い。野太い「黒キツネ祭り」と、女性だけの「赤キツネ祭り」の中間くらい。

カメラが薄暗い会場を映し出すと、そこには10代の若者がやや緊張したような面持ちで密集している。

「BABYMETAL DEATH」が始まり、紗幕が切って落とされると、最初怖い顔を作っていた三人が、「SU-METAL DEATH」「YUIMETAL DEATH」「MOAMETAL DEATH」の後、すぐに笑顔になる。

考えてみれば、小中学生だった頃、BABYMETALの観客はみんなはるか年上の「父兄」だった。今やSU-は成人間近、YUIとMOAも高校3年生である。「子狐」たちの多くが、年下なのだ。

ギターソロの後の「DEATH!DEATH!」のパートでは、YUIがニコニコ、MOAはニヤニヤ、SU-も笑顔がはじけている。昨日の「赤キツネ祭り」に引き続き、楽しくてしょうがないという感じ。

2曲目は「メギツネ」。SEの「♪きーつーねー、きーつーねー…」を客席のみんなが歌う。これは新鮮。海外のロックフェスみたいだ。

間奏部の煽りパート。解き放たれたYUIの笑顔がはじける。

SU-は「What’s up 子ぎつね!」「Welcome to Gold Fox Festival!」「We’re so happy to see you!」「Are you ready? A—re Yo—u Ready!? 1,2,123, Jump!」

でいつものように熱狂の「ソレソレソレソレ」大会。そう、キツネ様は不可思議な魔力でここにいる金キツネ=子狐たちを招き寄せた。踊れ!楽しめ!一生忘れない永遠の今を生きよ!

暗転後、神バンドソロ。今日の藤岡神は、またまた違うパターンの入り。10代の頃に見た超絶ギタリストは一生の目標になる。きっと藤岡神も意識していたはずである。3日間で最も速いパッセージで、大村神にソロを受け渡す。大村神もぎゅいーんと受けて、リディアンスケールのフレーズを詰め込む。BOH神は、いつものように指弾きから中盤スラップ後半ハイ・フレットへ上り詰めていくきっちりした超絶ベースソロ。青山神も気合が入りまくり手数の多いソロを聴かせた後、なんと途中で立ち上がり、止まる。その一瞬、両手を大きく広げ、「こっちへ来いよ!」といわんばかりのアピール。それぞれのミュージシャンが10代の若者を意識して、メタルの素晴らしさ、バンドのカッコよさを見せつける。ぼくはねえ、この瞬間、ぐっと来たよ。

「ハイ!ハイ!」と入ってきたYUI、MOAが可愛い。クルクル変わる表情。終始ニコニコ顔。だが、ダンスはキレッキレで、汗が飛び散る。神バンドの心意気を感じて、一生もののライブの楽しさを若い観客の胸に刻みつけようとしているのがわかる。これぞBABYMETAL。いいね!

壮大なオーケストラからSU-ソロ「Amore-蒼星-」が始まる。

SU-のピッチは珍しくやや荒れている。ウェンブリー仕様で、終盤一度止まってから、転調してリスタートするところでは、明らかに音程がとれてない。

カラオケ時代には、昼夜2回公演×2日間というライブもあったが、曲数は少なかった。神バンド帯同以降は、2日間連続ライブは多いが、3日間連続はなかった。疲れもあったのか。

だが、ピッチが揺れたのはこの日のこの曲だけだったから、要するにマスタリング修正していないということだ。

「ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドンドンドンドンドンドン」という太鼓のSE。

「GJ!」である。初日の「Sis. Anger」に比べて、二人の生歌のピッチは正確で、激しく踊りながら、客席にBBMの魅力を突き刺していく。

「Wall of Death!」のときのYUIが可愛い!「ナンバーワン!」のときのMOAのエクボが可愛い!BBMはアイドルとしたって圧倒的に可愛い!

照明が青く変わり、バックライトに照らされた三人が揃ってピラミッドの形をつくる。

久々の「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」である。

合いの手最難関曲。SU-は客席にマイクを向け、いつものように合いの手を要求するが、

「♪あなたとわたし」→「You and Me!」

「♪今宵は楽しい」→「ウキウキミッドナイト!」

「♪門限」→「Closing Time!」

「♪ノノノン!」→「No Way !」

「♪まだまだ続くよ」→「キンキラリーン!」と目まぐるしく変わる部分のボリュームは低い。古参メイトじゃないからしかたがない。DVDをよく見て予習しておかないとライブ会場でできるものではない。

ここから後半戦。

不穏なイントロに続いて、「♪伝説の黒髪を華麗に乱し…」というSU-のボーカルが響く。

「ヘドバンギャー!!!」である。

もちろん、金キツネ世代にとって、この曲は最重要だ。BABYMETALは、2013年のSU-のさくら学院卒業=Legend ”Z“でも、2014年の海外進出=日本武道館黒い夜でも、この曲を「復活」や「旅立ち」のテーマとして演奏してきた。15歳のバンギャルの心情に託して、幼い”泣き虫“な自分と決別し、自立していく成長の歌といってもいい。

2012年、インディーズデビュー曲となったこの曲を通じて、SU-は、生徒会長として、アーティストとして大きく成長した。YUIとMOAも、ツインテールを持ち上げる振付を考え、「イチゴ=15=一期の夜」の哀切さを表現し、初の欧米ツアーでこの曲を歌った。

さらに、この歌詞には、小6で聖飢魔Ⅱを見てメタルに目覚めたKOBAMETALや、学生だった頃にプロのミュージシャンとして生きていくことを決めた神バンドのメンバーの心情も重なる。

「♪ヘドバン!ヘドバン!」と会場を煽りながら、三人はもう汗だくである。

10代の金キツネ世代は、今、ここでBABYMETALに出会っている。君たちはどう生きるのか。額や頬に貼りつく髪を振り乱して、BABYMETALはそのことを問うている。

熱狂冷めやらぬまま「ギミチョコ!!」が始まる。

この曲はBABYMETALの出世作であり、若い世代もこの曲からベビメタを知ったという人が多いだろう。だが神バンドの演奏はあくまでブルータルに徹し、三人のダンスは獲物を狙うキツネのような目つきで、客席を挑発する。

しかし、「♪わたたたたーた…ずっきゅん」「♪あたたたたーた…どっきゅん」のポーズになったとたんYUI、MOAの顔はニッコニコ(^◇^)である。特にYUIちゃんは尋常でないKawaiさ。もちろん人差し指を伸ばしたMOAやほっぺを膨らませるSU-の表情もKawaii。

間奏部、お立ち台に立つ三人は、ジェスチャーで観客とコミュニケーションしながら拍手を要求する。会場に一体感が生まれる。やっぱ最強だわ、BABYMETAL。

照明が青く変わり、「KARATE」が始まる。

10代~20代の若者がBABYMETALの楽曲の中で一番好きな曲だと思う。

「♪セイヤ、セセセ、セイヤ」のときのYUI、MOAのダンスのキレ、躍動感が凄い。戦うBABYMETALの心情を表現した曲であり、涙こぼれても、心折られても立ち向かっていくという歌詞は、若者の共感を呼んでいるだろう。煽りはなく、音源どおりだが、「♪WooWooWoo」とシンガロングする会場の声が若い。

そして、フィニッシュ曲「Road of Resistance」のSEが流れ、暗闇の中、三人がベビメタフラッグを持って登場すると、狭いピットにWODができていく。

映り込む観客の顔が若い。図々しい中高年メタルヘッズと違って、接触や圧縮に慣れていないのだろう。なかなか輪が大きくならない。

イントロのドラムが鳴り、「♪1,2,3,4」で、曲が始まるとサークルも動き始めるが、画面で見る限り、一部の観客が半周くらいしたところで先が続かない。ベビメタの定番、巨大高速サークルモッシュという感じではない。

「♪東の空を…」とSU-の歌が始まると、サークルモッシュは止まってしまい、「DEATH!」「It’s Time!」といった合いの手が上回った。

だが、間奏部の「♪Woo woo woo woo、Woo woo woo woo…」のシンガロングは、ほぼ全員が歌っているようで、BABYMETALの楽曲に共感していることがよくわかる。

要するに、慣れていないのだ。その初々しさがまた、金キツネ祭りの良さでもあった。

そして、SU-の雄叫び「♪かかってこいよ!」は、これから人生を始める若い観客に対する、心のこもった「メタル魂」継承のエールだったように思えた。

(つづく)