テクニカルギタリストの系譜(8) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

YOU ARE THE ONE. WE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日1月29日は、2017年、Guns N’ RosesのSupport Actとして、埼玉・さいたまスーパーアリーナに出演した日DEATH。

 

誰にも埋められない。

そんなことはわかっている。

だが、誰かが埋めなければならない。

埋めるだけじゃない。世界中のメタルファンから比較され、少しでも劣っていると見なされれば批判される。

2014年までは全く無名だった日本の小柄な天才ギタリスト。

世界を驚愕させ、BABYMETALの核心だった彼に代われるギタリストなどいない。

だが、ワールドツアーの日程はどんどん迫ってくる。

Leda神と大村孝佳神の二人だけでは、これまでのように一人でもスケジュールがおさえられなかった場合、ライブができないということになる。

49日もすまないうちに1ファンがこんなことを書くのは、不遜以外の何物でもないことは重々承知している。

しかし、BABYMETALは前へ進むしかない。

だから、敢えて、ぼくが個人的に神バンドに加わって欲しいギタリストの名前を挙げてみる。

心証を悪くする人がいたらごめんなさい。

 

●ISAO(Cube-Ray)

大阪府出身、1977年生まれの41歳で、出身地、音楽性、MI講師の経歴なども含め、藤岡幹大の“先輩”にあたる。

ギターの魔人の異名をとり、Spark 7やThe Fadedのメンバーとして、アメリカで4年間活動した経験もある。

2015年12月12日のFinal Chapter of Trilogy@横浜アリーナ初日に、藤岡神とともに演奏した。「KARATE」と「THE ONE」はISAO神が初披露したのだ。

このときのセットリストは、「BABYMETAL」全曲+「Metal Resistance」からの4曲。

残りの曲には、より難度の高いものもあるが、ゼロからやるよりは取り組みやすいはず。

だから、ISAO神が最有力だとぼくは思う。

ESPとエンドーズ契約を結んでおり、使用楽器は8弦のE-II HRF NT-8Bと、藤岡神と同じ7弦のE-II HORIZON FR7。

音楽性も藤岡神同様、ハードロック、メタルからフュージョンまで幅広く、難曲、変拍子を好み、速弾き、低音弦のパワーコードによるリフ、両手タッピング、弦を親指の腹でひっかけて指板にたたきつけるチョッパー奏法、謎のムササビ奏法、アームを使った擬似ワーミーなどの特殊奏法も使う。

2016年11月に開催された「魔界忍法帖」ライブでは、ゲストの小林信一、藤岡幹大とリング上で、“神ギター3大対決”を行っている。

https://www.youtube.com/watch?v=h08qb8Rqa00

また、仮バンドのミニアルバム「仮音源」のレコーディングに参加し、「Djentleman」では、前述したとおり、藤岡神とともに「ジェント」かつ美しいツインギターを聴かせてくれた。

テクニック、音楽性は言うに及ばず、YouTubeで見られる教則ビデオを見ると、キャラクター的にも穏やかな印象だし、英語も堪能で、欧米のミュージシャン、プロデューサーの人脈も豊富。

勝手な憶測だが、藤岡神存命の頃は、音楽性が重なりすぎていた。

大村神、LEDA神、藤岡神のうち二人が出られるスケジュールなら、”先輩”にあたるISAO神にご出馬いただかなくともライブができた。

だが、藤岡無き今、トシン・アバシに拮抗しうる演奏技術を持つISAO神に、ふたたび降臨していただき、「世界征服」へのリスタートとなるMetal Resistance第6章を担っていただくわけにはいくまいか。

 

●マーティ・フリードマン

言わずと知れた元MEGADEATHの超絶技巧ギタリスト。

世界的な知名度があり、BABYMETALの神バンドに加入すれば、それだけで世界中の業界関係者、メタルファンから注目されるだろう。

日本在住14年になり、テレビ出演でわかる通り日本語もペラペラだから、メンバーやスタッフとのコミュニケーションに不足することはない。

それどころか、BABYMETAL単体として初めてとなる「SWITCH」(2012年1月20日)誌上インタビューの相手は、マーティ・フリードマンだった。このころはまだSU-が中学2年生、YUI、MOAは小学6年生だった。サマソニにも出ておらず、バンド帯同のライブも経験していなかった。だが、マーティはベビメタを高く評価した。2016年のNHK「BABYMETAL革命~少女たちは世界と戦う~」では、「小中学生アイドルだったから、メタルをやめちゃうと思ったのに、続けたのが偉い。世界で認められているなんて、どんなにすごいことか、わかる?」と絶賛した。

もともと世界的なギタリストである彼が日本に来たのは、演歌からクラシックからハードロックまで幅広い音楽をミックスした日本の歌謡曲というフォーマットに惹かれたためであり、「ヘビメタさん」(2005年、テレビ東京)で八代亜紀の「雨の慕情」をメタルカバーして共演したり、2008年のNHK紅白歌合戦では石川さゆりの「天城越え」にメタルギターの伴奏をつけたりしていた。

アイドル系では、2011年にももいろクローバーZに「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」を楽曲提供し、レコーディングのみならずライブで生演奏した。ももクロの楽曲をメタルカバーした「鉄色クローンX」(2012年)をリリースしてもいる。

神バンドの大神様こと大村孝佳やドラム神の前田遊野は、もともとマーティ・フリードマンのツアーバンドの一員だったので、気心も知れている。

スラッシーなリフや、デスメタル、ネオクラシカルまで、メタルギターの技法や知識についてはもちろん、著名ギタリストとのセッションで見せるインプロヴィゼーションの多彩さ、フレージングの美しさこそマーティ・フリードマンの本質だろう。

ただし、「BABYMETAL」「Metal Resistance」(JP盤、US/EU盤)全27曲をライブで弾きこなすには相当の練度がいる。プロ中のプロだから心配ないかもしれないが、かつて藤岡神とBOH神は、ニコ生配信で、ベビメタのリハーサルは6時間ぶっ通しで行われると言っていた。マーティは1962年生まれだから今年56歳になるという年齢や、緻密なアンサンブルを生み出すために行われる長時間練習、決め事などを献身的にこなせるかどうか。

さらに言えば、ももクロへの肩入れが大きかったから、楽曲提供ならまだしも、チームベビメタの一員になることに抵抗感があるかもしれない。ギャラの問題やジャクソンとのエンドーズ契約もある。

それらの条件がクリアされるなら、下手マーティ・フリードマン、上手大村孝佳あるいはLedaという布陣の「紅月-アカツキ-」の背中合わせツインギターや、神バンドソロは、強烈なインパクトになるだろう。

 

●Syu(Galneryus)

言うまでもなく、小野正利(V)を擁するメロディックスピードメタルバンド、Galneryusのギタリストであり、今や大村孝佳、Ledaと並んで、人気・実力ともに、日本を代表する若手テクニカルギタリスト。1980年9月生まれの37歳で、藤岡神と同学年である。

MIの講師でもあり、Leda神は元々Galneryusのベーシストだった。

Galneryusはメロスピ、ネオクラシカル、プログレッシブメタルのジャンルにまたがる音楽性を持っている。

Syuのフレージングは、ネオクラシカルを基本とした正統派であり、オーケストラと共演しても圧倒してしまうほど、激しく、美しい。数十小節にもおよぶソロでも、正確なピッキングによる速弾きのリズムが崩れず、ドラマチックな起承転結をもった歌うギター表現となる。

使用楽器はESPのシグネチャーモデルで、エクスプローラータイプとフライングVのシェイプがあるCRYING STAR。

タッピングは自在に使うが、アームは使わない。

ネオクラシカルの正統派なので、藤岡神が好むジェント/マスロック的な変拍子、複雑なコード進行や、神ソロや「ギミチョコ!!!」でやっていたモード的なフリーソロへの対応がどうなるかはわからない。

というより、SyuはGalneryusのほとんどの曲を作曲しているフロントマンである。

すでにGalneryusあるいはサポートのスケジュールが決まっているかもしれない。

BABYMETALに参加することでGalneryusをないがしろにしたら、ファンが黙っていないだろう。

ただ、もし神バンドに入れば、大村孝佳、Leda、Syuと、日本を代表する若手ギタリストがBABYMETALのステージで揃い踏みすることになる。

ないものねだりかなあ。

 

●松尾 祐(赤青えんぴつ)

2016年10月に行われたYoung Guitar誌、ESP、マーシャルなどが協賛するギターコンテストGITマスターズ2016の決勝大会で、審査員特別賞に輝いたギタリスト。

演奏後のインタビューで23歳と答えているから、現在24歳とまだ若い。

小柄で、最初に見た時は女性と間違えたほど優しい顔立ちをしている。

このときの審査員は、ISAO、e-ZUKA、小林信一、Syu、そして藤岡幹大。

審査員特別賞だから、神々のお墨付きである。

使用楽器の7弦ギターNILのHPに掲載されたプロフィールには、

「GLAYに影響を受け、15歳よりギターを始める。高校卒業後、専門学校ミューズ音楽院入学。入学後ISAO氏をはじめ、さまざまなテクニカルギタリストに影響を受け、NILのギターを手にする。同校主席卒業後、ライブサポート、自身のバンド活動等をこなす。GIT MASTERS 2016 にて審査員特別賞受賞」とある。

現在は、赤青えんぴつという3ピースのマスロックバンドで活動しているらしい。

オリジナルの「プルトニウムと半月」の演奏をぜひ見て欲しい。

https://www.youtube.com/watch?v=P6jC2RreWqs

7弦ギターNILを武器に、変拍子をものともせず、凄まじい運指の速弾き、タッピング、アーム操作をこなす。

何よりフレージングがメロディアスで、センスの良さを感じる。

プロギタリストとしての専門教育を受け、主席卒業し、サポートギタリストとして活動してているというから読譜や楽理、作・編曲能力も完璧なのだろう。しかもGLAYが好きだということから、ヴィジュアル系、メタル系への適性もあると思われる。

リディアンスケールで弾きまくるところ、GITマスターズ決勝で立って演奏した時には、小柄で、速いパッセージを弾いた後に足がぴょこんと上がっちゃうクセが、藤岡神ソックリだった。下手ギターの神としてステージに立っても、全然違和感がないはずである。

このGITマスターズ2016には、もう一人ぼくが気になったギタリストがいた。

山田あすみちゃん、当時15歳の女子高生。

YUI、MOAの2つ年下であるが、ISAO作曲の課題曲を弾きまくる運指、タッピングを交えた速弾きはとても15歳の女の子とは思えない。

ジュニア部門のグランプリに輝いた。

BABYMETALの神バンドに入る新しいギタリストが、YUI、MOAより若く、藤岡神が認めた天才ギター少女なら、世界中のメイトが受け入れるだろう。

もちろん、まだ高校生で、プロとしての専門教育を受けていないから、初見の譜面を瞬時に読み、あらゆる状況に対応して独創的なソロを弾きこなす経験値はない。逆に理論を学び経験を積めば大化けする可塑性があると思う。MOAが大学へ進学し、あすみちゃんが専門学校で2年勉強するとちょうどいいタイミングになるけれど。

この決勝戦でグランプリを獲得したのも、15歳の少年だった。彼のテクニックも凄まじくて、天才といっていいが、あくまでもぼくの印象でいえばソロのスタイルが骨太のSyuスタイルで完成されていて、藤岡神のタッチとは違う感じがした。

しかし審査員特別賞の松尾祐は、ネオクラシカルではなく、フレージングや曲構成のセンスが藤岡神を彷彿とさせ、しかも確信に満ちている印象を受けた。

藤岡神自身も2000年のGITで入賞したのがプロデビューのきっかけだった。

松尾氏がギターの神としてBABYMETALのステージに立てば、もちろん最初に書いたように、藤岡神と比較されるだろう。

BABYMETALのレパートリー27曲を弾きこなし、バンドに馴染み、ワールドツアーで世界中を回り、オーディエンスに受け入れられるまで、大変な苦労をするだろう。

だが、それを乗り越え、LEDA神、大村神とともに、日本を代表するギタリストとして認知されるだけの演奏技術とガッツは、すでに備えていると見た。

 

勝手に名前を挙げるのは以上とするが、GITマスターズは毎年開催されているし、地区予選を勝ち抜いてファイナリストになるギタリストは大勢いる。

また、MIの講師陣にも、どんどん若手が登用されている。メタル系、フュージョン系とも、卓越した演奏技術を持つ日本人ギタリストはまだまだいる。

にもかかわらず、これら日本人ギタリストは世間的にも、世界的にも無名だ。

あの藤岡幹大もまた、2013年に神バンドに加入する前には無名で、普通にオーディションを受けに行って選ばれたと言っていた。

悲しみを乗り越え、きっとチームベビメタは新しいギタリストのオーディションをやるだろう。もうすでにやっているかもしれない。

世界中のメイトさんが慟哭した2018年1月も、もうすぐ終わる。

どんなギタリストが選ばれても、テクニシャンであることは間違いないだろうし、であればきっとその人は、アラン・ホールズワースやジェフ・ベックの系譜に連なる藤岡幹大の遺志を継いでいるはずだ。

そして、藤岡幹大がそうであったように、BABYMETALとともに世界を驚かすだろう。

ぼくらは、その日を待っている。

(この項、終わり)