宇宙的日本人 | 私、BABYMETALの味方です。

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THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日2月17日は、2014年、ニッポン放送「西川貴教のちょこっとナイトニッポン」に出演。2016年には、7月17日に行われるCHICAGO OPEN AIRに出演することが発表された日DEATH。

 

NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)で火星探査ロボットのソフトウェアを開発している小野雅裕さんという方がいる。

1982年大阪生まれ、東京育ち、ロサンゼルス在住。

この方がWeb連載をもとに書き下ろした『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』(SB新書426)を読んだ。

内容は、月ロケットの開発物語から、宇宙開発に携わる技術者の生涯、火星を始めとする太陽系の惑星や水のある衛星、さらに人類が移住可能な太陽系外の惑星探索、宇宙人との交信計画SETIなど、子どもの頃に誰もが心躍らせたトピックス。

東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、マサチューセッツ工科大学航空宇宙工学科博士課程および技術政策プログラム修士課程修了という経歴を持ち、NASAの研究所に勤める世界最高水準の現役科学者だから、書かれていることは、トンデモ都市伝説などではなく、最新の天文学や最先端の宇宙工学の知見に基づいているが、その文章は詩的でロマンにあふれている。

例えば、本の冒頭にある「序」はこんな風に始まる。

―『宇宙に命はあるのか』P.3より引用―

想像してみよう。遠くの世界のことを。

想像してみよう。あなたは火星の赤い大地に立ち、青い夕日が沈むのを見ている。

想像してみよう。あなたは宇宙船の窓から「星月夜」の絵のような木星の渦を間近に見下している。

想像してみよう。あなたは土星の衛星タイタンの湖岸に立っている。オレンジ色の雲から冷たいメタンの雨が降り、湖面に輪を描いている。

今、あなたの心の奥深くで何かが戦慄くのを感じなかっただろうか?何かが囁くのが聞こえなかっただろうか?言葉になる前の、意識にすら上る前の、何かが。

―引用終わり-

まず、まだ36歳という若さの日本人科学者が、NASAで最先端の宇宙技術に携わっているという驚き。

さらに、この「何か」が、ホモ・サピエンスという種が文明を発展させ、科学を生み出した原動力、すなわち想像力であると喝破し、ジュール・ベルヌの「人が想像できることは、すべて実現できる」という言葉を引く視野の広さに敬服した。

確かに、幼い頃にどこまでも続いている道の向こう、水平線の彼方、天空の果てに何があるのかを想像してしまうのは、国や民族を超えて人類共通の「本能」だと思う。

それがいろいろな宗教の世界観や哲学を生み、一方で、自然現象に客観的な法則性を見出す科学へと発展し、ついには宇宙開発へとつながった。

トンデモ都市伝説で、A.I.やマイクロチップの埋め込みと並んで、最新の話題のひとつは、PayPal社の共同設立者、テスラモータース会長、スペースX社の創業者イーロン・マスクによる火星移住計画である。

オカルト的な解釈では、陰謀論と絡めて、地球は破滅に向かっており、限られたエリートだけを火星に移住させる「人類の選別が始まっている」ということになるのだが、小野氏はイーロン・マスクの挑戦を称賛しつつ、その計画を検討し、コスト削減と実現を急ぐあまり、火星の微生物汚染対策がなされているのかを心配する。

地球上に住む生物の中には、真空、極寒の宇宙環境でも生き残るものがあり、現に月面探査機の脚部に付着していた微生物が、2年後に別の探査が到着した際、検出された。

火星の一部に水があることは確認されており、生物がいる可能性もある。もし火星に生命が発見されたら、初めて地球以外に生物が存在すること、つまり「我々は孤独ではない」ということになる。

それは科学が長い間追い求めて来た「我々はどこから来たのか」「生命はどうやって誕生したのか」という究極の問いの重大な手掛かりでもある。

そのため、惑星表面に着陸する探査機は、無菌状態で制作され、「宇宙汚染」を引き起こさないようになっている。

しかし、イーロン・マスクが短兵急に火星開発を進め、惑星表面で活動する探査機や人間の排せつ物などから微生物が広まってしまうと、その後火星で生命が発見されても、それがどこから来たのかわからなくなってしまう。

宇宙開発には莫大な費用がかかる。

フォン・ブラウンがナチスドイツで開発したV2ロケットが、戦後アメリカのサターンロケットやソ連のソユーズ・ロケットになった。米ソ超大国の宇宙開発は、国威発揚や軍事技術と表裏一体だった。北朝鮮のテポドン・ミサイルも当初「人工衛星」だと強弁されていた。

民間人のイーロン・マスクは、軍事技術ではなく、産業としての宇宙開発を掲げているが、そこで優先されるのは投資効率である。

小野氏は、フォン・ブラウンがナチスという「悪魔に魂を売った」ように、軍事技術や資本の論理に組み込まれつつも、科学者らしく、「知りたい」という純粋な欲求こそ宇宙開発の至上命題であるべきだと訴えているように見える。

実際、国家による宇宙開発の財源は国民の税金なのだし、民間の宇宙開発「商品」を買うのも一人ひとりの消費者である。

想像力の「誘惑」によって、「知りたい」という欲求が生まれる。その欲求を満たすことが、科学の目的なのであり、軍事力や経済力には換算できない価値がある。

そのことを知ってもらいたいという熱い思いが、この本からはひしひしと伝わってくる。

1977年9月に打ち上げられたNASAの探査船ボイジャー1号は、木星、土星などに接近して探査を行い、2013年に太陽系を脱した。

昨年12月、37年ぶりにスラスターと呼ばれる軌道修正装置を作動させ、現在地球から約210億km離れたへびつかい座の方向へ飛行中である。この作業を担当したのが、小野氏が所属するNASAのJPL研究所だった。

元々ボイジャーは、木星の探査を終えたら、そこで寿命が尽きて落下するだけの計画だった。しかし、技術者たちは、木星の探査後もスウィング・バイという航法を使って、ボイジャーが宇宙空間をずっと飛び続けられる設計にしておき、最接近した木星の、息をのむような美しい写真が多数メディアに公開されて世界中の人々の喝采を浴びたあと、上層部に飛行の続行を提案し、承認されたのだという。

技術者たちを「面従腹背」させたものこそ「知りたい」という純粋な欲求なのだろう。

ボイジャー1号が土星から撮った地球の写真を見て、カール・セーガンは『Pale Blue Dot』(淡く青い点)という書物を著した。小野氏はこの本の一節を自ら翻訳して紹介している。

―『宇宙に命はあるのか』P.205-206より引用―

もう一度、あの点を見て欲しい。あれだ。あれが我々の住みかだ。あれが我々だ。あの上で、あなたが愛する全ての人、あなたが知る全ての人、あなたが聞いたことのある全ての人、歴史上のあらゆる人間が、それぞれの人生を生きた。(中略)

考えてほしい。このピクセルの一方の角の住民が、他方の角に住むほとんど同じ姿の住人に与えた終わりのない残酷さを。彼らはどれだけ頻繁に誤解しあったか。どれだけ熱心に殺しあったか。どれだけ苛烈に憎しみあったか。考えてほしい。幾人の将軍や皇帝が、栄光の勝利によってこの点のほんの一部の一時的な支配者になるために流れた血の川を。

―引用終わり―

確かに宇宙開発は軍事技術と表裏一体である。

しかし、その結果、宇宙空間からの視点を獲得した人類は、地球上の争いがいかに矮小なものかを知ることになった。

「民族」と「国」は違う。「思想」と「政治」は違う。

互いに「民族」や「思想」は違っていても、共存する方法のひとつが「国」であり、その技術が「政治」である。

ボイジャーには、金メッキされたLP盤、通称「ゴールド・レコード」が搭載されている。いつの日か、異星人がボイジャーに遭遇し、発見されることを想定したものである。

収録曲は27曲で、「ブランデンブルグ協奏曲」(バッハ)、「魔笛」(モーツアルト)、「交響曲第五」(ベートーベン)、「春の祭典」(ストラヴィンスキー)といったクラシックから、インドネシア・ジャワ島のガムラン、セネガルのパーカッション、インドのシタール、ブルガリアの合唱、日本の尺八、中国の古琴などの民族音楽、ルイ・アームストロングの「メランコリー・ブルース」、チャック・ベリーの「ジョニーBグッド」といったジャズ、ロックンロールも入っている。

ビートルズは、「ヒア・カムズ・ザ・サン」を入れる予定で、メンバーは承諾したが、レコード会社が承諾しなかったので見送られたという。

もし、本当に異星人がこのレコードを入手して分析すれば、地球という星に住むヒトという生物は、特定の周波数の空気振動が奏でるリズム、メロディ、コードの塊を「音楽」というコミュニケーション手段として使っており、それによって感情を掻き立てられる「普遍音楽文法」を持つのだということがわかるだろう。

そして、ビートルズもチャック・ベリーもルイ・アームストロングも既にいない今、言語というもう一つのコミュニケーション手段を超えて、「普遍音楽文法」で全地球規模のファンを持つBABYMETALというアーティストの存在を知れば、がぜん興味を持つことだろう。

数億光年の彼方で、数万人の異星人オーディエンスの前で、BABYMETALがライブをやる日が来るかもしれない。

だって、もともとBABYMETALは、ずっと昔、遠い昔、はるか彼方のへヴィメタル銀河の澄んだ星で生まれたのだから。

まあ、さすがにぼくも追っかけていくことはできないだろうな。