YUIMETALの献身(3) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日12月10日は、2016年、Red Hot Chili Peppers UKツアーのSpecial Guestとして、バーミンガム、GENTING ARENAに出演(初日)した日DEATH。

 

TV朝日系「タモリ倶楽部」12月8日放映分「ナイトワークサンタが街にやってくる!」に出演していた“アダルトメディア研究家”の安田理央氏が、エクストリームブルータルロゴのパーカーを着ていました。胸ロゴのサイズが違うので、他のアーティストか、バッタ物臭いですが。良い子はわざわざYouTubeで探さないこと。

 

●検証7

「メタラーさんって、ロン毛っていうイメージがあって…ヘドバンとかも、髪がバサッバサッてなってるイメージだったんですけど、ケリー・キングさんは、坊主…スキンヘッドで、髪の力を使ってないヘドバンが、いつもヘドバンをやってる自分からすると、すごくカッコよくて…我を忘れてる感じ…ホントに自分の世界観に入ってる感じがカッコよかったので、YUIMETALも、ライブの意識がなくなるくらい、YUIMETALという存在になり切ろうと。そういうのを学びました」

「YUIMETALとMOAMETALはダンスを任されているので、自分たちなりに海外の人にも日本語の意味とか曲の魅力とか歌詞の意味とかを少しでも分かりやすく、ちゃんと届くようにっていうのはちゃんと頭の中に入れて、表情とかダンスもやってます」

(2015年TBSニュースバード「メタル復権とBABYMETAL」)

TBSは、2014年6月26日の「NEWS23」で、クールジャパンと絡めて、稲田朋美担当大臣との対談を特集番組にし、2015年には「ニュースバード」の「ニュースの視点-メタル復権とBABYMETAL」というタイトルで、『ヘドバン』の梅沢直幸編集長を解説役に、川西全ディレクターによるレディングレポート、単独インタビューと大特集を組んだ。

このYUIの発言はそのときのものである。

ちなみに2016年4月にも「The Late Show with Stephen Colbert」出演のニュースを4月17日「ニュースバード」の「キャッチ・ザ・ワールド」のコーナーで取り上げてくれた。川西氏は、メイトDとして番組を私物化しているわけではない。BABYMETALの海外での活躍により、音楽産業が活性化し、日本経済にも大きな影響を与えているのは事実であり、氏の先見性と公共放送としての公正さは、今回外務省の広報誌に日本代表としてBABYMETALが掲載されたことで、少しは証明された。

それはともかく、このときのYUIの発言は、2つの意味で興味深い。

ひとつは、YUIがBABYMETALのメンバーとして学び、意識していることが、「動き」であること。ご承知のとおり、メタルとダンスは水と油だった。マーティフリードマンは、ディスコでダンスなんかするのは、モテる奴。そういうところに行けない内向的な少年が、怨念を込めて部屋でピロピロギターを弾いているのがメタルだ、というようなことを言っている。

その意味で、BABYMETALはメタルという音楽にとっても革命的なわけだが、YUIは、フェスでスレイヤーを見てさえ、その音楽性というより、ケリー・キングのヘドバンや没我状態を「カッコいい♡」と思って、自分の参考にしようとしているわけである。

「外見から入る」というのは、「学び」の大切な要素であるが、YUIの好みはけっこうエクストリームである。例えばベビメタロゴの右上にある小さな髑髏は、YUIが小等部の頃に着ていたTシャツに由来する。イケメンのメタラーは多いはずなのに、スキンヘッド、ビヤ樽体形のケリー・キングを「カッコいい♡」と思っちゃうところがYUIMETALなのである。

さらに川西Dのナイスなインタビューで引き出された「曲の魅力や日本語の歌詞の意味を、海外の人にもちゃんと届くように」ダンスや表情で表現しているという証言。

YUIは、幼い頃から運動神経が良く、ダンスが上手だった。MIKIKO師も「もともとダンスが上手い子」と評しているし、公開授業に側転で登場してもいる。(書の授業)

ベビーフェイスでおっとりしたイメージとは真逆に、YUIMETALは体育系なのである。

そして、エクストリームな感情を、全身で表現する。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」公式PVのSonisphere2014での「♪ダメダメダメダメ」の時の表情はまさにそれ。

周りのアクションにワンテンポ遅れてしまう、いわゆる「ゆいラグ」も、言葉による反応より、他のメンバーの体の動きに合わせてリアクションするから生じるものなのだと思う。

MOAは語彙が豊富で筋道立てて説明し、気配りができる一方「一人で眠れない」という神経質なところがあるのに対して、YUIはアスリート並みの運動神経を持つ一方、周りの環境がどうであれ、疲れれば寝てしまう。それが「ゆいちゃんの赤ちゃんみたいな話」や、ドイツのテレビのインタビュー中に寝てしまうYouTube動画「インタビュー中でもふとした時間にすぐ瞑想に入っちゃうYUIMETAL」(2016年11月、MUSIC PUB TV)の真相ではないか。

絶対的歌唱力とステージに上がると豹変するSU-の“クイーン感”、コケティッシュなのに涙もろく生真面目なMOAの“顔笑り感”、そしてイノセントな言動と底知れぬ身体能力、エクストリームな感性が同居するYUIの“大器”感という三者三様の個性が、BABYMETALを形作っている。

 

●検証8

ミッキー:「Is anything you afraid of?」

YUI「お化け」

ミッキー:「Oh, ghost! Me, too.」

(2015年9月、アメリカでの『Nylon』のインタビュー)

YUIのKawaii言動は、欧米人をも魅了している。

アメリカの2チャンネルというべきRedditのBABYMETAL板で、「YUIMETALは日本人形、MOAMETALはフランス人形」というスレッドが上がったとき、アメリカ人メイトさんから、女性を人形=玩具に例えるのはいかがなものかという意見が出た。

日本人が生身の女性を「お人形さんみたい」というのは、「理想的な美しさ」であると言っているのであって、決して玩具だと言っているわけではない。

それでも、女性の外見だけを褒めるのは、女性の価値を男性に鑑賞され所有されるべき「商品」と見做している、サベツだ!という深ーい議論になる可能性はある。

アメリカはミスコンの本場だが、選出基準は、容姿だけではなく、教養や生き方も対象となっている。

アーティストは日々選ばれ続ける「商品」であり、楽曲や歌唱、演奏と並んで容姿や声も重要な要素である。男性アーティストだってイケメンだったり、セクシーであったりすることを「売る」わけである。

以前書いたが、1980年代、マドンナは、マリリン・モンロー風に、男性に媚びを売るという演技を戦略的に導入し、当初女性活動家から猛反発を受けた。だが、やがてその意図が理解されると女性のファンから支持を集め、生き方としてのセクシーさという価値観を認知させた。

女性に美しさと純粋無垢な貞淑さを求める旧い価値観は否定されたが、意図的なセクシーさは、女性の生き方の一部として称揚されるわけである。

そんな中、Kawaiiという日本語は、セクシーさとはまた違った位相で、女性の生き方を示す価値観として、世界に広がっている。

これも以前書いたが、2011年7月にYouTubeに公開されたきゃりーぱみゅぱみゅの「PONPONPON」MVは、1億回以上の再生回数となり、欧米人には奇天烈に見えるKawaiiという価値観を全世界に広めた。

英語で言えば、Cute、Pretty、Funny、Eccentric、Fantastical、Fancy、Innocentといった単語のミックスであり、成人女性の健康的な肉体的魅力を示すSexyと比べると、Kawaiiには、子どもっぽいが、文化的・芸術的な響きがある。

「PONPONPON」の大ヒットの数か月後に公開されたBABYMETALの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」もまた、Kawaii Metalとして欧米人に受容された。この時点で海外公演のオファーがあったというが、KOBAMETALは神バンドとのバンドセットが完成する2014年まで、欧米進出を控えた。

だから、メタル・アーティストとして評価が定まった後に行われた2015年9月に公開された『Nylon』のインタビューは、BABYMETALというアーティストの「商品性」としてのKawaiiの価値を全世界に再発信したという意味で、実は非常に重要であるとぼくは思う。特にYUIの受け答えは、アメリカ人の心に刺さる内容だった。

インタビューは、狭い会議室のようなところで行われ、インタビュアーのミッキーの右隣にYUI、左隣にSU-、その隣にMOAが座っている。

YUIの部分だけを取り出してみる。

 

-引用(聴き取り、翻訳jaytc)-

ミッキー:Who is your favorite singer?(君の好きなシンガーは?)

YUI:アリアナグランデ。

ミッキー:Oh! Mine, too. Can you sing any part of any Ariana Grande songs for us?(おー!ぼくのと同じだよ。アリアナの曲のどこかのパートを歌ってくれる?)

YUI:(恥ずかしそうに首を振って顔を伏せてしまう)

ミッキー:No? (ダメかい?…苦笑)

(中略。SU-がキツネ様について説明)

ミッキー:Who is KOBAMETAL?

YUI:(通訳なしで)Producer.

ミッキー:Oh.

(中略。SU-がTHE ONE、典型的なファン、キツネサインについて説明)

ミッキー:What is one thing do you love about America?(アメリカについて、好きなものをひとつあげてくれる?)

YUI:自由なところ、が好きです。日本では普通っていうものに気をとられちゃうときが多いけど、アメリカの方はすごい自分らしさを持ってて…。

ミッキー:Is anything you afraid of?(君が怖いものはなに?)

YUI:お化け。

ミッキー: Oh, me, too. I’m telling about ghosts.(ぼくもだよ。お化けは怖いよね。)

(MOAに)君は?

MOA:怒ってる時のママです。

ミッキー:Me, too.(僕もだよ。)

アリアナグランデのくだりも、KOBAMETALのくだりも、ミッキーは至近距離でYUIと向き合い、顔を見ながら会話しているが、その受け答えのイノセントぶりに、顔を真っ赤にして魅了されているのがわかる。SU-が説明するBABYMETALの「設定」やファンの特徴は、あくまでもアーティストの見解だが、アメリカの好きなところとしてYUIが挙げた「“普通”にとらわれずに自分らしさを持っていること」という発言は、アメリカ人の考える“自由”という価値観への憧れや親密感を表現することとなり、図らずもBABYMETALが“ロック”である証明となった。YUIのもつエクストリームな感性は、意外にもワールドクラスだったのである。

これは、「個性を全開する」というさくら学院の教えがベースになっているのかもしれない。だが、それが、最もシャイでイノセントなKawaiiを体現するYUIの口から発せられたことは、BABYMETALにとって大きなプラスとなった。Kawaiiとは、やはりひとつのロックな生き方なのだ、という認知がなされたからである。

そのあとのお化けのくだりは、そういう強い憧れや意志を持つYUIがまた、子どもっぽさ、ピュアさを維持しているということで、ミッキーが「萌え」た瞬間となった。MOAもさすがである。「怒った時のママ」という答えは、善きアメリカ人なら誰しも納得する完璧な答えだった。このインタビューが2016年以降のアメリカでの大活躍を準備したと言ってもよいのではないか。

(つづく)