FOX遺伝子と普遍音楽文法(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

YOU ARE THE ONE. WE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日2月1日は、2012年にBABYMETALの初LIVE動画が公開され、翌2013年には、Legend ”Z” @Zepp Tokyoが開催されて、神バンドが再降臨するとともに、SU-METALのさくら学院卒業後もBABYMETALが存続し、YUI、MOAは課外活動として引き続いて参加することが発表された日、つまりベビメタの死と再生の日DEATH。

 

無性にうれしい。昨日13:30、公式よりTHE ONE更新のメールが来た。

Legend-S-でのYUIの病欠、藤岡神の逝去、極度の情報不足など色々あった。

顔を上げよ、前を向け、立ち上がれなどと、ブログでは威勢のいいことを書いていたが、内心はもの凄く不安だった。

もしかしたら…万が一…といった考えがよぎることもあった。

ちょうど5年前と同じ。BABYMETALはリスタートする。

―THE ONEより引用―

5色のキツネ様による世紀の祭典「5大キツネ祭り in JAPAN」を経て、

5色の狐火が集った「巨大キツネ祭り in JAPAN」と共に終幕したMETAL RESISTANCE第五章、そしてNEW GODDESSが降臨したMETAL RESISTANCE第六章…

とどまることなく2017年を突き進み続けたBABYMETALは、2018年卯月-METAL RESISTANCE第七章へと新たな一歩を踏み出す。

道なき道を突き進むBABYMETALが深き漆黒の闇の先に見える一筋の閃光が導く道へ…

新たな時代の到来-METAL RESISTANCE第七章の幕開けだ!!

本日より、2018年 THE ONE グッズをアスマートにて予約開始!!

http://www.asmart.jp/theone/

2018年のアイテムは「BIG TOWEL」!!

THE ONE (BIG TOWEL)

¥5,000(tax in)

SIZE:THE "ONE" SIZE(縦:84cm/横:142cm)

―引用終わり―

とのこと。Legend-S-だけを第六章として、いきなり第七章になるらしい。理由は決して口に出さないが、そう決めた運営やメンバーの顔を思い浮かべるだけで涙がこぼれる。これぞBABYMETAL伝説だ。

また500円値上げだけどな。ジェットコースター並みの喜怒哀楽。これもメイトの醍醐味か。

 

人間が他の動物と違って、現在の出来事から「次に何が起こるか」を予測したり、「誰々がこう言っていた」という二次情報を伝えたりすることができるのは、言語があるからである。

昨年12月から読み始めた「チョムスキー言語学講義~言語はいかにして進化したか」(ちくま学芸文庫)をようやく読み終えた。薄い文庫本だが、超難解だった。

言語学者ノーム・チョムスキーは、どんな民族でも、そこに生まれた赤ちゃんが大人の話す言葉を習得する先天的能力を持ち、類人猿にはそれがないことに注目し、人間の脳には生まれつき言語を理解する「文法的な枠組み」=普遍文法(Universal Grammar)が備わっていると考えた。そして、数学の概念を用いて、単語が組み合わさって文章になっていく人類共通のルールのようなものを生成文法と呼び、その解明を研究目標とした。

ぼくの理解に間違いがなければ、世界各国の言語を文法構造から分類する「語族」分けや変化のしかたを主に研究するいわゆる「言語学」とは異なり、言語の「根源」を生物学的進化の一環と考えるところが、チョムスキーのユニークなところである。

一般的に、ヒトという種が言語を発達させたのは、仲間とコミュニケーションをとることで、生存=自然淘汰に有利だったからという説があるが、それにもチョムスキーは異を唱える。

鳥類や他の哺乳類も危険を知らせたり、求愛したりする際に鳴き声でコミュニケーションをとる。仲間とのコミュニケーションはヒト特有ではない。

むしろヒトの言語は、外部で起こっていることを整理し、組み合わせたり、抽象化したりできる「内的言語」としてまず発達したのではないか。

心の中に言い表したい何らかのイメージがあるとする。それを表出する際、特定の音を組み合わせて単語を作り、それを連結させて文を作るやりかたは無数にある。例えば今ここで、新しい言語を作り、仲間内だけで流通させることだってできる。

それ故、歴史的には人間集団の数だけ、多種多様な言語が生まれ、集団が移動し、他の集団と出会う中で変遷していったのではないかというのが、チョムスキー派の考えである。

それでは、他の動物とは違って、ヒトだけが言語を持てた要因は何か。

ある言語障害を持つ人の家系の遺伝子ゲノム研究から、言語能力と大いに関係のあるひとつの遺伝子が浮かび上がった。優性遺伝するこの遺伝子に変異があると、その家系は言語障害を持つようになる。

この遺伝子、名前をFOXP2という。ここにキツネ様がいる、というのは冗談で、発生・転写に係るForkhead Boxという遺伝子グループの略語がFOXというだけだ。

遺伝子とは、細胞中のDNAあるいはRNAを構成するタンパク質のアミノ酸配列のことであり、FOXP2とは、その一部分である。

ウィキペディアの「FOXP2」の項の解説によると、ヒトのFOXP2の配列に似たものは、鳥や爬虫類にもあり、その遺伝子の発現量が少ないと、鳥はうまく歌を学習できないという。

だが、ヒトのFOXP2は、キンカチョウの FOXP2 とは 7 アミノ酸、マウスの FOXP2 とは 3 アミノ酸、チンパンジーの FOXP2 とは 2 アミノ酸違う。

現生人類ホモ・サピエンスと少なくとも7000年間は共存していたことが分かっているネアンデルタール人は、骨のDNA解析から、現生人類と同じFOXP2遺伝子を持っていたらしい。このため、FOXP2が、他の類人猿とヒトとを分け、言語の進化を生んだのではないかと考える研究者もいる。

だが、チョムスキーはこの見解にも懐疑的である。

生まれつきFOXP2に変異があるマウスは、鳴かないだけでなく、学習し覚えて実行するという一連の手続き運動能力が低いが、正常な遺伝子を移植すると、その能力が上がった。

つまり、FOXP2遺伝子は、「内的言語」を外部に表出する運動機能にだけ関係していると推測できる。パソコンとプリンターの関係でいえば、FOXP2は文章を作るワープロソフトではなく、プリンターを制御するプログラムではないかというのだ。

鳥も、他の哺乳類や類人猿も、心の中に仲間とコミュニケーションしたい内容があり、それをFOXP2のプログラムを使って表出している。それが「危険!危険!」「あっちに餌がある!」「ねえ子作りしようよ!」といった意味の鳴き声になる。

ところが人間は、そのコミュニケーションしたい内容自体が、抽象化されていたり、構造化されていたりする。その内容をFOXP2によって表出しているから、「言語」になる。

「(情報1)シカが集団でこちらに向かっている。(情報2)ちょっと先に谷間がある。(組み合わせ)そこへシカを追い落そう。(手段1)お前とお前はあそこで待伏せしてシカがきたら大声を出せ。(手段2)おれたちはこっち側で待ち伏せする。(構想)協力して、シカが逃げられないように谷まで誘導するんだ。(目的)上手くいったら谷に落ちて動けなくなったやつを山分けしよう」といった未来予測や相対位置の把握、集団行動を伴う一連の「計画」になるわけだ。

そして、今のところ、他の動物と決定的に違って、心の中に構造化された「内部言語」を生み出す遺伝子座は見つかっていない、というのがチョムスキーの見解である。

同じFOXP2遺伝子を持つネアンデルタール人が、ヒト=ホモ・サピエンスと同じ言語、つまり「想像力」や「構想力」を持っていたとはいえない。なぜなら、40万年前から地中海地方に住んでいたネアンデルタール人は、20万年前に出現し、6万年前にアフリカを出た初期のヒトより体格や脳の容量が大きく、個体の戦闘力は上だったはずだが、生存競争には敗れたからだ。

遺伝子の変化まではいかない、何かの契機に、ちょっとした脳の配線=心の変化が、ヒトの誕生した20万年前~アフリカを出た6万年前のどこかで起こったからではないか。これが人類の進化と言語の発生に関するチョムスキー派の現在の考えのようだ。

さて、これを読んだぼくは、ただちに、歌や音楽の発生について考えてしまった。

どんな民族にも、言語と同じように、歌や音楽がある。

歌には言語と結びついた歌詞があるが、楽器の演奏だけなら歌詞がない。

赤ちゃんは器楽演奏でも喜んで聴き、音階を真似て歌う。

ぼくら大人だって、歌詞の意味の分からない洋楽でも楽しんで聴く。

ということは、人間の脳には、生まれつき音楽を理解し、身につける能力=普遍文法ならぬ普遍音楽文法(Universal Music Grammar)が備わっているのではないか。

BABYMETALのメンバーは、様々なインタビューで、海外でライブをやると、音楽に国境はないことが実感できると言っている。

日本語の歌詞の意味がわからなくても、BABYMETALの音楽は楽しめる。

それはYUI、MOAによるダンスの「通訳」もあるかもしれないが、本質的にはダンスも含めた音楽のリテラシー(読解能力)が、人類共通だからだろう。

例えば、長調のコードが半音ずつ上がっていくシークエンスは、ワクワクする期待がどんどん高まっていく感じを受けるだろうし、それが1音飛びだと転調を伴い、めくるめくような盛り上がりを感じる。

前者は「ギミチョコ!!!」の「♪C!I!O!チョコレート、チョコレート。チョチョチョいいでしょ」のところであり、後者は「THE ONE」の「♪We are THE ONE together we’re The Only One」のところである。

また、短調のコードが続いた後に長調に転調すると、暗いところから一気に明るいところに出た感じがする。

「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の「♪知らないフリはキライ!キライ!知らないセカイ見たい!見たい!四次元五次元期待!期待!10%背伸びしたい!したい!っよね!」のところ。Am→F→Dm→Eの繰り返しから、ツナギに入るギターのメロディが、上昇進行はDmのマイナーで、下降進行はEのメジャーになって転調し、Aの「♪リンリンリン!」につながると、トンネルを抜けたように明るい曲調になる。

「No more burying forever」のメッセージがステージいっぱいに繰り広げられるKey=C#mのパワーメタル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」も、ツインギターソロをバックにYUI、MOAの殺陣が演じられた後の「♪いとしくてせつなくてこころ強くて…」に続く3回目の「♪君を守るか~ら~」のところは、C#sus4からC#となり、半音下がって長調のCに転調、「♪イジメ、ダメ、ゼッタイ…イジメ、ダメ、Forever…」はC→D→Em→Bm・D→C→D→Gが繰り返され、最後の最後、「♪イジメ、ダメ、ダ~メ~」はC→D→Eで終わる。

トンネルを抜けて明るくなるような感じとともに、さっき書いたように、1音飛びのメジャーコードの連続によって、めくるめくような盛り上がりで終わる。

しかも終止感、安定感の強いE。そこにハイEのダブルストップのギターの音がかぶさった瞬間、静寂をついてドラムのオカズが入るとコードEの乱打。

「We are?」「BABYMETAL!!!」というC&Rにつながるのは、本能といっていいくらい自然な流れである。

6万人のソニスフィアの観衆が、大歓声でBABYMETALを称えたのは、こうした人類共通の「普遍音楽文法」の理にかなっていたからではないか。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が、「No more burying forever」という意味だということは、会場のスクリーンで表示されたが、2014年、2015年の大規模フェスのファンカムを見ると、それを見て笑い声さえ漏れていた。

しかし、圧倒的な演奏力とSU-の歌唱力、YUI、MOSの全力ダンスパフォーマンスを見せつけられ、かつ、それが人類共通の普遍音楽文法に基づく心の琴線に触れたから、言葉の壁を飛び越えて、BABYMETALは世界共通の音楽になった。

実は、日本の歌謡曲~J-POPのコード進行は、世界的に見るとかなり特殊で、日本人特有の「好み」がある。欧米のスタンダードから外れているが、マーティ・フリードマンが惹かれたように、そこにも普遍音楽文法に通じる何かがある。BABYMETALが海外で受けているのも、そこに理由があるような気がしてならない。今回はこれについて考えてみたい。

(つづく)